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真 TRUTH 実
作:士功征宗


 アメリカ北西部。レーイーズAM2:00一一

 爆発音が、地鳴りとともに空気を引き裂く。
 爆発の衝撃は、近隣の住人をおびやかしたのだ。
 数分後の現場には、レーイーズの町大半の緊急車両が到着し、火の手は消沈され、“KEEP OUT”の黄色い指定線が張られていた。
「夜明けを待って、目撃者等の聞き込みをする。それから、近くのフリーウェイにあるカメラが不振車両を撮ってないか確認を急げ」
 警官達が、慌ただしく指揮に従う。
「それにしても、一体誰が……」

 数時間後。レーイーズの署内も慌ただしくなっていた。
 電話が鳴り響き、警官達の出入りも激しい。情報が次々と、入ってきていた。
 その頃、爆破現場に一台の見慣れない車が到着していた。
 その車から一人の身なりのいい男が下り、事故処理中の警官達を眺めている。
 その男の後ろに一人の警官が近寄って声を掛ける。
「アンタ、ここで何してる? 立入禁止だぞ」
 すると男は振り向きながらバッヂを取出し答えた。
「スミマセン。FBI捜査官のクリス・ドノヴァンです。状況を聞きたいんですが」
 落ち着いた、紳士的な態度。
「FBI? 何故ここへ」
「僕が追ってる事件に関連性があるか、調べにきたんです」
 それを聞いて、しばらく考え込んでいたが、
「なるほど。わかった。私はこの事件の指揮をしているケニー・オルソン巡査長だ」
 二人は握手をし、そして、ケニーが先に口を開いた。
「鑑識の報告では爆破に使ったのは、先月うちの署内の保管庫から盗まれた……」
 割り込むようにクリスが喋る。
「セムテックス! C-4爆薬」
「……あぁその通り。続けていいかなぁ?」
「あぁスミマセン。どうぞ続けて」
 ウッウンッと咳き込み、ケニーは続けた。
「検死から遺体は二つ。一人は地元のマークという男。もう一人は残酷にも内部から爆破されバラバラだ。身元も未だ不明」
 ケニーはクリスが黙って聞いているのをチラチラと確認しながら続ける。
「近くのカメラからは不振車はナシ。聞き込みでも今のところ、これといって何も出てない。しかし、マークはよく畑を荒らしにくる奴がいると、周囲にもらしていたらしいとの証言はある。今はこんなところだ」
 すると、クリスは黙ったまま、現場を眺めていく。
 しばらくすると、現場付近をコソコソ歩きだし、下を向いたまま何かを探すようにしていた。
 そのまま近くの雑木林の手前に立ち止まり、その場にしゃがみ込んむ。
 ケニーはその後を追い、その行動をクリスの背後から覗いた。
 クリスは枯葉を指で散らすと、そこには不思議な白い輪が描かれている。
「なんだこれは?」
 ケニーが不思議そうに目を細め、覗き込んだ。
「儀式」
 すかさずクリスが答え、スッと立ち上がる。
「儀式? 何の為の」
「黒魔術。肉体の蘇り。アフリカの一部やブードゥーの類でみられる。と言っても、宗教的なもには大概、復活や輪廻など、魂の輪廻転生はある。エジプトにもね」
「はぁ?俺にはさっぱりだ。だが大きな事件は初めてでね、この辺は自動車事故や空き巣などで、殺人、ましてこれだけの爆発事故となると……アンタがいると、心強いよ。」
 そう言って、ケニーがクリスから離れようと後ろを向いたとき、ケニーが何かを思い出し、また振り向いて言った。
「そうだ。盗まれた爆薬だが、過激なテロ思想をもった若者がこの町を隠れ家にするため持ち込んだ品だ。近所の通報で逮捕し拳銃、弾薬等と一緒に押収したものを、署内のスティーブン・ラスという男が盗みだしたものだ。行方を眩ませている」
 ケニーはパトカーのドアに手をあて、
「それと保管庫は、今は厳重だ」
 そう言い残し、現場処理へ向かった。
 クリスはしばらく白い輪を見つめていたが、ゆくっくり立ち上がり、その場を去っていく。
 日が暮れる前に、マークと言う男がこぼしていた畑荒らしのウラ取りのため、情報のあった近所へと足を運んだ。

 目的地に着くと、一軒一軒住人の家をノックし、話を聞いて回る。
 一通り住人から事情を耳に入れると、一度レーイーズ署に戻り、そのまま地下の検死室を尋ねたのだ。
 落ち着いた顔立ちなのだが、行動は忙しない男である。
「FBIのクリス捜査官ですが」
 細面の検視官が、待ってましたと遺体の側でタバコを吹かしていた。
「あー、クリス捜査官。待ってましたよ。私はヒルマン」
 二人は軽く握手をかわして話を進めようと、そこへ、タイミング良くケニーがやってくる。
「此処でしたか」
 ケニーは言葉とは裏腹に、あたかもクリスがこの場所に居たことを分かっていたような素振りをする。
 そして、その目線は検視官のヒルマンに向かった。
「何か解ったことはあったか?」
「えぇ、今から……です」
 三人は顔を見合わせると、ケニーが話を遮った事に感付き、話を進めてくれと手振りを見せた。
「よろしいですか? 途中の検死結果ですが、現在も身元はまだ解りません。なんせただの肉片ですからね。ですが、死後一週間前後でしょう。腐敗でわかりました」
 すると、ケニーが、
「おいおい。じゃ誰かが死体に爆薬しこんで、爆破させた事に?」
「おそらくは……」
 ヒルマンの不可解な顔。
「何か腑に落ちない点でも?」
 クリスが問い掛けた。
「えぇ。死後は経過しているのに、まるで細胞が活性化していた形跡があるんですよ。もしそうなら、死後三週間は経過していたかと」
「何を馬鹿な事言ってるんだ。君は検視官だろ! 医学的検知からものを言えよ」
 ケニーがかんぱつ入れづに言い放つ。
 そこへ、警官が駆け付けた。
「バラバラの遺体の身元が分かりました。失踪した、スティーブン巡査のモノと指紋が一致しました」
「なんと!」
 全員が驚く。
 クリスは、検死室から階段を駆け上がり、署内のディスクへ寄る。
 後を追って、ケニーも駆け付けた。
 クリスは警察官にコンピュータをいじらせる。
「スティーブンが失踪した日に、同じく失踪。または、その後失踪したものはいるか、調べてくれ。それと現場写真」
 数分後、カタカタと過去検索していた警官から、
「いました一人。ただ巡査が失踪する前の事ですねぇ。レーイーズの病院から、医師が失踪。名前はマイケル・コーニー。担当は、スティーブン巡査となってます。その三日後、保管倉庫の爆薬を盗み巡査が失踪してます。ちなみにまだ行方はまだ分かっていません」
 一人警官が、クリスのもとへきて写真を突き出した。
「どうぞ。現場の写真です」
「すまない」
 手に取ったクリスは写真を数枚めくり、手が止まった。
「見てくれ。微かに見える地面を擦った跡!」
 ケニーが目を細めて、覗き込む。
「この跡がなんだ?」
「これは、足跡なんですよ。僕が別件捜査している現場にも残っていたんです。同じような爆発現場で。これは泥酔や薬物中毒者など足取りが覚束なく、擦り足で出来た跡なんだ」
 クリスの顔は確信に満ちる。
「やはり僕が追ってる事件と一本になったようだ」
 そして、ケニーの顔を見て、
「そして何より、マイケル・コーニーはその事件に関与し、行方を眩ませていた。この町に来ていが、また姿を消えたようだ」
 しばらくまわりに緊張がはしる。
 クリスが警官に問い掛けた。
「コーニー医師の自宅の住所調べてくれ」
 警官は即座にコンピューターから割り出し、クリスに、画面をコピーした住所を手渡す。
 そのままクリスは署を抜け出したのだ。

 外はすでに暗くなっている。
 数分後、クリスが到着し、扉を開け、室内にはいった。
 辺りは静けさに包まれ、暗がりが深く沈黙を留めている。
 クリスは拳銃を取出し、携帯ライトを手にすると、闇を掻き分ける様に、先を進んだ。
 しばらく留守にしていた事を思わせる室内は、誇りを舞わらせる。
 チリが舞い上がり、ライトに映し出されていたからだ。
 その中を、一歩また一歩と書斎へ近付き、扉を開けようとドアノブに光を当てると、積もったホコリが押しのかれ、真新しい手の跡があるのに気付く。
 その瞬間! 死角の暗がりから、人がズシリと覆いかぶってきたのだ。
 クリスは勢いに拳銃を落としてしまう。クリスがその場によろけたのを見ると、立ち去ろうとしていた人影はピタリと立ち止まり、足元にぶつかったクリスの拳銃に気付き、それをそっと手すると近づいた。
 沈黙がつづく。
 クリスの乱れた呼吸だけが、暗やみに浮かぶ。
 クリスは拳銃が、自分に突き付けられている事を知りながらも、携帯ライトを足元から、顔に向け徐々に照らした。
 そして、向けられた拳銃を照らし、顔が見えそうなその時!
 一台の車がが駆け付け、そのライトが、室内を一瞬照らした。
 さらに、クリスの手も同時に止まる。
 それは、車のライトに一瞬にして顔が照らされたのを見たからだ。
 黒頭巾から白く塗り潰されていた顔。
「捜査官!」
 と、外からケニーらしい声とともに扉が開く。
 クリスはケニーらしい声に目をそらせていると、裏口の扉が、バタンと閉まったのだ。
 クリスは大きなため息を一つつくと、すくっと立ち上がりライトを拾う。
「今のはなんですか!」
「おそらく、コーニー医師だ」
 一瞬、ケニーが何かに気付き、床をライトで照らす。
そこにはマガジンがぬかれた拳銃が落ちていた。
 ケニーが車から辿り着くまでにマガジンが抜かれ、銃内に残っている弾を抜き取り、その弾をクリスに見せながら、
「次はない」
 そう言い残し、一発の弾を持ち去って行ったのだ。
 ケニーとクリスは、その後、コーニーの手掛かりを屋内で模索する。
 するとケニーが、
「クリス捜査官みてください。近くの山の建物で宗教の集いがあるようですね」
「そのようだ」
 と、クリスは一方を指差した。
そこには鉄製の籠があり、中にはグネグネと蛇が蠢いていた。

 翌朝。クリスは集いの場所へと向かっていた。
 その途中、車が1台林道に停まっていた事に気付く。
 クリスは車から降りて、車内を覗いたが、人の気配はない。
 その時、後ろから、
「その車の持ち主かい!」
 大きなしゃがれた声で近寄ってくる。
「いえ。FBIの捜査官ですが、この上の建物に用件がありまして」
「なんだ。違うのか。この車は二、三日前から停まったままだ。警察は調べにもこねえ」
「ああ、爆破事件で忙しいんです。それより二、三日前から停まったままなんですか?」
「ああ、この辺りは、妙な奴らがよく通るからな、ワシが地元を代表して見回りにきとる。だが、今日はアンタに任せるよ。上にいくなら、連中によくいいきかせてくれ。地元連中が怯えている」
 そう言い残し、来た道を帰っていった。
 クリスは、その場から歩いて上へ登り、なんとかその場所にに辿り着いた。
 しばらく辺りを見回して、警戒しながらドアを叩いく。
 間もなくスッと扉が開き顔を覗かせる。
「アナタもこの集いに?」
「えっ、ああ……僕はFBIの捜査官です。ちょっとお話が」
 扉の陰から、しばらく黒人の男が見ていたが、すっと扉が開き、中へ通された。
 屋敷とも呼べるせの屋内は大きく吹き抜けて、広い広間があった。
 感じるほど陰気くさくはないが、変な悪寒が走る。
 まわりには数人が立ち並んでいるが、黙って見ているだけ。
 各自、持ち込んだと見える蛇を抱えている。
 すると、屋内に通した男がいきなり振り向いた。
「さて、お話とは?」
 と、言いながら、まわりを横目で見る。
 クリスはスーツの内ポケットから、コーニーの写真をだし、男に差し出した。
「その男を知ってますか?」
 しばらく沈黙の後、喋りだしす。
「知ってます。数週前からチラチラ現われては、我々の活動を見張っている者だと思われますが。素性は知りません」
「アナタ方は、死者の復活を……」
 男はクリスに写真を返しながら、
「ええ、もちろん」
「黒魔術?」
「はたから見れば、そうかも知れませんが、我々にとっては聖なる儀式。ブードゥーはどうしてもカルト的集団に見られがちですがね」
「あぁ、失礼しました。気を悪くされたなら、あやまります」
「いいえ。アナタも仕事でしょ、承知してます。他にも聞きたいのは、爆破現場近くの白い輪?」
「何故、それを?」
 クリスは驚いた。
「仲間が、現場で書いたものですが、事件とは関わりがないですよ」
「ですが、別の州でも同じような爆破現場の付近に白い輪が見つかりましたが、関係は?」
「我々の活動は細々ですが、各州に幾つかございす。好意をもたない者の仕業ではないでしょうか。コーニーのような……」
 最後の言葉は何か引っ掛かりを覚える。
 男は話を終えたとばかりに、クリスを出口へと誘う。
「それではこれで失礼したい」
 クリスは、渋々立ち去ろうと扉を開けたとき、何かを思い出し、振り返る。
「最後に一つ。顔を白く塗るのは?」
「アフリカ系の民族的、かつ宗教的によく見られるのはご存じで? それでは……」
 そして、扉は堅く閉ざされた。
 クリスは仕方なく来た道を引き返し、一旦、署に戻った。
(なんだか、上手く交わされたようだ)

 署に着いてすぐに、放置された車のナンバーの割り出しにかかる。
「ヒット! 持ち主はスティーブン巡査のものですね……となると、三日前では本人ではないですね。誰かが乗り回していた事になるでしょう」
「おそらく、コーニーだな」
「ただし、こちらには車の放置の苦情は一切来ていませんね」
 クリスは目を見開いた。
「何? 確かに、あの場にいた者は警察は来てくれないと言っていたぞ」
 すると警官はパンと手を叩き、人差し指を軽く揺らして言う。
「ああ、おそらくメルさんですね。あの辺りの環境パトロールをなさってる方ですが、やはり記録にないですね。記録ミスも考えられません」
 そして、また何かに気付くと、さらに大きく指を揺らした。
「ああ、巡査長なら知ってるかも知れません。最近、メルさんに会ったとか」
 すると、クリスは署を飛び出していく。

 クリスの目的はメル。
 彷徨うクリスは住人達への聞き込みで、メルの家をなんとか探し当て、ドアをノックした。
 出てはこない。
 ドアノブに手を当てると、ドアがすっと開いた。
 鍵が空いていたが、そのまま部屋へ入ると、蛇と白い輪が屋内にあったのだ。
(コーニー!? 遅かったか……あいつは、何をしようとしてるんだ)
 一連の流れが頭を過る。
(そう言えば、ケニーはどこへ行った)
 クリスは、署に電話しケニーの住所を聞きだし、そのまま自宅へと向かう。
 しかし、到着し屋内に入った時、無残にも巡査の制服を着た遺体が横たわっていた。
 酷いことに頭がなくなっている。
 その時、クリスの電話がなった。
 ポケットをまさぐり取り出してでると、検視官からの電話。
「捜査官!? 詳しくはわかりませんが、活性化した原因は何らかのウィルスかと。ただ肉体を滅ぼすものはあっても、私の知るかぎり、生かすといったウィルスはありません。それと薬物反応が大量に検出されました。もしもし、聞いてます?」
 クリスは何かに目を奪われながらも、
「ああ、分かった。それとすぐに警官を何名か巡査長の家に向かわせてくれ。宜しく頼む」
 電話を切ったクリスは、目を奪われていた物に、手を伸ばした。
 それは巡査長の手に握られた紙。
 スッと引き抜いた。
 紙にはこう記されている……

『実験後の処理は抜かりなく。爆破での体内から高熱によるウィルスの処理。大量の薬物による中毒症状と見せかける。以上』

「なんだ、これは!」
 その時だ! 窓ガラスの割れる音と共に、一斉に火の手が上がる。
 まずいと思い、慌てて外に飛び出した。
 するとパトカーが到着し、無線により消防を要請。
倒れているクリスに警官が気付き、抱き抱えられてクリスは立ちあがる。
「大丈夫ですか? 一体何が……」
「僕にもわからない。ただケニーは死んだようだ。消火後の遺体の処理は任せる」
 そう言い残し、ヘろヘろの体を引きずるように、車に飛び乗った。
(あいつら、コーニーと何らかの関係だな。細菌兵器や生物兵器の真似事か! ナチスでも復活させるつもりか。コーニーは何らかの実験をし、処理のためスティーブンと共謀。C-4を盗ませた。だが何らかで感染したスティーブンを今度は爆破した。それを死者復活のまがい物で、覆い隠すつもりだったのか? 感染者を麻薬の大量中毒者とゾンビに重ねた。あのブードゥーはフェイク。ただのテロ集団のアジトか。ケニーで誘きよせ、証拠と一緒に始末するつもりだったのか)
 事件を頭で一本に繋げ、山の隠れ家へ急いだ。
 外は、いつしか雷が鳴りはじめている。
 雷光が雲から覗く。
 クリスは、外の不気味な世界に溶け込むかのように、屋敷に辿り着いた。
 車を飛び降りて、屋敷を眺める。雷光で闇に浮かぶ屋敷の姿を。
 クリスは、“ある人”から授かった銃を、車のダッシュボードから取り出す。
 それは、カスール使用の『レイジングブル』
 ここぞと言うときに使う銃なのだ。
 その銃を構え、一歩一歩近づく。
 そして扉を開けた。暗くて中はよく見えない。
 その瞬間! 雷が光る。ホールの中心に人影を映しだしたのだ。
 クリスはその影に向かい、強い口調で言う。
「コーニー! もう終わりだ。諦めろ。お前等のたくらみはすべて知った」
 そのまま、そろそろと人影に近づく。
「おとなしく投降しろ」
 すると、薄気味悪い笑い声をあげる。
「お前は何のすべて知ったんだ!」
 その瞬間、また大きな落雷と共に雷光が、影を映した。
「お、お前は検視官!?」
 薄気味わるい不適な笑み。
「馬鹿だなぁ俺がスティーブンで、くたばったのが本物の検視官なんだよ」
 クリスの頭の中の一本線が崩れる。
「そんなのは無理に決まっている。顔を署内に知られているぞ」
「そうだねぇ。でも私が赴任したのは、ずいぶん前だ。署内で本物の検視官を知っているのは、長いキャリアをもってる巡査長のみだ」
「そ、それでもおかしい。知ってるはずのケニーは何故黙ってた!?」
「どの道、気付かなくて当たり前なんだよ。なんせ、本物の検視官と私は双子なのだからねぇ」
 衝撃的な事実が、次々と明確に語られていく。
「じゃ、それに気付いたケニーを殺したのか?」
「さぁ、それは本人に聞きましょ」
 不適な笑みはさらに増したのだ。
「なぁ、ケニー。私がお前を殺したのか」
「……」
 すると、暗がりの影からケニーが現われた。
 何かに化かされたようなクリス。
「二人が共犯か。クソッ、なんて奴らだ。じゃ、あの遺体は? まさかメルさんか」
「ご名答!」
「ケニー、恥ずかしくないか警官として!」
「……」
「黙ってないで答えろ」
 すると、スティーブンが言う。
「言っておくが、私は組織のため使える人間は使い、後は処理する。それはケニーも例外ではない」
 突然で何が何やら訳が分からないクリス。
「なんの事だ?」
 ケニーはゆっくりと動きだし、近寄ってくる。
「アッ、アー、アァー」
 喉の奥を絞り込んだよいな不気味な声がこだまする。
 良く見ると、何かがおかしい。
 近づいてくる。
 ぐちゃぐちゃと音がなる。
 近づいてくる。
 顔の皮膚が崩れる。
 近づいてくる。
 それは、確実に腐食した体。
 そう、それはゾンビ化したケニーだった。
 もう、人の声は届かない。
 クリスは目の前の現実離れした状況に驚きはしたが、危機的状況に体は戦闘態勢へと動いた。
「くっそ!」
 クリスは、少し離れてレイジングブルで三発撃ちこんむ。
 ケニーの体は強力な弾を浴びたにも関わらず、仰け反るだけでジワジワと近寄ってくる。
 懲りずに二発! ぐちゃと右腕がもぎ飛ぶ。
 だが、まだだ近づく。
 クリスは逃げるスティーブンの姿を横目で追いながら、近寄ってくるモンスターから逃げるように屋敷の外へ飛び出したのである。
 外は強烈な雨が降りだしていた。
 そのせいか、クリスは飛び出した勢いで足を泥にとられ、転倒してしまう。
 さらに目に泥が入り、只でさえ強い雨のせいで視界が悪い。その上、山岳の独特の霧靄もでていた。
 最悪の状況。
 モンスター化したケニーが間近まできている。
 だがクリスは最後の一発をなんとか放とうと銃を構えた。
 しかし、その瞬間! クリスは自分の右肩に、激痛と熱さを感じる。
 思わず、銃を離してしまった。
「なんだ。弾か? 銃の弾が当たっている」
 クリスは、何故、自分に弾が当たっているのか解らなかった。
 すると、モンスター化したケニーの背後に、黒頭巾の男が立ち、一気に首もとに注射針を差し込んだのが見えた。
 次の瞬間、ケニーは動きが止まり、倒れヒクついている。
 すると、そのまま今度はクリス近寄って、頭に銃を突き付けた。
「安心しろ。ケニーには血清を射った。だがこの様子じゃダメだな……どうだ、あの時の自分の弾だ。ドノヴァン君。次はないと言ったはずだ」
 一瞬の沈黙。聞こえるのはどしゃぶりの雨の音。
「お前はまだ何も知ってはいない。知ってはならない」
 頭巾が影を作り、顔がよく見えない。
「奴らを止めるのは俺だ」
 男は顔を上げて、その隠れた顔に雨を浴びた。
「しかし、この件に関したお前は手を引かないだろな」
 しばらくの沈黙。
「Wahrheit!」
 突き付けた銃をはらうと、走りだし、霧と闇の中に消えた。

 その後、心配した警官達の数台のパトカーが到着。
「大丈夫ですか捜査官」
「あぁなんとか。それより、Wahrheitって意味わかるかなぁ」
 警官は首を上げ、誰かを捜し出し、ある男を見つけた。
「おいっハンズ。お前何ケ国語か話せたよな!」
「あ、はい」
「Wahrheitって単語、知ってるかぁ」
「えー……あっ、確かドイツ語で真実? 真実です!」
 クリスは、考えこむ。
「……真実」


  *
 一一数時間後。すべて終え、署に帰ってきたクリス達。
 ケニーの検死は終わり、血清でウィルスは消え、大量の薬物だけが残っていた。それにより、ほぼショック死に近かったらしく、歩いていたとは到底考えられないと言う結果だが、クリスもケニーの自宅が燃えた時、隠しもっていたケニーの薬物が燃え、その煙を吸い込み幻覚を見たのだという事になった。

『報告書 一一かくして、結果。
 現役警官ケニーのX.T.C(麻薬)所持法違反の捜査、および被疑者死亡……』
「これから、帰るんですか?」
 コンピューターで手助けしてくれた警官が、クリスの前に現われた。
「あぁ、すぐ始末書を提出しなくては」
 警官は、すっとクリスの前に手を差し伸べる。
「それではお元気で。クリス捜査官!」
「君の名前は?」
「ディミドリー……ディミドリー・バーソンです」
 ふたりは堅い握手で別れた。
 後に彼、ディミドリー・バーソンが優秀な刑事として活躍するのは、今は誰も知らない……

『僕は、これからも、この事件は続くものだと感じている。その時、僕はどうするのだろう? 真実の為……』
 一一クリス・ドノヴァン。


 カタカタッ、カタカタッとタイピングの音と共に、そんなことを考え、報告書を書き終えた後、そっとスイッチを切った。

一一一一一一一一一一 to be continued


ちょっと、分かりづらかったかな?会話もなんか緊迫感ないし。スミマセンでした。次、頑張りますので、今回は見逃して。













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