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何々九短編集

白黒映画のように

作者:蒼斃 啞生
 不思議な部屋だった。

 君はうっ血して倒れていたし、赤い口紅が青い顔と重なって厭に気味が悪い。赤い血液が青い床に流れて危うく滑りそうになった僕が一言目に。

「昔の3d映画のようだ」

 病だろうか。モスキートだろうか。血だまりの中央にはボールペンの青いインクがつるつると光ってまだらに広がる。試しにポケットから右は青、左は赤のレンズをした眼鏡をかけてみる。

 右目を瞑ると君の死体が消えた。唇だけが宙に浮いて、今朝届いたばかりの誰かさんのラブレターを読み上げる。

「拝啓これはラブレターです」

 つまらない。

 左目を瞑ると唇が消えて死体が再び眼前に現れる。紫のそれが消えてしまわないように左目を瞑ったまま一歩踏み出す。

「あっ」

 赤いものがべっとり僕の体に纏わりつく。そうか、これが君の血か。先ほど巡らせた思考の糸にひっ絡まって転んでしまった。

 右目を瞑ると死体と血は消える。しかし、唇が誰かのラブレターを読むのでできればそれはしたくない。

 左目を瞑ると姿を現した血だまりのせいで君のもとへと辿り着けない。

 両目を開けると目が回る。チカチカしてとてもじゃないけれど立ってられない。

 眼鏡を外す。君が血を流して死んでいる。

 僕はもう何もかも厭になって両目を瞑った。これで万事解決である。君は死ななくて済むし、ラブレターを聞かずとも済む。もうそれでいいじゃないか。

 僕の知らない、君のための愛の言葉も、君が死んだ事実も全部ひっくるめて真っ暗になった。黒いほうが太陽で、白いほうが闇だって暗がりから僕の死体が首を擡げて言う。

「お前は……」

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