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モノクロームの夢の中から  作者: 彩霞
1章 白枝亭での毎日
78/130

77 荷物の中身は何ですか?

「昼間の荷物?

 あれは剣なのよ…リックが気を使ってくれてね。」


今日も無事に食堂の営業も終わって、お茶で一息ついてるところで、気になってたマリーさんの荷物のことを聞いてみた。

そしたらこんな意外な答えが返ってきたの。


「剣…?」

「そう、わたしが冒険者だったころに使っていた剣を、リックに引き継いだのは知ってるわよね。

 冒険者を引退することに決めたときに、少しでもあの子たちの力になれればって思ってね。」

「ふーん…どうして冒険者やめちゃったの?」


尋ねると、マリーさんちょっと赤くなって、ふふふって笑ってクルトさんを見た。

クルトさんも落ち着いてお茶飲んでるみたいだけど、ちょっと耳が赤い…よね?


「まあ…いろいろあったのよ。」

「いろいろ?」

「そう、いろいろ…ね。」

「えー、聞きたいよー!」


お願いしてみたんだけど、マリーさんはまた今度ねって…

むー…聞きたいなー…


「そうそう、剣の話が途中だったわね。

 実はラルフとお父さんが協力して作ったものなのよ。」

「ラルフさんが?」

「そうなの。

 リックたちが材料を持ち込んで頼んでくれたの。」


何でフェリックスさんたちがマリーさんの剣を頼むんだろ?

…もしかしてマリーさん、冒険に行っちゃうのかな…?

それ、困る…


「マリーさん、どっか行っちゃうの?!」

「え?別にいかないわよ…

 あ…違うわ、別にこの剣は、冒険者になるためのものじゃないわよ。

 何ていうのかな、一種の備えみたいなものよ。」


備えっていっても何の備えなんだろ…

剣って…戦うことにしか使えないよね…

やっぱり何だか危ない気がするけど…


「最近、いろいろあるみたいでしょ。

 だから一応、何か身を守るためのものがあった方がいいんじゃないかって考えてくれたみたいなんだけどね。

 わたしが使ってた[無垢なる白イノセント・ホワイト]っていう剣は、とても珍しい素材で作られていて、普通に使われているような鉄なんかよりも軽いものだったの。

 それと同じ形で、できるだけ近いものを作ろうとしてくれて、いろいろと材料を探してくれたみたいなのよね。」


そうなんだ…よかった、マリーさんがどっか行っちゃうんじゃなくて。

フェリックスさんたちも、マリーさん想いなんだね。

何だか素敵な関係だよね!


「でも、使わずにすめば一番いいんだけどね。」

「あ…うん、そーだよね。」


前に聞いたときからも、タレイアに悪魔が来たことはないみたいだからちょっと忘れそうだったけど、増えてるんだよね…

タレイアが襲われたりしなければそれが一番いい、みんなが平和に過ごせるのが一番いいよね。


それにしても、マリーさんってどれくらい強かったんだろ?

白の舞姫プリマ・ホワイト』っていう名前でも知られてたみたいだし、ちょっと有名人っぽいよね…マリーさん自身はこの名前、あんまり好きじゃないみたいだけど。


「マリーさんって、フェリックスさんより強いの?」

「ええっ?!急にどうしたのよ…」

「だって、フェリックスさんたちみんなマリーさんのこと尊敬してると思うし、レックスさんだってマリーさんのこと、すごい人みたいに言ってた気がするから。」

「さすがミアはうちでがんばってるだけあって、人を見る目ができているみたいだね。」


びっくりしてるマリーさんをよそに、クルトさんが嬉しそうにそう言ってくれた。

がんばってるなんて言われると、ちょっと恥ずかしいけど、嬉しいな。


「まあ、マリーは純粋な戦士ファイターではなかったし、比べるのは難しいかもしれないね。」

「ほへ?」

「強さだけで尊敬されたわけじゃないんだと思うよ。

 …マリー、そんなに膨れなくても、ミアなら別にいいじゃないか。」


もーって言って膨れてたマリーさんも、笑ってるクルトさんを見てふぅっと息をついて、お茶をすすってる。

でも、にこにこしてマリーさんの方を見てるクルトさんの視線に負けて、自分で言うわよって話し始めてくれた。


「わたしは魔法も使えないし、武器だってまともに練習したことなんてなかったの。

 兄たちとチャンバラみたいなことはしてたけどね…

 だから、いざ冒険者になるときにどうしようかって思って、とりあえず最初は戦士として登録したの。 一緒にいる間に、兄から剣の使い方なんかを教えてもらってね。」


へー…それでもちゃんと冒険者してきたんだからすごいよね。


「ある程度、戦えるようになってきたところで、兄のいた冒険者のグループの人たちと一緒に連れて行ってもらえるようになったんだけど、そのグループに、舞踊士ダンサーがいたのよ。

「舞踊士?」

「そう、その人に呪舞を教えてもらって、途中でわたしも舞踊士に変えたの。」


職業クラスって変えられるんだ…

途中で得意なことが変わっても平気だね。

あたしは変える必要もないと思うし、冒険するかどうかもわかんないけど…


「ま、そういうことで今日のお話はおしまいね。

 遅くなる前に片付けちゃいましょう。」

「えー…」


マリーさんは、言うが早いか自分のカップを持って水場に行っちゃった…

何だか急いでる…?

前を見るとクルトさんが口に指を当てて、しーってしてる…あたしも口を押えてうなずいた。


「マリーが『白の舞姫』って呼ばれてるのは、舞踊士だったからなんだよ。

 でも、恥ずかしくてその話をしたくなかったんだと思うから、これは内緒だからね。

 さ、片付けに行こうか。」


そっか…何で恥ずかしいかはよくわかんないけど、今日はこれ以上お話聞けないっぽいしお片付け行かなきゃね。

そいえば…ジュブって何だったんだろ?マリーさん教えてくれるかなー?


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