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 綺夕が壊れ気味絶賛進行中。
 ほんとにかわいいやつですよね。
 これだから“完全無欠に見せかけて実は不幸系”キャラはやめられません。
幕開けは破壊音
「なぁ綺夕。あの部屋は?」
「第三会議室」
「あっちは?」
「生徒会専用トイレ」
「あの壁は?」
「なんかベルリンの壁みたいだよな」
「紫苓棟」
「「資料棟?」」


 ちっ。お約束のボケを。今絶対に資料のある棟だと思っている。
「―――紫。紅と青、両方いるから」
「うわー、安直」
「なにも思っていない癖に無理矢理言わなくて良いわよ、暁人」



 ―――――まったく。 一体どうしてこんな奴を案内しなければならないのだろう。
 腹腸が煮えくり返りそう。
 そもそも、どうして金持ちはこうも自分勝手なのだろう。
 僑苡はまだましだ。
 少なくとも、大人しく付いてくるから。
 でも、暁人は。
 それはもう、さんざんだ。
 人が案内しようとして、セオリーにトイレと学食から案内しようとすれば、何故か実験室の場所を知りたがる、実験室に案内していれば保健室へ行きたいだの、群がる女子生徒の方にやたらサービスするエトセトラ。
「綺夕、プールは!?」
 第一、学校ではその名前で呼ぶなと言ったはずなのに。
 しかも私の見る限り、暁人は会う度に性格が変わっているように思う。
 最初はすれてないというか、いかにも良家の子弟という感じを受けたのに、その翌日には少し砕けたというか、普通に近くなったというか、少し高圧的な感じも受けた。
 今日は。
 一言で言ってしまうならば、躾のなっていない大型犬。しかも最悪なことに、このままでは飼い主ならぬ調教師は私になりそうだ。



「緋月、顔色悪いけど、大丈夫?」
「―――――別に平気。風葉、は?」
 言いつつ、僑苡の顔を見上げると、案の定顔色をなくしていた。
「――――――暁人ってさぁ、結局何者なんだろうね」
 僑苡は私の問いに答えず、別の話を切り出す。
「もし生き別れの兄弟とかだったら、最悪ね」「じつは三つ子でしたって?そのときは実の親を恨むよ」
「生きてたらね」





 二人して遠い目で暁人を見ながら話をしていると、業を煮やした暁人が詰め寄ってくる。
「二人してラブラブしてんじゃねーよ」
 不機嫌丸出しなのは分かるとして、心なしか口調がぶっきらぼうに聞こえるのは、台詞のせいだろうか。
「「ラブラブって…兄妹に向かって……意味が分からない」」
「ハモるなっ!!」 なにをどう見たら、私たちが黄昏ているのを見てラブラブに見えるのか、不思議でならない。
「とにかく、あ・れ・は・な・ん・だって聞いてんだよ」


 そう言って暁人が指を指した方向を見たとたん、私は絶句した――――。



「俺の目にはー、あれはー、生徒会室のー、中でっていう以前にー、神聖な校舎の中でもあるこの場所でー、不純同性コーユーとかいうー男のケツにー、カマ掘ろーとしている現場に見えるわけでー、ありましてー、あれは同意で俺たちデバガメなのかー、俗に言うゴーカンなのかー、助けるべきかー、見ない振りかー、教師にチクるかー、どーするかー、聞きたいとこなんですがー…………綺夕?」
 ………。
 私は、もはや何に突っ込んだらいいのか分からなくなっていた。
 その一、暁人のしゃべり方。
 その二、それによるタイムロス。 その三、昼休みの生徒会室でコトに及ぼうとするゲイもしくはバイ。
 その四、強姦。
 その五、明らかに強姦されて今まさに裸に剥かれようとしていて助けを求めているにも関わらず、助けに入らずに傍観してあまつさえクラスの腐女子の子達に見せたら大喜びするのだろうかと現実逃避している自分。
 私は息を吐いて自分を叱咤すると、
「もちろん、助けるわよ」
 相手は理事長の孫だか何かだったと思う。 義父の伝説を打ち破るのが目標と公言してはばからず、男でも女でも不細工でもなんでも喰う悪食野郎だとか、一晩のうちに六人相手しただとか、不穏な噂は絶えず流れていた男だ。
 別にどうでも良かったが、まさか強姦までしていようとは。
 流石の義父でも、していないと思う。
 でなければ伝説になりようがない。


 私は呆れ果てながら、生徒会室のドアを開けた。
 ―――――否。



 蹴破った。






 修理代は幾らぐらいになるのだろうかと、頭のなかで算盤を弾きながら。






 それと、これで一段と騒がれるであろうことも、覚悟しながら。


 平和に生きたいなぁと、やっぱり黄昏て。



 蹴破ったドアは派手な音をたてて木端微塵に吹き飛んだ。
 さて、綺夕は修理代を幾らだと計算したんでしょう?
 気になるなあ…。

 なりません?


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