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  片 恋 作者:由卯
朝一番に彼の姿を探すのが、私の日課になった。
彼女2
 どうやら、今日は外勤らしい。
どうりでいつもよりシックな出で立ちだ。
主任がいつにもなくハイテンションなのが、気になる。
机の上で、ごそごそと準備をしながら、隣の席の子にさりげなく聞いてみた。

  「今日は、どこにプレゼンなの?」
  「外資系の会社らしいよ。
  主任のあのハイテンションぶりを見れば、分かるわ。
  結構、いいが揃ってるって噂よ。
  男って、みんな美人が好きなのよねっ」

 顔を歪めながら、そういった隣の子の語尾には、殺気が籠もっていた。
 準備をする手が、少し震える。

 −彼も、やはり可愛い子がいいのだろうか。−

 不安がどしりと彼女の上に覆い被さり、気分が次第にどんよりとした曇空に変わっていった。

 彼のいないオフィスは、蝉の抜け殻がごろごろと落ちている昼下がり公園ような、そんな寂しさがある。
先ほどの会話が、頭の中を走馬灯のように、ぐるぐると回っていた。
些細なことなのに、気にしている自分がもどかしい。

 −どおって事ないわ。−

 強がってみても、頭の中は、今朝の話で一杯だ。
頭を冷やそうと、オフィスを出て、長い廊下を歩き、休憩室に向かった。


 偶然、廊下で彼とすれ違った。
主任が何やら嬉しそうだ。プレゼンが成功したのだろうか。
それとも…

 重苦しい気持ちで一杯になりそうな気分を紛らわすため、濃いめのエスプレッソのボタンを押した。
珈琲の湯気がゆらゆらと上っていく。
いつもよりも珈琲が苦い。
気分で、こんなにも味が違うなんて、初めての経験だった。
【彼2】へつづく


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