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それほど激しくないのでR15にしませんでしたが、最後の方で血とか出てるのでご注意を。
Silver K
作:ゆゆき@RW


O,0.
 朝、学校に行く前に私はナイフを買った。ナイフといっても、肉を切るような大きな物ではなく百円ショップで売っている様な多機能なツールナイフである。ドライバー、つめやすり、せん抜きなどが付いていて、ナイフはそのオマケとしてついている程度のものだった。だが、私にはこれで十分だった。

1.
 何のためにナイフを買ったのか。決してニュースに出ているような連続殺人やクラスメイト殺害などの殺人事件を起こすためでは無い。いや、その逆にそれらから身を守るために、護身のために私はこのナイフを買った。
 護身の為に買ったがこのナイフで自身を守れる、なんて思っていない。ナイフで戦う術も知らなければ護身の術も知らず、柔道も空手も何もやっていない私がナイフを持って加害者とまともに戦えるとは思えない。また、戦おうとも思わない。ナイフを持っても護身にはならないふだろう。
 なら何故、と思うかもしれないがその答えは簡単である。ただ、このナイフを持てば自分が強くなるような錯覚に陥るからだ。どれほど強靭な相手でも鋭利な刃物で刺されたらどんな殺人鬼でもひとたまりも無いだろう。もしもそれを使いこなすことが出来れば、の話だが。
 そもそも護身とはいえ、こんなド田舎に問題を起こすものがいるとは思えない。となると、護身のために買ったナイフも襲う者が居ないので必要が無い。ただナイフを持っていると強くなった様な錯覚に陥り、そして安心する為に私は持っている。殺人鬼の居ない田舎に殺される不安は無いが、かといって「もしも」を考え安心出来ない私は安心するために持ち歩いていた。
 だがこれらの理由が凶器を持ち歩いていい理由にはならず捕まったときに面倒な思いをするのはわかっていたので、一日中制服の内ポケットに入れていた。そしてナイフの重みが私に安心感を与えてくれた。

2.
 いつもの様に授業を受ける。すべてがいつもと変わらなかった。教室は騒がしく、先生が何度注意しても静まらない。ゴミが教室中に散らかっている。これらもいつも通り。当然、私が殴られたり蹴られたりするのもいつも通り。そう、何も変わらない一日。ただ、私はナイフを持っていた。変わったのはこの位か。他にも先生の髪型が変わっていたが、それはどうでもいい。
 いつもの様に私はいじめられ、ただそれを耐えた。だが、何時か仕返しをしようとは思わない。というのは、私がいじめられる事に何も感じなくなったからだ。といってもいじめられて辛かったし、いじめられて辛くなくは無い。だがそれを返そうとは思わず、私はただクラス替えや卒業等の機会を待っていた。ただの弱者であるが、仕返しをする事によって強者に代わるわけでもなく、耐えることが強者なのである…というのは弱者の言い訳なのだろうか?とにかく今はいじめられ、そして学校が終わるのを待つだけだった。

3.
 放課後突然、風紀委員会の呼び出しがあった。早く家に帰ってもすることが無く、また参加しないと同じ風紀委員の人に迷惑をかけてしまう。その様な訳にはいかないので遊びの約束や笑い声の中、彼らとは違う方向にある五階の特別教室に向かった。
 委員会といっても特に重要な事について話すわけでもなく、ただ朝の挨拶活動について話し合い、そして解散した。この学校では毎朝風紀委員が生徒に挨拶をし、遅刻十分前の生徒に注意しているのだがその意味はあるのだろうか、との事である。当然、朝早くから学校に行きたい人は居なかったので効果は無いという事になり委員会は終わった。それだけの事なのにも関わらず効果があると思う人と話し合う事になり、長引いてしまったのである。

4. 
「何やってるのよ」
 委員会が終わり、外はもう暗かった。廊下には私服の生徒も居る。定時制あるこの学校では部活動も終わり、もう全日制の生徒は居ないだろう。早く帰らなければ、と思ったが教室に忘れ物をしてしまっている事に気づいた。なので取りに私の教室、最上階である六階まで向かう。六階は定時制の授業には使われてなく、全日制の先生も帰っただろうしこの階にいるのは私だけのはずだった。はずだったのだが何故かクラスメイトがそこにいた。
「お前こそ何やってるんだよ」
 聞かなくても、彼女の手にある鍵と財布で想像が付いた。だがそれを指摘するわけでもなく、私は突然ある事を思いついた。私をいじめている彼女を痛い目に合わせてやろう、と。
「別に何もしていないわ。どうでもいいでしょ」
 そう、今なら仕返し出来る。いじめられてももう仕返し等その様な思いは無かったが、彼女を見て何故かそんな気持ちになった。集団でいじめる彼女を今、この場なら仕返し出来る。当然その後に集団で酷くいじめられるだろうがそんな事は関係が無かった。ただ、泣かせてやりたい、後悔させてやりたいと思った。
「お前、その財布を盗んだんだな?」
 背を向けた彼女の手を掴み、私は言った。
「そんな訳無いじゃない。この財布、忘れたのかしら?」
 当然、毎日金を彼女に取られている私が彼女の財布を間違うわけが無い。そう、判っているのだ。判っているからこそ彼女にこうして聞いた。
「毎日金を取られて目の前で財布を出してしまってるのを見てるわけでもないしな、わかるかよ」
 そう、金をとられているだなんて事は無いんだ。だからこそ、だからこそ疑える
「財布を盗んだな」
「何言ってるのよ、帰るわ」
 手を振り解き、そして数歩離れて振り向き鍵を手にする。投げる仕草を見せたとき、私は胸にあるナイフを出して彼女に向けた。
「ナイフを放せ」
 彼女は驚き、ナイフに見えた鍵を落とした。そしてその瞬間、ナイフを彼女に向かって振った。刺さずに振ったのは致命傷にならない様に、傷つける程度で済むように。
 首筋に血が流れ、驚いて何も言えなかった彼女は何も言えなかった。そんな彼女に私は言った。
「あぶない、口封じにナイフで刺されるところだったな」
 鍵がナイフに見えてしまったのである。その為に私はナイフで応戦した。何もおかしい事は無い。彼女には動機もある。正当防衛だ。
「何やってるのよ」
 そういって彼女は叩くために手を挙げたが、私はまたナイフで傷つけた。これも身を守るためであって仕方が無い。そう、仕方が無い反撃なのだ。

E,5.
 傷つけ、彼女は逃げて行った。だが私に残るのは仕返しをしてやった、という充実感ではなくただ人を傷つけてしまったという後悔だけだった。
 右手には彼女を傷つけたナイフを持っている。ナイフは銀の輝きを無くし、赤く光っていた。それと何故だか持っているナイフが重く感じられる。安心する重さではなかった。鉄の重さと、彼女の血の重さと、罪の重さだろうか。

 そして私は彼女の血を自分の血で隠し、更に罪を重ねて、そして私は________







(End)


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