ゴミ
壁際のごみ箱に向かって投げたゴミが、綺麗な放物線を描いて消えた。
きっと、ごみ箱と壁の隙間に落ちたのだろう。億劫に思いながら手探りでゴミを探すと、なにか温かく柔らかいものに触れた。
むんずと掴んで見てみると、大きなゴミ屑が歯を剥き出して笑っている。
「殺さないで下さい」と、ぶるぶる震える屑に、俺は堪らない加虐心を覚えた。
「もっと、情熱的になれねぇのかよ」なんとなくそいつをライターで炙った。
「あちちっあつっあっつ!」涙目で転げ回るそいつを見て、俺はげらげら笑った。
もう長いこと仕事をしていないし、金もないから久しぶりの娯楽だった。
屑は恨めしげに俺を見ていた。
「なんだよ、屑の分際で、生意気な…」
言い切る前に、どこからともなくゴミが飛んできた。やがて大きな手が俺をむんずと掴み、持ち上げる。
俺だった。俺が俺をまるでゴミ屑を見るような目で蔑んでいる。
俺は精一杯歯を見せて笑った。話せば分かるはずだ。「殺さないで下さい」震えて引き攣る喉から必死に言葉を吐き出す。
「もっと、情熱的になれねぇのかよ」
そして ゆっくりとライターの炎が…。