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カウントダウン
作:yoshina



11


 ロンドンへ向かうチャーター機の中には、腹心の部下数人とパンドラのボスであるパイカル、つまり厚司が乗っていた。



機内は静まり返っていて、機体の音だけが中に響いている。
黒服の男が入り口・出口に控え、医療器具が中に整備されているため辺りはお世辞にも穏やかな光景ではなかった。


そんな中ベルモットが手前に置いたパソコンに目を遣り、隣で特別な寝台の上で寝ている男に報告する。


「ボス、スピリタスは無事に向こうのほうで落ち着いたみたいですわ」

「……そうか」


向こう、とはすなわち警察のこと。
あの子をこのまま組織の終焉まで付き添わせるつもりは無かった。


スピリタスと名づけ、真実を持ち続けて欲しいと願っていたのだ。
自分とよく似た状況へ追いやってしまった後悔の念も含めて。


厚司は足止めと称して平次を置いていくことによって、彼を警察にそのまま返そうとした。


彼が日本警察と繋がっていることは知っていたし、厚司の夢を実現させたいという気持ちが本物だということもわかっていた。

だから側近として側に置いていたのである。
平次を仲介させて組織の情報を警察に流す。
それのよって組織の暴走が食い止められるならそれでいいと思っていた。

例え自分が捕まったとしても。



しかしそれはまだ今ではない。




自分に反旗を翻そうと、虎視眈々と狙っているジン達を始末しない限り捕まるわけには行かないのだ。


それはジンのほうも同じことで、厚司がいなくなればアポトキシンの知識を本格的に持つ研究者がもう組織にはいなくなる。
あの薬を完成するまであの男は自分を生かし続けるだろうと考えている。


一方、隣で控えるベルモットは娘を殺した元凶であるアポトキシンを作った自分を少なからず憎んでいるし、薬を一般人に渡るまで流出させたジン達も憎んでいるだろう。
更に薬の研究を引き継いだ自分の娘、志保のことも憎んでいる。


だがベルモットは自分を殺しはしない。
殺せば反ボス派の人間によって薬が再び世界に蔓延する可能性があるのだ。






このまま、また暫く組織は存在し続ける。
その間にも組織のせいで被害に遭う人間は出続けるだろう。






「……ベルモット」

「なんです? ボス」











「君は私をいつ殺してくれるんだい」

















「……そうですわね、銀の弾丸が銃に込められた後で考えますわ」




「そうか」
















『将来は、おばあさんのように元気な人がたくさん居られるような薬を作りたいです』




はるか昔に書いた作文にはまだ何も知らない自分の夢が込められていた。
まるで宝箱のような、希望や夢がたくさんつまった薬を作りたかった。



皮肉にも、宝箱という名の組織に入りはしたがその中には夢は無かったのかもしれない。






厚司はゆっくりと目を閉じ、考えた。







夢も真実も、志保や平次に結果として渡すことはできたのだろうかと。


それがわかるのは自分が死んだあとかもしれないが、エレーナとともにそれを見守りたいと願った。






あと1話です。











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