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カウントダウン
作:yoshina



10


 この数日間ホンマ色んなことがありすぎたわ。
こうやって、病院のベッドで寝ているのがなんか変な感じする。
つい数時間前までは畳の上で死ぬこともできひんと思ってたのにな。

俺も悪運が強いほうや。



そんな俺とタメ張るくらい悪運持った工藤のやつが、病室から出て行く時


「俺が今こうして生きているのはお前が組織に入っていたからだ。お前がいなかったら今頃俺はやつらにFBIと共に殺されてた。……本当にありがとう」


とか言いよった。
あっちも照れくさいんか、そのまますぐにドア閉めてしもうたけどな。
あいつに面と向かってお礼言われたことなかったからびっくりしたわ。



でも、俺が今までしてきたことは無駄やなかったんやって思った。


こっちがお礼言いたいくらいやっちゅうに……







その数分後、親父とオカンが入ってきた。
工藤がドア閉めてすぐ廊下から少し声が聞こえてたから
何か会話でもしとったんかもな。

何話したんやろ?


入ってきた時にはオカンは目がもう真っ赤でな。

なんかこっちが悪いように思えて、すまんって言おうとしたら先に親父が頭下げてきた。

あの親父がやで?


初めて親父に謝られたわ。

FBIが突入してきたって連絡した時、一歩も動くな言わたのに勝手に動いて勝手に怪我したんやから、謝るならこっちのほうやろう。


やのに、


「お前を追い詰めてしまってホンマにすまんかった」


って言うんや。


一瞬何を言われたのかようわからんかった。
追い詰められてるとか、全然そんな自覚なかったんやけど。





……でも、親父やオカンが俺のことを大事にしてくれてると思えば思うほど苦しいと感じるときあったなあ。
なんでかはわからん。
ただ、思われれば思われるほど、幸せを感じられへん自分が憎らしかった。

自分の存在証明が出来んくて、辛くなって、それでも親に大事にしてもうて、それでも幸せになれへんくて。

ずっとそんなことの繰り返しやったのかもしれん。

それは片品さんが死んでからもずっとあったものや。


ほっとかれてたらほっとかれてたで、多分悲しいはずやろうにわがままやな俺も。


「ワシらはお前の倍は生きてるんや。たまには自分を責める前に親に当たってみい。いくらでも受け止めたる。あんま理不尽なもんやと怒るが、自分でどうにも出来なくなった時は頼ればいいんや。頼ることは悪いこととちゃうぞ」


親父の口調はいつもに比べて優しい感じやった。
思わず素直にうなずいてしもうたわ。


頼ることを悪いことやとは思ったことないけど、ええことやとも思ってへんかったな。


これで全てが解決できるわけとちゃうけど、それでも心になんか暖かいもんができたような気がしてん。





そのすぐ後やった。
隣で寝ていた和葉が目を覚ましたんは。
開口一番、


「平次は大丈夫なん?」


……なんか、あそこで死ぬ気やったのが申し訳なくなってくるわ。

オカンが駆け寄って「あのアホは隣で元気にしているで」って言うてた。
アホってなんや、アホって。

まあ死ぬ気でおったんやからアホには違いないか。


俺や和葉の容態を確認してからオカンが「和葉ちゃん、お父さんに目ぇ覚ましたこと伝えてくるな」って言って部屋を出ようとすると、親父も組織関連の始末でもう行かなかんとか言うて二人で仲良く出て行きよった。


……変な気ぃ使いよって、親父もオカンも。


二人が出て行くと、和葉がベッドから降りてこっちに近づいてきた。
心配そうに、寝ている俺を見て


「首、大丈夫なん? やっぱ痛い?」

「痛ないと言えば嘘になるけど命に別状は無いそうや。ちょお貧血気味やけどな」


そらあんだけ血ぃ流したら足らんようになるわな。
今もまだ少し頭くらくらするし。

でも和葉はその言葉聞いて心の底から安心したような顔を見せる。


「お前こそ大丈夫なんか?」

「うん、アタシは煙を少し吸っただけやし。寝たらもうすっきりしたわ」


笑いかけた和葉の手の甲には小さな火傷があったけど。
その怪我は俺を助けるためにつけた傷やねんな。


神妙な顔つきで手の甲見つめる視線に気づいた和葉は、それを隠すことなく俺の右手のそばに置く。
俺の右手の甲にも美國島でこいつにつけられた傷がある。
……これも助けようとしてつけられた傷や。


「おそろいやな。これであのときの借り返せたわ」


そう言って満足そうににっこりと笑いよった。

手の甲の傷てまたなんか変なおそろいやな。



でもその言葉ですまなく思ってた俺の心はなんか軽うなった。




俺も和葉に「そやな」って返してふと視線を和葉の背中越しにある窓に向けると、遅咲きの桜の花が舞っていたんや。

東京に来た時も、工藤のオトンに正体聞かれた時もそういえばここの桜はずっと咲いとった。
流石にもう散りかけやけど、日の出の光に反射して薄紅色の花びらが綺麗に舞っておる。





「そうや、和葉」

「何?」




何の他意も無く自然と言葉が口をついた。








「来年もまた、桜見に行こか」

「……うん!」





嬉しそうに涙を浮かべて頷きよった。

言うてから気付いたけど、俺から次の年の花見誘うの初めてやな。
去年も約束してきたのあいつのほうからやったし。


でもお前が言うたからやで。




ずっとこれからを俺と生きていきたいって。






俺もそう思うわ、和葉。
お前となら出来そうな気がする。


ずっとこれからって言われた時にわかったんや。
お前が俺の探し求めてきた存在証明やったんやって。

やから片品さんが言ってたように、どんな暗闇でもお前が側にいればいつか抜け出せる。




……ああ、でももしかしたらもうこんな来年の約束とかいらんのかもな。




だってこれからはずっと一緒におるんやろう?
















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