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カウントダウン
作:yoshina



5


コナンはあまりの驚きと衝撃で言葉が出せない。
ずっと苦しんできて、やっと理解してくれる人が現われたと思ったらすぐに殺されて。
しかも自分も瀕死に陥って。

彼がどんな気持ちで今までを生きてきたのか想像がつかなかった。

多くの真実が明らかになり戸惑うコナンを他所に、平次はどこかが麻痺したように淡々と過去を述べていく。


「関西の探偵が次々と殺されたのは、最初の被害者の一般人に全て関係しているからや。その一般人は次に殺された探偵の依頼者で、突然消えた息子の足取りを探してくれるよう頼んでたらしいわ。元々親子仲はあんまりよう無かったから、家出の可能性もあるし警察に言う前に探偵のところにきたそうや」


父子家庭だった依頼者は、毎日喧嘩していたとはいえ急に姿を消した息子を心配しある探偵に助けを求めた。
警察に言えば学校等にも悪影響が出る。
内密にことを運ぶために探偵を選んだのが、結局は親子を最悪の結末へと導いてしまうのだが。


「依頼された探偵は全く見つかる気配の無い依頼者の息子を不審に思い、知り合いの探偵達に
聞いて回ったんや。素人が完全に足取りを消して故意的に去ることなんか出来ひんしな。もしかしてバックに大きな集団が関わってるんとちゃうかとその探偵は予想し、思い当たる節は無いかと探偵達に聞いた」


幸か不幸か、その探偵は勘が良い方であった。
「大きな集団」という考えに行き着いてしまったのが運の尽き。
そして聞かれたほかの探偵たちの運もその時尽きていたと考えていい。


「つまり大きな集団とはパンドラのことで、その聞いて回った探偵の中には片品さんもいたってわけか」


その探偵以上に勘の良いコナンは話を先回りして発言する。


「そうや。後で聞いたところによると、依頼者の息子は運悪く組織の裏取引現場を見て殺害されてしまったらしいわ。……お前とよう似た境遇に陥ったんやな。で、その息子の父親が探偵を雇って組織を探りかけていると気付いた奴らが口封じにかかった」


疑わしきものは全て消去する。
それが組織のやり方である。

まず殺害された息子の父親が真っ先に殺される。
次には依頼を受けた探偵が。
そして更に……


「二番目の被害者である探偵が殺される寸前まで拷問を受けていてな、他にこのことを知っている人間はいるかと聞いたらしいわ」


言えば命ぐらいは助けてやるとでも言われたのだろうか。
瀕死の探偵は聞いて回った仲間の探偵四人の名を口走ってしまった。
その中には片品陸人の名前も入っていたのだ。
そこから連続殺人の幕は上がった。



「片品さんも危ないことやとは感づいていたんやろな。俺に組織を探っていることを一回も言わへんかった。でも、俺は五人目が殺された朝に親父から言われたわ」



――マスコミにはまだ未発表やし誰にも言うなや。……実は関西で探偵が次々に
  殺されている。被害者の共通点はわかってへんが、一応お前が懇意にしている
  その探偵にも気をつけるよう言っておけ



平蔵はやけに神妙な顔つきで学校へ行こうとする息子に忠告したのだ。


「その時初めて親父が俺に片品さんのことを話題にしたんやけど、そんなことは後回しや。学校終わった後すぐに事務所に行った」


父の素振りからして事態はかなり深刻だということを悟った彼は、何か嫌な予感がして急いで事務所に行った。
辺りはもう暗くなっていて、事務所の窓から明かりが漏れている。
明かりの存在を確認して安堵した後、階段を上がり扉を開けた。




すると開けた先には確かに片品がいた。





そう、片品という人間「だった」遺体が。




その凄惨な光景を思い出したのか、平次は点滴をつけていない左手を嘆くように自分の目に当てた。


「俺が行くともう全部手遅れやったんや。頭撃ちぬかれて死んだ片品さんが床に倒れてた。慌てて側に駆け寄ってな、頭真っ白になってあの人の名前を何度も呼んだんや」



――片品さん!!! 片品さん!??? なあ、嘘やろ!?
  なんで倒れてんねん!! なあ!!? 片品さん!!??





涙が溢れてきたことさえ気付かずずっと呼び続けた。
やっと会えた理解者だったのに。
どうして。
誰が。
何のために。





そして更に悲劇の連鎖が彼を襲う。


「片品さんの遺体と居れたんも少しだけやった。……叫び続ける俺のいる事務所を、あの人を殺した組織の暗殺者が証拠隠滅のために爆破しよった」

「な・・・っ!?」


背後から灼熱の熱風が来たと思ったら、いきなり吹き飛ばされそのまま意識を失ってしまった。
意識が途切れる瞬間、右目にかつて味わったことの無いような痛みを感じながら。



「去年の春に爆発事故で右目を失明したっていうのは……」



ボスの部屋でアポトキシンを飲んだと告白した彼が原因としてあげた言葉である。
あの時は普通にただの事故だと思っていたが、まさか組織の犯罪に巻き込まれていたとは。


「偶然、帰宅途中やった親父が片品探偵事務所で爆発が起こったと車の無線で聞いて、現場に駆けつけたときにはもう俺は扉ごと吹き飛ばされて壁際に倒れてたそうや。同じように駆けつけていた大滝はんらと一緒に、珍しく血相を変えて俺を何度も呼んでたらしいわ。そら、血だらけで右目の眼球には窓ガラスの破片が突き刺さっていたしなあ」


急いで救急車で病院に運ばれ、なんとか命は助かったが目だけは回復しなかったという。
彼は一ヶ月ほど意識が戻らなかったそうだ。


「片品さんはどうなったんだ?」

「爆発で体がバラバラになってしもうた。申し訳なさと哀れさと、俺を救ってくれた感謝の意を込めて、なんとか出来る限り体の一部を回収し親父はあの人の長野の故郷に墓を立てた」


平次が病院で眠っている間に全てが片付いていた。
焼け焦げた事務所は一掃され、片品の遺体はあまり意味は無かったが一応火葬を行った後故郷に戻された。
身寄りの者は誰も居なかったらしく、無縁仏になる前に平次の両親が引受人になったようだ。


結局、平次が片品の「助手」でいれたのは一ヶ月だけだった。

あまりにも短い出会いを失ってしまったショックのせいか、彼はアポトキシンを投与された後までずっとこん睡状態が続いていたという。


「俺の爺ちゃんが大黒連太郎と知り合いやったことは事実でな。二代目の厚司さんとも繋がりはちゃんとあったんや。だから下っ端のせいで大事な初代ボスの知り合いの孫を瀕死に陥らせてしまったと知った厚司さんは、謝罪の意味も込めてアポトキシンを渡してきた」


――どうせ何をやっても視力が戻らないなら、一縷の望みをかけて使ってみたらどうですか?


「その薬を爺ちゃんから渡された親父は、それを組織のものやと知っていながら俺に使たんや。組織と繋がることより俺の目を優先させてしまったんや」


鬼の平蔵も人の子。
犯罪組織が開発したとはいえ、それが息子の目を蘇らせるのならと
悪魔の薬に手を伸ばしてしまった。
母の静華も了承していた。


犯罪よりも息子のほうが大事だったのだ。


その選択を一体誰が責められるというのだろう?






私事ですが、実は今日が誕生日でして。
まさかこの日まで続くとは思いませんでした。(笑)
終結という名の続・後編みたいな形になってきました…
次話は非常にややこしいです。どうかついてきてもらえたら嬉しいです。











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