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優作と再会した次の日の朝、コナンは毛利探偵事務所へと帰って行った。
お土産の20世紀梨を持って。
博士は、小さな箱を持ってため息をつく彼の後姿がちょっぴり悲しかったが
それは自分の心の中に抑えておく。
哀はまだ起きていない。
昨日の火事のことで気疲れしてしまったのだろう。
彼女のベッドの側には父親の作文が置かれていた。
同じ頃、優作は久しぶりの我が家でコーヒーを飲みながら新聞を読んでいた。
この習慣はアメリカでも日本でも変わらない。
妻の有希子がいるときは彼女に淹れてもらうのだが、悲しいかな、今回彼女は
この帰国をしぶしぶ断念している。
カナダにいる友人の夫が急死したという知らせが届き、葬儀に出席せざるを得なくなったのだ。
「あなた、新ちゃんを頼んだわよ!」と念を押しながら彼女は渡航した。
今回の帰国の真意を知る彼女は息子のことが本当に気にかかって仕方ないのだろう。
一つ一つの行動を慎重に行わなければ、あらぬ方向に事態が動く可能性もある。
彼はため息をつきコーヒーを置く。
そしてパンを買うのを忘れていたなと気付いたが、その時インターホンが鳴った。
玄関まで出るとそこには息子のコナン、いや新一がいて。
「やあおはよう。こんな朝早くどうしたんだ?」
「しらばっくれんじゃねえよ。昨日はもう夜遅かったし何も聞かなかったけど、父さんがこっちへ帰ってきたのは仕事のためじゃないだろ。一体何の用で帰ってきたんだ」
息子をだましきれると思うなよ、とコナンは父親をにらみつける。
優作はそんな彼を見下ろして、しばらく見ない内に随分うちの子は生意気になったなと
的外れなことを考えた。
そして苦笑する。
「やれやれ、そういう単刀直入で切り込む性格は誰に似たんだか」
「どっちかっていうと母さんだろうな。父さんはもっとねちっこいし」
今もこうやって話を逸らそうとしてるしな、と付け加える。
「はは。……確かに私が帰ってきたのは仕事もあるけど、お前に関することもある。
お前をほったらかしにして何もせず海外を渡り歩いてたわけじゃないからね」
「やっぱり組織関連か。何を掴んだんだよ」
「掴んだ、というより少し気になることがあってね。インターポールの友人がいると以前話しただろう? その彼を介して特別に、日本にいるFBIの動きを教えてもらったんだ」
「じゃあ知ってるのか。ジョディ先生たちのことを」
「話伝いにね。だが私もはっきりと何かを知っているわけじゃない。そういう意味ではお前のほうがもっと知っているだろう。まあ、安心しなさい。何かわかったらちゃんと教えるから」
「……本当だろうな」
「もちろんだとも。そのかわり、お前も何か情報掴んだら父さんに教えるんだぞ」
その言葉に少しだけコナンの顔つきが曇ったものになる。
やはり、もうすでに何か気になることでもあるのだろう。
「父さんがこっちにいる間だったらな。いつまでいるんだ?」
「しばらくはいるつもりだよ。本当に仕事の用もあるしね」
「そうか。あまり無謀なことするんじゃねえぞ。じゃあ、俺は一旦蘭のところに戻るから」
「ああ。しかし、いい身分だねえ。好きな子と一つ屋根の下なんて。いや、一つ壁越しか」
「うるせー! 好きでやってるわけじゃねーよ!!」
コナンはそう言い捨てて不機嫌そうな、でも少し赤い顔を隠すように踵を返して、
来た道を戻っていった。
小さな体で箱を持ち、重そうな足取りである。
そんな息子の背中を優作は無表情で見つめていた。
コナンが工藤家を後にして数時間後、まだ少し肌寒い強風の中
黒いコートを羽織り優作は家を出た。
メンテナンスをしておいたバイクでとある病院に向かう。
杯戸中央病院。
FBIがキールこと水無怜奈を確保している病院だった。
最上階のVIP専用病室のエリアに、特定のIDカードを見せて進んでいく。
そしてあらかじめ指定されていた番号の病室の前に行くと一人の外国の女性が立っていた。
「工藤優作と申します。あなたがミズ・ジョディですか?」
「ええ。はじめましてミスター・工藤。ジョディ・スターリングです。あなたのことはインターポールから伺っているわ」
互いに名を名乗って優作とジョディは握手をする。
そして彼はいたずらっぽく笑った。
「私のことをちゃんと調べなくていいのですか? 完璧に変装できる人物があの組織にはいるのでしょう?」
暗に、あの女優のことを指している。
ジョディが以前痛み分けをしたあの女のことだ。
彼女はそんな問いに苦笑した。
「いつもならそうするけどね。……でもあなたはクールキッドと雰囲気がとてもよく似ているわ」
「なるほど」
言外に、彼女がコナン=新一だと知っていることがわかる。
でも新一ではなく「クールキッド」だと呼ぶあたりに彼女の優しさが垣間見えた気がした。
彼女はそのまま優作を指定した病室のとなりの部屋に案内する。
そこには誰もいなかった。
「知っていると思うけど、あの病室には水無怜奈がいるわ。まだ目を覚まさないけど、組織が彼女を探しているという情報もあるから、ここの警備はかなり頑丈に固めているの」
「そうみたいだね。見る人が見たらわかる、独特の雰囲気を持った人間をここへ来る途中何人か見かけたよ。君の仲間だろ?」
「ええ。……それで、インターポールによるとあなたは私達に色々聞くことがあるそうだけど?」
「ああそうだった。君みたいな美しい人を見たせいですっかり忘れていたよ。込み入った話になるけどいいかい?」
「今みたいに余計なお世辞を入れないならね」
「OK。君達、というより君に聞きたいことがあってね……」
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