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カウントダウン
作:yoshina



26


 コナンを抱えたまま赤井は階段を登りきり一階へと足を踏み入れた。
その途端灼熱の業火が三人を襲ってきたので、慌てて横へそれる。
辺りには火の海が広がっていたのだ。
恐らく銃撃戦で、どこかにあったオイルに弾が当たったのだろう。


「離せっつってんだろ!!」


そんなことはお構い無しにコナンは、なんとかして腕の拘束から逃れようと未だに手足をばたつかせていた。
コナンが動くたびに肋骨に痛みが走り、赤井は顔をしかめる。


「もうやめなさい工藤君! ここから出るのが先決よ!」


哀は赤井を気遣ってコナンを諌めた。
彼の気持ちは痛いほどわかっていたが、ここで粘られても仕方が無い。
赤井も彼の悲しみが伝わってきたからこそ暴れられても文句を言わないのだろう。


「出るにしても、ここをくぐり抜けない限りは無理だな……」


コナンを除く二人が、目前に踊る業火を目の当たりにして思わず怯む。
しかし止まっている間にも火は徐々に彼らを追い詰めていく。


――絶対に死なせたらあかん


先ほどの少年の言葉が蘇った。
何としてでも彼らを生かせることが少年へのせめてもの恩返しだ。


「少しの間、我慢しろ」



その言葉と共に哀は再び赤井に抱えられ、ジャケットにコナンとくるまれる。
そして一度息を吐いてから赤井は火の海の中に飛び込んだ。
哀は我慢しろと言われた手前抵抗しない。

だがくるまれているとはいえ、灼熱の空気が体中に染み込むのさえ気付かずコナンは叫び続けた。



「ちくしょぉ!! ちくしょぉぉーーー!!!」





















一階の炎が地下へも進入し始めた頃、廊下で二人の男が膝を地面に打ち付けて倒れこんでいた。
赤井達を追跡していた構成員達だ。
死んではいないが気を失っている。
銃剣の取っ手部分で急所を突いたのだ。


「全く、世話のかかるやっちゃな」


肩を抑えながら、平次はその二人を落下の収まったスペースへと引きずっていき投げ込んだ。
これで放置しておいても死なないだろう。
辺りを見回すと今のところは誰も居ない。
気が緩んだ拍子に肩に痛みが走る。
耐えかねて蹲り掛けたがそれは突然襲ってきた熱風によって阻まれた。


「上で火事が起こったんか……!」


熱さに体中が悲鳴をあげる。
急いで火のない方向へと足を向けた。


しかし、不意に後ろから強い力でコートの襟を引っ張られた。
強引に地面へと引きずり倒される。
無理やり回った視界に映ったものは、この業火にも劣らないほどの黒き熱。


「好き放題やったものだな、スピリタス……!」

「ぐっ……」


馬乗りになる形でジンが平次の首を締め付けた。
油断していたせいで思うように抵抗が出来ない。

ジンもFBIやSATと戦いながらこの建物にあるパソコンをすべて壊していたので、体の怪我は酷い箇所が多かった。


しかし、この体勢ではどちらが有利かは明白。
苦しさで顔をゆがめる平次の首を、血だらけの両手で絞めていく。


「お前が本心から組織に忠誠を誓ってねえのはわかっていたさ……!だが、それ以上にお前の一族を利用することのほうが利益があったから今まで放置してきたが――」


苛立っている様子で歯をぎり、とかみ締めた。


「このタイミングでSATを呼んで利益の全てを食らうとは思わなかったぜ」


更に締める両手に力を入れたが、平次も必死に彼の腕をはがそうともがく。


「別に食らおうとは思てへん……! お前等がブレインを開発しようとしたからやろ…っ!」

「ハっ! 俺らがしなくてもそのうちこの国もやっていたさ」


嘲るかのように黒の男は冷たく笑う。
呼吸困難になりながらも平次はそんな彼をにらみつけた。


「そんなことっ……あらへん!」

「この期に及んで綺麗ごとは無しにしようじゃねえか。お前だって罪にならないなら、したかったはずだぜ。あの探偵を蘇らせようとなあ!!」


平次の目が見開く。
ジンは弾切れの銃は使わず右手で彼を押さえつけながら左手でナイフを取り出した。


「お前の首を持っていけばボスもブレイン使用を認めるだろうよ!」


銀色に光る刃が平次を襲うとした背後から炎の熱風が再び訪れる。
全身が熱く焼かれそうになり彼の頭はスパークした。


そして同時にフラッシュバックが襲う。
あの絶望の記憶が蘇る。














かつて味わったことの無い充実感と暖かい気分。


いつものように事務所に行くとあの人が倒れていた。


学生かばんを床に落として走り寄る。


頭を撃ち抜かれ完全に事切れていた。


叫びながら彼の体を揺さぶったが反応は無い。


とめどなく涙があふれ彼の名前を呼び続けた。



その瞬間、背後から爆発の灼熱が自分達を襲った。











そう、今と同じ紅蓮の炎が。



















「うっ……うああああああああああああ!!!!!」















肉を切る鈍い音が崩壊と共に掻き消えた。


















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