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カウントダウン
作:yoshina



24


扉から入って左側の壁際にはSATが、右側には”パンドラ”の構成員が互いに銃を持って対峙していた。
遠山の「工藤新一・宮野明美殺害」という言葉にジンが反応する。


「工藤新一と宮野明美、だと?」

「ああそうや。今まで犯罪の証拠は全部潰してきたと思って油断してたようやな。だがこの二人だけに関してはちゃんと証人がおってなあ」


まさか。


コナンは彼の言葉を疑った。
自分がジンに殴打された時、周りに誰もいなかったはずだ。
宮野明美が殺されたときも。

二つの事件を知っているのはコナンである自分だけ。


――俺だけ?


コナンははっとする。
もしかして彼の言う証人とは「江戸川コナン」なのか!?




「フン……ならこのFBIの襲撃に合わせたのはやはりあの男のせいか」

「その辺に関して教えたる義理はないわ。さあ、銃を捨てておとなしくしろ。ほかの構成員も別の部隊が確保してる。この状態で勝てるとはお前も思わへんやろ」


遠山の言うとおり、構成員に押されていたFBIの面々は加勢に来たSATのおかげで助かっていた。
このタイミングといい人数といい、ここからパンドラが劣勢を覆せるとは考えられない。
だがジンにはどうしても譲れない動機があった。


「死んでも薬と”ブレイン”のデータだけは渡せられねえな」


彼の目での合図とともに部下が銃を構える。
彼らに怪我や死という恐怖は無いのだ。


「悪いがこちらも死んでもそのデータを奪わんとあかんしな」


遠山の言葉を皮切りに迷わずSAT部隊も構え再び銃撃戦となる。

棚に並んであった薬品が耳につく音共に割れ砕けていった。
コナンと哀はその破片に当たらぬようデスクの下で身を屈めるようにしている。


FBIとは違いしっかりとした武装で突入してきたSATはさすがに構成員達に引けは取らない。
むしろ優勢だ。

ボスの部屋の時よりも凄惨たる光景に変わりつつある医療室を目で追いながら、ジンはある考えを胸に弾丸の雨を掻い潜るようにして入り口に向かった。


「!」


だが出ようとした彼の前に赤井が立ちふさがる。
向こうでの戦いは切り抜けたらしい。
赤井は中にいる日本警察の腕章のついたSATに驚いたが、すぐにジンに視線を戻す。
反射的に至近距離の彼に銃を突きつけた。


「観念しろ!」


前にはFBI、後ろにはSAT。
逃げ場が無い状況にも関わらず黒服の男は歯を見せてにやりとした。


「――奪われるくらいなら壊したほうがましか」



彼が笑った瞬間だった。
懐に忍ばせた「あるもの」に手をかけると同時に、今までの中で最も大きい振動があたりに響いた。
それとともに天井がばらばらと落下してくる。
完全に崩落する衝撃だ。


「な、何が壊れたの!?」


足元を襲った地響きに正気を取り戻した哀が思わず叫ぶ。
コナンと赤井にはそれぞれその衝撃に最も望ましくない考えが思い浮かんだ。


――まさか柱を爆破したのか!?


爆弾一つで崩壊するなら柱を壊すしかない。

足が浮くほどの振動が床に響き渡る。


「くっ!」


赤井は負傷した体を地響きで思わず地につけそうになってなんとか持ちこたえさせたが、再び前を向く頃にはジンの姿はなかった。
彼が舌打ちをして部屋の中を見ると構成員達がまだ発砲を続けている。
ウォッカはさっきの爆発とともにジンと同じくどこかへ消えてしまっていた。


「お前らもあきらめて降参せえ! このまま死ぬ気か!」


崩れる部屋の中でかまわずSATに襲い掛かる構成員たちに遠山が叫ぶ。
そして足元の子供達に目を遣り、次に部屋の扉際に立っている赤井に顔を向けた。


「赤井秀一! この子らを外まで頼んでええか!!?」

「あ、ああ!」


赤井を目に留めた彼はデスクの中に展開上い続けるしかなかったコナンと哀を託すよう頼む。
なぜ名前を知っているのかはこの期に及んで気にはしない。
彼は迷わず了承した。

そのうなずきに満足した遠山はコナンと哀にできるだけ優しい声をかける。


「さ、ここは任せてはよあの男と行き! 外に出たら警察が待機しとるしな」


弾丸が頭上を飛び交うのを気にせずコナンが遠山を見上げた。


「なあ、誰がSATを呼んだんだ!? それに殺害容疑って……」

「それはここを出たらいくらでも話したる。――赤井さん、頼みます!」


コナンの必死の質問を早々に切った彼の促しに赤井は脱出するべく二人を抱え込んで、すばやく廊下へ出た。
そしてそのまま走ろうとするがそれは断られる。


「赤井さん、両腕撃たれて肋骨折れてんだろ? 抱えられるより自分で走ったほうが安全だと思うぜ!」

「このままだと腕から落とされかねないしね」

「……なら今度こそ寄り道せずについてこい」


再び三人はコンクリートの落下を頭上にしながら出口に向かうことになった。
もう地下の崩壊は目前であった。













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