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カウントダウン
作:yoshina



23


ジンがドアを開けるとそこには暗闇の世界が広がっていた。
心電図の電子音だけがその部屋に響いている。

彼は一帯を一瞥すると向かって右側に視線を移した。
比較的広い医療室の一角にある、カーテンで仕切られたスペースに足を進める。

そしてそのカーテンを何のためらいも無く引いた。
開けられた中に居たのはベッドで眠っている重傷の構成員。

酸素マスクをつけて苦しそうに寝ている。


「兄貴、一体この男に何の用が?」

「アレを出せ」

「はっ」


ウォッカの質問は無視して、側の部下に言っておいた「例の物」を出すよう命じた。
部下が急いで懐から出したのは金属探知機。
恭しくジンに渡すと、彼は眠っている男の上に掲げる。
迷うことなくそれを男の負傷した腹部に当てた。
するとピピッという電子音が発せられる。
腹部に何かがあるらしい。


「でも兄貴、これは中に残ったままの弾丸じゃないんすかねえ?」


報告で聞いたところでは、この男は赤井に撃たれて弾を摘出することなくここへ運ばれてきたとされている。
この探知機の反応はそれではないかと予測するのは不思議ではない。
ウォッカは目の前の男の行動が全く読めず戸惑った。

しかしジンは探知機の反応を暫く眺めた後、探知機は部下に押し付け徐に銃を取り出した。
左手に持った銃を男の顔に向ける。


「あ、兄貴!?」


突然銃声が数発鳴り響いた。


一瞬人のうめき声が聞こえたが、それはすぐに消え去った。



「な、何で……」


ウォッカはいきなりの暴挙にうろたえを隠せない。
後ろに居る部下達も冷や汗を流しながら発砲したジンを見た。
だが当の本人は顔についた返り血をふき取ることなく、その銃をポケットに仕舞う。
そして顔面が跡形も無く潰れた男を冷ややかな目で見下ろしながら告げた。


「こいつが元凶だったってわけだ」

「げ、元凶!?」

「この襲撃の案内をこのゴミがやらかしたってことだ」



未だ彼の言うことが掴みきれないでいる部下達に見せつけるように、彼は探知機の反応があった腹部に手を伸ばす。

なんとも言えない残虐な音が断末魔となった。







「ひ……っ」








この場所では異質を放つ一際甲高いかすれ声が部屋に小さく響いた。
哀の悲鳴だ。
ベッドの反対側にあるデスクの下にコナンと隠れていたら、突然目の前に人間の一部が飛んできたのだ。
慌ててコナンが彼女の口を塞いだが、もう遅い。

彼女の恐怖はジン達にも聞こえてしまっている。


「だ、誰だ!?」

「……ほう、こんなところに残党が居たか」


ジンの位置からはデスクの側面しか見えない。
だがそこに誰かが潜んでいることは一目瞭然だ。

彼が顎でデスクを示すと、そこに向かってウォッカ達が一斉に銃を構えた。



――どうする!?


コナンは哀の口を片手で塞いだまま、一気に絶体絶命となったこの状況の打開策を高速で考えた。
逃げるにしろ立ち向かうにしろ、ここを這い出なければ何も出来ない。

しかし出た瞬間撃ち殺されるのは確実である。



「ゴミに取り付けた発信機でも辿って来たのか? FBIはもうすぐ全滅できるが、これのおかげで研究所はもう使えねえ」


抑揚の無い言い方だが、ジンの目には確かに怒りの色が混じっていた。
男の腹部から無理やり引き出した、発信機付きの弾丸を床に落として踏みにじる。
彼はFBIに襲撃された時には既に、一人だけ負傷した構成員に疑惑の目を向けていたようだ。
自分の裏をかいて発信機を弾丸に埋め込んだ赤井に何とも言えぬ憤怒の感情が湧き上がる。


「そこから出て来い。聞きたいことがある。さもなくばそのまま机越しに蜂の巣にしてやる」


哀はガタガタ震えたままだ。
恐怖の対象である男にもうすぐ殺されると感じて錯乱状態になっていた。

コナンも非常に焦ったが、ここで出ないままだとすぐに殺されることはわかっている。
出たとしても恐らくFBIの内部情報を聞きだした後に殺すつもりだということも。


――なんとかしてこいつだけでも逃がさねえと……!


傍らで震える少女に目をやり、自分を囮にして彼女を外に出すしかないと結論を出す。



「どうやら出る気はないようだ。――やれ」



ウォッカ達が引き金に指を入れる。

その音にコナンが覚悟を決めて姿を現そうとしたその時だった。




ものすごい爆音と共に彼の目前で側の壁が吹き飛ばされたのは。




デスクのおかげでコナンと哀にはその壁の破片は飛んでこなかったが、ジンたちにはその数多の瓦礫が襲ってきた。
爆破の衝撃で白い砂埃が辺りを纏う。


「な、何だっ!?」


ウォッカ達が体勢をなんとか持ちこたえさせて前を見るとそこには武装した集団があった。








「SATや!! おとなしくせえ!!!」



日本警察の紋章をつけた武装集団が黒服の男達に銃を向ける。




――と、遠山刑事部長!?



目の前に立つ見知った顔を見てコナンは驚く。
そう、その武装集団の先頭にいたのは大阪府警に居るはずの遠山刑事部長だった。




「国際犯罪組織”パンドラ”!お前等を銃刀法違反もとい――」



壁側からだと丸見えなコナンと哀に一瞬だけ視線を向けた後高らかに言い放った。





「工藤新一、宮野明美両名の殺害・・容疑で逮捕する!!」









SAT…警視庁特殊急襲部隊











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