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カウントダウン
作:yoshina



後編:1


 国会議員暗殺事件と水無怜奈奪還計画が未遂に終わった次の日の朝。
コナンは優作が出て行った工藤家へ一人で来ていた。
いや、「戻っていた」と言ったほうが正しいか。
自分の家なのだから。

ちなみに平次は和葉とともに横浜に行っていた。
横浜に自分の母方の祖父が住んでいるそうだ。
以前言っていた、あの色黒の遺伝を持ち合わせた方なのであろう。

「久しぶりに俺らに会いたいそうやし、ちょっと行ってくるわ」と言って二人でバイクに乗って行った。
平次の中型バイクや、二人の東京までの交通費はほとんどその祖父から貰っていたらしい。
鉄道会社や航空会社の大株主で、優待券が山ほどあるらしくそれを平次にあげていたそうだ。
あの東京へ来る頻度を考えると年間パスを貰っているのかもしれない。

平次の両親も、祖父がもう高齢で使う機会の無い優待券を孫にあげていることは大目に見ているのだとか。


――どうりであの男が東京に来るのにためらいが無いわけだ。


親からゴールドカードを貰っている自分が言えた義理ではないが、あの男も親からは厳しくされている分祖父に随分甘やかされているのだろう。



そんな朝のやりとりを思い出しながらスペアキーを鍵穴にいれ、扉を開けるとあらかじめ予想をつけていた部屋へと向かった。
優作の書斎部屋である。

コナンは自分の父親が帰国して調査をしているものに疑問を抱いていた。
帰国してすぐFBIに会いに行ったり、かと思えば次の日は東京を出てどこかに行っている。
一体どんな手がかりを掴んで父親は調査をしているのかと気になったのだ。
ちゃんとした事実がわからない限り、自分に言うつもりは無いと優作は言っていたが、恐らく何かしらの真実は手にしているだろうとコナンは踏んでいる。
あの推理に関しては完璧超人な彼がはっきりとした事実の無いまま動くとは思えない。

鍵のかかっていない書斎部屋の扉を開けてすぐ机の引き出しに歩み寄る。
小さな背を精一杯つま先立ちして上からどんどん開けていった。
様々な書類が中にどっさり入っている。
アメリカに行く前から置いてある物が大半だ。
しかし彼が使う部屋といえばこの書斎か居間しかないから、帰国して何かをするとすればここしかない。

優作が掴んだ事実の何か手がかりがあるはずだ。

やがて一番下の引き出しに手をかけて中を覗き込んだ。


「……!これは……」


真新しい透明なファイルに入った何かのコピーが数枚出てきた。
何かの名簿のようだ。
中身を取り出しざっと全てを見る。

ファイルに入っていた紙は二種類あった。
一つはまだ新しい名簿をそのままコピーしたもの。
もう一つは随分古い名簿を見やすくするためカラーでコピーしたもの。


後者の名簿には覚えがあった。


「美國島の儒艮祭りの名簿じゃねえか」


平次に誘われて行った人魚の住む島と言われる美國島。
そこで起こった連続殺人事件で犯人に見せてもらった、祭りの参拝者歴代名簿だった。
この祭りとは、永遠の命を授かるという言い伝えがある有名なものだ。
毎年名だたる著名人がお忍びで来るらしく、村の皆で冷やかしながら名簿を見ていたという。
殺人事件でその永遠の命も薄れてしまっただろうが。


――しかしなぜそんな名簿を父さんが?


いぶかしみながら以前も見たことのある名簿を一つ一つ見ていく。

事件の時は平次と手分けして名簿を探っていた。
自分は比較的新しいほう、平次は昔のほうから見ていたのを覚えている。

優作のファイルにはそのどちらも載っていた。
しかし数枚なので、限定してコピーしたということなのか。


「一体何があるっていうんだこれに……」


平次が見た、古いほうの名簿には数十年前の国の権力者が名を連ねている。
例えば、

元外務大臣・夷千恵蔵
官房長官・大黒連太郎
日銀総裁・豊田敬二

平次曰く「昔、日本を動かしとったお偉いさん」がたくさん載っていた。


「俺らが生まれる前の権力者しか載ってないな。それでこっちが俺も見た最近の名簿か」


二度目と言うことで、パラリと表返してなんとなく眺める。
が、見知った名前を見つけ凝視した。


「宮野……志保」


そういえばあの事件の時もこの名前は見つけたが、「永遠の若さと美貌を欲しがるタマじゃねーし」と素通りしていた。
しかし、優作もこの名簿を見たということはやはりこの「宮野志保」は灰原のことなのか。
隣に書いてある名前にも注視する。
まさかと思ったが、隣の名前ももしかすると。


「魚塚三郎、黒澤陣……っておいこれ……!!」


宮野志保が灰原だとすると、隣はウオッカとジンではないのか。


「永遠の命を司る祭りに組織が調査に行ったのか……?」


前々から、組織が命に関わる何かを作っていることは大体予想していた。
灰原が時々漏らす言葉からもそれは受け取れる。
なので、それに関連してこの祭りにも調査に行ったということは想像にたやすかった。


「じゃあもう一つのほうの名簿は……」


その勢いで真新しいほうの名簿を手に取る。
自分がまだ見たことの無い名簿だったが、載っていた名前は見知ったものばかりだった。

毛利小五郎、鈴木園子、と並んで蘭の名前が無いところからするとベルモット絡みで起こった幽霊船の参加者名簿のようだ。
事実、園子の隣には「工藤新一」と達筆な文字で自分の名前が書いてある。
そしてその横には「明智文代」。


「服部と母さんだな」


自分に代わって幽霊船に乗船してくれた友人の名前と、それに協力した母の偽名が載っていた。
幽霊船の名簿には他にも大勢の名前が書かれていたが、全員コナンの知らないものたちばかりであった。
なぜこの名簿を優作が手に入れたのかはわからないが、美國島の名簿にはコナンも思い当たるところがある。

宮野志保、ジン、ウォッカの名前。

父は組織の行動を探っていたのかもしれない。
そしてそんな名簿を自分の息子に見られるような場所に置くところから、自ら言わない代わりに見つけられても構わないとでも思っていたのか。

とにかく、コナンは当の「宮野志保」にこの名簿のことを聞こうと隣の家に向かうことにした。



コミックス28、42巻参照











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