サンはステファニー教授の部屋に戻った。
部屋に戻るとバエルがいた。解毒薬ができた様だ。
レイナとシオンは解毒薬を飲んで治っていた。
レイナが話しかけてきた。
「あっ、サンさん。話は何だったんですか?」
サンは無視して部屋の隅にあるソファに座る。
話すのも面倒なのでそのまま黙っていようかと思ったが、
隠している必要もないしそのまま押し通せる物でもない。
話す事にする。
「………ソレイユの話だ」
「ソレイユの……!」
その場が静まり返る。
ファルが真剣な面持ちで聞いてきた。
「……どんな話だったんだ?」
サンは腕組みをし、静かに話す。
「………ソレイユが、このオトマルガ地域でも活発に動き出した。
オトマルガ地域の町は殆どが壊滅したらしい」
「何だって!」
ファル達は衝撃を受ける。
オトマルガ地域でソレイユの話を聞いたのは、ほんの少し前の事だ。
これほど猛烈な早さで町の殆どが壊滅するなどありえない。
「……という事は、まさかテンピュール周辺の町も?」
「……ああ、テンピュールだけ滅ぼすというのも考えにくいだろう」
「そ……そんな……」
ファルは絶望にも似た感情を受ける。
ファルにはすぐ隣町に最愛の妹、メルがいる。
テンピュール周辺の町が滅んだという事は、メルがいる町は――
――オトマルガ地域北部から南部・地方境界線にある
タルキルの町まで続くステイラー街道はココで終わりを告げ、
この先はアルマイヤ地域の中心、アルマイヤ山の麓にある町
ララマタールまで続くララマタール街道。
この街道の中程をある一台の馬車が通行していた。
少女はこの馬車の中で目を覚ます。
(………ここは一体……)
ソーっと中を見渡すと5人の人達が居る。
一体誰なんだろう?
馬の手綱を握っているのは、空のように青い髪に、澄んだ眼、雲のように白い肌を持ち、
耳の部分が白い翼になっている男性。
馬車の前部には燃えるような赤いウェーブのかかった髪に、
炎のような眼、桃色の肌を持つ長身でスレンダーな女性。
そしてその女性の前にエルフ族の女性にウルフ族、鳥族の男がおり、
少女の後ろ、馬車の一番奥には、異形の仮面を被った白髪で白いマントを纏った男が
腕組みをして座っていた。
火の一族の女性は足を組み、目の前の三人に話しかける。
「貴方達、テンピュールへ一体何のために行ったの?
学院を残すなんて」
するとエルフの女は、恐る恐る言い返す。
「で……ですがペレ様、あそこにはとても強い戦士が……」
「言い訳しないの!」
ペレは怒鳴りつける。
「4人も居て敵わない相手など居ないでしょう?
貴方達が相手を舐め過ぎていたから敵わなかったのよ!」
そしてキリッとエルフの女性を見つめる。
「良いサラ? どんな相手でも決して手を抜かずに全力で戦うのよ!」
横のウルフ族の男と鳥族の男にも視線を向ける。
「ディナム、キャメロメ。貴方達も分かったわね!?」
「は……はい………」
そこへ異形の仮面の男が重厚感の有る声でペレに話しかける。
「……ペレ、こやつらが勝てぬのも仕方あるまい。
あそこには世界最強と謳われる戦士・死神と、
アラレマス帝国の最強の拳法家で御三家が一人、オメガが居たのだ。
例えお前であろうとも勝ち目は無いだろう」
ペレは驚く。
「死神とオメガが!?」
「左様。奴らの強さは戦いをこの眼で見ていて、驚愕に値する。
俺に比べれば暇つぶしにもならんだろうが、
幹部であれども苦戦は必至であろう」
そこまで言うと、仮面の男は少女の首元を掴んで持ち上げた。
少女は突然持ち上げられて困惑する。
「え?……ええ?!」
仮面の男は、そのまま話を続ける。
「だが、この少女が居れば、全てが万事難なく事が済む」
仮面の男は自信満々に断言する。
だが、ペレはとても信じられない。
「……その少女が………戦力になるのですか?」
「フフフ……、お前達には分かるまい。
メルが背負っている物を」
「???」
仮面の男はそこまで言うと、メルを隣に座らせる。
「メル、ようやく目が覚めたな」
メルはそっと返事を返す。
「……はい………。
……あの……貴方達は………?」
「俺達か………、……俺達はソレイユという組織だ。
俺はソレイユを纏めているルドラ。
そこの赤髪の女がペレ、エルフの女がサラ、ウルフがディナム、鳥がキャメロメ、
馬を操っているのがノトス」
ルドラはメルの頭を撫でる。
メルは何故馬車に乗っているのか理解できない。
確か家で寝ていたはず。
何時の間に馬車で寝ていたのだろう?
いくら考えても分からない。
「あの……ルドラさん、私は……どういう経緯で馬車に乗ったんですかね?」
そう聞くとルドラは少し沈黙してハッキリと答える。
「……町が滅んだからだ」
「えっ!?」
メルは驚く。
「町が滅んだってどういう事ですか?!」
ルドラに言い寄る。
「………知る必要はない」
その後何回聞いても、答えてはくれなかった。
一行は暫く進むと、パタルキアという村に着く。
もう日が傾きかけている。
ルドラはこの村で泊まるそうだ。
「今日はこの村に泊まるとしよう」
宿で部屋を二つ借りる。
男女に分かれて部屋に入った。
メルは女部屋。
メルは部屋のベッドに座る。
(これからどうなるんだろう……、ソレイユって聞いた事が無いしなぁ……。
お兄ちゃんは………)
そこへペレが話しかけてきた。
「メル、どうしたの?」
「え? ……いや……何でもないです……」
メルが余り浮かない顔をしているので、ペレは少し心配になる。
「突然だろうけど、これからは一緒に同行する事になるからね。
仲良くしましょ」
「………」
メルは黙りこくっている。
そこへサラがペレへ話しかける。
「ペレ様、今はそっとしておいた方が……」
「駄目よ。真っ向から向かい合わなきゃ」
そう言うと、ペレは思いついた。
そうだ! メル、一緒にシャワー浴びましょ!
さ、こっち来て」
メルをシャワー室へ引っ張り込む。
「ええっ!? ちょっ、ちょっと待って下さい!」
メルは困惑するが、ペレは待ったなしで引っ張り込む。
サラは苦笑い。
(強引だなぁ………)
ペレはメルの服を脱がそうとする。
「さあ、服脱ぎましょ」
「ま、待って下さい。自分で脱げますから……」
「そう……」
メルは自分で服を脱ぎだす。
ペレも服を脱いだ。そして浴室に入る。
ペレはメルにシャワーをかけていると、左肩に傷跡のような物を見つけた。
小さなちょっとした切り傷のような紫色の跡。
「メル、この傷跡は……?」
「これは……生まれた時からあるの………」
「生まれた時から………?」
その時、脱衣所でガタッと音がした。
「サラ?」
ペレが扉を開けると、そこには二人の男が。
「何者!」――
――サラはエントランスまで降りていた。
エントランスにあるテーブルにルドラが座って読書をしていた。
「ルドラ様、降りていたんですか」
サラはルドラの隣に座りながら話しかける。
「フフ……、俺が居ては息苦しいだろうからな」
サラはルドラは意外と気配りがあるんだなと思う。
今度はルドラがサラに話しかけてきた。
「サラは何のためにここへ降りてきたのだ?」
「えーまあ、退屈だったので……」
「そうか……」
その時!
「動くな!」
突如エントランスに大声が鳴り響く。
声のした方を見ると、そこには武器を持った赤い鉢巻をした男が
宿のマスターを人質に取っていた。
周りを見渡すと武器を持った赤い鉢巻をした一団が武器を宿泊客等に向けている。
「ル……ルドラ様……」
サラはルドラに寄り掛かる。
ルドラ達にも武器を向けられていたが、ルドラは無視して本を読み続けていた。
(ルドラ様、この状況でよく本を……)
そこへ男がルドラの首に剣を突きつけてきた。
「おい、お前。……何でそんなに落ち着いているんだ」
「………」
ルドラは無視して本を読み進める。
「おちょくりやがって……、仮面までつけて何様のつもりだ。
おい取れ!」
男が剣を押し付けてくる。
するとルドラは右人差し指で突きつけてきている剣を横から突くと、
刹那、『バチィ!』という音と共に火花がおき、
突いた部分から剣が焼き切れ、剣先が飛んだ。
「なっ!? テッテメエ、何しやがった!」
ルドラの胸倉を掴む。
するとルドラは胸倉を掴んでいる腕を掴み、握りつぶす。
「ぐあぁああ!!」
男は痛みに転げまわる。
そしてルドラはゆっくり立ち上がった。
「……フン、のんびり読書も出来ん」
一団がルドラに武器を向ける。
「貴様! 俺たちが赤き鷹と知っての所業か!」
ルドラは動じない。
「赤き鷹? ……知らんな。何者であろうと俺の邪魔をする奴は容赦しない」
一団はルドラの横柄な態度に憤怒する。
「テメエ良い度胸じゃねえか!
殺っちまえ!」
一団が襲い掛かる。
ルドラは両腕を広げ、五指を開く。
「何という愚かな者どもよ」
刹那、指先から光線が発すると共に両手を前後に振ると、
周りの者達が、皆、切り刻まれる。
周りは血に染まり、壁には焦げた跡が残っていた。
「へえ……変わった技を使うね」
「面白いな」
玄関から男が二人入ってきた。
一人は銀髪で体格は小柄、背丈ほども有る長剣を背負っており、白い羽織を着ている。
もう一人はスキンヘッドで筋肉質な身体をしており、
背丈は天井に届こうかというほどだ。
「何者だ貴様ら」
銀髪の男がにこやかに答える。
「いやあ、赤き鷹の幹部なんだけどね。
まさか君みたいに強い人が居るとは思わなかったなあ。
是非、お手合わせを願いたいね」
そこへスキンヘッドが割り込む。
「テラ、遠慮する事はない。
俺が破岩金剛剣で葬り去ってくれよう」
スキンヘッドが構える。
テラは呆れ顔で剣を抜く。
「やれやれ、しょうがないなあ。喧嘩っ早いというか……。
それじゃ三大剣流が一つ天武界翔流の流れを組む
道撃猪迅流のサビとなってもらおうか」
ルドラは二人に向かって一歩踏み出す。
「この俺に勝負を挑むとは良い度胸だ。
ならばこの俺の魔功拳最強の拳、
宇燬炯太陽拳をもって葬むってやろう」
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