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  太陽の暉 作者:あおやま
序章
序章・第1話 この世という世界
ステージ。

この世界はそう呼ばれている。
皆その名を不思議に思っていた。
だが気にはしなかった。

何故なら昔から云われていたからである。


昔といっても、どれくらい古いのかわからない。
100年なのか200年なのか、500年なのか1000年なのか。

唯一分かっていることは、
昔は分からないという事。


100年前、
ある一族の町に、悲劇が起こった。

それは、当時あった帝国に一族が皆殺しにされてしまうという、
とても悲しい事件。

とても悲しい出来事だった……今では。

当時はそれが日常茶飯事だった。
たいして大事でもない、
国民はまたかという反応だけ。


帝国は非常に強力な軍事力で、国を支配していた。
軍事力を支えていたのは、鋼の教え。


今ではその教えを伝えるものはいないが、
結果的に、その教えによって帝国は滅んだ……。

100年前
とある一族が帝国軍に襲撃を受けた。

その一族は滅んだ。


だが、一人だけ生き残った者がいる。
それは、少女だった。

少女は、ある寺院に逃げ込んだ。
そしてそこで2年間、帝国からかくまってもらった。
その後少女は、もし帝国に見つかってしまうと、
かくまってくれている寺院の人たちに迷惑がかかるからと、
寺院を出た。


寺院を出た後、
少女がどうなったかは誰も知らない。

誰も……。





その後時代はめぐり、
約100年後のとある酒場から舞台は始まる。




「レイナさん。向こうのお客に、これを渡してもらえますか」
「はい」
レイナ
彼女はこの酒場でウェイトレスをやっている。
顔立ちもよく、明るい性格のためか、
客、特に男性客に人気がある。

レイナは、マスターから酒の入ったコップを受け取りお盆に載せ、
客の待つ奥の席へ向かう。

マスターに言われた客の前に来たとき、ガラの悪そうな大柄の男性客が横から近づいてきた。
すると、突如その男はレイナの左腕を掴んだ。

「なあ、姉ちゃん。ちょっと付き合ってくれねえか?」
「えっ。な、何ですかいきなり!」
レイナは、抱き寄せようとする客に体をねじって抵抗すると。
「いいから、こいよ!」
「あっ、ちょっ!」

客が逃がさまいとレイナの腕をグイッと引っ張ったその時、
お盆に載せていたコップがひっくり返り、
目の前の客に酒がかかった。
そして、コップが床に落ちて割れた。

マスターがコップの割れる音を聞くと
異変に気づき、飛んでレイナの元へやってきた。
「大丈夫ですか!?」
「おう!マスター。ちょっとこいつ借りるぞ」
男はレイナの腕を掴んだまま出口へ向かう。
マスターはそれを慌てて止めに入る。
「困りますお客様。勝手に従業員を連れて行かれては・・・」
「うるせえ!」
マスターが男を止めようとすると、男がマスターを蹴飛ばした。

「てめえ、俺を知らねえのか?
俺は…」
「おい牛」

男が言いかかった刹那、突然女性の声がした。
レイナは声のする方を見ると、
そこには、さっき酒がかかった客の姿があった。

茶色い髪にポニーテールの髪型。そして少女のような小顔に透き通るような白い肌。
見た目は、質素な服だけで余計な装飾品は無いが、
容姿や仕草のせいか、存在感がとびきりあった。

女性は鋭い視線を男に突き刺すように向けると、言い放つ。
「牛、人に酒かけといて謝罪の一つもないのか?」
その容姿と矛盾した男言葉、睨みに男は動揺しながらも
これでもかというほどの睨みを利かせて言い返した。
「威勢のいい姉ちゃんだな。てめえ俺を知らねえのか?!
俺はな、この町を縄張りにしてる盗賊団赤き鷹のメンバーなんだぜ!」

『赤き鷹』。
男がその名を口にすると酒場の中が凍りついた。
だが女性は動じる事も無く言い返す。
「それがどうした」
「わからねえのか?赤き鷹はこの国で最強の盗賊団だ。
俺に逆らうということはだな、赤き鷹を敵に回すということだ。
軍も、しり込みする俺たちにかなうと思ってるのか?」

「……それがどうした」
「威勢のいい姉ちゃんだな。……気に入ったぜ!
お前俺と…ガッ」
男が女性に近づこうとしたその時、
女性が男の口を掴んだ。
男がひるんだ隙に、レイナは男から離れた。

その時、女性が男を蹴飛ばした。


男は、店の奥から店の外まで吹っ飛んだ。
「私は礼儀の無い男は嫌いなんだ」
男は、どうなったのか状況を理解できなかったが、
ここは逃げるが得策と判断した。
「…てっ、てめえ、後で覚えていろ!」
そう男は吐き捨てると逃げていった。


酒場は静まり返っている。
当然だ、女性が男を店の外まで蹴飛ばしたのである。
驚かないほうがおかしい。

皆が呆気にとられているなか、女性は何事も無かったように
元の席に戻った。
そこへレイナが話しかける。
「…あの、ありがとうございます」
すると女性は静かに聞き返した。
「……何をだ」
「私を助けてくれたんですよね?
貴方何回もウチヘ来てたけど、ほかのお客さんに絡まれたりしても
あんなに怒った事無かったから」
「………」
レイナの問いかけに、女性は答えず黙り込んでいる。
女性が黙っているのをレイナはどうしようかと一瞬思考を巡らすと、
思いついたように聞いた。
「あの、貴方の名前を聞かせてもらえますか?」
すると女性は逆に聞き返してきた。
「……私の事より、マスターをほっといて良いのか?」
「あっそうだ!マスター!大丈夫ですか!?」
レイナはマスターが蹴飛ばされていた事を思い出し、マスターに駆け寄った。
「ええ、大丈夫です」
そう言うと、マスターは蹴られたところを抑えながら立ち上がった。

すると女性はスッと席を立った。
「マスターそろそろ、おいとまさせてもらうよ」
「御代は結構です、助けてもらいましたので。
それより大丈夫なのですか、あのような事をして?
赤き鷹を敵に回したのでは」

「……心配をするなら、この店の心配をした方が良いぞ。
奴らが来るなら、まずここへ来るだろうからな」
そう言うと女性は店の出入り口に向かう。

そして店の出入り口で立ち止まると女性は言った。


「私の名は、サン。
サン・リレティ・イマスタル。
奴らが来たらこう伝えろ、
『死神に魂を喰われる覚悟があるなら来い』とな」
2011/3/26 改稿
2011/3/27 改稿


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