ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第7話 すれ違う2人の感情
今日の夕ごはんは、鳥肉〜。
スーパーで買ってきたフライドチキンを、テーブルに広げる。
今日は久しぶりに、早く帰って来られた。

時計はまだ十時前を指しているのに、私はすでにお風呂も済ませてのんびりタイムだ。
幸せだ〜。

テレビを見ない私の部屋には、その代わりにコンポからラジオが流れる。
飽きてくれば音楽を聞いて、眠るのが日課。

大口開けてチキンを頬張った途端、携帯の着信が流れ出した。

「和弘?ご飯なのに・・・。」

憎まれ口を、叩いてみる。

携帯を取り上げた。
「はい。」
{あ、佳苗?もう帰ってた?}

「帰ってた。今からご飯なんだけど。」
{あ、わりぃ。}
目の前のチキンに紙をかけて、携帯を持ち直した。

「で、どうかした?」

自然と冷たい言葉になってるのは、否めないな・・・。
和弘は何か察したのか、それとも昼のやり取りを後ろめたいと思ってるのか、声は優しい。

{いや、昼は邪魔しちゃったなと思って。悪かったな。}
邪魔じゃない、そこじゃない。私が嫌がってるの。
溜息をつきながら、いいよ・・と笑う。

{山下にも伝えておいたから。佳苗は自分なりに頑張ってるよって・・・。あのあと電話きてさ、電話したかとかなんか聞かれた}
山下・・・ね。
「由梨じゃないの?そう呼んでるんでしょう?」

向こう側で、息を呑む声が聞える。
{いや・・・、店が近い奴らと飲むことが多くて・・・。そこに山下が来ることが多いから、必然的に仲良くなるっつーか気安くなるっつーか・・・・。}
「ふうん・・・。山下さん仕事もできるしね、相談もしやすいんじゃない?」
{俺もあれくらいできればな〜ておもうけど、あいつ凄いよな。ちゃっちゃと仕事終わらせてさ、たまにいろんな店まわってるみたいだぜ}

頭にもやがかかったみたい、ちょっと嫌な気分。

「そう、羨ましいね。」

その言葉にまたしまったと思ったのか、和弘が慌てて言い繕う。
{でも、飯はお前の方が旨いよ。あいつ、ああ見えて料理苦手なんだってさ}

料理・・・苦手?
私のほうが、旨い?

怒鳴りだしそうな声を抑えて、静かに聞く。
「山下さんにご飯作ってもらったことあるの?私のほうがおいしかった?」
ここで問い詰めたら、全部話すまい。
和弘は話がそれたことに喜んだのか、うん、と笑う。
{一度近くで競合調査してるって連絡きた時、黒田と菊池もうち来てて。それ言ったらご飯作ってあげるって}
「そう。」

{皆は旨いっていってたけど、俺はお前の作ったパスタの方が旨いと思ったな}

あ・・・そう・・

「ありがと。で、和弘。ご飯食べたいからもう切るね。」
{あっ、うん分かった。じゃ、またな。}

丸くおさまった事をホッとしたのか、かけてきたときより少し明るめの和弘の声がした。

携帯を切って、寝転がる。
冷たい床が、気持ちいい。

たまに早く帰ってくれば、これか・・・。
こんな電話来るなら、仕事してればよかったな。

視線の先には、いつも置いてある日本地図。
北海道から九州へと、視線を走らせる

遠いな。
この距離。
千キロ単位だもんね。

距離は離れても心はそばに・・・、なんて陳腐な言葉。
でもそんな言葉、ここに来るまでは信じてた。
私が和弘を思うように、私の事も思ってもらえるはずって。

でもそれは思い込み。
ひとそれぞれ性格ってもんがあって。
きっと和弘は、やつなりに私のことを思ってくれているんだろうけれど・・・
ごめん、私にはもの足りない。
せめて3日に一度くらいは連絡が欲しい。
仕事のこと、もっと聞いて欲しい。

まぁ私から電話しないのも、悪いんだけどね。
一度電話したら同期と遊んでて、気まずくなって次からかけるのを控えたのよね・・・。
和弘にも、恥ずかしいから俺からかけるっていわれたし。
向こうは同期が多いからな・・・。

そこまで考えて、苦笑い。

はは・・、言い訳か。

「あぁ、・・・なんか疲れたな。」

思わず口をつく。

仕事して家帰って寝て、彼氏とはこんなで。

切ない20代だなぁ、まったく。
せっかく北海道にいるのに・・・・・。

・・・そうか北海道・・・。

くるっと仰向けの身体をひっくり返して、地図をあける。
せっかくだから五稜郭とか見に行こうかな。
確か来週、半日出勤の次の日休日だったから、一泊でいけるんじゃない?

こっちに来る時フェリーで買った、観光情報誌をめくる。

あ、なんか楽しくなってきたぞ。
単純だなぁ、私。

テーブルに座りなおして片手でチキンをつかむと、むしゃむしゃと口を動かしながら旅行の計画を立て始めた。


よろしくお願いします!
カテゴリ別オンライン小説ランキング
HONなび


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。