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第5話 頭から信じちゃいけない
まだ、心臓がどきどきいってる。

運転に集中・・・と呟きながら、なんとか自分のアパートに帰ってきた。

既にお昼近い時間で、本当はご飯を買ってくるべきだったんだろうけれど、そんなことまで頭が回らなかった。
部屋に入ってスーツを脱ぐ。
なんとなく早くシャワーを浴びて、落ち着きたかった。

「・・・ん?」
うまく動かない右足首に、頭をひねる。

そこで初めて気が付く、包帯の存在。
いや、腕は気づいてたけど。

右足首と右の手首。
湿布して包帯が巻いてあった。

ここまでしてくれたんだ。

それまで熱に浮かされたように沸騰していた頭の中が、すぅっと冷静になっていく。
右の手首はひねっただけらしくてそんなに痛くないし、右足首も昨日ほど痛くは無かった。

迷惑かけちゃったな・・・。

そんな気持ちが湧き上がってくる。

目の前で人に倒れられたら、誰だってびっくりするだろうし慌てるだろう。
救急車呼ぶべきなのか、どこかに連絡するべきなのか。

でもそんなことをしたら、本社の方にも連絡が行くし私が仕事に振り回されて、ろくな生活を送ってないのがばれちゃう。
パートさんにも迷惑が及ぶだろうし、直属上司にも申し訳ない。

ここまで梶くんが考えてくれたか、そこまでは分からないけれど。
それでもなんとなく、考えてくれた気がする。
それだけ、彼は仕事上信頼できる人間なのだ。

梶くんの対応で、私は今までと同じ生活が続けられるといっても過言じゃない。
会社のせいで・・・て言うのは簡単だけど、倒れた店長っていう視線を流してこの立場にいられるほど私は強くないと思う。

あせって着替えていた手を休め、包帯を取る。
綺麗な巻き方に、凄いなぁと感心しつつ。

着替えを持ってバスルームに向うと、なんだか違和感。

風呂場の前には、姿見が1つ。
今そこに映った自分に、小さな違和感を感じて目の前に戻る。

ん?なんだ・・・?

自分の姿を凝視しながら「あっ!」と叫んで口を覆った。

「あのやろっ。」

撤回撤回、前言撤回!!

かーっと頭に血が上りながら、バスルームに駆け込んだ。

首筋にシャワーを当てながら、あわ立てたスポンジで一応こすってみる。
・・・くっ、消えない・・・。
当たり前とは思いつつ、がっくりと肩を落とした。

どこが気を使う奴だっ
明日どうしてくれる!

首筋にくっきりと付いたキスマークに、明日の服装をシュミレーションしながらいい奴だと思ったことを後悔した。


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