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第4話 目覚めたら梶くんち
頭痛い・・・

ぐるぐるまわるジェットコースターにでも乗ったみたい。


「佳苗、お前仕事時間かかりすぎ。」
後から和弘の声がする。
「和弘くん。佐々田さんは、一生懸命やってるんだから。」
山下さんの声。
振り返ると、和弘と山下さんが2人でこっちを見ていた。

「あれ・・・2人ともどうして・・・?」
ここ北海道。

「佐々田さん、こっちは心配しなくていいから。それより自分の心配した方がいいよ?」

え・・・?
その後には、数人の同期の姿。

「由梨、行こう。」
「えっ由梨って・・・。」
和弘の言葉に驚いて駆け寄ろうと・・・

「うっ動かない・・。」
足が一歩も前に動かないのだ。

その間にもどんどん2人との間の距離が開いていく。

「なんなの?これ一体・・・なに?!」




「和弘!」
「翔太です。」

目を開けた私の傍らに、梶くんが座っていた。

「え・・・あ・・・、夢?」

辺りを見回すと、ぎっしりと本の詰まった本棚とパソコン、テーブルと冷蔵庫が置いてあった。

「あぁ、夢か。そりゃそうだ。いるわけないか、北海道に。」
「カズヒロさんが?」
「うん、そう・・・・。て、あれ?」

なんでうちに梶くんが?

はたと思考回路が止まって、もう一度辺りを見回す。

3段ボックスじゃない!冷蔵庫が大きい!デスクトップのパソコン?!

「ここどこ!?」

うちじゃない!

「おれんちです。」
は?
上半身だけ起き上がって、隣の梶くんを見る。
「梶くんの家・・・?」
「そうっす。」

ん・・・・ん?ちょっと待て。
なにがなんだか・・・

夜、梶くんが店に来て・・・帰ろうって・・・

「えっ、何。私どうしたの?」

梶くんは困ったように首をかしげた。
「ごめんなさい、佳苗さん。やっぱり昨日の朝、足痛めたんでしょ?多分昼位から熱出してたんだと思う、顔赤かったもん。」

もん・・・?

「しかも昨日、お昼も食べずに検品してたから疲れもあったんだろうけど。夜、在庫室で帰ろうっていった後、佳苗さん倒れちゃったんだよ。」

倒れちゃったんだよ・・・で?

「家に連れて帰るにも佳苗さんち知らないし、・・・俺んちに運んじゃった。」

そういって梶くんは立ち上がった。

あ・・・えーと

「そっか・・・、迷惑かけちゃったんだね。」
「迷惑だなんて、俺が原因だし。だからその・・・いろんな事含めてごめんなさい。」
いろんなこと・・・

ふと自分の格好を確認する。
・・・うん、大丈夫。

「俺、寝てる人に手は出さないよ・・・。」

「!」

ぼっ・・・と顔が熱くなる。
「いろんなことっていうから何かと思っただけです!そんな対象じゃないことくらい分かってます!」
恥かしいっ
自分で言うより恥ずかしい・・・


「分かってないよ、佳苗さん。」

両手を頬に当てて、熱さを逃がそうとしていた私の両手を、傍らに座り込んだ梶くんが掴んだ。
「・・・なに?」
なんだかちょっとやばい状況ですか・・・?
思い上がっているわけじゃないけど・・

「そんな対象だよ、俺にとって佳苗さんは。」

ドキンッ

心臓が、一瞬跳ねた気がした。
顔がどんどん熱くなっていく。

「いや・・・、それ私に気を使って・・・。」
いつものあの冗談は、私に気を使って楽しくしてくれて・・・

「使ってないよ、俺。言いたいこといってるだけだもの。」

・・・

「いや、ちょっと待て。私、付き合ってる人いるって言ったよね?」
最初聞かれたから、確か答えたはず。
「カズヒロさん?」

・・・さっき寝言で口走ったよな・・

「まぁ、そう。なので気持ちは嬉しいけれど・・・。」
そういっても、梶くんは腕を掴んだまま。

「佳苗さんに、俺の事、カズヒロさんより好きになってもらえばいいってことだよね。」

・・・は?

「いや、そうじゃなくて。」
「そうだよ。」

昨日の夜と同じ雰囲気。
有無を言わせないその表情。

「目の前に好きな人がいるのに、何にもしないで諦めるのはいやだから。」

・・・・・

ちょっとまて。この状況で、その言い方は・・・

なんとなくびくついて見上げると、彼は口端をあげて笑った。

「佳苗さん、今寝てないし。」

頭の中が真っ白になる。
固まったままの私を見つめていた梶くんが、突然笑い出した。

「何にもしないよ、固まんないでよ。」
なっ
「からかったわね?!」

大笑いする梶くんをどつきたいけど、なぜかまだ腕は外れない。
いいかげんはなさんかいっとばかりに腕を振ると、梶くんはその腕を軽くひいた。

「ふぁっ。」

いきなり引っ張られて前のめりになると、首筋に生暖かい感触。

「!!」

かっかっ梶くんの頭がぁぁ肩にぃぃっ!

梶くんは私の首筋に口づけると、ぺろっとなめた。

「なっなっ!」
梶くんは頭を私の肩に乗せたまま、にやっと笑う。
「今まで俺の気持ちに気づいてくれなかった罰。」

「ばっ罰って・・・、今何もしないって・・・!」
頭の中がおきぬけに感じたものとは明らかに違う、ぐるぐる感。

「何もしないよ、今はね。」

また、あの表情。
だめだーっ

力を込めて梶くんを自分から引き剥がす。

「私、帰る!」

布団から出て立ち上がる。
一瞬足首がズキンッてしたけど、でもそんなことはどうでもいいっ。
今はこの場からいなくなりたい。

鞄をつかむと玄関に突進した。
外に出たところで、振り返る。
「いろいろありがとう!では!」

「はいはい。」

玄関に寄りかかりながら手を振る梶くんの姿は、
・・なんだか悔しいけど格好良かった。
少し見ほれてしまった自分に反省しつつ、アパートを出る。

「ん?」

そこには見慣れた風景。

「これ、めちゃくちゃ店から近いじゃない。」
店の従業員入り口が、遠目だけどはっきり見える。

店自体は平屋のモールにテナントとして入っているため、駐車場自体結構広い。
その駐車場の前の道から2筋中に入った場所。

こっちからは見やすいけど、店からはあまりよく見えないかな。

そんなことを思いながらアパートの駐車場を見ると、そこには私の車。

「パートさんたちにばれちゃいけないと思って、移動させといたんだ。おれ、偉いな〜。」
2階の窓から梶くんがこっちを見ている。

少し冷めてきた熱がまた上がりそうな予感に、梶くんのほうをみないままありがとうと呟いた。
「じゃあね、佳苗さん。」

その声を聞くか聞かないか、私は車を発進させた。
よろしくお願いします!
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HONなび


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