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第25話 聞いてしまった彼の本心
「佳苗たちはこっち使って。」
あの後一時間位飲んで、和弘の車でアパートに来た。
和弘の部屋は1人暮らしにしては大きく、2LDKに納戸まで付いている。

あてがわれた玄関横の部屋に、私と山下さんの荷物を置く。
酔っ払った山下さんは、黒田くんが支えて部屋の中に連れて行く。

和弘たちはベランダに面したLDKの隣の和室に、雑魚寝するんだそう。

「いいなぁ、私なんてワンルームなのに。」
部屋を覗きながら私が呟くと、和弘は冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを出して私に放り投げる。

「大きすぎるんだよ、ここ。掃除面倒だからワンルームで充分なのに。」

菊池くんが上着を椅子にかけながら、くすくすと笑う。
「和弘の前の店長が妻帯者だったから、家族仕様なんだよね。」

「あ〜、肩こった。」
後から黒田くんが、肩を揉み解しながらLDKに入ってきた。
「黒田、お疲れ。シャワー浴びれば?」
和弘が何気なくタオルを差し出すと、黒田くんはそれを受け取りつつ私に回した。

「佐々田さんが先にいきなよ。北海道から、仕事してきてんだから。」
「え。」

この面子がいる中、入るの恥ずかしくないか・・・?
一瞬、タオルを見つめて動きが止まる。

和弘が、ぷっ・・と笑った。

「誰も気にしねぇよ、風呂場は玄関の隣だからLDKのドア閉めれば音聞こえないし。俺達こっちの部屋に入ってるから、出たら呼んでくれ。」

「馬鹿にして・・。」

少し頬を膨らませつつ、黒田くんからタオルを受け取るとLDKのドアを閉めた。


シャワーの蛇口をひねって、お湯を出す。
少し強めの水圧が、凄く気持ちいい。
べたついた肌をさっさと流し、頭から浴びる。

「・・・ふっ・・・。」
目の奥が熱くなっていく。

「私・・・、何のためにここにきたのかな。」
小さな声で呟く。
耳元を流れていく水の音が、きっと私の声、消してくれる。

常に誰かがいて、常に笑っていなきゃいけなかった。
今日1日がやっと終わる。

「明日終われば、向こうに戻れるから。頑張れ・・・私。」

シャワーと一緒に、流れ落ちていく涙。
こすっちゃだめだ。目が赤く腫れてしまう。

数分そのまま流して、手早く身体と髪を洗うとさっさと出た。


「待たせてごめんね、出たから・・・。」
部屋着に着替えてLDKからそっと和室の襖を開ける。

3人はさっき私があげた、久保田さんから貰った焼酎を飲んでいた。
「早かったな。ゆっくり入ってればよかったのに。」
和弘が立ち上がって、腰を伸ばした。

「佐々田さん、色っぽい〜♪洗いたての髪〜。」
さっきより酔ってるのか、菊池くんがけたけたと笑う。
「からかうな、信じるから。」
「何ですって。」

和弘は隅のほうに積みあがってるタオルを菊池くんに持たせる。
「ほら、行って来い。」
菊池くんはまだ笑いが止まらないのか、そのまま和弘に風呂場に連行される。

「佳苗、もう寝な。疲れただろ。」
そう言う和弘の目は、またなんだか怒ってる。

菊池くんが風呂場に入ったのを見届けると、和弘はタオルを私の頭にかけた。
「そんな格好で、俺達の前に出てくるなよ。声かけろって言っただろ?」
「あぁ・・、そうか。ごめん。」

恥ずかしかったのね。

和弘はそれだけ言うと、お休み・・と和室に戻っていった。

山下さんが既に寝ている部屋に入ると、私はタオルケットに包まる。
酔いつぶれている山下さんが、唯一の和弘の布団で横になっている。

耳を澄ますと、シャワーの音と菊池くんの小さな鼻歌。
目の前だから、聞えちゃうな。
少し恥ずかしいけれど、仕方ないと諦める。

唯一の窓に視線を向けながら、溜息をついた。

なんだか、和弘の気持ちが分かった気がする。
私に対してと、山下さんに対してと。
長い間一緒にいると、分かっちゃうところが嫌だよな。

もっとちゃんと話し合いたかったけど、きっと・・・無理だな。
明日も、空港まで2人きりになることはないんだろうから。

でもきっと。
2人きりにならないようにしているところが、和弘の心を物語っている気がする。

目を瞑る。

学生の頃の、和弘が脳裏に浮かぶ。

あの頃はよかったな。言いたいこと言いあえて、気持ちも通じてた。
大人になるって、なんなんだろう。
我慢すること?
嘘を覚えること?

子供の方が・・、楽な気がする。


_________________

ふ・・・っ・・と目がさめた。

そばに置いておいた携帯を見ると、まだ40分もたってないらしい。
転寝(うたたね)していたんだ・・・。てか、そのまま明日の朝まで寝てしまえばいいのに。
なんで起きるかな、私。

喉の渇きを覚えて、部屋から抜け出す。
さっき和弘にもらったミネラルウォーターを、LDKのテーブルに置いてきてしまったのだ。

LDKにはいると、冷蔵庫を開けて一本取り出す。

「・・・・。」

「ん?」

蓋を開けて一口流し込むと、ベランダから声が聞えた。
なんとなく窓際に近づいて耳を澄ますと、声の主は菊池くんと和弘だった。

「和弘、少しは佐々田さんの事考えてあげなよ。」
・・・え?

自分の名前が出て、びくっと動きを止める。
「なんだよ。まだ酔ってる?」
和弘の、面白くなさそうな声。

黒田くんは寝てしまっているのか、声は聞えない。

「酔ってないよ。和弘のやりように腹が立ってるだけ。」
「うるさいな・・・。仕方ないだろ?由梨が飲んじまったんだから。」
そういうことじゃなくて・・・、菊池くんの少しいらいらした声。

「気つかって、フォローしてあげなって言ってんの。まるで、2人きりになりたくないように見えるよ。」

皆から見ても、そう見えるのか。
うーわー、なんていうか恥ずかしいな。嫌過ぎる。

和弘は少し黙って、口を開いた。
「・・・そう見えるか?」
「うん。」

溜息が聞えた後、グラスを置く音。

「内緒な。」
「和弘?」
菊池くんの声の後に続いた言葉。
「・・・少しな、悩んでるのは本当。俺、このまま佳苗と続けられるか、自信がないんだよ。」

しばらく黙った後、菊池くんが伺うようにおずおずと聞く。
「・・・山下さん、関係してる?それ。」
「・・・・まぁな・・。」

・・・・・

その瞬間、両耳が温かいもので塞がれた。
「?!」

驚いて振り向くと、右耳を押さえていた手が離れて私の口を塞いだ。
後には、タオルを肩からかけた黒田くんが立っていた。

上半身、裸っ!

目のやり場がなく宙に視線を泳がせると、黒田くんは自分の格好に気が付いて少し困ったように笑う。
耳と口を押さえていた手を外すと、自分の唇に人差し指を持っていって黙っているように私に見せる。

私が頷くと、黒田くんは自分側の襖を少し開けた。

「和弘、ちっと外行って身体冷ましてくるわ。俺、熱がりなんだよ。」
突然襖が開いた事に驚いたようで、即答できずに間が空いた。
「おう。」
「先、寝ててくれ。じゃ。」
黒田くんは襖を閉めると、私の方を向いて手招きする。

私はよくわからないまま、後をついていった。
え〜、こんばんは?蒼井です。
起きてるので、更新してしまえ・・・と。
御覧くださりありがとうございます。
次回投稿は、7月5日 日曜日になります。
よろしくお願いします。

和弘の本心が出てきました。
私が菊池だったら殴りたい・・・そんな衝動に駆られてます(笑
よろしくお願いします!
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