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第24話 同情は一番身に沁みる
「ありがとう。」
外に出てお礼を言うと、黒田くんは口端を上げて微笑む。
「いや・・・、お疲れ。佐々田さん。」
歩き出した彼についていきながら、その言葉に、はっ・・と顔を上げる。

お疲れって・・・

黒田くんはそんな私を見下ろしながら、歩みを止めない。
「山下、悪気はないんだけど、結構言葉きついだろ。俺、あいつと最初の転属先一緒だからさ。」
心の中を見透かされた気がして、一瞬黙る。

「ごめん、私・・・顔に出てた・・・?」

言ってから、しまった・・・と心の中で思う。
ごまかせばよかった。素直に言ったら、黒田くん困るかも・・・。

黒田くんは、軽く首を横に振って否定する。
「ぜんぜん。だから、余計に辛いんじゃないかと思ってさ。」
そのまま店の駐車場を横切って、歩道にでる。

「もしかして、お土産の話・・・。」

あそこから連れ出すために、言ってくれた?

私の言いたいことが分かったのか、前を向いていた視線が私を見る。

「土産は本当。だけど、一息入れさせたかったのが8割。ただ、きっと和弘も山下もこっち気にしてると思うから、止って休ませてあげられないけど。」

目の奥が、一瞬、きゅ・・・っと痺れる。
うっすらと、目頭に涙がたまる。

はは・・、こっちにきて優しい言葉、初めてかけられた。
恥ずかしいけれど、泣きそう。

山下さんの言葉を、気にする私がおかしいんじゃないかってずっと思ってたから。


黒田くんの車は、店の真横にあるホテルの駐車場に停まっていた。
車体のハッチバックを開けて、大きいビニール袋を取り出す。
そのままドアをしめ、来た道を戻りだす。

「あっ、私持つよ。」
手を出そうとすると、重いから、と押し留められる。
「久保田さん、何考えてんだか。見ろよこれ。」

ビニールのもち手を広げて中を見せてくれる。
そこには、よく時代劇とかに出てきそうな大きな徳利が入ってた。

「九州は焼酎だろう、と、言っておりました。」
「何それ。」
顔を見合わせて、ぷっ・・と噴出す。

「女に焼酎はないよな。」
「う〜ん、飛行機の手荷物検査で笑われそうだわ。」
「確かに。」
そのまま和弘の車にいって、バックシートの上に置いた。

「山下ってさ・・いい奴だけど、自分が一番じゃないと気がすまない面があって。和弘に対しては恋愛感情かどうか分からないけど、気に入ってるのは確かだと思う。」

店の入り口に向う黒田くんは、少し歩調を落としてゆっくりと向う。
「だから和弘に対して、少し馴れ馴れしい態度なんだ。彼女は佐々田さんなんだから、もっとどんと構えてて。嫌だとは思うけど。」

「はは・・・、頑張る。」

黒田くんは店のドアに手を伸ばして、また開けてくれた。
お礼を言いながらドアをすり抜けると、黒田くんが小さく呟いた。

「本当は、あいつがフォローしなきゃいけないのにな。」
「黒田く・・・。」
振り返って何か言おうとする私の言葉を、無言の笑みで押し留める。

そのまま皆の所へと向った。

「ね〜、久保田さんのお土産ってなんだったの?」
席に戻ると、山下さんが興味深々の視線を向ける。

「焼酎。徳利に入ったの、初めて貰っちゃった。」
「焼酎?」

山下さんの軽い笑い声が、零れる。
和弘が納得したように、タバコの灰を灰皿に落とす。
「そりゃ、店の中に持ってこれないよな。」
だろ?そう黒田くんが頷きながら、手元のグラスを見た。

「あれ、菊池。お前俺のビール飲んだ?」
菊池くんがその言葉に、私の方をなぜか見る。
そして黒田くんに視線を戻した時、山下さんが笑いながら謝った。

「ごめーん、私飲んじゃった。」
「は?」

私と黒田くんの視線が、一気に山下さんに集まる。

「やだ怒んないでよ。ちゃんと追加頼んであります。」
「いや、そう意味じゃなくて。お前、帰り車だろ?飲んだら運転できねぇだろうが。」
そこまで言った時、店員さんがビールを運んできた。

黒田くんは言おうとした言葉を止めて、グラスを受け取る。
「菊池、ホテルさ。お前の部屋に俺を泊めてくれよ。山下は俺のとった部屋に泊まればいい。」
「いや、それが・・・。」
菊池くんが、言葉を濁す。

「俺んちに泊まればいいだろ、皆。」
それまで黙っていた和弘が、新しく出したタバコに火をつけながら黒田くんを見た。
「は?」
黒田くんの、あっけにとられた顔。

「こう言ってくれてるんだから、皆で泊まりましょうよ。絶対楽しいから。」
語尾に音符でもついちゃいそうな、山下さん。
ほんのり赤くなっているから、多分、黒田くんのビール以外にも何か飲んだんだろうな。

「山下、お前少しは気を使えって。」
「でも、もうホテルキャンセルしちゃったもん。」

「は?」

黒田くんが菊池くんを見ると、小さく頷いた。

「車もこの駐車場においといていいって、店の人に了承とったから。」
「なんだよ、それ。」

「佐々田さんも皆で泊まりたいよね?」
山下さんが、立ち上がって私の横に立つ。
斜め上から見下ろしてくる彼女は、女の私から見ても綺麗。

「え、・・うん。」
「ほら〜。」
にっこりと黒田くんに笑いかける。
「でも・・。」
なお食い下がろうとする黒田くんを、和弘が止めた。

「俺がいいって言ってんだから、気にすんなよ黒田。な、佳苗。」
私の方に顔を向けて、笑う。
「うん。」

そう答えるしか、なかった。

黒田くんは少し不機嫌そうな顔をしたけれど、私をみて溜息をついた。


「和弘、ホテルの駐車場に車置いてあるから、後でこっちの駐車場に移動させてくんね?」
「あ、俺のも。」
菊池くんも、同じように頼む。

和弘は立ち上がると、今行ってくるから・・・と2人から鍵を受け取ると、外に出て行った。

その後姿を目で追いながら、内心溜息をつく。

なんだかなぁ。
なんだか、全然思ったようにいかない。

「あっ、和弘くん免許持って行ってない!」

山下さんが、椅子に引っ掛けてあった和弘のスーツの上着を持ち上げる。
「財布に入ってるって、前に言ってもん。」
そう言って立ち上がり歩き出そうとした彼女を、黒田くんが止めた。

「佐々田さんが持って行けよ。山下、お前少しやりすぎだ。俺のいない間に、どんだけ飲んだんだよ。」

「黒田くんのお説教は、聞き飽きてます〜。私も車に用があるから、行くんです〜。」

そう笑いながら、和弘を追いかけていった。
彼女が外に出ると、菊池くんが私に頭を下げる。

「ごめん、佐々田さん。こんなことになって・・・。でもここまで山下さんが、和弘にべったりするの初めてで。」
「そうなの?」
意外な言葉に、驚く。

「んー、まぁ仲はいいけどな。ここまでべたべたするのは、初めてだ。あいつ、どんだけ飲んだ?」
菊池くんは、そっと右手の指を3本上げる。

「酒、強くないのに。和弘もなんで止めないんだよ。」
「多分、一杯飲んだ時点で諦めたんだと思うけど。」

私は手元にある烏龍茶を一口飲み干す。
生暖かくなってしまったそれは、なんだか苦い。

「せっかくここまできて、和弘とほとんど話す時間がないんじゃ・・・意味ないよな。」
黒田くんの溜息。
菊池くんは、申し訳ないような表情で私を見る。

なんだか、気を使われるのが・・・きつい。
同情されているようで・・・、きつい・・・。

恥ずかしさでいっぱいになる。

私は、さっき黒田くんと話したときに少し取れかかった、笑顔を貼り付ける。
完璧なまでに。

「気にしないで。和弘の性格は分かってるつもりだし、皆と会えて嬉しいのは本当だから。2人こそごめんね、気を使わせてしまって。」

「佐々田さんこそ、気を使わないでよ。俺達は、ぜんぜん構わないから。」
菊池くんが、慌てて両手を振る。
「ありがとう。」

お礼を言いながら黒田くんを見ると、私のほうも見ずに1人、ビールをあおっていた。
おはようございます、蒼井です。
御覧くださり、ありがとうございます。

次回投稿は 7月4日 土曜日 の予定になります。

早く九州編を書き終わりたくて、投稿を急いでたりします。
なんだか、息が詰まります〜←自分で書いておいて^^;

一言でも感想・ご意見いただければ嬉しいです
よろしくお願いします^^
よろしくお願いします!
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