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第19話 なんだか嫌そう?
九州への往復の航空券を勢いで買うと、私は満足してアパートに戻った。

考えるより、やっぱ行動よね。
和弘の考えが分からないなら、聞きに行けばいい。
顔を見て話せば、きっとこの状態も変わるはず。

バッグをクローゼットから引っ張り出して、ベランダでほこりをはたいた。
3ヶ月前、ここに越してきて以来しまいっぱなしだった大きめのトートバッグ。
一泊とはいえ、ほぼ日帰りに近いから持って行くものはそんなにないだろう。

ジーンズは2日間ともそのままで、カットソーだけ持っていこう。
遠足前の子供のように、うきうきしている自分がちょっと面白い。

簡単に用意を終え、近くのコンビニで夕ご飯を買ってくると、ふと机に置いてあったバームクーヘンが目に入った。
これ、明日持っていって和弘と食べようかな。
まだ余裕のあるトートバッグは、バームクーヘンの進入で一気に膨れて満杯になった。

持ちにくいけど、まぁいっか。

〜♪

ポケットに突っ込んでいた携帯が、着信を知らせる。
店からの着信音に慌ててとる。

「はいっ、どうしました?」

自分の休みの時、何かトラブルがあった場合にかかってくるので、思わず上ずった声になる。
以前、お客さんとのトラブルで呼び出されて、2時間以上お説教を喰らいにお客さんの家まで行ったことが頭に浮かぶ。

{佳苗さん?ごめんね、驚かせちゃった?トラブルじゃないよー}
携帯の向こうから聞えてきたのは、落ち着いた梶くんの声。
一気に力が抜け、床に座り込む。
「驚かせないでよ、何かあったかと思っちゃった。」

梶くんは、けらけらと向こうで笑ってる。
笑い事じゃないって、もう・・・

「で、どうかしたの?」
気を取り直して聞きなおすと、彼は笑うのをやめた。

{さっき来たとき俺がいなかったから、佳苗さん、寂しかったかと思って}
「いえ、ちっとも。では」
少し冷たい声で言うと、梶くんは慌てた声でつっこむ。
{早い早い!心配してたって言うからさ、検品。もう終わったから、気にしないでね。}
時計の針は6時過ぎ。
さっき2時半頃店から出たから、3時間そこそこで終わらしたってことか。

「早いね、さすが梶くん。わざわざ連絡くれてありがとう。」
{はいはいー、お休み中ごめんね。じゃあ・・・}

梶くんは、それだけ言うと電話を切った。

うーん、気遣いの男だ。

うちに限らず正社員で就職すれば、出世街道に乗れそうな気がするけど、歴史学者ねぇ。
楽しそうではあるね。
自分で稼いで、やりたいことをするならいいと思うし。

携帯を閉じて机に置こうとした瞬間、いきなり着信を知らせる音楽。

和弘だ!

戻しかけてた手をとめて、通話ボタンを押す。

「はい。」
{佳苗?さっきは悪かったなー}
和弘の声。
さっきと違って、いたって普通。

「こっちこそごめんね。どっかお店の中だったの?小声だったけど・・・。」
{あぁ、同期がそばにいたからさ。また、なんか言われると面倒だなって思って。}

そういうことか。
まぁ、いいけど。

{で、どうした?何かあった?}

「いや・・・あのね・・・。」

ドクンッ

鼓動が早くなる。
いざ、言おうとするとなかなか言葉が出てこない。

{ん?}

和弘は怪訝そうに、私を促す。

・・・

駄目だ

和弘に分からないように溜息をつく。

「あのさ、明日、和弘んとこいこうと思ってるんだけど、いい?」
{はぁっ!?}

和弘の素っ頓狂な声。
{来る!?俺んとこって、九州に!?}
「うん。」

ま、普通驚くわな。
{お前、北海道から九州までいくらかかると思ってるんだ!?時間もかかるし!}

「それはほら、中部国際空港までの往復はマイルたまってるからただでいけるし、そこから大分空港までだから往復5万くらいかな・・・?」

実は学生の頃からためているマイルと、仕事で海外に行った時のマイルがプラスされたらいい感じに途中まではただでいけそうなのだ。
それでも確かに凄い出費といえば、そうだけど。
考え込んでいるのか、しばらく黙った後うかがうように聞く。
{俺、明日仕事だぜ?}

「明後日は?」
{明後日?休みだけど。一日の為にくんのかよ}
「うん。」

勢いに乗った私の言葉に、和弘は押し黙るとう〜んとうなった。
{いや、俺はいいけど・・・。なんだ珍しいな、佳苗がそんな事言い出すなんて。}
「あはは、たまにはね。じゃあ、明日、空港まで迎えに来てくれる?私も半日仕事してからこっち出るから、そんなに待たないと思うし。」

大まかに予定を決めると、携帯をきった。

大きく息を吐いて、緊張を解く。
いつもより長電話で、耳が痛い。

驚いてたなぁ、和弘。
反対の立場だったら、私も驚くか。

でもこれで、少しは私の気持ち伝わったかな。

寂しいんだよ、和弘。
会って、話をしたいんだよ・・・。

じんじんとする耳を片手で押さえながら、レースカーテン越しに空を見上げる。
既に夜に変わっている風景。

しばらくそのまま、空を見つめていた。
おはようございます、蒼井 雪です。
御覧くださり、ありがとうございます。

次回投稿予定は、6月27日 土曜日 明日になります。

もしよろしければ、感想・ご指摘等いただけたらと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
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