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第10話 騙されて お酒
「信じらんない、騙すなんて。」

店員さんに案内された窓際の席に座ると、じろっ・・・と梶くんを睨んだ。
梶くんは私の視線なんてどこ吹く風で、メニューをぺらぺらめくってる。
「佳苗さん、好き嫌いあるの?」
「だから話を・・・。」
「ん?」
食い下がろうとする私に、思いっきりの笑顔。
思わず押し黙って、何もない・・・と呟く。

梶くんは店員さんを呼ぶと、注文を終えてこちらを見た。
「だって佳苗さん、こうでもしないと一緒にご飯食べないでしょ。さっきも聞いたとき、どう断ろうかなって顔してたし。」
「だからって、あんな・・・。」
「やっぱり、図星だった。」
にやっと笑う梶くん。

少しの間その顔を見ていたけれど、諦めて溜息をつく。
横を向いた私に、彼ははっきりとした口調で問う。

「佳苗さん、何があったの?」

一瞬、動きが止まる。

何がって・・・
「え・・・何が?」
「先週の電話。カズヒロさんと何かあったんでしょ?さっきのもそうだけど。」

視線はテーブル横の窓から動かさず、少し笑う。
「別に、何もないよ。梶くんに関係ないし。」
その言い方自体で、何かあったことをばらしているようなもんだと言い終わってから気がつく。
が、まぁ言ってしまったものは仕方ない。

梶くんは、ふうん・・・と呟くと、私と同じ窓の向こうに視線を移す。
窓に姿が映りこんで、まるで鏡越しに会話しているようだ。

「みんなね、心配してるんだ。あの後からずっと、佳苗さん、仕事に熱入りすぎだから。」
彼の言葉を聞いて、胃の中に何か錘が落ちてきたような感覚。
梶くんだけじゃなく、他のパートさんにも心配をかけてしまってるんだ私。

「佳苗さん、明日休みでしたよね?」
俯いてしまった私に、彼の明るい声。
それと共に、店員さんがドリンクを持ってきた。

促されてグラスを掴む。
なんだかとても綺麗な色の飲み物だった。

「うん、休み。」
何の疑いもなく、口に運び流し込むと、その味に慌てて彼を見る。
「こっこれ、お酒?!」
涼しい顔でこっちを見る梶くん。
「そうです。」
「私、帰り運転なのに!」
飲んじゃったよ!
「これで佳苗さんは、運転できませんね〜。」
「梶くんのはっ。」
「ジンジャーエールです。」
にっこりと笑う彼は、悪びれもしない。

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