ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
初めまして、蒼井 雪といいます。
読んでくださり、本当にありがとうございます。

基本的には恋や仕事に悩む主人公を取り巻く、現代恋愛です。
中には男女関係を描写した箇所も、出てくることがあります。
深くは書いていませんのでR指定は設定しておりませんでしたが、
R15指定にさせていただきました。
そのような描写のある話に関しては、前書きにてお知らせいたします。
15歳以下の方、また嫌悪感を抱かれる方は飛ばしていただければと思います。

遠距離恋愛を経験なさってる方も多いと思います。
私もその1人。
いろいろな道があるなーと思っていただければ、嬉しいです。

よろしくお願いいたします。
第1話 私の現状
パタン・・・

暗い部屋の中、携帯を閉める音だけが響いた。




「おはようございます、店長。」
「おはようございます。」
出社してくるパートさんたちの挨拶に答えながら、入荷した荷物を片っ端から捌いていく。

箱数300か・・・、結構多いな。

頭の中で今日一日の流れを組み立て直しながら、カッターを持ち直した途端。

「あっ。」

カシャンッ

手からカッターがすっ飛んでいった。

「やばやば。」
慌てて取りに行くと、すっ・・・と違う手が出てきて拾い上げる。
「ん?」

カッターの行方を目線で追いながら、そこに立つ人を認める。

「おはようございます、佳苗さん。」
「・・・おはよう、梶くん。はい、どうも。」

苦笑いしながら差し出されたカッターを受け取る。
「翔太って呼んでって言ってるのにー。」
「はいはい、私の事は店長って呼んでねー。」

棒読みであしらいながら、荷物の場所に戻る。

「あらあら、またふられたの?翔太くん。」
「あはは〜、だめっすね。ガード固い。」
後から入ってきたパートさんが笑いながら通り過ぎて更衣室に向うのを、梶くんは見送りながら溜息をついた。

「いつになったら佳苗さんに、俺の気持ち伝わるんだろ。」
「はいはい。ありがたく受け取って、のしつけて返すわ。」
「つめてぇなぁ。」

梶くんにかまっていられないっての。
300の荷物数ってことは、検品だけで午前中に終わるかどうかなんだから。

さっさと荷物を捌き始める私の後ろを、冷たい冷たいと笑いながら梶くんは更衣室に入っていった。


その後姿を横目で見ながら、背筋を伸ばす。
目の前の荷物に、うんざり感は否めない。


全国に店舗を持つ衣料品専門店で、私は働いている。
関東出身だけど、ここは北海道。
店長になると全国の支店に転勤することが多くて、私も他に漏れず3ヶ月前にここに配属された。

パートさんたちは気のいい人たちばかりで、仕事するにもとても楽。
精神的なものが一番大きいからね。疲労って。
さっきの梶くんもそう。
なんだか目指すものがある彼は、フリーター。
正社員じゃないかってほど、働く。
しかもまぁ身長が高いから、パートさんからももちろん悪いけれどだいぶ重宝だ。

そんな彼は、私がここに配属されてからずっとあの調子。
気を使ってもらってるのは分かってるんだけどね。

ふと、顔を上げて目の前の窓を見る。
バックヤードから店内を見ることのできる唯一の小さな窓。
店内がまだ薄暗いので、窓にはくっきりと私の姿が映ってる。

店長 佐々田

名札に刻印された私の立場。

本当は今まで暮した場所に帰りたい。
でも、仕事にやりがいがあるのもホント。

一つ溜息をついて荷物との格闘に戻った。


_________________




終わった・・・
燃え尽きそうになりながら、ダンボールを片付ける。
荷物で満杯だったバックヤードは、検品を終え半分は商品出しも終わった。
時計を見るとすでに16時。
まだ全部終わってないけど、限界だ〜。
「ご飯・・・。」

お腹すいた。。。

朝ごはんはコンビニのおにぎり一つ。
しかも食べたの朝の7時だったな・・・。

既にパートさんたちは昼食を終え、売り場に戻っている。
人数の少ないうちの店では、バックヤード業務を私が一手に引き受けて、パートさんたちはほぼ売り場にかかりっきりになる。
昼食や休憩の時以外、後に来る人は誰もいない。

17時からパートさんたちの休憩が入るから、今のうちに食べちゃわなきゃ。

自分専用のカッターを検品台に置いて、溜息をつく。

なんだか、朝にしゃべったっきり、誰とも話してないな・・。


朝の自分の行動を思い出しながら、誰もいない休憩室に入っていく。
テーブルにはパートさんのメモが一枚と、タッパー。

(店長へ。デザートに食べてね。)

タッパーをあけると、手作り感満載の紅茶のゼリーが生クリームをかけておいてあった。
「あはは、うれしいねぇ。」
やっぱりここのパートさんたちはいい人たちだな。

ロッカーのバッグから財布を取り出す。
さて。昼は何にするかな。

1人暮らしの私。
お弁当作ればいいんだけど、面倒で。
気ままに外食だらけの毎日って、身体にどうなんだろうなぁ。
しかもどこがおいしいか分からないから、ほとんど同じところのコンビニかファーストフードの繰り返し。

そう思いながらドアのノブに手を伸ばすと、触れる前にドアが向こう側に開いた。

「えっ、わわっ。」

歩いていた勢いのまま体勢を崩すと、ノブを握るはずだった右腕がグイッ・・・と持ち上げられた。

「佳苗さん、大丈夫?」
目の前には、大きいビニール袋を持った梶くんの姿。
左手で私を支えていた。

「あれ、梶くん。ごめんごめん、ありがとう。」

体勢を立て直し梶くんから離れる。
「何、今からご飯?私13時に休憩入れてなかったっけ?」
えらいずれてるな・・・
そのまま壁のホワイトボードに書き込んだ、休憩予定を確認する。

梶くんは私の横をすり抜けて、休憩室のテーブルに持っていたビニール袋を置いた。

「レジでゴネたお客さんがいてさ〜、パートさんかわいそうだから俺が応対してたの。」
「あっ、ホント?私呼んでくれればよかったのに。」
クレーム処理なんて、梶くんのする仕事じゃない。

梶くんはビニールからご飯を出しながら、笑う。
中華らしくて、油のいい香りが漂ってきた。

「だって佳苗さん忙しいもの。パートさん全員分の荷物だし1人でやってるんだから。それにクレームなんてほどのものじゃなかったしね。」

「そう?でも、ごめんね、ありがとう。」

確かに助かったかも。
クレーム処理してたら、検品終わってなかったし。

「いいよ、俺ここ長いから、なれてるんだ。」
梶くんは、この店舗が開店した当初からの人。
既に3年は働いていることになる。

全部ご飯を出し終わったのか、梶くんはマグカップを2つもってポットからお湯を入れる。
「あ、お茶までありがとう。じゃぁご飯買ってくるから・・・。」
そういいながら再びドアノブに手をかけると、くん・・・っ・・と左手を掴まれた。

「何見てるの、ここにあるよ。」
「は?」

テーブルの上を指差す。

「俺、こんなに食わないよ。佳苗さんの分も買ってきたんだよ。」

「え、そうなの?」

テーブルの上には確かに1人分にしては量の多いご飯が並んでる。
「いつも誰とも一緒に食べないからね、佳苗さんは。」
「まぁ・・・、それはそうだけど。」

「たまにはいいでしょ、誰かと食べるのも。」

促されるままマグカップを受け取り、椅子に座る。
カップの中は紅茶。
私の好きなお茶。

梶くんはテーブルの上のタッパーに気づいて蓋を開けながら、笑う。
「佳苗さんの紅茶好きは、皆知ってるからね。」
だって、ティーバッグの消費が半端ないし・・・そういいながら、買ってきた昼食のパックを次々とあけた。

「はい、お皿と箸。はい、いただきます。」

「い・・・いただきます。」

なんとなく勢いに押されながら、受け取った箸でお皿におかずを移す。
1人に1皿チャーハン。そこにから揚げと野菜炒め、春巻きが並ぶ。
ていうか、2人でも多い気がするけど。


なんていうかさ・・・、皆あったかいよなぁ・・。
初めての1人暮らしで、初めての土地で。
不安ばかりだったけど、このお店ならやっていけると思う。

「てか、皆やめてほしいよなぁ。佳苗さんへの俺の優しさが、埋もれてしまう。」
「ははっ、何それ。いや、でもホントにありがとうね、買って来てくれて。お金、いくらかかったの?」
梶くんはいーえっ、と首を横に振った。

「俺のおごり。」
「いや、それは悪いよ。せめて割り勘・・・。」
あわててお財布を取ろうとすると、先に梶くんがお財布を取り上げた。

「佳苗さんのほうが実入りいいのは分かってるけど、遠慮せずに。今度何かおごってくださいよ。」
「そういう意味じゃないけど、う〜ん・・・じゃあ今度お昼おごるわ。今日のところはありがたくいただきます。」

さっさとチャーハンを口に押し込む。
考えてみたら、休憩時間は1時間。
既にどのくらいたったのか。

梶くんは満足そうに笑うと、私の財布をテーブルに置いた。


「あら〜、2人でランチ?いいわねぇ、若いって。」
用があってバックヤードにきただろうパートさんが、休憩室のドアを開けた。

「北さん、邪魔しちゃだめでしょ。俺の努力を。」
「あらあらごめんなさいね〜。」
楽しそうに笑うそのパートさん、北さんは手をふりながら笑った。

「何いってるの。」

少し溜息をつきながら私が呟くと、北さんはタッパーを指差した。
「私お手製の紅茶のゼリー、食べてくださいね。うちの子には人気なんだけど。」
これ作ってくれたの、北さんだったんだ。
「あっ、ありがとうございます。いただきますね。」

立ち上がって頭を下げると、もう可愛いんだから〜と言いながら北さんは出て行った。

「まったく、皆、佳苗さんにかまいすぎ。」
「本当に気を使ってくださって、嬉しい限り。」

私、幸せなんだろうな・・・

そんなことを思いながら、梶くんに笑われるくらいガツガツと昼食をたいらげた。
よろしくお願いします!
カテゴリ別オンライン小説ランキング
HONなび


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。