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エリィ・ゴールデン ~ブスでデブでもイケメンエリート~ 作者:四葉夕卜/よだ

第四章 グレイフナーに舞い降りし女神

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第19話 オシャレ戦争・後日談2(砂漠の賢者と夜の街)

第2巻発売記念!
ということで連続投稿をしようと思っておりましたが、急性胃腸炎で完全にダウンしております・・・。何とか1話はアップできてよかった・・・。読者皆さまも体調管理には充分にお気をつけ下さい。

ということで例のあの人のお話です!
     ☆


 首都グレイフナー北西に位置する十四番街は王国内でも有名な歓楽街であった。
 色とりどりに輝く“ライト”の照明器具によって大通りは怪しい光を放ち、飲み屋やバーには客が引きも切らず出入りしている。

 ポカホンタスは茶色の古ぼけたローブを羽織り、楽しげに街を眺めながら歩いていた。

「そこのじいさん! 腕相撲やるかぁ?」

 酔っ払ったガタイのいい男がゲハゲハと笑いながらポカホンタスに向かって叫ぶ。

 ポカホンタスはちらりと看板の文字を確認した。
 『腕相撲酒場〜豚人のうんまい店〜』と書かれている。

 どうやらパンタ国出身の者がやっている酒場らしい。店の外に挨拶代わりの腕相撲台が置いてある。
 台を取り囲むようにし、男達が銀貨や銅貨を握っていた。

「バァカ! あんなじいさんじゃ賭けにならねえだろ」
「すまんなじいさん、こいつかなり酔ってるんだ」
「ほっほっほ、構わんよ」

 ポカホンタスは飄々とした足取りで腕相撲台の前へ立つと、右肘をつけて構えた。
 複合魔法を探して旅した際、パンタ国には世話になった。たまには腕相撲も悪くないとじいさんは思った。

 賭けに興じていた男たちはポカホンタスの奇行を見て目を点にし、大爆笑する。

「ぎゃーっはっはっはっは! ナメられてんぞジュディ! じいさんはお前に勝てるとよ」
「よっしゃ、おれぁじいさんに銀貨一枚!」
「俺はジュディに銀貨三枚だ!」
「ボクちんはジュディに銅貨五十三枚だチン!」
「てめえは銅貨以外で賭けやがれ!」
「ぎゃっはっはははは! ドワーフ族はちまちまやらねえ! ジュディに財布全部だぁぁ!」
「この御仁が高名な魔法使いだったらどうする!? 拙者は老父に銀貨二枚だ!」

 いい感じに盛り上がる腕相撲酒場。

 ジュディと呼ばれたガタイのいい男はポカホンタスを一睨みすると、余裕ぶった顔でじいさんの右手を握った。

 端から見れば若者が高齢者をいじめているようにしか見えない。
 しかしここはグレイフナー王国。
 こんなじいさんが若者を蹴散らすことは、ごくごく稀にある。

「レディー…………ゴーッ!」

 審判役のお調子者から合図が入り、両者が腕に力を入れる。

「うらあっ……ッ?!」

 ジュディは一瞬で勝負が決すると信じていたが、じいさんの腕がピクリとも動かないことに驚愕して両目を開いた。

「ほっほっほ、どうした若者よ?」

 じじいは涼しい顔でジュディを見ている。
 若者は怒りですぐに頭が沸騰し、歯を食いしばって思い切り右腕に力を込めた。

「うおおおおおおおおおお!」
「ほっほっほっほ」

 顔を真っ赤にし、ジュディは腕相撲台の端を左手で握り込み、思い切り体重をかける。
 だが目の前にあるじいさんの腕はびくともしない。
 右へ左へと身体を泳がし、どうにかしてじいさんの腕を動かそうとするが、ジュディはそれが周囲の笑いを誘うことまでは考えていなかった。

「ぎゃーーーーっはっはっはっはっは!」
「ダンス大会だぁ!」
「このじじいつええぞ!」
「ジュディが腕相撲台でダンスを躍るなんてな!」
「気合い入れやがれこのバカ! 俺の財布がからっぽになっちまうぅ!!」
「ジュディがんばれ! ボクちんの銅貨のためにぃ!」

 ジュディが暴れたせいでポカホンタスのローブがするりと肘のあたりまで下がった。
 現れた腕を見てジュディはぎょっとした。
 じいさんの腕はそこまで太くなかったが、筋肉でみっしりと覆われており鋼より硬そうだった。

「ほれ」

 ポカホンタスが軽く言うと、ジュディの右腕が思い切り腕相撲台に叩きつけられた。

「あぎゃぁ!」
「おお、すまんすまん。“治癒ヒール”」

 ポカホンタスは杖の形をした杖もどきを取り出して、若者の腕を回復してやる。杖なし魔法は何かと目立つためだ。

 周囲から歓声と悲鳴が上がった。
 全財産賭けたドワーフは腰が抜けて腕相撲台をひっくり返して豪快に倒れ、運良くポカホンタスに賭けていた者は雄叫びを上げて跳んだ。

「じいさんすげえな! どこの貴族だよぉ?!」
「身体強化したのか!?」
「じじいの腕触ってみろ! 硬えぞぉ!」
「カッチカチやぞ! カッチカチ!」
「ほっほっほ。身体強化なぞできるわけないじゃろ。鍛えてるんじゃ」

 事実、身体強化せずにポカホンタスは勝利していた。

 身体強化は高度な魔力操作と魔力循環が必要な技術だ。
 戦いに特化した戦闘集団、並びに才能のある者にしか使用は難しい。一般人が努力して使えるようになる技術ではなかった。

「身体を鍛え、心を鍛えるんじゃ、若者よ。グレイフナー王国に栄光あれ」

 ポカホンタスはそう言って颯爽と酒場を後にした。

 若者達はポカホンタスの言葉をあっさりと信じ、じいさんに尊敬の目を向けて挨拶を返すと、賭けの精算をして次の腕相撲をすぐに開始した。


 繁華街は“ライト”の光で煌めく。
 ポカホンタスは通りの奥へ奥へと進んでいく。


 歩きながら、今朝、エリィの父親を診断したことについて考える。

 空魔法上級“空診の名医師ラ・グランデ・シダクション”を使用した結果、彼の肺は病魔に取り憑かれているようで、自然治癒の見込みは薄かった。子どもの頃、古い地下廃道で悪い灰燼を吸い込んでしまったらしい。

 通常の病魔なら光魔法一発で治るのだが、どうやらエリィの父に入り込んだ灰燼には呪詛がかかっていたのか、相当強く彼の肺に根付いてしまった。

 定期的に白魔法を受ければこれ以上悪くなることはない。

 完治させるには白魔法超級“神秘の光”。
 もしくは上級浄化魔法が必要だ。

 ひとまずエリィには白魔法中級“加護の光”よりも中級浄化魔法“純潔なる聖光(ピュアリーホーリー)”を唱えるようにと伝えておいた。
 愛する娘の浄化魔法ならば、効き目はかなりあるだろう。あるいは、十数年かければ“純潔なる聖光(ピュアリーホーリー)”でも完治させられるかもしれない。

「わしは光魔法に適性がないからのぅ」

 歩きながら独りごちる。

 ポカホンタスの適性は『風』だ。
 白魔法だけはどう頑張っても超級まで習得できなかった。
 浄化魔法などの高難易度派生魔法も使用は不可能だ。

 ま、一生付き合う腰痛みたいなものだ。処方を間違えなければいい。

 ポカホンタスは気楽に考え思考を打ち切った。

 十四番街の大通りは赤、紫、ピンクなどのいかがわしい配色の看板へと変わっていく。

 大通りを抜け、路地へと足先を向けた。
 香水の匂いさせる客引きの女、酔いつぶれる男、路地裏に光る赤い“ライト”の看板。

 ポカホンタスはお目当ての店にたどり着いて足を止めた。
 彼が立ち止まった店のドアは真っ赤に塗られており、看板にはこう書かれていた。


『美尻専門店・チュパカブラ』


 若者から尊敬される老父の来る店の名前ではなかった。
 尻じじい、もといポカホンタスは満足げにうなずくと、何のためらいもなく店の扉を開いた。


     ☆


「ぷりぷりん属性のサキュバスのヴァルヴァラちゃんを指名するぞい」

 ポカホンタスは受付のボーイにそう告げる。
 『美尻専門店・チュパカブラ』は六芒星の属性魔法になぞらえて、チュパカブラ別属性というものを作っていた。その中でも人気の一つを彼は言い、指名表にない女の子の名前を指名した。

 店は名前のいかがわしさとは違い、おさわり厳禁のクリーンな飲み屋だ。
 全世界の尻ニストには有名な店で、働く女の子達は店主のこだわりが感じられる高い尻水準を誇っている。

 ボーイはぴくりと眉を上げると、全身に身体強化を施した。

「じいさん、その資格があるのか?」
「おぬし新人じゃな? 面倒じゃのぅ」

 ポカホンタスはため息をつく。
 その様子にボーイはさらに眉を上げた。身体強化ができるという強烈な自尊心が彼の態度に現れている。

「青い。青いのう」
「じじい……」

 ボーイが一歩踏み出そうとすると、肩に手を置かれた。
 彼がハッとして振り返ると、そこには真っ黒に日焼けした男が佇んでいた。

「ヒップ店主……!」
「やめておけ。お前が戦いを挑んでいい御方ではない」
「ま、まさか……伝説の尻ニスト……」
「分かったら持ち場に戻れ」
「はいッ」

 ボーイは背筋を伸ばして入り口のドアへと戻っていく。

「すみません。私の教育不足です」
「構わんよ。して、ヴァルヴァラちゃんは?」
「ええ、お待ちしております。こちらです」
「うむ」

 ヒップ店主は暗い店内の奥へとポカホンタスを先導し、隠し扉を開いてさらに廊下を進み、淡い光を放っている個室のドアを開いた。

「ごゆっくりどうぞ」

 室内は紫色の照明がじんわりと広がり、えんじ色のソファが一つ。奥には酒を作るためのバーカウンターが壁に向かって設えてあった。

 ヒップ店主が一礼して部屋から出ると、ポカホンタスとソファに座っている妖艶な女の視線が絡み合った。

「久しぶりじゃの」
「来てくれないと思った」

 ポカホンタスはヴァルヴァラちゃんの隣に座り、ソファに沈む彼女の横尻を盗み見る。思わず唸り声を上げそうなほど、イカした尻をしていた。

「して、あちらのほうはどうじゃ?」
「すぐ仕事の話なんてつれないわね」
「うむ、あまり時間がないのでな」
「何か飲む?」
「……ジェラのサボテン果肉入りノイリーバーボン。ティアの湧き水割りで」
「はぁい」

 ヴァルヴァラちゃんはゆっくり立ち上がると、わざと尻を見せつけるようにくるりと回り、ふりふりと動かしながらバーカウンターで酒を作り始めた。

 酒を頼めば女の子の後ろ姿が堪能でき、高価な酒ほど作るのに時間がかかる。 

 普通の店ならばすぐ客に尻をおさわりさせたり、わざとらしく尻を見せつけるようなコンセプトになっている。しかし『美尻専門店・チュパカブラ』は何気ない作業風景を見せるという、尻ニストの心をくすぐるシチュエーションを作っていた。この場に小橋川がいたら、なるほどな、と納得したことだろう。

 時間がないと言ったポカホンタスは彼女の尻など見ずに、何やら思索にふけっている。

 と思ったら、ヴァルヴァラちゃんの後ろ姿をガン見していた。
 しかも作るのに時間がかかる酒を注文している。
 やはりポカホンタスはどこに行っても尻じじいだった。

 たまらんのう、と彼が堪能しているとヴァルヴァラちゃんから声がかかった。

「お姉ちゃんがね、アリアナちゃんは教えた中で一番才能があるって」

 彼女は振り返ってニコリと笑った。
 尻が見えなくなってポカホンタスはがっかりしたが、彼女の笑顔もキュートだったため、うむと満足げにうなずいた。大きな瞳と高い鼻。口はサキュバス族特有の真っ赤なものだ。薄紫色の髪の毛は大きくウェーブしており、頭部にはコウモリの羽の形をした耳がちょこんとくっついている。

 ポカホンタスは弟子の可愛い狐人のアリアナが褒められたため、つい顔がほころんでしまった。

 ヴァルヴァラの姉を空魔法超級“空理空論召集令状(エアレター)”でオアシス・ジェラに呼び出し、アリアナに鞭術を教えさせたのはずいぶん前の話だ。グレイフナーに帰ってきてからも週三回、鞭術の稽古をアリアナにつけるようお願いしている。

「鞭術はセンスが重要じゃからのう」
「エリィって女の子もすごいんでしょ?」
「あの子は特別じゃ。身体の中に天才が二人入っているようなもんじゃよ。優秀だと言われる人間の三倍……いや、五倍は飲み込みが早い」
「へえ。あなたがそこまで言うなんてよっぽどね」
「複合魔法適性者の特徴じゃな」
「そうなの?」
「複合魔法は他の魔法より高度だと言われておる。そのため、適性者は通常の魔法使いより器用だというのが通説じゃ。器用でなければ複合魔法が使えん」
「そうなんだぁ」

 ヴァルヴァラちゃんはポカホンタスへのサービスなのか、バーカウンターへと身体の向きを変え、ひどく遅い動きでジェラサボテンをナイフで切り出した。

 ストン、とナイフがまな板に当たるたび、ぷりぷりん属性の尻がぷりぷりんと揺れる。張りがある丸い尻は、重力に逆らって上向きになっており、魔獣の革で作られたタイトスカートにぴっちりと張り付いていた。紫色の照明が、なんともいえないエロティックな影を作っており、ポカホンタスは鼻の下を伸ばした。彼はこのスカートがミラーズで売られているものとは知らない。

「して、例の件はどうじゃ?」
「ポカじいの言った通りだったわよ。セラー教がグレイフナー王国を嗅ぎ回っているわ」
「ふむ……」

 どうにも嫌な予感ばかりが先行する。
 セラー神国には濃い妨害魔法が展開されており、遠見の水晶で王宮や神殿を覗くことができない。
 完全秘密主義の国らしいと言えばらしいが、ポカホンタスの力を持ってしても魔法を突破できないとなると問題だ。

 ポカホンタスはエリィの他、複合魔法を授けた二人の顔を思い浮かべる。
 そのうちの一人はセラー神国に属しているため彼の安否が気になった。

「何か仕掛けてくるならば魔闘会じゃな。それまで引き続き調査を頼むぞい」

 セラー神国は複合魔法適性者を探している。
 なぜそんなことをするかは不明であったが、ひとまずは相手の目的を探るところから始めなければならない。落雷魔法を使える可愛い弟子のためにも、どうにか奴らの尻尾をつかみたいところだ。

「分かったわ」

 ヴァルヴァラちゃんは酒の入ったグラスをバーカウンターから持ってきて、ポカホンタスの前に置いた。サボテン果肉が浮いたバーボンからは炭酸のような小さな気泡がぷくぷくと湧いている。

「ヴァレンティナにもよろしく頼むぞい」
「はぁい。超級魔法でジェラに呼び出された怒りもようやく収まってきてるからね。お姉ちゃんかなり怒ってたからなぁ」
「うむ」
「あのとき、魔法力搾り取られたでしょ?」
「そうじゃな。干からびて死ぬかと思うたわい」
「だって使えるのポカじいしかいないしぃ」

 ヴァルヴァラちゃんはソファに座り、寄り添うようにしてポカホンタスの尻に自分の尻を当てた。

「ねえ、今日……シテくれるんでしょ?」

 普通の男ならころりとやられてしまう艶のある微笑を浮かべ、ヴァルヴァラちゃんがぺろりと舌先で自分の唇を舐める。

「ええぞい」

 事もなげにポカホンタスは言い、柔尻が自分の尻に触れる感触を楽しみながらさらなる思考をめぐらせた。

 セラー神国が複合魔法を求めている。
 理由は不明。
 今は亡きポカホンタスの師匠も複合魔法についてはあまり詳しくなかった。

 そもそも、複合魔法がなぜ存在するのかも分からない。ただの強い魔法ならそれまでであるが、四百年前に現れた落雷魔法使用者ユキムラ・セキノの情報が抜け落ちているため、すべてが推測の域を出ない。

 ポカホンタスはグラスを手に取り、酒を一口飲んだ。
 ジェラのサボテン果肉入りノイリーバーボンは爽やかな香りを鼻孔へ運び、舌先を軽やかに滑って喉へ落ちていく。

「うまい」
「ありがと」

 ヴァルヴァラちゃんが嬉しそうに笑うと、酒がより一層美味くなった。

 グレイフナー王国、湖の国メソッド、パンタ国、砂漠の国サンディ、冒険者同盟など、主要な国に四百年前の資料がほとんど残っておらず、ユキムラ・セキノがどこから来て、具体的に何を成したのか知る者はいない。

 ユキムラ・セキノと他の使用者の情報を消さねばならぬほど、複合魔法とは強大な力を秘めているのか?
 はたまた複合魔法を手に入れようとする勢力が情報操作したのか?
 単に情報がもともと少なかったため時間とともに消えたのか?

 何にせよ、もう少し複合魔法について調べないことには推測らしい推測すら立てられない。

 エリィ達の修業についても再考する必要がありそうだ。
 修業内容を一段階上げるべきだろう。

 彼女らは何か大きなことに巻き込まれる気がしてならない。
 自衛のため、自分の目が黒いうちに、すべての技術を叩き込んでおく必要がある。

 エリィには奥義『魔力内功』はさすがに無理だとしても、その一歩手前の『身体強化+魔法使用+十二元素拳』まではどうにか授けておきたい。

 アリアナは魔法の発動スピードをとにかく上げさせる。
 黒魔法は一撃が重いため、その辺を重点に鍛えなければ無用の長物になってしまう。

 時間があれば、しゃくれ顔のスルメと呼ばれる若者と、エリィの姉であるエイミーも直々にしごいてやりたいところだった。

 スルメは細かいことを考えるのは苦手らしいが、火魔法と身体強化には目を見張るものがある。余計なことをさせず、ひたすら火魔法と炎魔法のみを訓練させれば、王国で一二を争う猛者になる可能性を秘めていた。剣術もあれこれさせずに一撃必殺の流派をやらせるべきだ。
 週一回の稽古も休まず出席し、課題もクリアしている。根は真面目なのだろう。そこも彼のいいところだ。

 エイミーは魔力の保有量が半端ではなく、エリィと同等レベルだ。
 補助系の木魔法使いは魔力切れに泣くことが多いが、彼女はその莫大な魔力量で複数の仲間を援護する優秀な後衛になれる可能性を秘めていた。見た限り才能豊かで、複雑な魔法を複数展開することも訓練いかんによっては可能だろう。それに、エリィに負けない素晴らしい尻を持っている。

 ポカホンタスはここまで考え、ヴァルヴァラちゃんの横尻へと目を移した。

「ふむ。おなごの尻はいいものじゃ」

 すべての不安が解消されたら、こうして酒を飲みながら尻を眺めて日がな一日を過ごしたいものだ。

 ポカホンタスは酒を飲み干して立ち上がると、ヴァルヴァラちゃんのコウモリ耳にそっと触れる。
 彼女は嫌がりもせず嬉しげに顔を赤くし、期待に満ちた瞳をポカホンタスへ向けた。

「我らの奏でる音は永遠に響き、音楽とともに夜は更けん……“空夜の土曜日(ブルースブラザーズ)”」

 上位上級、空魔法“空夜の土曜日(ブルースブラザーズ)”が発動し、ポカホンタスの両手からジャズに似た音楽が流れ始めた。

「あはぁん。これこれぇ〜」

 ヴァルヴァラちゃんは恍惚とした顔つきになり、うっとりと両頬に手を当てた。

 サキュバス族は他人から放たれた魔法を吸収し、自分の糧にするめずらしい種族だった。火魔法や土魔法でも吸収できなくはないが、いかんせん効率が悪く彼女達が言うには味もよろしくない。おまけに火魔法は熱いし、土魔法は発動して物質になる前に吸収しなければならないので疲れる。

 彼女らサキュバスがもっとも好むのは、光魔法と風魔法。
 そして中でも大好きなのが、風魔法の上位にあたる空魔法であり、その中でとびきりのごちそうと言われているのが空魔法上級の音系魔法だ。

 音系を操る魔法は、空魔法上級と超級にしか存在せず、かなり高度である。
 この空魔法上級“空夜の土曜日(ブルースブラザーズ)”は自分が聞いた音を再現するという、伝達関連の魔法であり、習得している魔法使いはグレイフナー王国に存在しない。

「あああぁん。お、い、し、い〜〜っ」

 ヴァルヴァラちゃんは久々のごちそうに身悶え、真っ赤な口を淫靡に開いた。

 ポカホンタスはかつて旅していたときに聴いた音楽を再現している。
 この曲は誰も知らない曲だ。
 断崖絶壁『奈落』の向こう側にある、とある集落で奏でられていたものだ。

「ポカじいだぁいすきぃ〜」

 若い女にそう言われて嬉しくならない男はいない。

 ポカホンタスは魔法を唱えながら、「今ならバレまいて!」と心の中で叫んでヴァルヴァラちゃんの横尻をむにむにと揉んでデヘデヘと頬を緩ませた。

 サキュバス族と月読み魔法使いの繋がりは長い。
 かれこれ千年にもなる、というのがポカホンタスの師匠の話していた内容だ。

 これだけサキュバス族の尻を揉む男がいたかどうかは、過去の出来事まで見通せるという嫉妬の神ティランシルのみ知り得ることであり、かの神も尻について調べるつもりは毛頭ないだろう。

「ああん。もっとぉ〜」
「待ってくれまいか……さすがの……わしも……魔力息切れじゃ」
「だめぇん。だめだめ〜ん」
「こ、これ。そんなに吸うたらわしの魔力がぁぁぁ」
「お尻触ってるくせにぃ〜」
「バ、バレておるじゃと!」


 ヴァルヴァラちゃんの恍惚とした甘い声と、ポカホンタスの叫びが部屋にこだまする。

 エリィ、小橋川の知らないところで十四番街の夜は更けていくのであった。
『美尻専門店・チュパカブラ』

−属性早見表−
 ◯ぷりぷりん属性
 ◯こぶりぷりん属性
 ◯たわわにぷるん属性
 ◯きゅとしてぷるん属性
 ◯もにゅぷりん属性
 ◯ぽよぷるん属性

※キャストのご指名がない場合はお好きな属性を店員にお伝え下さい。
※複数のご指定でも問題ございません。店側で美尻キャストを厳選させていただきます。
+注意+
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