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エリィ・ゴールデン ~ブスでデブでもイケメンエリート~ 作者:四葉夕卜/よだ

第三章 砂漠の国でブートキャンプ

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第35話 砂漠のラヴァーズ・コンチェルト・前編

 子ども達を救出してから一週間が経過した。

 サンディとパンタ国の戦争が終わる、という噂話がちらほらと出ているが、いつ終わるか分からない。理想としては、戦争が終わって封鎖が解かれ、『赤い街道』を進み『トクトール』を経由して、パンタ国からグレイフナーに入るルートが安全で効率もいい。

 だが、ここまで長引いている戦争が、タイミングよく終わってくれるとは思えない。
 ポカじいには『旧街道』を二人で抜けられる、というお墨付きをもらっており、野営や食糧調達の方法もアグナスやジャンジャン、クチビール、チェンバニーから砂漠の冒険中に教わっているので、準備が済めばいつでも出発できる。孤児院の子ども達をジェラに預け、『旧街道』ルートで帰国し、戦力を整えて送迎するほうが確実だろう。

 ここ一週間、俺とアリアナは治療院で寝泊まりをしている。グレイフナーの子ども達が仮宿としているため、一緒にいよう、ということになったのだ。
 そして朝昼晩の三回、“純潔なる聖光(ピュアリーホーリー)”をかけることを日課にしていた。

「じゃあみんな、目を閉じて楽しいことを思い浮かべてね」
「はーい」
「思いつかない人は田中のファイヤーダンスね」
「はーい」

 グレイフナー孤児院の子どもと、魔改造施設に捕らわれていた子ども魔法使い達が全員集まった。治療院の真ん中に俺が立ち、円形になるよう均等な配置で子どもが並んだ。こうすれば一度の詠唱で一気に魔法をかけれる。
 ポーズは各々好きにしていいよ、と言ってあり、浄化魔法はリラックスしているとより効果が高まる。
 全員集まると五十人。この人数に魔法を一気掛けするのは慣れた。

 それより問題はオアシス・ジェラの人達ね。

 “純潔なる聖光(ピュアリーホーリー)”を見物しに来る人が跡を絶たない。
 なんでも、ど派手な浄化魔法を使っているエリィの姿が本物の女神に見えるんだとか。三日前から西の商店街の人達が整理券を配って会場整理を行ってくれている。
 まあ見るのは一向に構わないんだが、「ありがたや」といって祈りを捧げるのだけは勘弁してほしい。ほんとに。

 ルイボンなんかは領主権限、などと言って治療院の一番奥にある一段上がった席で、必ず浄化魔法を見物する。そして「ふ、ふん! 結構きれいね! そこそこにね!」という、褒める捨て台詞なる彼女らしい言葉を残し、嬉しそうに去っていく。

 時刻は昼過ぎ。
 治療院の窓や入り口は全開にされ、なるべく多くの人が浄化魔法を見れるように配慮されている。

「黒き道を白き道標に変え、汝ついにかの安住の地を見つけたり。愛しき我が子に聖なる祝福と脈尽く命の熱き鼓動を与えたまえ……“純潔なる聖光(ピュアリーホーリー)”」

 幾度となく唱え、魔力効率が良くなった“純潔なる聖光(ピュアリーホーリー)”が発動した。

 足元に精緻な白い魔法陣が浮かび上がり、身体から銀色の星屑が躍り出て楽しげに跳ねる。
 大量の星屑がきらきらと輝きながら子ども達の頭へと降りそそぎ、天からの祝福を浴びるように溶け込んでいく。
 子ども達の顔が、母親に抱かれたときと同じ、安らいだ顔になった。

 周囲から「ほぅ…」と感嘆のため息が漏れる。
 うん、みんなにはさぞ美しく見えることだろう。

 だがこっちは必死だ。五十人分の浄化魔法は魔力の消費が半端じゃない。霧散しそうになる“純潔なる聖光(ピュアリーホーリー)”を押しとどめるため相当の集中力を要するし、魔力がごっそりと抜け落ちて、百メートルダッシュを連続で五回するぐらい息が上がる。

 魔法が終わって、はぁはぁ息してる俺も神々しいんだとか。

 観覧者、お金取るよほんと。エリィが怒るだろうけどマニープリーズ。子ども達の養育費にするからマニープリーズ。金貨のみ受付マァス。


    ○


 俺とアリアナ、ジャンジャンはルイボンから、西の商店街にある二階建ての空き屋を譲り受けたところだった。
 コバシカワ商会の支部にする予定だ。
 その帰り道、『バルジャンの道具屋』改め『バルジャンの温泉』を目指し、大通りを三人で歩いている。

 ちなみに、フェスティには個別に“純潔なる聖光(ピュアリーホーリー)”をかけている。朝昼晩と寝る前の四回だ。
 そのおかけで黒魔法の精神汚染は何とか解除できた。
 塞ぎがちな心のほうも、ジャンジャンとコゼットのおかげで回復の兆しを見せている。

 ジャンジャンから「フェスティが笑った!」という報告を日に何度か受けるようになっていた。
 それはいい。それはいいんだ。
 すごーく喜ばしいことなんだ。でも何か忘れてないかジャンジャン。

「で、ジャンジャン。いつ告白するの?」
「な、なんだいエリィちゃん藪から棒に」
「いつになったらコゼットに愛を伝えるのよ」
「えーっと……うーん…ははは」
「えっとうーんはははじゃないわよ! フェスティが戻ってきてコゼットの気持ちが落ち着いた今がチャンスなのよ? わかってるの!?」
「わかってはいるんだけどね」
「煮え切らない男、格好悪い…」

 シャケおにぎりをもりもり食べながら、アリアナが無表情でちらりと流し目を送る。

「うっ……」
「明日のクノーレリル祭で告白しなさいよ。さもないとコゼットは私がもらうわ」
「ど、どど、どういうことだいそれは?!」
「文字通り攫っていくわ。もちろん了解を得てからね。コゼットはグレイフナーの私のお店で働いてもらいます」
「エ、エリィちゃんならやりかねない…」
「ふふん。さあどうするか決めてちょうだいね」

 両手を腰に持ってきて、胸を張ってジャンジャンを見やる。
 エリィの大きいわがままな胸が揺れた。

「あ、白の女神エリィちゃんだ!」

 大通りを歩いていると大抵、こうやって声を掛けられる。だいぶ有名人だ。
 手を振ってきたターバンを巻いた子どもへ手を振り返す。

「ハロー」
「ハロー!」

 狐美少女のアリアナも相当の人気で、道行く人から声を掛けられている。ちなみに、この数日間で、何人かがオリジナル黒魔法“トキメキ”の実験と称して心臓を止められていた。
 彼女の可愛さは心臓を止める、というのがもっぱらの都市伝説だ。
 いや、噂じゃなくてほんとなんだけどな。

「わかったよエリィちゃん。俺も男だ」

 ジャンジャンは決意したのか、きりりと眉を寄せ、決然とうなずいた。

「今日、お祭りのあと、コゼットに告白する」
「ホント? ホントね? 絶対よ!?」
「ああ大丈夫。エリィちゃんにそこまで言わせてしまったことが恥ずかしいよ」
「絶対に成功するわ。だから自信を持ってコクってらっしゃい」
「コクる?」
「告白するってことよ!」
「わ、わかった! ああ! コクる! コクるぞ!」
「いいわよ! その意気よ!」
「やっとやる気出した…」

 コンブおにぎりをもりもり食べながら、アリアナがため息をついた。
 その割に、尻尾は左右に激しく揺れている。彼女は大の恋愛話好きだ。


    ○


 ということで夜になり、そわそわしているジャンジャンがコゼットと連れだって出掛けていった。男達はターバンを巻くしきたりらしく、ジャンジャンは普段つけないターバンを頭に巻いていた。

 めっちゃ緊張してたけど大丈夫だろうか。
 あまりに初心すぎて高校生、というか中学生の甘酸っぱい青春の一ページを思い出してしまう。まあジャンジャンには、相手の目を見て、はっきり「好きだ」と言いなさい、と言い含めておいたから問題はないと思うんだが……不安だ。

 一方のコゼットはかなりのおめかしをして嬉しそうに家から出て行ったな。
 お祭りの日は綺麗な服装をすることが通例らしい。フェスティのためにつけていたドクロのかぶり物も久々に外していた。
 いやーまさに恋する乙女っていうの?
 もう期待に胸を膨らませて、頬を上気させていたな。アリアナが「頑張って…」と声を掛けたら「あうぅっ」と可愛らしい声を上げていた。
 おいジャンジャン。ここまで期待させといて何もしなかったら、まじでコゼット頂いていくからな。俺、美少女だけど。

 そんな二人を俺とアリアナは見送ると、バー『グリュック』に入り、二階に上がってコゼットの部屋に戻り、自分たちも出掛ける準備をすることにした。
 窓からは楽しげな喧騒が聞こえてくる。

 オアシス・ジェラでは一年に一回、人々の健康と繁栄を願い、婉美の神クノーレリルに祈りを捧げる。
 今はまだ戦争中ということもあり、簡単な縁日と踊り子による祭壇での演舞のみ、ということになったのよオホホ、とルイボンが言っていた。本来なら観光客が首都サンディや他国からもやってくる経済面でみても重要な祭なので、オアシス全体の総力を上げてやる行事なのだが、状況が状況なだけに仕方がないだろう。是非とも来年、観光で来たいものだ。

 バーのカウンターで黙々とグラスを拭くコゼットの親父さんに挨拶し、隣の家にいるガンばあちゃんにもいってきますと声を掛け、西の商店街を進む。さすが砂漠の町、ということもあり、お祭当日は鮮やかでエキゾチックなギャザースカートがそこかしこでひるがえっている。オアシスの人々は持っているとびきりの服で着飾って、中央広場を目指していた。

 俺とアリアナはコゼットに作ってもらった白の膝丈ジャンパースカートに、丸襟の半袖ブラウス。足元はサンダルで、アクセントを付けるためにバンダナに似たハンカチを頭に巻いている。
 ブルーのバンダナを三つ編みで編み込むようにして巻く、お洒落巻き。
 アリアナはポニーテールを真っ赤なバンダナで結わいている。きゃわいい。

 ぶらぶらと歩きながら知り合いと挨拶をかわし、西の商店街から大通りに入った。
 ちょうどそこで待ち合わせをしていたアリアナ遊撃隊の三人娘がこちらに気づき、嬉しそうに破顔して手を振っている。
 こちらも手を振り返すと、元気な虎娘、人なつっこい猫娘、真面目な豹娘が、尻尾をふりふりして駆け寄ってきた。

「ハロー! リーダー、エリィちゃん!」
「たこ焼き食べるニャ」
「リーダー、ボス、行きましょう」

 三人はどうしてもバンダナでお揃いにしたいというので、虎娘のトラ美はグリーン。猫娘のネコ菜が黄色。豹娘のヒョウ子がピンクのバンダナを頭に巻いている。
 なぜ女子はお揃いにしたがるんだろうか。某有名アミューズメントパーク、ネズミの王国にいくと、必ず同じTシャツを着ている女子グループがいるが、あの意味がわからん。誰か、女の子がおそろにしたがる集団心理の論文プリーズ。

「エリィしゃん、アリアナしゃん、今日も素敵な服でしゅね」

 その後ろから、ぬっと現れたのはクチビールだ。
 顔面が凶器のクチビールはボディガードとして呼んでおいた。デートしたいって行ってたし。

「ありがと」
「エリィのセンス…」

 しかしあれだよな。
 エリィ、こんだけ美人になったから惚れる男が増えるよな。クチビールは紳士的で対応が楽だけど、強引に迫ってくる男が今後いないとも限らない。その辺の対応も考えておかないと面倒くさくなりそうだ。美少女つれぇ~。

 俺、アリアナ、クチビール、三人娘、の六人でたわいもないことをしゃべりながら中央通りを歩いていく。

 通りの両側には各商店街からの露店が出ており、日本の祭と少し似ている気がしないでもないが、暖簾や作りのいい屋台などはなく、各店でサイズや規模はバラバラ。それがかえって面白く、つい歩きながらきょろきょろと見てしまう。

 それから、孤児院の子ども達には年少組以外、出店の手伝いをするように言ってある。たこ焼きがオアシス・ジェラの名物になりつつあり、人手が足りないってギランが言ってたからな。子ども達にはどんどん社会経験をしてほしいと思う。

 大通りには食べ物屋だけではなく、クジや、ゲームなんかの露店も出店されていて面白い。
 やってみたいのは、極上魔力ポーションが当たるという触れ込みの胡散臭い魔法クジ、風魔法ウインドの的当て。途中、人だかりがすごかったのは、偽りの神ワシャシールの決闘法で賭けをしているゾーンだった。賭けの外れた客が胴元にバックドロップを決め、そこから乱闘騒ぎになり、どっちが勝つかの賭けに発展してやたらと盛り上がっていた。とりあえず何でも賭けにするのはこの世界の常識らしい。

 そこかしこでターバン姿の男達がエールや酒を飲んで馬鹿笑いしている。
 やはり全員がターバンを巻いているのは見ていて面白いな。観光気分だ。

 隣にいるクチビールが、まじで似合わないターバンを巻いているのには正直何度か吹いた。というより、今も吹いてしまった。ウケる。

「ひどいでしゅよエリィちゃん」
「似合ってなさすぎよ」
「巻くのに一時間かかりましゅた」
「砂漠の極悪盗賊団の下っ端って感じよ」
「しょれはあんまりでしゅよ~」

 前を歩いているアリアナと三人娘がきゃぴきゃぴと楽しそうに話している様子が微笑ましい。頭にぴょこんと乗っている獣耳にたまらなく癒される。
 俺とクチビールはこのスーパー癒し四人娘の護衛みたいなもんだ。
 かわいらしい四人に話しかけようと近づいてくる奴は大体クチビールの強烈な顔を見てぎょっとし、白の女神であるエリィの顔を見て遠慮をしてくれる。

「ねえエリィ…」

 アリアナが振り返った。
 なんだかその仕草が妙に色っぽくて一瞬どきりとしてしまう。

「なに?」
「耳を揉んで欲しい…」
「あー、リーダーずるいぞ! 私も!」
「あたしも揉んで欲しいニャ」
「ボス。揉んで下さい」

 なぜがおねだりをされ、狐娘、虎娘、猫娘、豹娘に囲まれる。
 目の前にはキツネの耳、左にはトラ柄の耳、右にはまだら柄の耳、その横にちょこんと小さなヒョウ柄の耳。

「しょうがないわねえ」

 もふもふもふもふ。
 もみもみもみもみ。
 つんつんつんつん。
 さわさわさわさわ。

「ん……」
「ひあっ!」
「ニャニャニャッ」
「わっふぅ」

 あーこれやっぱ世界平和だわー。
 癒されるー。ずっとこうしてたいー。

 しばらく耳を揉んでいると人だかりが出来てしまったので、後ろ髪を引かれる思いだったが両手を離した。
 他の知らない人に耳をもふもふされたら大変だ。
 特にアリアナの耳を触られたら、その不届き者に思わず“電打エレキトリック”して“電衝撃インパルス”して“雷雨サンダーストーム”しちゃうかもしれない。

「どうしたの…?」
「何でもないわ。さあ、行きましょう」

 まったり歩きつつ、中央広場に辿り着いた。すごい人だかりだ。
 クノーレリル祭のために特設ステージが組まれており、千人規模の大きなホール同等の舞台装置が設置してある。装置といっても全部が魔法が必要な仕掛けだから、やぐらの上に何人も人間がいるんだけどな。
 照明やぐらのところなんかは、大きな筒状の器具に杖を突っ込んで光魔法“ライト”を詠唱している。どうやら色付きの布が仕込んであるらしい。布を通せば色とりどりの光線で舞台上をライトアップできる、という寸法だ。

 背後には月夜に水面を輝かせるオアシスがあり、ハープや横笛の演奏が、聴き手の心まで入り込んでくるような、淡く、甘美な音色を紡いでいる。
 女性の若い踊り子が音楽に合わせて一回転すると、ギャザースカートや腰まである幾何学模様に編み込まれたヴェールが扇情的にゆったりとひるがえる。旋律に合わせて青や赤の照明が点滅し、舞台裏にいるらしい魔法使いが“ファイア”で炎を出して場を盛り上げる。
 文明の利器なんか思いっきり無視したリアルファンタジー。魔法もここまでくると芸術だな。
 思えば遠くへ来たもんだ。

「きれいだね…」
「そうねぇ」

 アリアナが舞台を見ながらぼんやりと呟いたので、それに答える。
 近頃は彼女が何を考えているのがわかってきたような気がする。あまり言葉は必要ない。隣にいて、視線を交わせば何となくお互い満足できた。アリアナもどうやらそう感じているらしい。思えばアリアナともここまで心を通わせられるとは、出会ったときは想像もできなかった。魔法学校の合宿のときなんか、めっちゃ暗かったもんなぁ。


    ○


 舞台の演舞は夜が明けるまで続けられる。
 俺たちは情緒溢れる景色を堪能し、舞台から離れ、オアシスに沿うように右方向へと進み、所定の場所へ移動することにした。
 途中、最前列のかぶりつきの席で、酒を飲んだスケベじじいが踊り子のぷりんぷりんの尻を見て「尻の冒険ここに極まれり」と言っていた気がするが、せっかくのファンタジックさがぶち壊しになりそうだったので、気のせいということにしておいた。

「エリィ、こっちで間違いない?」
「ええ。アグナスちゃんが合図を送ってくれたから間違いないわ」

 照明で明るい舞台から遠ざかるほど、周囲は薄暗くなる。
 オアシスが舞台上の光に照らされ、水面が揺れて幻想的に屈折し、見る者の目を穏やかにさせる。

 中央広場からオアシスに沿うようにして続いている遊歩道は、ジェラで有名なデートスポットであった。
 等間隔に設置されたベンチはオアシスを眺めるため遊歩道に背を向けてあり、その後ろには手入れをされた腰ほどの高さの植え込みと、金木犀が十メートルおきに植えてある。
 そう。そうなのだ。ベンチに腰をかけると、遊歩道からはカップルの頭だけが見え、身を沈めて抱き合えば、どこからも見えなくなる、完全なるイチャイチャポイントなのだ。東京だったら井の頭公園とか代々木公園みたいなもんか。
 これはいい。すごくいいぞ。女の子を口説くときに絶対使うわ。俺、乙女で美少女でお嬢様だけどぉ! くぅぅっ!

 何となく音を立てないように、俺とアリアナ、クチビール、三人娘は遊歩道を進む。
 すると、赤い髪を束ねて右肩に垂らしている普段着のアグナスが、金木犀の脇にしゃがみこんで手招きをしていた。

「エリィ…!」とアリアナが笑みを浮かべる。
「どうやらあそこのようね…!」俺は生唾の飲み込んだ。
「でしゅ……かっ」神妙にうなずくクチビール。
「ごくり」わざわざ効果音付けるトラ美。
「ニャニャンと…!」興奮するネコ菜。
「覗きはよくないかと……でも……!」好奇心に負けてついてくるヒョウ子。

 中腰になって素早く移動する。

 アグナスはこちらを見ると、美麗な顔を茶目っ気たっぷりにニヤリと釣り上げ、親指を背後に向けてこちらに来いとジェスチャーをした。
 こそこそと彼のあとについていく。
 足元は芝生で、眼前には生命の源である水をたたえたオアシスが広がっている。

 植え込みに隠れるようにしてメンバーが集まっていた。
 しかし、当初の予定より大人数で、思わず目を剝いてしまう。

 まずはルイボン。彼女を守るようにアグナス、トマホーク、ドン、クリムトのアグナスパーティー。
 さらにはバーバラと女戦士、女盗賊。
 冒険者上位ランカーと、調査団に参加した冒険者達。
 調査団に参加したジェラの兵士達。人数が足りないのは非番をもらえなかった連中がいるためらしい。チェンバニーは長期休暇でジェラにはいない。

「なんでこんなに集まってるのよ…!」

 小声でアグナスに抗議した。

「すまないエリィちゃん。話したらどうしても全員来たいと言ってね……ははは」
「エリィ! こんな面白いことなんでわたくしに教えてくれないのっ!」
「ちょ! ルイボン声が大きいわよっ」
「あら…ごひぇんふぁひゃい」

 思わずルイボンの口を右手で塞いだ。

「大丈夫だエリィちゃん」
「どこが大丈夫なのよっ。こんなにいたらバレちゃうでしょ…!」

 狭い植え込みの陰にこれだけの人数が隠れているのだ。息が詰まりそうなほど、ぎゅうぎゅうのすし詰め状態で、約四十人がしゃがみこんでいる。
 愛を囁き合っているバカップルでもさすがに気づくだろう。

「コレを見てほしい」

 自信ありげにアグナスが呟き、植え込みの横にある土壁を指さした。
 ん? そういえば言われるまで気づかなかったが、めちゃくちゃ不自然な位置に、ベンチを覗く目的のために作られたかのような土壁がある。
 腰の高さぐらいの土壁が、集合しているメンバーの横に五メートル伸びていた。
 これなら顔を出せばベンチの様子が手に取るように分かる。

「土魔法“サンドウォール”に光魔法“幻光迷彩ミラージュフェイク”をかけ、さらに空魔法“空散錯覚エアミスリード”、それからポカ老師にお願いして空魔法上級“空廷の傍聴者(ケ・セラ・セラ)”を付与してもらったんだ」

 魔法の無駄遣いっ!

「こうして耳を近づけると…」

 アグナスが土壁に顔を近づけたので、それに倣う。
 すると、微かな人の話し声が聞こえてきた。

『そうだなコゼット……平和だな』
『うん。それもこれもエリィちゃんのおかげだよね』
『ああそうだな。助けたときは変わった子だなって思ったけど、今思えばあれは運命だったのかもしれない』
『運命……かぁ』

 思いっきり盗聴じゃねえか!
 みんなすんげえニヤニヤしながら嬉しそうに土壁に耳くっつけてるよおおおお!?
 いや、俺はここまでしてほしいなんて言った憶えはないよ。ちょっと心配だったから邪魔が入らないように見守ろうって話だったよね? 違うかね?

「アニキ…!」
「敵か。何人だ?」
「若いカップルです」
「フォーメーション・パリオポテス」

 アグナスが鋭い目線を全員に走らせる。
 おいおい何が始まるんだと思っていたら、アリアナがこくりとうなずいて、遊歩道から近づいてくるカップルに黒魔法下級“重力グラビトン”をかけると、「うお!」「きゃあ!」と急に身体が重くなって男女が驚き、いつの間にか“浮遊レビテーション”で浮いていたバーバラが素早く男の後ろに回り込んで首筋に手刀を落とし、身体強化した盗賊女が忍者みたいに駆けだして女の口元をハンカチで塞いだ。

「うっ」
「……!?」

 がくり、と首を前に垂らし、デートを楽しんでいたカップルは意識を刈り取られた。

 ええええええええ!
 いつの間にそんな打ち合わせしてたんだよ?!
 聞いてねえよ?!

 アリアナを見ると、長い睫毛をぱちぱちさせ、当然だという顔でこくりとうなずいた。
 打ち合わせしてたこと聞いてないよお兄さん!?

 ジェラの兵士二人が遊歩道へ飛び出し、バーバラと盗賊女と協力してカップルを運び、近くのベンチに座らせ、アグナスが満足げに首肯する。

「よしっ…」
「よしじゃないわよ…!」
「さすがアグナス様」
「ルイボン?!」

 もうツッコミどころが多すぎてあかん。

「くっ、見えづらいな……我は闇に潜む獲物を捕らえる……“梟の眼(オウルアイ)”」

 冒険中、ずっとクールだったターバン姿のトマホークが歯がみしながら木魔法中級をかける。
 まじで魔法の無駄遣いッ!

 てゆうか土壁から顔出したらバレる!
 頭下げて頭っ!
 と言いつつ俺も覗いちゃうけどぉ!

 両目だけ土壁から出るようにして、そろりとジャンジャンとコゼットの様子を伺う。

 二人は拳一つ分の距離を開けてベンチに座っていた。奥にジャンジャン、手前にコゼット。コゼットの顔はジャンジャンに向けられているため、こちらからは見えない。
 眼前に広がるオアシスにはカンテラをつけた船がぼんやりと浮かび、遠くからはハープと縦笛の音色が微かに聞こえる。
 ちょうど曲の終わるところだったのか、美しい旋律が途切れ、その代わりに拍手が響いた。

 ジャンジャンは『曲が終わったみたいだな』と言い、コゼットが『そうだね』と優しげに答える。
 うん、前言撤回。この盗聴土壁最高。グッジョブと言わざるを得ない。

『ねえジャン。……そろそろエリィちゃん達、ジェラからいなくなっちゃうんでしょ?』
『賢者様が旧街道へ行くことを許してくれた、って言っていたからな』
『はぁ……ずっといてくれないかなぁ』
『そういうわけにもいかないよ。それに、グレイフナーの子ども達はジェラに置いていくことにしたみたいなんだ。もう西の商店街で子ども達の受け入れは決まっているし』
『え? そうなの?』
『旧街道を子ども連れで歩くのは危険だ。グレイフナーに一旦戻って、戦力を確保してから迎えにくるんだってさ』
『じゃあまた会えるね!』
『ああ、そうだな』
『よかったぁ~』
『………俺はさ、エリィちゃんのやっている商会に入ろうと思っているんだ』
『コバシガワ商会っていう不思議な名前の?』
『商店街を救ってもらったときの手腕をコゼットも憶えているだろ』
『うん。エリィちゃん何でもできて格好いいよねぇ。男の子だったら惚れちゃうよ~』
『…そ、そっか』
『いつも真っ直ぐで、思いやりがあって、お仕事もできて、努力家で…はぁ~憧れちゃうなぁ…』
『たしかにそれは……俺もそう思うけど』

 なんか俺の話題で盛り上がってるな。
 そうかそうか、コゼットは俺に惚れちゃうかぁ。いやー嬉しいねえ。
 ジャンジャンは少し複雑な表情を作ってオアシスの水面へ視線をうつし、すぐにコゼットへ戻した。

『きっとエリィちゃんのやる商会は大きくなると思うんだ。それに、何かとんでもないことをしてくれるような気がする。その手伝いができればいいなって思うんだ』
『うんうん! いいと思う! 私もジャンのこと応援するね!』
『……それでさ……コゼット』
『なに?』
『お前もそばにいてくれないか?』

 ジャンジャンが真剣な面持ちでコゼットを見つめる。
 心なしかベンチに座る二人の距離が近づいたように見えた。

『もちろんいいよ』

 後ろ姿で見えないが、コゼットは笑っていると思う。
 ダメだジャンジャン。そんな回りくどい言い方じゃコゼットは気づかないぞ。彼女はお前に好かれているとは思ってないからな。
 コゼットは真面目すぎるんだ。フェスティが攫われたとき、助けを呼べなかったことを未だに悔やんでいて、自分を卑下している。
 だから、ここでジャンジャンが押して押して押しまくって、彼女を認めてやれ。
 そうすればすべてが丸く収まって、コゼットが自分をようやく等身大の自己評価をできるんだ。決めろ。男みせろやジャンジャン!

「んふー、んふー」
「ん……」

 それにしても右隣にいるルイボンが興奮しすぎで鼻息が荒い。
 左隣にいるアリアナは真剣な顔でコゼットとジャンジャンに“魅了せし者(チャーム)”をかけて操り人形にし、キスさせようか悩んでいる。今いいところだからやめてぇ!
 アグナス、ドン、トマホーク、クリムト、バーバラ、女盗賊、女戦士、冒険者達、兵士達は重なり合うようにして、我先にと強引に土壁に耳を当てている。「重いっ」とか「どけ」とか「邪魔よ」とか、静かなる陣地争奪戦でもうぐっちゃぐちゃだ。
 クチビールはその後ろで四つん這いになり遠巻きに二人を見つめ、その上に三人娘が乗っかっていた。

 そうこうしているうちにジャンジャンは決意したのか、ゆっくりと両手を伸ばし、コゼットの華奢な右手を包み込んだ。

『コゼット』
『ジャ、ジャン……?』


――――!!!!?


 コゼットが息を飲み、俺たちは生唾を飲み込んだ。
 土壁の下にいる連中は何が起きたか分からず「どうした…?!」と小声で尋ね、上の方を占領している連中が「手を握った…!」とぼそぼそと実況する。
 さらに興奮の空気が膨張していく。

『そういう意味じゃないんだ…』
『それじゃ……どういう……?』

 不安げな声を上げるコゼット。やはりここまで言われて、ジャンジャンが自分のことを好きだ、という考えには至らないようだ。

 押せ。ここが正念場だジャンジャン。押すんだ。
 両手を握る拳に思わず力が入る。
 ふんすーふんすー、と隣のルイボンの鼻息がさらに荒くなる。うるさい。

『ずっと……ずっとお前と一緒にいたいんだ』
『え…………?』
『なんで俺が冒険者になったと思う?』
『それは……フェスティを探すためじゃないの?』
『そうだ。……俺はフェスティを探し出し、自分を責め続けるお前を否定したかった。俺は愛する二人のために冒険者に……男になろうと思った』

 そこまで言い切ると、ジャンジャンはコゼットの手を握ったまま、身体を寄せた。
 二人の太ももがくっつき、視線が生々しく絡み合う。

 うっすらと舞台上から、愛のプレリュードが流れ、ちゃぽん、とオアシスにいる小魚が遠慮がちに跳ねた。
 想い合う二人の間を、ゆったりしたそよ風が吹き抜ける。
 さわさわ、と金木犀が葉音を鳴らす。

『コゼット………お前のことを愛している』

 ジャンジャンが優しげにコゼットを見つめ、微笑んだ。
 その笑顔は心からの言葉だと誰が見ても分かった。長年心の奥底へ仕舞い込んでいた彼の本当の気持ちだった。周囲の人間も胸を打たれ、ため息まじりの呻き声を上げる。
 コゼットはびくり、と身体を震わせ、困ったように肩をすぼめた。

『う、うそ……ジャンが……わたしのこと……』
『嘘なんかじゃないさ』
『でも! でも!』

 触れれば壊れてしまいそうな、そんな危なげな声色でコゼットが身をよじった。

『コゼット。落ち着いて。俺の目を見てくれ』
『………』

 コゼットはジャンジャンに握られていない手で胸を押さえ、おずおずと逸らした顔を愛しの彼へ向けた。
 視線が再度、絡み合う。
 婉美の神クノーレリルが合図を送ったかのようなタイミングで、舞台上で吟遊詩人が甘いバラードを歌い始めた。恋に恋をする乙女が男に恋慕し、やがてふたりは両想いになるという甘ったるい詩が、テノールのビブラートに乗り、ゆったりと小さな音でベンチにいる二人へ染み込んでいく。

『コゼット……俺と………俺と結婚してくれ』
『……ジャン』
『優しくて可愛い、お前のことが好きなんだ。子どもの頃から、ずっと……好きだったんだ』
『………』
『お前のことを愛している』

 隣にいるルイボンが「ううっ」と言って目と鼻を両手で覆った。
 どうやら感動と興奮で涙と鼻血が出たらしい。
 アリアナが目元を潤ませ、涙を堪えている。

『私も…………私もジャンが好き………私と、結婚、してくれますか?』

 コゼットが涙声で愛を告白し、左手をジャンジャンの手へ添えた。
 そして、どちらからともなく近づき、抱き合った。

『コゼット……』
『ジャン……』

 二人は一度離れ、お互いの顔を確認し、蕩けた顔で見つめ合う。
 これで……ようやくジャンジャンとコゼットの恋が成就したんだ。よかった……ほんとよかった!
 どんだけ心配したと思ってるんだよ。ジャンジャンもやればできる男だ。よくやった!

 そうと決まったらさあ、熱い燃えるようなチッスを!
 ぶちゅーっと! いってしまえ!

 隣のルイボンは「はわわっ」と声を殺して呟きつつ、目を充血させて食い入るようにベンチの二人を見ている。
 アリアナは恍惚とした表情で「早く…キス…」とうわごとみたいに繰り返していた。

 そんな俺達の心の叫び、魂の叫びが聞こえたのか、恋人となった二人はゆっくりとお互いの唇を近づけていった。

 まさに、唇が触れあうと思ったそのときだった。


 ドグワッッ!!
 どたんばたん!!!
 ガチャチャンガチャン!!!
 ごろごろ、どさどさどさっ!!!


「いてっ」「うわ!」「しまっ……!」「きゃあ!」「ん…?!」「くっ!」「壁が!」「なんということだ!」「でしゅっ!」「ニャに?!」「キスっ?!?!」「よがっだ!」「いってえ!」「重い!」「どけっ!」「誰かおっぱい触った?!」「いててて……」「はわわっ」「ルイス様鼻血っ?!」

 全員の圧力に耐えられなかった壁が決壊し、折り重なっていた連中がつんのめるようにして前方に投げ出され、雪崩式にごろごろと愛し合う二人の前へ転がった。
 小さい悲鳴や焦りが口々から漏れると、全員の視線と、驚いて振り返るジャンジャン、コゼットの目が、ばっちりかち合った。

「みみみ、みんな?! ど、どうして?!」
「え? え? え? え?」

 ジャンジャンが叫び、コゼットは完全に思考が停止したようだ。二人は目を白黒させて立ち上がり、手を取り合ってこちらを見下ろした。

 四十人の瞳が、愛を囁き合って今まさにキッスをしようとしていた男女の視線と交錯する。

 あかん………。
 どうしよう………。
 言い訳が思いつかない………。

 全員がそう思った。
 長い沈黙がオアシスのデートスポットに落ちる。

 その沈黙を破ったのは、コゼットだった。

「あわわわわわわ! 違うんです! こ、こここ、これは! あのあのそのジャンがその! 私に好きって言ってくれて結婚するって言ったからキス! キキキキキ、キスゥ?!」

 ぼんっ、と音が聞こえそうなぐらいコゼットが顔を真っ赤にし、ジャンジャンの後ろに隠れてしゃがみ、両手で顔を覆った。恥ずかしくて誰とも目を合わせたくないらしい。

「やはり“サンドウォール”に魔法を重ねがけするのは無理があったみたいだね」

 やれやれ、とアグナスが立ち上がって服に付いた芝生を払い、崩れた土壁を見て肩をすくめた。あんたはいつでも冷静すぎる。

「フォーメーション・クノーレリル!!」
「応ッッ!!!」

 突然のアグナスの叫びに、冒険者と兵士、は素早く立ち上がり、ジャンジャンを取り囲んだ。

「な、なにを…?!」
「やれっ!」

 屈強な冒険者と兵士、約四十人に囲まれて全身を掴まれると、ジャンジャンは天高く胴上げされた。
 誘拐調査団で二週間ジャンジャンと共に行動していた面々は、彼がいかにコゼットを愛しているかを散々聞かされていた。それを知っていたので、本気泣きをして「おめでとう!」とジャンジャンを祝福する。しかも身体強化している奴がいるのか、大きな月に届かんばかりにジャンジャンの身体が宙に浮かぶ。

 何度も身体を宙に浮かせ、ジャンジャンも何だかだんだん面白くなってきたらしい。謝辞を叫びつつ、笑っている。

 恥ずかしがるコゼットに俺とアリアナ、ルイボン、三人娘が寄り添って祝福の言葉を贈った。ついでに鼻血をだらだら流しているルイボンに“治癒ヒール”をかけた。

「エリィぢゃああああん! わだじジャンど結婚じばずぅ!」

 俺の胸に顔をうずめてコゼットがぐりぐりと顔をこすりつけてくる。
 コゼットのジャンジャンに対する想いをずっと聞いていたので自分のことのように嬉しく感じ、熱い気持ちを込めて彼女を抱きしめた。コゼットの柔らかい匂いが鼻をくすぐる。

「よかったね」
「うん」
「コゼット頑張った……偉いね」

 アリアナが弟妹を宥めるときと同じ仕草でコゼットの頭を撫でた。

「アリア゛ナ゛ぢゃん! だいしゅきぃぃぃっ!」

 コゼットはアリアナにも飛び付いて、ぐりぐりと顔を胸に押しつけた。


 こうして想い合うふたりは結ばれた。めでたしめでたし。



    ○


 で、なんで二人がうまくいったあとに俺がクチビールと冒険者三人、兵士四人から告白されてんの?
 しかもエリィの恋愛に対する免疫がなさすぎて顔がまじであっつい!
 絶対に顔真っ赤だわーこれ。

「エ、エリィしゃん! 第一印象から決めてましゅた! 僕と付き合ってくだしゃい!」
「おねがいします!」
「おなしゃす!」
「エリィちゃん可愛すぎて死ねる!」
「僕をグレイフナーに連れてって!」
「君は俺が守るッ」
「好きです! マ・ジ・デ・君に恋してる!」
「トキメイたっ! いや、トキメイてるっ!!!!」

 屈強な男達八人が、右手を突き出して頭を下げている。
 クチビールは薔薇っぽい花を一輪持って差し出していた。

「え……あのぉ………」

 え、あのぉ、じゃないよ?
 ちょっとエリィさん、勝手に内股擦り合わせてもじもじするのやめようね。
 これじゃリアル乙女だから。もーやだー。

「皆さんの気持ちは嬉しいんだけど……ごめんなさい……」

 うおおおおおお、なんか勝手に断ってるし!!!
 口が独りでに動くの慣れねえ!!

「でしゅっ!」

 クチビールが白目を向いて倒れると、他七名もハートブレイクし、無残な恋の灰となった。
 気持ちはわかる。わかるけど、本当に勘弁してほしい。
 勝手にエリィが動いて制御不能になるし、なんかめっちゃ恥ずかしい行動するし、何回やっても勝手にしゃべるの慣れないし、まじで恋愛はタブー! いいな!?
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