挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
エリィ・ゴールデン ~ブスでデブでもイケメンエリート~ 作者:四葉夕卜/よだ

第三章 砂漠の国でブートキャンプ

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

57/123

第26話 イケメン砂漠の誘拐調査団・空房の砂漠

 暑い。
 とにかく暑い。
 照りつける太陽が容赦なくすべてを熱し、延々と続く灰褐色の荒涼とした大地が熱で揺らいで陽炎のように通りすぎていく。調査団は馬車を引きながら黙々と行軍進路を進み、ただひたすら砂の大地を靴底で踏みしめる。

 露出の高い服だと確実に熱中症になって日焼けするので、通気性のいいギャザースカートを履いてヴェールを頭に巻き、直射日光を浴びないようにしている。隣にいるアリアナは歩きながら黒魔法“重力軽減グラビティリリーフ”を自分と俺にかけて、魔法の発動練習をし、喉が渇くと袖を引いてくる。

「エリィ…いい?」
「いいわよ。“ウォーター”」

 魔法を唱えて場所を指定すると、バレーボールぐらいの水球がアリアナの前に現れた。彼女は空中に浮いたままの水球をよけずに顔を近づけて、こくこくと小さい口で水を飲み、満足するとそのまま頭を水球の中へといれた。

 そこで魔法を解くと、水球が引力に引かれて真下に落ちる。

「冷たくて気持ちいい…」

 上半身が常温より少し冷たい水に濡らされ、気持ちよさそうに目を細める。狐耳が水を弾いてぴくぴくと前後に動いた。耳と尻尾は完全に動物の動きと同じだよな。

「そういえばどうして自分で“ウォーター”を唱えないの?」
「……ダメ?」

 とてつもなく悲しい顔して狐耳をへにょんと萎れさせ、アリアナが上目遣いでこちらを見てきた。
 あ、なんかごめん。そういう意味で言ったんじゃないんだ。
 そんな顔されるとお兄さん胸が苦しいっ。

「そうじゃなくてね、アリアナも“ウォーター”は使えるじゃない? 私に頼むより自分でやったほうが早いと思って」
「エリィの“ウォーター”のほうが…味が甘い………気がする」
「あらそう?」
「うん。そんな気がする…」
「違うわよね~。アリアナちゃんはエリィちゃんにやってもらいたんだよね~?」

 そう言って俺とアリアナの間に入ってきたのは、試験6位で722点の実力を持つ踊り子風の女性『撃踏のバーバラ』だ。彼女は砂漠の女性らしい褐色の肌に白い歯を覗かせ、切れ長な目をいたずらに細めて笑っている。どうやらアリアナが好きらしく、かまいたくて仕方ないみたいだ。
 歳は二十一歳って言ってたから地球だと大学生だな。妙に大人っぽいのはやっぱ修羅場をくぐり抜けてきていることと、婚期が早い異世界のせいだろう。魔物の危険があるこの世界では死亡率が高く、早くに結婚して子どもを残す文化が根付いている。
 聞いたら、バーバラは結婚していないそうだ。冒険者になる女性は婚期を逃すパターンが往々にしてあるのよ、とやけっぱち気味に言った。

「ほ、本当にエリィの“ウォーター”は甘いから。だから…」
「いいのよアリアナちゃん。頼むときはちゃんと『エリィにやって欲しいから“ウォーター”を唱えてくれないかな?』ってはっきり言いなさい。ほら、できるでしょ。せーの、はい」
「………………むぅ」
「むう?」
「できない…」
「できない? なるほどなるほど。そう言うってことは、エリィちゃんに“ウォーター”をして欲しいだけなのよね?」
「……!」
「ああーやっぱりそうなんじゃない。甘い“ウォーター”があるなんて聞いたことがないもの!」

 アリアナは歩くことをやめて、恥ずかしいのかぷるぷると下を向いて小刻みに震えている。行軍の足は止まらないので、彼女の姿が後ろへと流れていく。

「バーバラ、あまりアリアナをいじめないでちょうだい」
「だってえ~可愛いんですもの」
「それはすごくわかるけど、あまりいじめちゃ拗ねて口を聞いてくれなくなるわよ?」
「んん~それはイヤね」
「でしょう?」
「でもっ! 私あんなに可愛い狐人の女の子に会ったことがないわ!」

 胸を抱くようにしてバーバラが身もだえすると、他の女性冒険者の二人が近づいてきて神妙にうなずいた。
 一人は盗賊風の女性で、ヴェールの下に投げナイフや棒手裏剣を専用のホルスターに数え切れないほど刺し、帯のように腰に巻き付けている。頭に巻いたターバンにもナイフが仕込んであるらしい。うん、普通にこええよ。ランクはC、点数は543点なのでジャンジャンよりちょい強いって感じだな。
 もう一人は戦士風の女性で身長が百九十センチほどあり、よく日に焼けている。茶髪をポニーテールにしていて、パッと見は女性サーファーみたいな活発で爽やかな印象だ。身体強化が得意なのか、この世界では珍しい両手剣を腰に差していて、よく手入れのされたシルバープレートを胸につけている。ランクは同じくC、点数は598点だ。

「私はエリィちゃん派だ」
「あっしは二人とも可愛いと思う」

 そう言って三人は歩きながら固まってわいわいと意見交換をはじめた。なんだか気まずい。エリィが反応して顔が熱くなってきたので身体強化“下の上”をかけて、まだぷるぷるしているアリアナところまで走り、抱きかかえて行軍の列へと戻った。地面を蹴ったときに上がった砂埃が気に食わなかったのか、馬車を引いているブサイクなウマラクダが、ぶひんと批難めいたいななきをしてこちらを見てくる。

「あらごめんなさい。馬車を引いてくれてありがとうね」

 そう言って優しく撫でて、軽く“治癒ヒール”を唱えてやると、ウマラクダはすっかり気分が良くなり、軽快な足取りに戻る。非常に分かりやすい奴だ。

「動物も美人に褒められると嬉しいんだよ」

 御者をしているジャンジャンが、御者席から笑って顔を出してきた。

「お世辞を言っても何も出ないわよ」
「本当のことさ」
「ありがとう」
「どういたしまして」
「コゼットに伝えるわね」
「ちょ、ちょっとエリィちゃん? 最近そうやって俺をいじめるよね」
「あらごめんなさい」

 ジャンジャンは誠実なあまりついからかいたくなるんだよな。これはしょうがないことだ。

「エリィちゃんは将来魔性の女になりそうね…」
「いやいや、すでにほとんどの男が陥落しているぞ」
「あっしもそう思う」

 バーバラ、女盗賊、女戦士の三人がこっちを見て楽しそうにしている。
 アリアナを元気づけてから地面に下ろし、いたずらのつもりでサイズが大きくて勢いが超弱い“ウォーターボール”を三人におみまいした。
 バシャアンという音と共に、女冒険者の三人が濡れ鼠になる。

「きゃあ! エリィちゃん何するの! 涼しくてすごく気持ちいいけど!」
「これは涼しい」
「もう一回やってほしい!」

 三人は突然食らった“ウォーターボール”にも動じず、むしろ喜んでいる。

 …にしてもまじで暑すぎるな。
 今濡れた地面がすぐに水分を吸い込んで一瞬で乾いてやがる。
 暑いし俺も水浴びしておくか。どうせすぐ乾くし。

「じゃあみんなで。アリアナも一緒にやりましょ」
「うん」
「“ウォーターボール”水浴びバージョン!」

 五人を包み込むように“ウォーターボール”を出現させ、しかもうまいこと空中に漂わせる。アリアナの顔が出るくらいの高さに調整し、地面にくっつかないようにすれば“ウォーターボール”水浴びバージョンの完成だ。魔力を結構使うが、そのまま空中に維持し、進行方向へと水球を動かせば水に入ったまま移動できる。
 アリアナは水球の中でくるくる周りながら歩き、バーバラが「ああー生き返る~」と言って恍惚とし、女盗賊は「ナイフが濡れる。だがそれもよし」とうなずいて、女戦士は「あっしは潜る」と宣言して高い背を猫背にし、頭から“ウォーターボール”に入って腕だけを平泳ぎの動きにして進む。

 この調査団で女は俺達五人だけだ。アグナスの計らいで、女性陣でパーティーを組んでいる。まあなんだかんだ結構パーティーのバランスもいいしな。
 バーバラと女戦士が前衛、アリアナと女盗賊が中衛、俺が回復役で後衛、という配置だ。Bランクのバーバラとアリアナがいるので、調査団の中でも強力なパーティーの一つに数えられている。

 ちょっと魔力息切れしそうだったので、“ウォーターボール”水浴びバージョンを解除した。
 ああー気持ちいいー。水から出るとまじで暑いーっ。

 ちなみに魔法は維持し続けると、持久走のように息切れを起こす。下位中級の“ウォーターボール”なら三十分ぐらいの維持が可能だが、“落雷サンダーボルト”などの強力な魔法はすぐ息切れする。ポカじいなら“ウォーターボール”を一日中浮かせていることができるだろうな。

 それにしてもね……まじで周囲の男共の視線がすごい。
 ちらちらと何度もこっちを見てにやけている。

 まあね、俺も男だからよくわかるよ。水浴びして服がぴっちりくっついている胸とか腰とか尻、男だったら絶対に見ちまうよな。しかもエリィは超絶美少女、アリアナは宇宙崩壊レベルの可愛さ、イイ女のバーバラ、ミステリアスな色気の女盗賊、とにかく巨乳な女戦士の五人だ。見ているほうはウッハウハのウッキウキで、心の中でターザンみたいに腰ミノ一枚の姿でイヤッホォォォウと叫び、ぶんぶんタオルを振り回してそのまま飛んできたボールを打ち返してヘッドスライディングでランニングホームラン、って感じだろう。いや、相変わらず自分で言ってて意味わかんねえな。やっぱり、俺、天才。

「ひゃっ!」
「どうしたの?」

 バーバラが急に尻を押さえて飛び上がった。

「いま誰か私のお尻触った?」
「さわってないわよ」

 四人全員で首を横に振る。

「撫でるようにしてお尻を触られたわ」
「バーバラは油断しているからそういうことになるのだ。私のように用意周到にナイフをこうやって全身に――きゃあ!」

 今度は女盗賊が飛び上がった。

「い、いま誰かが私のお尻をまるで採寸するように丁寧に触った」
「うそでしょう?」
「本当だ」
「二人ともだらしないなぁ。あっしみたいに常にこうやって周囲へと気を配っていれば尻を触られることなんてないぴゃあ!」

 次に女戦士が尻を押さえて飛び上がり、咄嗟に両手剣を引き抜いて構えた。

「い、いまあっしの尻を、鍋の縁をなぞるようにして触った奴は誰だ?!」
「……」
「……」

 俺とアリアナはお互い顔を見合わせて黙ってうなずき、馬車の縁に腰をかけてわざとらしく口笛を吹きながら酒を飲んでいるポカじいを見た。そりゃもうじいっと穴が開くほどに見た。目で相手を殺せるほどに見た。
 ただ、そこはさすが百戦錬磨の尻じじいだ。何食わぬ顔が板についてやがる。

「ポ・カ・じ・い」
「なんじゃ。可愛い弟子よ」
「ポ・カ・じ・い?」
「なんじゃエリィ。稽古をつける時間かのう?」
「ポ・カ・じ・いっ?」
「な、なんじゃい」
「ポカじいっ!!!」
「いかん!」

 尻じじいを捕まえようと身体強化をし、地面を蹴って座っている馬車まで一気に駆け寄った。が、おしおきを恐れたじいさんは大人げないスピードで馬車から一瞬で離れ、何食わぬ顔で酒をあおった。

「人様のお尻を触るなんて最低だわっ!」
「濡れ衣じゃ。いや、濡れ尻じゃ」
「ギルティ…」
「三人とも! お尻を触ったのはこのじいさんよ!」

 俺の言葉を聞いて、三人は魔物と遭遇したときと同じフォーメーションでポカじいに迫った。

浮遊レビテーション
「だりゃっ!」
「シッ」

 バーバラが杖を出して浮遊魔法を唱えて空中へと上っていき、前衛の女戦士が豪快に剣を振って、女盗賊が投げナイフを身体強化した腕でぶん投げる。
 バーバラの戦法はかなり面白く、浮遊魔法で空中へ限界まで上がり、落下の速度を加えて相手を踏みつける、というものだ。“撃踏”の二つ名がぴったりの戦い方だ。
 女剣士は両手剣の腹でポカじいをぶん殴ろうとしている。身体強化“下の上”まで強化されているので、かなりの剣撃スピードだ。
 女盗賊は容赦なく足を狙ってナイフを投げた。

 ポカじいはおどけたような口調で一歩前に足を踏み出すと、身体を捻って剣とナイフをかわし、俺達の周囲を回り始めた。光魔法中級“幻光迷彩ミラージュフェイク”と身体強化を駆使しているせいでじいさんが十人いるように見える。

「そんなに高く浮遊すると危ないぞい」

 そう軽く言って、ポカじいはバーバラに向かって“重力グラビトン”を一点集中させた。
 モーターの起動音みたいな不気味な音色を響かせ、黒いひずみがバーバラの足元に現れて、彼女は重りを足につけられた鳥のようにゆっくりと地面に落ちてきた。

「何なのこのじいさんは!」
「剣が当たらない?!」
「ちぃッ」
「私とアリアナの師匠なんだけどね……すごくスケベなの…」
「えっちぃのは…めっ」
「ほっほっほっほっほ、授業料じゃよ。さあ、イイ尻を持つおなごらよ、わしを捕まえてみぃ」

 気持ちよく自分が犯人だと認めたポカじいのスピードがさらに上がる。
 先手必勝とバーバラが身体強化してポカじいに突撃し、女戦士が勘で剣を振り、女盗賊は容赦なくまきびしを地面にばらまいた。
 しかしポカじいはバーバラと女戦士の尻をぺろんと触って軽くあしらい、まきびしは身体強化で踏みつけても痛くないように調整しているのか、平気で踏んづけている。

「きゃあ!」
「あっ…!」

 ポカじいは結構酔っているのか、こともあろうに俺とアリアナの尻も撫でた。
 エリィの尻はこれ以上触らせねえぞ。アリアナの尻尾付きの尻もそうだ。

「アリアナ」
「ん……」

 一言だけ言うと、すべての意図を汲んだアリアナがゆっくりした足取りで一歩だけ前に出て、両手をげんこつにして顎の下に持ってきて、ぷくっと頬を膨らませた。

「“トキメキ”…!」

 新魔法“トキメキ”が見る者を魅了してほとばしり、瞬間最大トキメキ風速一億トキメートルを記録した。

『う゛っ!!!!!!!!!!!』

 アリアナを視界に捕らえていた、ポカじい、俺、バーバラ、女戦士、女盗賊、ジャンジャン、ウマラクダ、兵士十五人、冒険者五人が、心臓を押さえて地面にうずくまった。
 後列の行軍が急に停止したので、何事かと前方のグループがこちらに注目する。

 この魔法やべええええ。
 ライブ会場の特設モニターみたいにアリアナの顔が広がって、ハートマークが視界を覆うようにしてチカチカ明滅したかと思ったら、幸せな気持ちと一緒に心臓が握りつぶされる。
 あかん。これは禁魔法だ。恐ろしい…。
 てか見てたやつ全員うずくまってるし、ウマラクダ二頭も器用に前足で心臓押さえて倒れてるし、すげえ威力だ。パワーでいったら“トキメキ”は黒魔法中級レベルだからな。

「スケベ捕まえた」

 対象者を釘付けにする効力は平均して五秒ぐらいだ。ポーズの決まり具合がいいと、トキメキの力が上昇するらしい。俺は最大で十五秒動けなくなったことがある。
 アリアナは身体強化で瞬時にポカじいの後ろへ回り込み、右腕をしっかりと握った。

「な、なんじゃ今の魔法は?!」
「秘密」
「このわしともあろう者が! しもうたわぃ!」
「スケベぇぇぇ!!」
「くらえっ!」
「シッ」

 “トキメキ”から開放されたバーバラが浮遊魔法で上昇して落下し、ポカじいを思い切り右足で踏みつけ、女戦士が強烈なビンタを食らわし、女盗賊が鼻に激辛香辛料を突っ込んだ。

「ほっほっほっほっほ…ごほっごほっ。効かぬのぅ」

 砂に半分埋まって、顔にビンタのモミジを作り、鼻に真っ赤な香辛料をつっこんだままポカじいが偉そうに言った。アリアナがこちらを見てうなずいたので、ゆっくりとポカじいに近づく。

「ポカじい。他の人に迷惑かけちゃダメじゃない」
「そうじゃのう、反省しとるよ」
「あら、じゃあどうして右手が私のお尻を触っているのかしら」
「それは、尻がそこにあるからじゃ。尻・フォー・オール。オール・フォー・尻」
「全然意味がわからないわ」
「なぜじゃ! 尻は人類が生まれた場所であり気高き部位っ。そこに思いを馳せぬ男なぞ所詮まがい物じゃとわしは思うのじゃ。尻こそが命。命の尻。尻がすべて。すべてが尻。尻の名の下に我らは集いし使者であると共に、アヴァンギャルドに尻イズムを貫いた者こそが新の英雄と言えるのじゃ」
「………」
「尻を愛でし者こそが真の魔法使いでありアヴァババババババババババババババババババババババババババババッバババババババンギャルドッ!!!!」 

 スケベじじいが超強風で揺れる旗のように“電打エレキトリック”で痙攣して黒こげになり、ふらふらと上空を飛んでいた全長三メートルある温厚なデザートゲルゲル鳥に鷲づかみされて、空中に持ち上げられた。ばっさばっさという羽音が鳴り、大空高く舞い上がってどこかへと消えていった。

「スケベ、ダメ、絶対」
「………めっ」


   ○


「ふぃ~酒を飲みすぎたわい」
「飲み過ぎたわいじゃないわよ! ポカじいのせいで行軍が止まっちゃったじゃない!」
「ほっほっほっほっほ、愛嬌じゃ、愛嬌」
「お酒禁止! 没収っ!」
「そんなご無体な!」
「スケベな師匠なんて知りません。話しかけないでくださーい」
「アリアナよ、じじいの楽しみを取り上げるのはどうかと思わんか?!」
「私のお尻触った……めっ」
「ぐっ……」
「いい子にしてるならこのお酒の入った袋は返します」
「わかったわい。飲み過ぎただけじゃというのにのぅ…」
「まったくもう。酔っ払った勢いでお尻を触るのは女の子に嫌われるわよ。それに飲み過ぎは身体に悪いし、節度を持って楽しんでちょうだい」
「弟子に説教される日がくるとはのう…。尻、ここにあらず。わしはエリィの今の言葉をしっかり受け止めよう」

 調査団は『空房の砂漠』の入り口付近まで来ていたらしく、ちょうどいいからここで野営をしようと荷を下ろして陣地を作っていた。
 俺達は魔物の襲撃がないかを見張っており、後ろではひっきりなしに兵士や冒険者が入り乱れて、危険がないかどうかの確認をしながらテントを張ったり食事の準備をしたりしている。地中にサンドワームなんかがいたらおちおち寝ることもできない。全員真剣だ。

「そういえばポカじい。空房の砂漠ってどんなところなの?」
「うむ。生態系が大きく変わった砂漠じゃ。空気は乾き、見渡す限り死んだ大地が広がっている。ごくわずかの水源を巡って生き物が争い、命を糧とする魔物どもが互いを狙って狡猾に生き抜く、危険な場所じゃの」
「ちょっと不安ね」
「不安そうには見えんが?」
「不安は不安よ。でも、どんな場所なのかという興味が大きいわね。前に見た映画…じゃなくて本の内容で砂漠のことを色々と知っているから」
「ほほう。おぬしは本が好きなんじゃのう」
「好きよ」

 砂漠の行軍をしているとエピソード7の公開が決まった、全世界で大ヒットSF映画のことをやたらと思い出す。あの映画は最初主人公が砂漠に住んでるんだよな。ああ、フォースを感じる、とかふざけてやってたけど、今はああ、魔力を感じるわ、何てことをガチでやってるからな。ったくとんでもない事になっちまったよな…今更だが。こっちに来てから結構な時間が経っているから、今頃、向こうでは劇場公開してんだろうなぁ。
 あ……俺ってば異世界来ちゃったからあの映画の続き見れねえじゃねえか!
 ぐおおおお…なんてこった。ちくしょー余計なこと考えるんじゃなかった、まじで。
 見てえぇぇ、続き見てええええっ。

「エリィ…?」

 アリアナがこてんと首をかしげてこちらを見てくる。
 ああ、この異世界に来なければこの狐耳には出逢えなかった。よし、そう考えよう。
 もふもふもふもふもふ。
 それにどうにか日本に帰る方法を見つければいいだけのことじゃねえか。そうそう。その通り。やっぱ俺ってポジティブだよな。最強のポジティブ男、ここに現る。

 その後、ジャンジャン、クチビール、アグナスのパーティーと女冒険者三人、ポカじい、アリアナで輪になって食事をしたあとに寝た。
 俺は回復魔法が使えること、アリアナは貴重な黒魔法使いということで、いざというときのために夜の見張りは免除されている。何かね、みんながすごく優しいんだよね。ほんとグレイフナーにいたときとは違う居心地のよさを感じる。俺とアリアナが可愛いからというちょっとした下心、というか庇護欲のようなものも理由に少しありつつも、それ以上に魔法や努力が評価されているんだよな。アリアナなんていつも魔法の練習してるし。俺もポカじいと必ず一日一時間は十二元素拳の稽古しているし。そういうところもみんな見てくれているんだろう。

 その夜は何も起きなかった。
 深夜三時頃にデザートコヨーテが食事の匂いにつられて三百メートル付近でうろうろしていたらしいが、人間の集団を見て襲ってくるわけもなく何もしてこなかった。


   ○


 行軍三日目。
 空房の砂漠に入ると、周囲の空気が一変した。

 今までの砂漠が過ごしやすかったかと聞かれれば、そんなことはない、と全員が口を揃えて否定するだろう。とにかく暑いし、地面は砂で歩きづらいし、馬車が何度も車輪を砂に取られるし、普通の旅とは全くちがう。

 だがこの『空房の砂漠』は空気が淀み、実に居心地が悪い。
 吹きすさぶ風が死の予感を運び、カチカチに固まった植物の育たない大地が灰褐色をむき出しにして、ところどころに砂丘が広がったかと思うと、突如として不気味な背の低い樹木が老人のような皮膚を日に照らして現れる。

 乾燥した大地と移動する砂がこの『空房の砂漠』の特徴だった。
 一日経てば景色は様相を変え、足を踏み入れた者を混乱させる。順路の通り進むには一キロ先まで見通せる木魔法“鷹の目(ホークアイ)”で進路の安全を確認し、太陽の位置を正確に計測して方角をしっかりと見極め、進んだ距離の計算も忘れてはいけない。

 アグナスのパーティーメンバー、裂刺のトマホークが木魔法“鷹の目(ホークアイ)”で順路を確認し、止まっていた行軍が開始された。
 そう思ったら、すぐにトマホークが片手を上げ、先頭のアグナスが大声を張り上げた。

「止まれ! 前方で巨大砂漠ヒルとゲドスライムが戦っている」

 ゲドスライムって行軍中にみんなが散々「出会いたくない」って言ってた魔物か。
 原型がないゼリー状で半透明の灰色をした砂漠でもっとも忌み嫌われる魔物で、その性質は凶暴で残忍、見たものをすべて飲み込んで重みで破壊し、血肉を溶解させて養分にする。常に飢餓と憎悪をまき散らし、核が小指ほどしかないため倒すことが非常に難しい。

「どれどれ」

 アグナスの隣まで行って、両目に身体強化をかけて前方へと目をこらすと、砂埃が上がっている様子が見える。
 かなり距離があるので、姿形までは確認ができず、それがはっきりと見えているターバン姿のトマホークは眉間に皺を寄せて嫌悪感をあらわにしていた。

「旦那。あのゲドスライム、かなりでかいです」
「らしいな…。砂漠ヒルが飲み込まれたな」
「迂回するか、あいつの姿が消えるまで待ったほうがいいでしょう」
「ああ、そうしよう」

 アグナスの指示で、小休止の指示が出る。
 ゲドスライムの進路によってはすぐに行動する必要があるため、装備は解かない簡単な休憩だ。こちらに向かってきたら、馬車があり逃げるのは難しいため、戦うしかない。

「ゲドスライムがこちらに向かってきた場合は全員でありったけの魔法を撃ち込んでくれ。時間を稼いでいる間に僕が炎魔法上級の詠唱を完成させ、奴に撃ち込む。いいな」

 冒険者と兵士が「おう!」と返事をした。
 小さい個体ならいざ知らず、あれほど巨大なゲドスライムに生半可な魔法を放ったところで威力が吸収されてすぐに再生してしまうため、強力な炎魔法で一気に焼き払うしかない。

 全員が水を飲んで杖の点検をしつつ、緊張した面持ちで休息する。
 暑さと緊張から、変な汗が額から流れる。
 トマホークがじっと同じ方向を見ているので、嫌が応にもそちらへと目線がいってしまい、ポカじいへと視線をずらした。

「ゲドスライムってそんなに危険なの?」
「あの大きさじゃとAランク指定される魔物じゃな。中途半端な魔法では倒せぬ」
「落雷魔法なら倒せるかしら?」
「そうじゃのう…エリィのオリジナル魔法“極落雷ライトニングボルト”なら倒せるじゃろう。“落雷サンダーボルト”や“電衝撃インパルス”だと火力不足じゃな」
「わかったわ。いちおう私も万が一ってことを頭に入れておくわ」
「うむ。あまり人前で使ってよい魔法ではないが、おぬしの判断であればわしは構わぬ。この連中であれば、おぬしが落雷魔法を使えると知っても、むやみやたらに吹聴することもなかろうて」
「そうね」
「その前にわしが倒してやる。安心せい」
「ありがとう。でも、どうしようもないときだけね。なるべく自分でやってみたいの」
「わかっておる」

 アリアナの狐耳をもふもふして緊張を解き、事の成り行きを待つ。
 ゲドスライムが近くにいる、そう思うとさすがの冒険者も不安になるらしく、バーバラと女戦士、女盗賊がこちらにやってきて、自然と輪になった。

「あの気味の悪いブヨブヨした魔物、私はもう見たくないよ」

 バーバラが思い出すだけで気分が悪くなるのか、ぶるりと身を震わせた。

「目も、口も、鼻も、手も足もなくて、ただ見つけた生き物を食らう魔物なんてこの世にいていいとは思えない。おぞましくて醜悪な生物なのよ、アレは」

 しばらくバーバラが初めて見たゲドスライムをどうやって倒したのか、という話に耳を傾けた。
 二年前、商人の馬車を護衛していたら三メートルほどのゲドスライムが突然現れて、ウマラクダが飲み込まれた。そのとき、ブサイクなウマラクダが悲しそうな瞳でゼリー状のゲドスライムの中で溺れながら、顔や身体を消化されていく陰惨な光景を見て、バーバラはしばらくシチューが食べられなくなったらしい。

 運が悪かったことに、安全な道だったためバーバラ以外の冒険者や戦闘ができる魔法使いは護衛におらず、しかも彼女は火魔法が苦手で下級の“ファイア”しか唱えられない。彼女が得意な風魔法と空魔法はゲドスライムにはあまり相性がよくなく、“エアハンマー”などでぶっ飛ばしても、不定形の身体が風の勢いを相殺してしまう。上手く身体を分断させても勝手に集まって復活するのでたちが悪い。

 そのときはバーバラが囮になり、商品として輸送していた鳥肉の中に燃料として使われる火鉱石を入れてゲドスライムに食わせ、商人達が捨て身でたいまつを放り込んでようやく倒したそうだ。幸い死人はでなかったが、全員の心には言いようのないべとべとしたような胸のむかつきが残って、忘れられない記憶になった、とバーバラは話をまとめて肩をすくめた。

 そうこうしているうちにトマホークが何事かをアグナスに話し、安堵したようにうなずいた。

「ゲドスライムは我々の視界から消えた。奴の移動速度はそこまで速くない。このまま進めば方向転換したとしても追いつかれることはないだろう。出発するぞ」


   ○


 行軍七日目。
 ゲドスライムが現れたのはあの一回きりで、他にも凶悪な魔物がちょくちょく現れたが、砂漠で活動する冒険者達と勇敢なジェラの兵士によって次々と倒された。空房の砂漠の生物は獲物である俺達を見つけると必ず襲ってくる。砂に擬態して狡猾に近づく奴もいれば、変なにおいを出して攪乱する魔物もいて、まじ勘弁してくれよって気分になった。
 返り討ちにした魔物は食糧になりそうな部分だけ冒険者達が回収した。
 一週間分の食糧を消費しているため、予備として確保しておくのは当然だろう。

 危なかったと言えば五日目の野営中に、兵士の一人が用を足すため、勝手に一人で野営地点から離れてスナジゴクにハマったことぐらいだ。あのときは近くにいた俺とアリアナ、バーバラが駆けつけ、バーバラの浮遊魔法で兵士を脱出させ、アリアナが重力魔法でスナジゴクを倒し、俺が白魔法で兵士を治療して事なきを得た。

「あの砂丘の向こうに魔改造施設があるのね」
「そうだね…」
「何としても全員を救出しましょう」
「ん…」

 調査団はついに目的地まで到着した。
 いやーまじで長い一週間だった。
 空房の砂漠の奥深く、魔改造施設のある場所だ。偵察のためにアグナスパーティーが砂丘を越えたところ、真っ白い外壁をした不気味な施設が砂漠の真ん中にぽつんと建っている姿を確認した。

 夜を待ってから救出作戦を実行する運びになった。

 流れとしては、夜になり次第、砂丘の前まで馬車を進めて木魔法下級“樹木の城壁(ティンバーウォール)”を使用して陣地を作成。その後、「潜入班」と「待機班」に別れて魔改造施設へ侵入し、子ども達を確保した「潜入班」パーティーから順次陣地へと帰還して、救出しきれない場合は魔力の余っている者が魔改造施設へ再度向かう、というものだ。

 仮眠を取って休息した後、周囲は暗くなった。

 馬車が十台一列に並び、兵士が“ウォーター”で桶に出した水をウマラクダが首を突っ込んで美味そうに飲んでいる。
 腹が減っては戦ができない、ということで作戦前の食事が振る舞われた。
 火魔法があるので目立つほどの炊事の煙は立たない。念のため、煙は“ウインド”で散らし、魔物を呼び寄せるような匂いは土系統の消臭魔法で消している。

 あースープうめえ~。
 肌寒くなる砂漠の夜に温かいスープは心を落ち着かせるな。

「アリアナ、しっかり食べなさい。長い夜になりそうよ」
「ん、そうだね…」
「体調はどう?」
「ばっちり」
「私もよ」
「エリィちゃんの浄化魔法が今作戦の鍵だ。何かあればすぐ言うんだよ」

 そう言ってスープを持ったアグナスが白い歯を覗かせて笑う。
 アグナスはリーダーシップが取れるから日本で管理職についてもいい人材になりそうだよな。態度に余裕があって機転も利き、部下の人望も厚い。

「ほっほっほっほ、禁止されたあとに飲む酒はうまいのう」

 じいさんは酒が飲めて幸せそうだ。

 俺、アリアナ、アグナス、ポカじい、ジャンジャン、女冒険者三人とアグナスパーティーの三人、合計十一人、土魔法で作った簡易イスとテーブルを囲んでいる。トマト風の野菜たっぷりスープとピッグーの干し肉を水でふやかして炒めた激辛焼肉。アリアナと俺は作ったおにぎりを人数分配って食べた。クチビールは見張りの順番が回ってきたようで、ここにはいない。

「またご飯粒がついてるじゃないの」

 おにぎりを食べているアリアナの口に米粒がついているので取ってあげる。
 保護者か。俺は保護者なのか。

「ありがと…」
「いいえ」

 はにかみ笑い、可愛い。
 保護者でもなんでもいいや。

「二人がいると和むな」
「そうですね」
「アニキもそう思いますか」

 アグナスが可笑しそうに笑い、神官風のクリムトが神妙にうなずいて、背の低いマント姿のドンがにかりと笑顔を作った。

 満天の星空の下で食べる夜食は美味かった。
 地球とはまったく違う星座に彩られた夜空が今にも落ちてきそうな星々を輝かせ、照らされた砂の大地がどこまでも続いて砂丘を作り、ロマンチスト達が求めて止まない幻想的な空間を広げている。

 作戦を前にして変に気負わずにいられるのは、数多の修羅場をくぐり抜けてきたこの冒険者たちが近くにいてくれるからだろう。全員が自然体なので心地いい。

 しばらく物思いに耽りながら、空を見上げた。
 グレイフナーにいるクラリス、バリー、エイミーのこと。新しいデザインを生み出しているジョーとミサ。恋が上手くいっているのか気になるエリザベス。コバシガワ商会のみんな。スルメとガルガイン、ついでに亜麻クソ。心配性のゴールデン家。

 そして日本での出来事がいくつも頭を通り抜けて閃光のように消えていく。発表することのできなかったプレゼンや、何度も挨拶を交わして数々の名刺を交換した日々。田中は俺が死んで悲しんでいるだろうか。いや、まさかとは思うが、奇跡的に俺の身体がまだ何らかの方法で残っているなら、あいつはそれを見守ってくれるだろう。例えば植物人間になっているとか。
 そんな奇跡ありそうもねえー。
 死んでいることが確定で、火葬されていたら元に戻るのはアウトだろうな。
 いや、どうにかして残骸をこっち呼び寄せて、スーパーでミラクルな白魔法で再生できたりするだろう。つーかできるって思っておかないとまじで精神がおかしくなるぜ。さすがのアイアンハートな天才の俺でも、希望がない状態で生きていくのはいささか厳しい。
 そんで、俺が俺として復活したら、スーパーでウルトラミラクルな何かしらの魔法で日本に移動する。
 やばっ。俺ってばまじでポジティブ。ポジ男。いえーい。


「むっ!」


 思考はポカじいの声で中断された。


――ガガガガガガガガッ!


 いきなり、二階建ての建物ぐらいある氷の塊が弾丸のように飛んできて、ポカじいがテーブルの上に飛び乗って右手で受け止めた。ガチャン、という食器が割れる音と共に、土魔法で作られた簡易テーブルが一瞬で壊れ、ポカじいが数メートル地滑りする。

 嫌な摩擦音が鳴り響き、身体強化したらしいポカじいの右手の上で、矢のように鋭くなった氷の塊が踊るように回転し、どんどん溶けていく。

「むん」

 そうポカじいが気合いを入れると、その氷の塊が粉々に砕け散った。

「一体なんなのっ?!」

 慌てて飛び退き、戦闘態勢を取る。

「馬車を引いてここから離れるんじゃ!」

 ポカじいがついぞ見たことのない剣幕で叫んだ。
 そう言われても、理由もわからずにすぐ馬車を発車させられない。

 何が起きてもいいように魔力を練りながら氷が飛んできた上空を見上げると、夜空にローブ姿の男が浮遊魔法で浮かんでおり、その異様な雰囲気に思わず息を飲んだ。


 な……なんだあの男?


 男の顔には全世界からかき集めたような傲慢さが張り付けており、すべてを睥睨する冷たい目を冒険者とジェラの兵士に向けていた。しかし、ほんの数秒で興味を失ったのか、すぐにポカじいへと視線を移した。
 身長が二メートル近くあり、頬がこけているくせに目だけがらんらんと獲物を狙う猛禽類のごとく見開かれ、見る者に恐怖と理不尽な嫌悪を抱かせる。

 地球ではありえない真っ青な髪は腰まで伸びており、髭までもが青い。
 手に金色の二メートルぐらいある禍々しい杖を持っている。

 やばい。絶対にあいつやばい!
 今まであった中で一番強いだろ。
 敵意がむき出しの魔力をビンビン感じる。
 ポカじいの敵?
 さっきからポカじいを睨みつけている。
 つーかどんだけ魔力練ってるんだよ!
 俺でも異常だって分かるほどの魔法を使おうとしてやがる!

 青髪の男は二メートル近い長身を揺らし、ゆっくりとこちらに近づきながら、油断なくポカじいを見つめている。
 年齢は五十代ぐらいだろう。憎しみを魔力に乗せて全身から放ち、肩にはでかいインコみたいな赤い鳥が乗っていた。

 まじ何なんだあいつ!
 つーか絶対に攻撃しようとしてるだろ?!

「ポカじいどういうこと!?」

 ポカじいはこちらを見ると、俺に向かって「あの男、イカレリウスじゃ」と呟き、目で早く逃げろと伝えてくる。

 はあっ!?
 イカレリウス?!
 イカレリウスって、あの、クラリスが何度も言っていた、ポカじいと昔に戦ったことがあるとかいう伝説の魔法使いイカレリウス?!
 正式にはたしか、南の魔導士イカレリウスだっけ?
 肩に乗っているのは、以前ポカじいが見てみろって言ったあの赤い鳥じゃねえか。

 おいおいおいおいどーすんだよまじで!
 向こうさん、戦う気満々じゃねえかよ!

 青髪、青髭の男、イカレリウスは、王者がかしずく配下の脇を通りすぎるように、ゆっくりと砂漠の大地に舞い降りた。そして、杖をおもむろに掲げると、静かな声でこう呟いた。


「“絶対零度の双腕復体アブソリュート・ゲンガー”……」


 突如として男の背中から幾何学模様をした十メートルサイズの魔法陣が二つ現れ、羽のように背中に取り付き、吸い込まれるようにしてイカレリウスの両肩に取り込まれた。
エリィ 身長162㎝・体重53㎏


後半、少しだけ文章を追加しました。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
ほとばしる高度な魔法!

うなる拳打!

砂漠の大地に強さを求めた男達の思いが交錯する!

次回「砂漠の賢者と南の魔導士」

・・・・乞うご期待!!
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ