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エリィ・ゴールデン ~ブスでデブでもイケメンエリート~ 作者:四葉夕卜/よだ

第三章 砂漠の国でブートキャンプ

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第22話 イケメン砂漠の誘拐調査団

 オアシス・ジェラ冒険者協会会議室には、ルイボン、ルイボンの父親であるジェラ領主、ジェラを活動拠点にする冒険者の上位ランカーが集まっていた。
 今試験1位である『竜炎のアグナス』880点、2位でアグナスパーティー切り込み隊長の『裂刺のトマホーク』766点、3位の白魔法使い『白耳のクリムト』758点、刀身がない不可思議な剣を腰に差す、4位『無刀のドン』740点。

 1~4位がアグナスパーティーということが実力者の証明になっており、協会におけるアグナスら四人の信頼は非常に高い。椅子に座っているよぼよぼで腰が九十度曲がった支部長が、彼らを見て満足そうにうなずいている。

 彼らの他に、一人で様々なパーティーを渡り歩く踊り子風の女、試験6位『撃踏のバーバラ』722点。
 すべての下位上級魔法をオールラウンドに使えるベトナム原住民のような風貌の男、試験7位『苦拍のサルジュレイ』698点。
 得意魔法の省略詠唱が一文字、という変わった男、試験8位『一音のポー』677点。
 つるっぱげ、試験9位『炎鍋のラッキョ』670点。
 ジェラ護衛隊隊長こと『バニーちゃん』試験10位、666点。

 誰しもがその点数を疑い、驚愕し、戦慄し、信じられないと、試験結果を二度見し、可愛いな、と顔を綻ばせる、俺の横でシャケおにぎりを惜しむように食べている狐耳美少女、アリアナ・グランティーノ。試験はなんと5位、735点。もふもふもふもふ。

 そして、生きとし生ける者すべての夢と希望を詰め込んだ美貌と肉体を持つ、元はデブス、今はスーパーミラクルハイスペック美少女、悪い子は即座におしおき、未だ成長中、エリィ・ゴールデンことイケメン小橋川の俺。二次試験で魔法を使わず試験11位、640点。

 その他、試験を受けていないBランク冒険者が五名参加し、ジャンジャン、クチビール、俺を含めるCランク冒険者五十一名が参加した。
 Aランク三名。
 Bランク十二名。
 Cランク五十一名。
 総勢六十六名、ジェラ史上初と言えるほどの豪華キャストが勢揃いしており、各冒険者の熱が否応にも高まる。そこへ、誰も砂漠の賢者だと思っていないポカじいが、酒瓶を片手にふらりと入ってくる。

 これで役者は揃ったと言わんばかりにアグナスが口火を切った。
 緊張した数名がごくりと生唾を飲む。

「今日は招集に応じてくれてありがとう。今回の依頼はオアシス・ジェラからのもので、大がかりな作戦になる。依頼の危険度はAだ。それでも話を聞きたいという人間だけこの場に残ってくれ」

 赤いマントに赤い長髪をしゃらりと垂らし、ギリシャ彫刻も逃げ出したくなるほどいい男であるアグナスの流麗な目が、試すように全員へぶつけられる。聞いた話だとランクAっていうのはキングスコーピオンとクイーンスコーピオンが同時に出てくるレベル、すなわちアグナスパーティーが瀕死になる危険度、ということだ。

 沈黙と緊張で空気が張り詰める。

 ここにいる冒険者達の決意は固いのか、誰一人として声を上げない。
 アグナスはその様子を見て、やれやれといった風に両手を広げながら満足げな顔をした。

「君たちのような命知らずが僕は好きだよ。よし、では詳細は依頼立案者でもあるCランク、ジャン・バルジャン君から説明してもらおう」
「か、かしこまりました!」

 ジャンジャンが緊張気味に一歩前へ出る。
 すると、数多の死線をくぐり抜けてきたであろう冒険者達が、鋭い眼光を向け、一言一句聞き逃さんと神経を張り詰めた。立っているだけで存在感を存分に滲ませる冒険者達がこの場に六十六名いる。占拠された狭い会議室の空気が膨張したように感じた。

 そういや社運を賭けた新製品開発のために各エキスパートを集めた会議もこんな雰囲気で、ほどよい緊張と息苦しいほどの熱量が部屋に充満していたな。こういう一体感のあるプロジェクトは成功する確率が高い。どの時代、どの場所でも、大事なのは肩書きや金じゃなく、人だ。人の力が成功を引き寄せる。

 緊張していた声色が話し始めると滑らかになっていく。ジャンジャンの説明に全員聞き入った。

 五年前にオアシス・ジェラを襲った誘拐事件から始まり、自身が事件を追うために冒険者になったこと。博学なポカじいが、誘拐の裏には十二歳以下の子どもを魔薬で覚醒させ、魔法使いにさせる人為らざる陰謀があるのではという推測を立てたこと。そこから魔薬に必要なハーヒホーヘーヒホーという草の存在。そのハーヒホーヘーヒホーが見つかったことにより魔改造施設の場所が確定し、すべての推測の裏が取れ、今回の誘拐調査に参加してくれる冒険者を募集したこと。

「事件の真相を解明したのは、そちらにおられる賢者様です」
「ほっほっほっほっほ」

 すべてを聞いた冒険者たちが納得した表情を見せ、ポカじいに興味と畏敬を込めた念を送った。“遠見の水晶”は伝説級のアイテムで、使用には熟練魔法使い五人分の魔力が必要らしい。相変わらずじいさんのスペックがやべえ。

「ひとつええかのぅ」

 今まで笑って酒を飲んでいたポカじいが挙手したので、一同の視線が窓際に立っている彼に集中した。

「攫われた子どもは黒魔法で洗脳されており、どのような行動をするかわからん。五年前の誘拐事件に盗賊団として参加した子どもたちが、Cランク冒険者をあっさり倒した、という事実はジャンが話した通りじゃ。捕らわれている子ども達は魔薬によって魔力を開放され、強力な魔法使いになっており、さらに洗脳者に従うよう教育を施されておるじゃろう」
「つまり、救う子ども達に攻撃される可能性が高い。ポカ老師はそうおっしゃっりたいのですね」
「その通りじゃ。洗脳者である黒魔法使いが、子ども達を操ってこちらに攻撃してくるじゃろうの」

 アグナスが冷静に言葉をつなぎ、ポカじいが厳かにうなずく。

「洗脳魔法は黒魔法中級レベルでしょうか?」
「黒魔法上級“強制改変する思想家(グレート・ザ・ライ)”じゃ」
「それは……厄介だな…」
「知らん者もおるじゃろうから説明をしておくとの、黒魔法上級“強制改変する思想家(グレート・ザ・ライ)”にかかると操り人形になるのじゃ。命令された任務を遂行するために死ぬ事も厭わんぞい」
「まじかよ……」
「黒魔法…上級…?」
「いつの時代も黒魔法士は問題を起こす…」

 冒険者達が思い思いの言葉を口にし、途端に会議室が騒がしくなったので、アグナスが両手を叩いて場を鎮めた。

「聞いたとおりだ! 子ども達を無力化して搬送する方法も作戦に盛り込む!」
「うむ、それがよかろう」

 抵抗されるなら、眠らせるか拘束して、あとでじっくり洗脳を解くしかない。

 にしてもさぁ、聞けば聞くほど仄暗い陰謀を感じさせるよな。子どもを魔改造するなんてまじでありえねえ。

 奴ら盗賊団の目的はなんだ?

 思えば、俺を誘拐したペスカトーレ盗賊団は、この魔改造施設の存在を知らなかった。あいつらはトクトール領主、ポチャ夫に言われて仕事をしただけで、誘拐し、砂漠まで護送、そして依頼人へ引き渡す。
 さらにはポチャ夫も魔改造施設についての知識がなかった。
 ポチャ夫はよい子になったあと「子どもは砂漠の国サンディに売った」とだけ言っており、手紙にはガブリエル・ガブルの文字があったものの、その後どういった事が行われているかは知らない。

 黒幕はガブリエル・ガブルなのか?
 いや、グレイフナーの大貴族といえ、こんな大がかりな仕掛けをスポンサーなしでやるのは厳しい。日本で言うなら、国外で武器の開発を一企業が勝手にやっているようなもんだ。グー○ルとか、マイク○ソフトとか、うちの財閥ぐらい国家規模の企業ならできなくはないんだろうが、一部上場してますって程度の企業が手に負える内容じゃねえ。

 黒幕ではないにしろ、魔改造施設とガブリエル・ガブルが繋がっている、と考えるのは妥当だろうな。ガブリエル・ガブルは傘下のリッキー家に魔法の素養が高そうな孤児をグレイフナー孤児院に集めるように指示し、ある程度集まったら国外へ輸送する。行き先は砂漠の国サンディ、魔改造施設だ。

 魔改造か…。海外の経済誌だとちょいちょい戦争や武器の記事が出てくるよな。

 戦争が起こる最たる理由は、経済、宗教、人種、と一般的に言われている。
 今回の件は戦争ではないものの、それと密接な関係がある武器開発、武器商人と事柄が似ている。子どもを魔改造して戦士にする。戦士、武器は金になる。それは地球でも異世界でも変わらない。

 にしても何の目的で子どもを魔改造するのかわかんねえんだよなぁ。
 どうにも効率が悪いように思える。強い兵隊が欲しいのなら、わざわざ子ども攫ってきて魔改造するより、強い冒険者を捕まえて洗脳するほうが時間とコストがかからないだろ。企業に例えるなら即戦力になるビジネスマンをヘッドハンティングすることと同じだ。

 子どもだったら相手が油断するから、とか?
 いや、子どもはすぐに成長するからその効果だけだと経費が回収できない。

 じゃあ子どものうちから魔法教育をすると強くなるとか?
 これはあり得る。費用対効果が良いのなら、魔改造をする動機にはなりそうだ。ちょっと説得力に欠けるが。

 子どもなら洗脳魔法が効きやすい、なんて理由はどうだ。
 うーん、黒魔法上級“強制改変する思想家(グレート・ザ・ライ)”なら条件に合えば誰でも洗脳できそうなんだよなー。まあ鋼の精神力を持つ俺レベルになると絶対に効かないだろうけど。

「……以上がこの事件の真相です。これから我々は『魔改造施設』を調査、誘拐された子どもたちを奪還します」

 長い時間考えこんでしまっていたようで、ジャンジャンがすべてを話終わったのか、一歩下がって元の位置へ戻った。

「ひでえ奴らだ」
「許せねえな…」
「俺はどんなことがあっても戦うぜ」
「あたいは親戚の子を攫われた。盗賊団を踏みつぶして助け出すわ」
「俺だって知り合いの子どもを攫われたんだ。許せねえ」
「あの日の騒ぎで強盗に母親が殺された。仇は絶対に討つ」

 このジェラに住む者にとって、五年前の誘拐は未だ拭いきれない爪痕を記憶に残した悲劇的な事件だ。そんな迷宮入りしかけていた事件を改めて聞き、心胆寒からしめる真相に衝撃を受けて、各々事件解決を心に誓う。

「ジャン・バルジャン君ありがとう。これから敵の規模、作戦の説明に入りたいと思う。白の女神、地図を出してくれないかな」
「ええ、いいわよ」

 エリィの可愛らしい声が会議室に響くことで、部屋の空気が一気に弛緩した。なんでか知らんが全員ほっと一息ついている。
 それほどにエリィの癒し効果は半端じゃないってことか。

 自分じゃよくわかんねえんだよな、エリィが与える周囲への効果が。
 ある程度の予想はつくんだけど、近頃じゃ思わぬリアクションされたり、知らないうちに見惚れられたりして結構驚く。

 試験の結果発表を待っているときも何人もがこっちを見て口をあんぐり開け、ぼーっとして頬の肉を完全に緩め、手に持っていたジョッキを逆さまにしてドボドボ中身をこぼしていた。
 あとはエリィの顔を見ると、二度見ならぬ三度見をする輩が百人中九十人いる。しかも男女問わず、だ。まあ確かに鏡で自分を見ると、あまりの可愛さに時間が止まることが多々あるしな。
 反則的な可愛さになってんなぁおい!
 しかし! まだ可愛くなれるはずだ! 完璧主義として、ここで終わりですよーなんてないんだよ! まだだ! まだいけるぜエリィ! 存在しているだけで世界が崩壊するぐらい可愛くなろうぜ!

「あらっ? ああ、こっちだったわね」

 地図を出そうとギャザースカートのポケットへ手を入れ、ああそういえば中に履いているデニムのショートパンツにしまったんだっけ、と気づき、アリアナが切ってくれたスカートの切れ込みを両手で広げる。
 この場にいた冒険者のほとんどが、ぎょっとした顔になり、露わになった白くて長いエリィの生足へ釘付けになった。

 いかん失敗した!
 あんまり見ないでくれる、まじで?!

「もうっ」

 ほらー、非難がましい声が思わず漏れちまったじゃねえか。
 「もうっ」って何よ「もうっ」って。ほんとウブすぎる。
エリィさんよ、もうちょい恥ずかしさ耐性をつけてくれ。って自分の身体に言ってもしょうがないってことはわかってんだけどなぁ。
 例によってちょっと顔が熱い。

 批難の目を向けられた男連中は何食わぬ体を装い、気持ち悪い笑顔を貼り付けて顔をそらした。優しい顔をしたピュアな美少女の恥じらいを受けて気まずくならないのは、そういう趣味の変態だけだろ。

 いやーまじで周囲のこの反応に慣れない。

 とは言ってもいちいち気にしていたらきりがねえしな――よっしゃ、頑張って無視だ無視!
 皺を伸ばしながらテーブルに地図を広げ、ポカじいつけてもらった印の場所へ指をさした。

「ここに魔改造施設があるわ。『空房の砂漠』と言われている場所よ」
「え?」
「く、空房の砂漠だって?」
「そいつぁ厄介な…」
「行くだけで被害が出るぞ」
「空房の砂漠かよ…」
「ほっほっほっほ」

 ポカじいが囁き合う冒険者の間を縫って俺の隣へやってきて、笑いつつ酒をぐびりと飲み、地図へと目を落とす。

「どうして空房の砂漠と言われているか知っておるか?」
「いえ、知りませんっ」

 ジャンジャンが興味深いのか目を輝かせて答えた。

「ほっほっほ、では教えてやろうかのう。かつて仲のいい夫婦がおった。二人は誰もが羨むほど仲睦まじく暮らしていたんじゃが、村に謎の疫病が蔓延し、妻が病気になってしもうた。衰弱していく愛する妻を見て夫はとある決意をするんじゃ。その決意とは未知の砂漠を探索し、薬になるであろうハーヒホーヘーヒホーを取りにいく、という無謀な作戦で、普段なら誰一人賛成する人間はおらんかったじゃろう。じゃが砂漠にぽつんとあるその村は必死じゃった。候補者を募り、誰も帰らぬ冒険へと出掛けたんじゃ…。待っていた妻は亡くなり、夫は家へ帰れず、村に残ったのは空き屋だけ。それから砂漠はこう呼ばれるようになったのじゃ……くうボボボボボボボボボボボボボノサバッポォォォウッ!」

 どさくさに紛れて尻を触るじいさんに“電打エレキトリック”をお見舞いした。

「悲しい話をしながらお尻を触らないでッ!!!」

 じいさんが出来たてほかほかのカリントウのように黒くなり、口から煙を吐いてぶっ倒れた。

「ナイス……ヒップ………がくっ」

 スケベじじいは静かに息を引き取った。
 ~砂漠の賢者ポカホンタス、弟子の尻を触ってオアシス・ジェラに散る~って墓標にしっかり刻んでおいてやるからな。じいさん、いや、スケベじじい…安心して逝ってくれ。

「女神の怒りだ…」
「エリィちゃんを怒らすと黒こげになるって本当だったのか」
「怖い…怖いけど可愛い…」
「死んでもいいから一度だけあのお尻を…」
「バカ野郎っ! アリアナちゃんのあの目を見てみろ」
「ひい! あんな冷たい目でアリアナちゃんに見られたら生きていけない!」
「エリィにえっちぃことしたら軽蔑する…」

 アリアナがポカじいを靴底でぐりぐりやりながら鋭い眼光を男たちへ向け、狐の尻尾をピンと垂直に立てた。あまりの迫力に後ずさりする冒険者が多数出た。

「賢者様……スケベがなければこれほど尊敬できるお方はいないのに…」

 ジャンジャンが残念なものを見るようにポカじいの残骸へ目を落とし、祈りを捧げた。

「すごいのかすごくないのか分からない人だな」

 アグナスが呆れた様子で肩をすくめ、ポケットから一輪の花を取り出してポカじいへ落とし「みんな! 空房の砂漠は確かに危険な場所だ。しかし安全なルートは存在する!」と大きな声を出した。

 その声に呼応して、白い神官風の服を纏ったクリムトが、ざわつく周囲を鎮めながら、ずいとでかい身体を割り込ませてテーブルの真ん中に手をついた。

「こちらにおられる支部長と、一級情報屋からの情報で『空房の砂漠』を抜ける安全なルートは確認している。皆の衆、安心しろ」

 そう言って、クリムトは『空房の砂漠』の細かい地図を広げた。
 俺の持っていた地図が大ざっぱな場所を示した縮小版だとすれば、クリムトの地図は『空房の砂漠』をより詳細に書いた拡大版だ。地図の左下が空白になっている。それ以外ははっきりと地形が描かれていた。

 おお、これはいいな。“複写コピー”してもらってポカじいと一緒に安全なルートの道筋の確認をしよう。ポカじいが見るだけじゃ安全かわからんって言ってたから、かなり有益な情報だろう。あっ……つーか水晶でずっと魔改造施設を見ていれば、敵さんがどのルートで移動するかわかるじゃねえか。
 おそらくアグナスが安全確保のためにルート確認をポカじいにお願いするだろう。俺ならそうする。

「こいつぁすげえ」
「さすがクリムトさん!」
「クリムトさん、よく支部長から話を聞けたな」
「地図にない未知の土地か……腕がなるぜ」
「随分と遠回りになるが仕方ないだろうな」
「やったるでぇ~」

 また様々な声が上がる。どうやらジェラの冒険者は賑やかな人間が多いらしい。

 しばらくして、ずっと黙っていたルイボンの父親、ジェラの領主が口を開いた。
 白ターバンに白い布を巻き付けた砂漠装束。口ひげとあごひげ。いかにも砂漠の男といったこんがりと焼けた肌はつるりとしており、領主の見た目を幾分若く見せている。全体の印象は優しげなものだ。

「諸君。作戦決行は三日後だ。ジェラからもチェンバニー隊長率いる部隊を五十名出す。成功報酬は参加した冒険者すべてに百万ロン。盗賊団の殲滅と誘拐された子どもの奪還は我がオアシス・ジェラの悲願でもある。何卒、よろしく頼む」

 領主が頭を下げ、続いてルイボンも領主の娘らしく頭を下げた。

「頭をお上げください」

 すぐにアグナスが二人の顔を上げさせる。

「報酬がなくともやりますよ。我々冒険者は下衆で卑怯な連中が嫌いなのです」

 彼の言葉に、冒険者全員がうなずいた。
 本来、冒険者とは未知の土地へ向かう者を指すらしい。設立者であるユキムラ・セキノの高潔な精神が脈々と受け継がれており、冒険者はCランク以上ともなれば一般人から尊敬され、それだけで信用にたるものと判断される事が多く、今や彼らの仕事は未開の地へ行くだけでなく捜索、探索、討伐、護衛、教育、研究、など多岐にわたる。血の気が多い連中が多数いることは事実だが、あまり目立つ素行の冒険者は即刻証明書を剥奪される。

「私は一人でも行くわよ。子ども達のために浄化魔法を習得したもの」

 念のため決意表明をしておいた。若いから参加しちゃだめ、と言われたら洒落にならない。
 浄化魔法を習得した、という言葉に周囲が驚嘆した。あのアグナスですら驚きの様子だ。魔法使いの中でも白魔法士はレアで、浄化魔法は白魔法の中でもレア中のレア魔法。驚かれるのも無理はない。
 てか俺ってばよく習得できたよな。ぬああっ…やはり天才っ!

「君は本当に白の女神なのかもしれないね」

 アグナスが嬉しそうに自分の右腕をなでる。俺が“加護の光”でくっつけた場所だ。
 ジャンジャンがこちらを見て、誇らしさと優しさをない交ぜにした表情を作った。

「エリィちゃんがボランティアでお世話していたグレイフナーの孤児院も盗賊団に襲われたんです。エリィちゃんが知っている孤児院の子どもが、魔改造施設にいるかもしれない……だから頑張って浄化魔法を憶えた……そうだよね?」
「…ええ、そうよ」
「そうだったのか」

 アグナスが複雑な表情を作って剣柄へ手を乗せ、少し思案顔をしたあと、こちらに自信たっぷりの笑みを向けた。普通の女子ならコロッといってしまいそうな、魅力的な顔だ。

「なんとしてもこの作戦は成功させよう」
「もちろんよ!」

 気合いを入れて胸元で拳を握る。
 生き残っている孤児院の子どもは全員助けてやるぜ。エリィもそれを強く願っているだろう。

 周囲からは「エリィちゃん健気や~」とか「白の女神降臨せし」とか「何もしゃべらないアリアナちゃん可愛い」などの声が漏れる。
 一同が気合いとやる気を入れ直して、さらに細かい作戦が話されようとした。

 そのときだった。

 中央のソファにじっと座っていたオアシス・ジェラ冒険者協会、支部長のよぼよぼじいさんが、手すりにつかまりつつ亀みたいな動作でのっそりと立ち上がった。クリムトへ未知の土地の情報提供をした支部長。集まっていた冒険者総勢六十六名、ルイボン、領主が、支部長が何を発言するのか、固唾を飲んで見守る。アグナス、クリムト、トマホーク、ドン、最強パーティーの四人ですら敬意を払い、一歩下がる。

 今まで腰が九十度に曲がり、碌に顔が見えなかった支部長。なんと、その腰が驚くことに七十度まで引き上げられた。
 何か重要な発言をする。間違いないっ。
 俺とアリアナはつい身を乗り出した。

 よぼよぼの支部長はおもむろにテーブルへ両手を付き、歯が抜けた口を大仰に開いた。


――ごくり


 そこかしこから生唾を飲み込む音が響く。
 支部長の腰が七十度になったことは強烈なセンセーショナルをこの場にいるメンツに与えたようだ。
 なんだ! 何を言うんだ支部長っ!


――ぷるぷるぷる


 テーブルについている両手が小刻みにぷるぷる震えている。
 どうやらそれほど言いづらいことらしい。

 まさか……『空房の砂漠』にはとてつもない化け物級の魔物がいて、このメンバーでは到底倒せない、とか。もしくは砂地獄は地下世界へと続いていて、支部長は若かりし頃、そこで数々の冒険をしていた、とか。いや、ひょっとしたら『空房の砂漠』にすら辿りつけないほどの難所が途中に待ち構えていて、子ども達の救出どころじゃない、とか。

 なんだ! 何を言おうとしているんだ支部長っ!

 まぶたがはち切れんばかりに両目をかっぴらき、冒険者達が前のめりに支部長へ近づく。

 よぼよぼの支部長は拳銃を四方から突きつけられるように、約六十個の頭を突きつけられていた。やがて支部長を囲む円は、きれいな輪を描き、隣と隣の距離が狭められ、今にもお隣さんの鼻息がこっちにぶつかるほど密着する。

 支部長は大仰に開いた口を一回閉じ、大きく息を吸い込んで、ついに溜め込んでいた至言となるであろう言葉を発したっ!


「じぇらぼうけんしゃきょうかいへようこそぉ」


 歯抜けの口から、気の抜けた挨拶が漏れる。
 歴戦の冒険者達が瞬時にその言葉の意味を逡巡し、裏の意味を読み取ろうとする。
 三秒ほどして、ここにいるすべての人間がその言葉を理解した。


 ズコーーーッ!
 どたん!
 ばたん!
 でしゅっ!
 ドンガラガッシャーン
 パリーン


 俺は肩すかしを食らったようにテーブルに突っ伏し、アリアナがその上に倒れ、ジャンジャンは力を入れすぎた拳を空中に振り抜き、クチビールがその拳に不運にも殴られ、クリムト、トマホーク、ドンが盛大にすっ転び、サイドテーブルが重みで壊れてコップが割れ、期待していた冒険者約六十名も入れすぎた力を逃がせず床にぶっ倒れ、領主とルイボンが椅子からずり落ち、最後に一人だけ立っていたアグナスが苦笑しつつ両手を広げ――


「やれやれだ」


 と苦情に近い感想を漏らした。
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いや~乱世乱世。
「お約束」と「天丼」が大好きな作者でござる。

敬愛する諸兄諸姉の皆さまに伝えねばならぬことがあり、この場を借りて発言する権利を得もうした。
小生、仕事とプライベートがばたばたしており、四日更新がなかなか厳しいでござる。
もうお察しの方も多数いるかと思うのでござるが・・・
今後は一週間を目安に待って頂ければ幸いでござるよ・・・。

だがしかし!
しかし!
できる限り早くアップはしていく所存!
今後は石の上で座禅を組むような平静な心で更新をお待ち下され!

全裸待機している諸兄諸姉の皆さまには大変な苦行・・・
小生も涙の飲んでの・・・

エリィ「早く書きなさい!」
アリアナ「スケベキライ…」


すみましぇん・・・・・・


早く仕上がればどんどん上げていく、というのは変更しませんので…何卒っ、何卒ご了承頂ければと!
次回アップは未定!
頑張ります!

ボクハガンバッテマス。
ウソジャナイYO。

ということで敬愛する諸兄諸姉の皆さま、次話にてまたお会いしましょう!
+注意+
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