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エリィ・ゴールデン ~ブスでデブでもイケメンエリート~ 作者:四葉夕卜/よだ

第三章 砂漠の国でブートキャンプ

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第11話 イケメン、商店街、七日間戦争・後編

増加率が間違っていたので修正致しました!
増加率(%)=(増加量/増加前の量)×100

ご指摘、感想いつもありがとうございます。
返信が遅くて申し訳ありません。

今回、ちょっと長めです。
それでは後編です!!
 商店街七日間戦争・五日目――


 今日も吟遊詩人のコンサートがあるのか、並んでいる人数は百人ちょっとだ。
 合わせてルイボン14世のほうでも、治療院をこっちの格安金額に三日間だけ合わせるらしい。いい判断だが、ちょっと遅かったな。

 そろそろ体がきつくなってきていた頃だったから、来院者が少ないのは正直ありがたい。

 たこ焼きは軌道に乗っているし、ポイントカードもお客さんに面白がってもらえている。お調子者のマツボックリペアがポイントカードを百枚コンプリートすると、『エリィ、アリアナのどちらかと半日デートできる券』というのをギャグのつもりで景品交換所に書いたらしい。
 このポイントカード、一枚で百ポイントまで貯められて、一ポイント千ロンだ。つまり一枚満タンにするのに日本円にして十万円必要で『エリィ、アリアナのどちらかと半日デートできる券』と交換するには一千万ロン必要だ。まさかポイントカード百枚貯めるアホはいないだろう。

 ちなみに一ポイントから景品と交換できる超良心的システムを採用している。
 すぐ交換できたほうが楽しめると思ったからだ。


 この日も陽射しは強く、晴れ渡る空が砂漠の町に広がっている。


 俺とアリアナ、ジャンジャン、コゼット、ポカじいがいつものように治療院の準備を進めている。治療院の開放も準備期間の一週間と勝負五日目、あわせて十二日目に突入しており、準備は流れるように行われる。

 ただ、変わったことが一つ起きた。

 いつもは隙を突いて尻を触ってくるポカじいが今日に限って妙に静かだ。
 俺は事情を聞こうとポカじいに近寄ると、賢者らしく瞑想して何かの気配を探っているところだった。探索系魔法を使っているのだろうか。じいさんの使用できる魔法は数が多すぎてすべて把握しきれていない。

「む、エリィか……」
「何かあったのポカじい」
「ふむ……ちぃとな。こっちにきてみい」

 ポカじいは俺を近くへ呼ぶと、窓の外を覗くように言ってくる。
 なんだ? なんかあるのか?

 雲一つない晴天の空に、大きな赤い鳥がトンビみたいにゆっくり旋回していた。

「エリィ、わしはどうしても家に帰らねばならんようじゃ」
「あの鳥、何なの?」
「なぁに、アレ自体は大したモノではないのぅ。だが、警戒しておいたほうがええじゃろ。面倒じゃが結界の張り直しが必要じゃな」
「平気?」
「時間がかかるからそのつもりでおるんじゃぞ」
「どれぐらいかかりそう?」
「丸一日じゃな。詳しくはあとで話すわい」
「…わかったわ」
「今までの教えを守っておれば大丈夫、おぬしなら平気じゃ」
「ありがとう…ってお尻は触らせないわよ!」
「最近妙に勘が鋭くなって尻をさわるのも大変じゃ!」

 捨て台詞を残してじいさんは治療院から出て行った。去り際に「まーたイカレリウスがのぅ…」というぼやきが聞こえてくる。

 イカレリウス?
 どっかで聞いたな…。
 確か南の魔導士、だったか?

 そうだ。砂漠の賢者ポカホンタス、南の魔導士イカレリウス、ってクラリスが何度も言ってたもんな。じいさんとどういう関係にあるのかは分からないが、まあとりあえずポカじいが平気って言ってるなら大丈夫だろう。

 俺たち治療組は久々に余裕のある治療ができるので、患者さんと談笑しながら仕事を進めていく。ジャンジャンとコゼットも穏やかな顔だ。
 するとここ何日かですっかりお馴染みになったルイボンが高笑いしながら登場した。

「エリィ・ゴールデン! お邪魔するわよ!」
「あらルイボン、どうしたの?」
「別にあなたのニキビを数えにきたわけではなくってよ」
「そう。患者さんがいるから静かにね」
「あらごめんなさい」

 素直に声のトーンを落とすルイボン14世。

「で、あなたいつ東の商店街に来るのよ?」
「え? 何の話?」
「ほ、ほら。敵の大将の私が来たんだから、あなたが来ないとおかしいでしょ!」
「私、治療で忙しいから無理よ」
「そうよね…」

 ルイボンはがっくりと肩を落として、付き人から扇子を受け取り、パタパタと力なく扇ぐ。
 俺は患者に向き直り、魔力を放出させた。

癒発光キュアライト
「おお…杖なしか。美しい」
「それよりもう怪我しちゃダメよ」
「わかったよ。白の女神の頼みじゃ断れないな」
「その呼び方………まあいいわ」
「白の女神エリィちゃん、ありがとう」
「どういたしまして」

 患者に手を振り、ルイボンを見た。

「それで、何か用なの?」
「コンサートのチケット……いる?」
「吟遊詩人の?」
「ええそうよ。超特別に最前列の席を確保しておくわ」
「うーん、でもやっぱり時間がなぁ…」
「そうよね……仕方ないわよね…」
「観てみたいけど今回は諦めるわ」
「そう…そうよね」

 明らかにがっかりしているルイボン14世がちょっと可哀想になってしまう。

 仕方ないから時間を作って顔を出そうかと思っていると、治療院の扉が慌ただしく開いた。桶屋の息子が血相を変えて飛び込んでくる。治療組、患者たち全員が何事かと注目した。

「た、たいへんだエリィちゃん!」
「どうしたの桶ヤン?」
「デザートスコーピオン討伐組が帰ってきた!」
「あら、討伐はうまくいったのね」
「成功は成功らしいんだ! でも予想されていた出現魔物B級のクイーンスコーピオンの他に、B級キングスコーピオンもいたらしく――!!」
「キングスコーピオンですって! クイーンとキングは本来別行動をしているはずよ?! 竜炎の! 竜炎のアグナス様はご無事なのですか!?!?」

 ルイボン14世が顔面を蒼白にして桶屋の息子に詰め寄る。

「わっぷ! 髪ッ。髪の毛で息ができないッ!」
「こらこらルイボン落ち着きなさい!」

 俺は桶屋の息子に頭から突っ込むルイボンを引っぺがした。

「生きているよ! でも右腕をやられて出血多量、意識不明の重体だそうだ! いまからこの治療院に搬送される!」
「討伐地域は北側でしょ? 北東の治療院のほうが近いじゃない」
「それが…格安で開放したせいで治療士が魔力切れなんだ! 白魔法を使える状態じゃないらしい! 討伐に同行した領主お抱えの白魔法士もまずい状況みたいだ。おそらくここに七十名ほどの患者が来る!」

 途端、ざわつき始める治療院。
 ルイボンが信じられないのか腰砕けになってへたりこんだ。


「あの、あの竜炎のアグナス様が……炎の上級まで使えるお方が……」


 緊急事態は日本でもよくあったな、と思いつつ立ち上がった。


「みんな静かに! やることは前回の火事のときと同じよ! 私の指示を聞いてちょうだい」


 治療院は俺が発した可愛らしい声によって静まりかえった。


「まず桶ヤンは南の商店街から応援を呼んできて。みんないい人たちだから協力してくれるわ。アリアナ遊撃隊は今まで通り、たこ焼き屋、ポイントカード、治療院に情報を伝えつつ穴埋めを。ジャンジャン、コゼットは治療士の魔力を温存するために、今並んでいる怪我人を魔法ではない通常の処置で治療してあげて」
「よっしゃ!」
「うん…」
「やるぞっ!」
「がんばるニャ!」
「やります!」
「オーケーエリィちゃん!」
「がんばりまーす!」

 桶屋の息子、アリアナ遊撃隊、ジャンジャン、コゼットが準備のために走り出した。

「マツボックリペア! クチビール! ここが正念場よ! 気合い入れなさい!」
「エリィしゃんのために!」
「よぉーし!」
「やるわよ!」

 三人は互いの手を叩き合って、魔力ポーションを一気飲みした。いつの間にかめっちゃ仲良くなってるし。

「ルイボン! あなた家に帰ってありったけ魔力ポーションと光魔法が使えそうな人間を引っ張ってきてちょうだい! 領主の家なら色々あるでしょ?」
「そ、そんな………アグナス様……」
「ルイボン! 聞いているの?!」
「あのお方はお強くて……凛々しくて……」
「ルイボン!」

 跪いて彼女の肩を両手で揺らした。
 かくんかくんと力なく首が垂れ、変な髪型が揺れる。

「意識不明だなんて……そんな……」
「ルイボン14世!」
「あのお方が…………」
「ルイス・ボンソワールッ!!!」

 俺はパン、と音が鳴るほどの力でルイボンの頬を張った。

「いたっ……何するのよ!!」
「…なんだ、まだ元気じゃない」

 ルイボンを抱きしめて、背中をゆっくりと撫でてやった。
 わかる。わかるぞルイボン。好きな異性が死にそうだったら誰だって狼狽えるよな。
 俺だってそうだった。
 思い出したくない記憶だってある。
 でも大丈夫だ、何とかする。俺が何とかしてやるから。

「え…ああ。私すっかり……」
「いいのよ、恋する乙女だもの。好きな殿方を心配しないほうがおかしいわ」
「エリィ…あなた……」
「大丈夫よ」
「本当に?」
「まかせて」
「ふん、さすがは私のライバルね…」
「あなたの想い人、竜炎のアグネスちゃんは私が治すわ」
「アグナスよ。あとちゃん付けしないで」
「あら失礼。アグナスは私が治すわ。だからあなたもその人が好きなら自分のできることを精一杯しなさい!」
「言われないでもそうするわ! 行くわよ!」

 さすが領主の娘、立ち直るのが早い。付き人を連れて走って治療院から出て行った。

 俺たちは重体患者がいつ来てもいいように治療院内のベンチや診察台を移動させ、場所を広く取った。
 ポカじいがいないので正直、不安だ。
 しかもアグナスは腕をやられた、と言っていた。まさか切断されたのか?
 もし切断されていたら白魔法の下級“再生の光”では腕は元に戻らない。中級“加護の光”が必要になる。

 ふう、落ち着け。
 こういう時こそ落ち着きが大事だ。
 焦っていては正常な判断ができない。

 精神統一をしていると外が騒がしくなり、治療院の扉をバンと勢いよく開けて桶屋の息子が飛び込んでくる。

「エリィちゃん、第一陣が来る!」
「みんな、いいわね!」

 全員が返答をすると同時に、ずたぼろになった男たちが搬送されてくる。見たところほとんどが重傷者で、魔物の返り血であろう緑色の液体を全身にこびりつかせ、呻くこともできないほど憔悴している。破れた衣服から痛々しい傷口がのぞき、体のそこかしこに砂と汗と血が入り交じってくっついていた。
 馬車を院の前に乗り付けたのか、患者が一気に運ばれる。
 治療院は戦争映画で観た、野戦病院のような様相に一瞬で変わった。

「うぅっ………」
「治療士はどこだ! 早く治療士を!」
「患者をその毛布の上に寝かせて!」
「君のような若い子が治療士?! 白魔法が使えるのか?!」
「私がこの治療院の代表よ!」
「バカを言うな! くそっ! 今日は何て厄日なんだ!」
「おだまりッ! いいから寝かせなさい!」

 火事のときと同じリアクションをされ、男を一喝した。
 見れば怪我人を搬送してきたその男も満身創痍で、装備は半壊して原型を留めておらず顔が泥だらけだ。

 患者は“癒発光キュアライト”では治らない傷だ。
 俺は患者が寝かされるのを待たず、ずっと循環させていた魔力に白魔法を乗せ、解き放った。

「“再生の光”!!!」

 体が光り輝き、患者の傷が嘘のようにみるみる塞がっていく。
 患者は苦悶の表情から穏やかな顔へと変化し、気持ちよさそうな寝息を立てた。

「へ…………へっ?」
「しばらく安静に。奥へ運んでちょうだい」
「う……うおおおおおおおおおっ! ありがとうお嬢ちゃん、ありがとうっ! こいつはキングが出てきたとき囮になって……それで………全員の命を救った! こいつが死んじまったらおれァ、おれァッッ!!!」

 言葉にならない声を上げて号泣する連れの男に“癒発光キュアライト”を唱える。白い光が瞬き、男の傷をゆっくりと癒していく。

「いいのよ、うん。お疲れ様。もう休んでちょうだい」
「お、お、おぢょうぢゃん、おでばッ……」
「あなたたちがいなければ町は魔物に襲われていたわ……心からの感謝を」
「あ゛あ゛っ!」

 勇敢な男に向かってレディとしてできる最高の礼を取った。今までは俺がお辞儀をすると勝手にエリィの体が裾をつまんで礼をしていたが、俺自身の心も込めたレディの礼だ。ありがとう、勇敢な男よ。俺はお前を尊敬するぜ。

 男は泣きながら何度もうなずき、同胞である患者を奥へと運んでくるとすぐに戻ってきた。

 彼は歴戦の勇士なのか、ほんの数秒で気持ちを切り替えたらしくすっかり精悍な顔つきになっている。日本でもそうだった、こういう武士のような男は土壇場でも音を上げずに成果を出す。

「重傷者をこのお嬢ちゃんの前へ! 全員急げッ!」
「あなた大丈夫なの?」
「こんなときに休んでられっかよ!」
「そう、助かるわ」
「おれァ、オアシス・ジェラ護衛隊長のチェンバニーってもんだ」
「私はゴールデン家四女、エリィ・ゴールデンよ。よろしくチェンバニーさん」
「チェンバニーでいい」
「わかったわ、バニーちゃん」
「ば、バニーちゃん?!」
「話はあとよ!」
「よ、よし、そうだな。おい野郎共、どんどん連れてこい! この白魔法士様が必ず助けてくれるッ!」

 怒号が飛び交い、魔法の光が院内で輝いては消え、血の臭いと砂の混じった埃が宙を舞う。
 次々と患者に“再生の光”を唱える。重篤患者には治癒ヒール組が一時的処置として“治癒ヒール”を唱える。数十秒ではあるが、“治癒ヒール”を唱えると止血の効果がある。だからといって連発しても深い傷は治らない。あくまでも症状の進行を食い止めるだけだ。

「エリィしゃん!」

 “治癒ヒール”を連発して、裂傷、打撲、無数の切り傷を浴びた患者の傷口が開かないようにしていたクチビールが叫ぶ。
 患者が危険、という合図だ。
 そちらへ走り“再生の光”を唱える。
 患者が多すぎて俺の前に運びきれず、俺自身が移動して治療をするほうが、効率がいい。

 柔らかい“再生の光”に包まれた患者の傷が瞬く間に消えた。

「エリィちゃんこっちだ! この患者の意識が飛びそうだ!」
「オーケージャンジャン!」

 素早く移動して“再生の光”を行使する。

「お嬢ちゃん、こいつを頼むッ!」

 護衛隊長バニーちゃんの呼ぶほうへ駆けつける。
 汗が流れ落ち、息が切れてくる。ポカじいの言いつけ通り、魔力循環は絶やさない。

 “再生の光”ッ!!!!!

 くそ、あと何人なんだ!
 まだ患者はいるのか?
 もう“再生の光”を三十発以上唱えているぞ!

「誰なんだあのお嬢ちゃんは?!」
「杖なしッ? 一瞬で“再生の光”を詠唱!?」
「普通じゃねえ! どんだけ魔力があるんだ!」
「なぜあんなに神々しい!」
「う、美しい………」
「彼氏はッ!? 彼氏はいるのか!?」
「しらん! 俺が聞きたいぐらいだ!!」

 俺が魔法を使い、ジャンジャン、コゼットが甲斐甲斐しく治療後の患者を介抱し、クチビール、お調子者マツボックリペアが“治癒ヒール”を唱え、アリアナ遊撃隊が足りない物資を運んできてくれる。他にも救護班であろう男たちが入れ替わり立ち替わり手伝ってくれ、さらには南の商店街からの応援が来た。“治癒ヒール”ができる魔法使いが三人いるそうなので急いで治療に参加してもらう。

「ジャンジャン、あと何人!?」

 問いかけにジャンジャンが駆け寄ってくる。

「山場は越えたと――」
「エリィちゃん! 第二陣だ!」

 ジャンジャンの声をかき消すように桶屋の息子が治療院に飛び込んできた。

「ぎゃあああ! いてえ!」
「た、たすけてくれ!」
「ぐぅーーっ」
「ママン!」
「死にたくねえ! 死にたくねえよぉ!」

 たちまち運ばれてくる患者たち。軽く見積もっても三十人はいる。怪我は、“癒発光キュアライト”か“再生の光”で治りそうなレベルで、斬撃系の傷が目立ち、ほとんどの患者が貧血状態になっているようだ。

 早く傷を塞がねえとやべえ!
 こうなったらアレを試すしかねえな。
 一回成功したことがあるから集中すればいけるはずだ。

「みんな! 患者を私の周囲に集めてちょうだい! 早く!」

 指示通り、メンバーたちは俺を中心に円形に患者を配置していく。

 唱えるのは白魔法・下級“癒大発光キュアハイライト”。
 文字通り“癒発光キュアライト”を大きくした範囲魔法で、半径五メートルほどにいる人間すべてを対象にできる。人数が多いと魔力消費が激しいものの、一度に大勢を癒せる便利な魔法だ。ただ、この魔法、結構難しい。

 よし、集中………
 集中しろ……

「あの灯火を思い出し……汝願えば大きな癒しの光になるだろう……」

 イメージは瞬間的に傷が癒せる培養カプセルだ。すげー前に見たSF映画がイメージの原点になっている。これで一回成功した。

 俺ならできる。
 やれる!!!

「“癒大発光キュアハイライト”!!!」

 大量の魔力が抜け落ちてく独特の感覚と共に、両手両足、全身から光があふれ出す。イメージした範囲、半径五メートルの地面が輝いてドーム状になり、イルミネーションの電球のような白と黄色の光を交互に発した。
 範囲内にいた負傷者の傷がゆっくりと、しかし確実に塞がっていく。
 効果は“癒発光キュアライト”に極限まで魔力を込めたものと同じ。複雑骨折、深い斬撃痕でない限りは完治する。

 院内にいた全員が固唾を飲んで見守っていた。
 やがて漏れる声と、傷が塞がった安堵のため息が響く。

「エリィちゃん……」
「エリィ…」
「すごい……」

 ジャンジャン、アリアナ、コゼットが呟いた。

「痛くねえ。痛くねえぞ!」
「ママン………ってあれ?」
「“癒大発光キュアハイライト”?! 熟練の白魔法使いでも難しいのに…」
「白の中級ができて“癒大発光キュアハイライト”が使えないってのはよく聞くぜ!」
「女神だ、女神がいる…」
「すげえよあんた…」
「彼氏は……いるのか…?」
「しらん……俺が聞きたいぐらいだ…」

 だがこれでもまだ完治していない重傷者はいる。
 額から落ちる汗をぬぐって魔力切れで倒れそうになる体を根性でなんとか支え、三名に“再生の光”を唱えた。これで山場は越えた。あとは他のメンバーでなんとかなる。
 第二陣が比較的軽傷でよかった…。

「エリィ! エリィ・ゴールデン!」

 息をついたのも束の間、泣きそうな顔で治療院に入ってきたのは変な髪型のルイボンだった。続いて熟練の冒険者らしきメンツが鎧をガチャガチャいわせて入ってくる。

「アグナス……アグナス様を看てちょうだい! あの方は頑なに最後でいいと言い張っていて……」
「俺からも頼むっ!」
「アニキを看てくれ!」
「頼むッッ」
「わかったわ、早く連れてきて…」

 俺は魔力枯渇寸前でふらついて倒れそうになった。
 あわててジャンジャンとアリアナ、コゼットが支えてくれる。

 揺らさないよう慎重に運ばれてきたのは、赤い鎧に赤いマント、赤い髪を後ろで束ねた美丈夫で、美しいであろう顔には脂汗が大量に浮かび、だらりとした右腕は根本から切断されている。担架には大量の血が付着して、生きているのが不思議だった。それでも精神力が相当強いのか、意識をギリギリのところで保っている。

「まだ魔力が………あるかい……治療士のお嬢ちゃん……」
「しゃべってはダメですアグナス様!」

 ルイボンがすかさずアグナスに駆け寄った。

「アグナス様はキングスコーピオン、クイーンスコーピオンを倒す事と引き換えに右腕をやられ……それでも半数の敵を屠り、討伐を成功へ導いたのです…。アグナス様こそ真の勇士、冒険者の中の冒険者です…」

 付き人なのか仲間なのかわからないが、連れ添っていた神官風の男が涙を流しながら言った。

「我々が不甲斐ないばかりに………くそっ!!」
「旦那!」
「アニキっ!」
「もう……いい」
「アグナス様ッ!」
「ルイスも……ありがとう…」

 竜炎のアグナスは周囲のメンバー、神官風の男とルイボンへ笑顔を贈ろうとし、激痛に耐えられずしかめ面のまま口角を上げた。

「最期に………“癒発光キュアライト”でいい……唱えて……くれないか………。ぼくは………治療魔法の光が………大好き………なんだ」

 治療院の中央に下ろされた竜炎のアグナスの頭のそばへ、俺は跪いた。

「わかったわ」

 決然とした意志でうなずく。

「ルイボン、魔力ポーション持ってない」
「……あるわ」

 彼女から最高級品らしき魔力ポーションを受け取り、飲み干した。味はメロンソーダと酷似していて、疲弊しきった体に染み渡るように広がっていく。

 治療院はお通夜のように静まりかえっていた。共にスコーピオンを討伐したであろう冒険者風の男たち、オアシス・ジェラの兵士たちからはすすり泣きが聞こえてくる。みな、分かっていた。この傷を治すには白魔法・中級以上の魔法が必要だ。使用できる治療士はこのジェラの町には一人もいない。

 ポカじいが言っていた。致命傷の場合、適切なレベルの魔法を使用しない限り助からないと。今の竜炎のアグナスに“再生の光”を唱えても傷は塞がるが、塞がっただけで助かりはしない。失った血液や生命力は戻らず、ほんの少し延命するだけだ。
 これがもし右腕を切断され傷を負った直後だったのなら“再生の光”で回復できただろう。負傷直後は命に別状はなかったはずなので、腕はくっつかないにしろ命は助かったはずだ。しかし、こうなってしまっては遅い。時間が経ちすぎている。“再生の光”では助けられない。

 白魔法・中級“加護の光”の詠唱は『親愛なる貴方へ贈る、愛を宿して導く一筋の光を、我は永遠に探していた』だ。
 普通だったら絶対に人前で言いたくないセリフだな。

 もう一度、竜炎のアグナスを見つめた。
 通った鼻筋と赤い髪が特徴的だ。鍛え抜かれた右腕は無残にも分離しており、痛々しく包帯で血止めがされ、患部はむき出しになっている。


 ここでやらなきゃ男じゃねえ。


 やる。俺は白魔法・中級“加護の光”を唱えてやる。


 両膝をつき、両手を組み、リラックスして深呼吸をする。


 アグナスの体が健康体になるイメージを何度も何度も繰り返す。


 数々の商談をまとめ、プレゼンを成功させ、危険な人脈の橋渡しをしてきたじゃねえか。こんなもん余裕だ。
 修行中にチャレンジして何度も失敗しているが、そんなことは関係ねえ。
できるできる、俺ならできる。


 俺、天才、イエーイ。俺なら絶対できる。


 深呼吸を十回ほどして両手を広げ、循環させた魔力を一気に放出した。


「親愛なる…………貴方へ………」


 強烈な呪文の波が内側から押し寄せる。
 凡人では越えられない壁があると言われる上位・中級魔法。
 半端じゃない圧力が体中でせめぎ合う。
 やべえ! まじでやべえこれ!
 こんなん絶対疲れてるときに試しちゃいけねえヤツじゃねーか!


「エリィ…?」
 アリアナが何かに気づいたのか不思議そうな声を出す。

「エリィちゃん?」
 次にジャンジャンが歩み寄る。

「あれ? エリィちゃん?」
 コゼットがドクロのかぶり物を揺らして首をかしげる。

「まさかエリィしゃん…」
「うそだろ」
「やる気?」

 クチビール、お調子者マツボックリペアが魔力切れ寸前でへたりこんだ姿勢で呟く。

「おいおい…まじかよお嬢ちゃん…」
 護衛隊長のバニーちゃんが信じられないと言った表情で見つめる。

「エリィ…………お願いッッ!!!!!!!!」
 そしてルイボンが悲痛な叫びを上げてすがるように祈る。


「愛を、宿し、て………………導く一筋……………………の光……………………を」


 へそから湧き上がる魔力が入り乱れ、魔力循環がめちゃくちゃにされそうになる。竜巻を飲み込んだみたいに全身に食い込んでくる魔力の奔流に、負けそうで負けない寸でのところで踏みとどまる。歯を食いしばり、目をきつく閉じ、次に続く詠唱を何とか紡ごうとする。


「何の呪文を唱えようとしてるんだ…?」
「女神……まさか中級を?」
「白魔法の…中級ッ?!」
「魔力枯渇寸前で…無茶だ…」


 院内が色めきだつ。
 無理だ、無茶だ、白魔法の中級は他より難しい、など様々な声が上がる。
それでも最後の希望に賭けたいのか、次第に声は多分に願望を含んだ叫びに変わり、俺を囲むようにして全員が集まってきた。


「いけ…いけーーーーーっ!」
「いけーーー! 成功してくれ!」
「お願いだぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
「アグナスの旦那を助けてくれ!」
「やれーーやってくれぇぇぇえええ!」
「うおおおおおおおおーーーーー!」


 院内にいる人達の絶叫が聞こえる。


「我は………………永………………遠に……………」


 さらに魔力の奔流が強くなる。初めて白魔法の中級を成功させるには、明確な意志と確固たる決意、清い心、人を救わんとする熱い思いが必要で、心に不純物が入っていると魔法は失敗して霧散する。
 ポカじいの魔法授業が頭をよぎる。


 俺はやるんだ。絶対助けるんだ。


 この目の前の人を。


 この人のために。ルイボンのために。


 町を救ってくれたから。


 だから俺が助けるッ!!


「いけエリィ…!!」
「成功してーーー!」
「がんばるニャ~!」
「ボス……ッ!!」
「エリィちゃんやれーっ!!!」
「がんばれエリィちゃあああん!!!」
「やるでしゅエリィしゃん!!!」
「いっけー!!!」
「ゴーゴー!!」


 仲間が何度も叫び、院内の全員が声を張り上げる。
 俺は霧散しそうになる魔力をかき集め、張り詰めて途切れそうになる緊張の糸をギリギリのところで保ち、鉛のように重くなった唇を必死に動かして、一文字、一文字、ひねり出すみたいに声に出していく。


「………探……し………………て………」


「うおおおおおおおおおおおおおおっ」
「うわああああああああああああああ」
「いっけえええええええええええええ」
「女神いいいいいいいいいいいいいい」
「たのむううううううううううううう」
「あと二文字ぃぃぃっぃぃいいいい!」
「エリィちゃああああああああああん」
「エリィ……………!!!!!!!!」


 最後の二文字がまるで唇を接着剤で固定されたみたいに出てこない。刻一刻と魔力が消費されて循環が途切れそうになる。崖っぷちで踏みとどまるように広げた両手に渾身の力を込め、唇を噛みしめて両目をきつく閉じる。
 ここでやらなきゃ、男じゃねえええええええ!
 うおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!
 最後の二文字を、細い隙間へ強引に物を突っ込むみたいにひねり出してねじ込んだ。


「……………………いた」


 いったああああああ!!
 最後まで詠唱したぜええええええ!!!
 うおおおおおおおおおッ!
 治れこんちくしょーーー!!!!


「“加護の光”!!!!!!!!!!!!!!!」


 しん、と静寂に包まれる治療院。
 身を乗り出し生唾を飲み込む周囲の人々。

 しばらくして俺の体から眼がくらむほどのまばゆい光が立ちのぼり、束になって天井へと突き上がった。魔力の圧でまとめていた髪がほどけて、髪の毛も光と一緒にぶわっと逆立つ。
 アグナスの全身からも同様の光の柱が上がり、彼が魔物から受けた傷が塞がって、切断された右腕がアメーバのようにくっつき血の通った元の腕へと再生した。流れ出た血ですら再生したのか、死ぬ寸前だった土気色の顔にはほんのりと赤みがさし、アグナスは数十秒にして健康体に戻った。


 “加護の光”が収束し、消えた。


 力が入らなくなり両手を地面につく。
 ちくしょー、魔力切れ寸前だ。
 でもやった。やってやったぜ。


「アグナス様ッッ!!」
「旦那ッ!!」
「アニキィ!!」
「うわああああああっ!!」


 ルイボンとアグナスの仲間たちが一斉に駆け寄った。


 竜炎のアグナスは鼻筋の通った顔をほころばせ、心配かけてごめんな、と皆に声を掛ける。
 そして寝たままの体勢で、ゆっくりと俺を見つめた。


「ありがとう……こんなに美しい“癒発光キュアライト”は初めてだったよ…」


 アグナスがにっこりと笑った。
 俺も顔を上げて微笑み返す。


「エリィ特製の……“癒発光キュアライト”よ」


 俺はパチッとウインクを決めた。


 あ…やばっ……。


 格好つけた途端、猛烈な酩酊感が押し寄せてくる。
 地面についていた手の力が抜け、床に突っ伏した。


 ぐわんぐわんする視界の端で、アリアナとジャンジャンとコゼットが心配そうな顔で駆け寄ってくる姿を一瞬だけ捉えたが、それ以上は意識を保っていられず、魔力切れで目の前が真っ暗になった。



   ○



 商店街七日間戦争・最終日――


 白魔法・中級“加護の光”を使ったあと、丸一日眠ってしまったらしい。
 時計を見ると朝の十時。デザートスコーピオン討伐隊とアグナスを治療したのが昼の十二時頃だったから、二十二時間寝てたってことか。
 体がいてーっ。

 魔法の連続使用に魔力切れ寸前での新魔法。まあ仕方ないか。

 枕元におにぎりと水が置いてあった。
 アリアナが作ってくれたんだろう。小さいサイズのおにぎりが何とも可愛らしい。

 おにぎりを食べて一時間ほどぼーっとすると、目が冴えてきたので、ヴェールを羽織って一階へ降りる。『バルジャンの道具屋』は相変わらず雑然とした陳列で、よぼよぼのガン・バルジャンばあちゃんが座布団にちんまり座っていた。俺はその横に腰を下ろした。

「起きたのかぇ?」
「ええ、おはよう。みんなは?」
「張り切って外へ行きよったよぉ」
「あらそう。…ねえガンばあちゃん」
「わしゃガンバッとるよぉ」
「ふふっ、知ってるわ。お客さん増えた?」
「いいんや、とんと増えないねぇ」
「そうよねえ~」

 陳列がめちゃくちゃで、店の前には口から粘着性の水を吐くガマガエルの置物がある道具屋だ、そうそうお客は増えないだろう。俺は何も変わらないこの変な道具屋が何だかかけがえのない物のように思え、この町を出て行った後、いつでも思い出せるようにじっくりと眺めることにした。

 ばあちゃんとのんびり麦茶に似たお茶を飲んでいると、素早く店内に入ってきた人影があった。
 その子は長いまつげの瞳で、頭にキュートな狐耳がつき、すらっとした腕と足をしている。

「エリィ…」

 ひしっ、とアリアナは俺に抱きついた。
 俺も、ひしっ、と抱きしめ、ついでにもふもふ狐耳を撫でる。

「ずっと起きないから心配した…」
「ごめんね。あと、おにぎりありがとう」
「みんながエリィに会いたがってるよ…。もう外に出れる?」
「ええ、大丈夫よ」
「じゃあゆっくり行こう…」
「そうね」
「転ばないように手、握るね」
「それは助かるわ」
「ん……」
「うふふ」

 俺とアリアナは無性に可笑しくなって笑いをこらえた。
 何が面白いのかはわからない。ただ、こうして一緒にいられることが嬉しいのかもしれない。
 たった一日ぶりなのに。

 西の商店街は、一言で言うならば賑わっていた。
 初めて来たときは通りに二、三人の人影があって、あとは砂漠からやってくる南風だけが吹いているという、まさに閑古鳥状態だった。それが今はどうだ。見渡せばポイントカードを持った人、たこ焼きを食べながら買い物をする家族連れ、青のりをつけたまま微笑み合うカップル。すごいじゃねえか。

 西の商店街入り口まで歩くと、たこ焼き屋の出店がある。
 人気ラーメン店なんて目じゃない行列ができていた。
 路地を曲がってまだ最後尾が見えない。暑さ対策のためか、日よけを作って、日陰になる建物の隙間へと列を伸ばしている。おお、いいアイデアだな。

「ああッ! 白の女神さま!」

 アリアナと手をつないだまま、すごいねえ、なんて人ごとみたいに言っていると、日に焼けた兵士風の男がこちらに駆け寄ってきて膝をついた。
 え? え? ちょっと商店街のど真ん中で何?

「わたくしは白の女神エリィちゃんに助けられたジェラの兵士です。君が治療してくれなければ半数が死に、竜炎のアグナス様も死んでいたでしょう。あなたに、心からの感謝とお礼を」
「あの…顔をお上げになって。こんな人前で……その…」

 だあーーーーーーっ!
 もう最近こういうのばっかでまじで慣れねえ!
 グレイフナーでブスとかデブとか言われすぎたッ。

 てかね、こういうのはずばーっと「そんなことあーりませんわ。おっほっほっほ!」とか言っとけばいいんだよ。
 俺は何をおろおろしてんだよ。
 乙女かッ。俺は乙女かッ。


 あかん………………乙女だった。


 そうこうしているうちに「あ、エリィちゃんだ」とか「白の女神!」とか叫ぶ輩が吸い寄せられるように集まってきて、全員が膝をついた。それを面白がって、野次馬が輪を作る。

 たこ焼き屋ではギラン、ヒロシ、チャムチャムが忙しそうにたこ焼きを作っている。

 その向かい奥にある治療院はそこそこ人が並んでいた。
 あとで手伝いにいかなきゃなー。

 通りのど真ん中にあるポイントカード景品交換所は、なぜか目をギラギラさせた男たちが景品の書いてある大きなボードを睨むように確認している。

 いきなりできた膝をついた男共の人垣に、どう対応すればいいのかわからず、しばらく押し黙った。
 見かねた代表らしき男が膝立ちのまま一歩前へすり寄り、顔を上げた。
 というか護衛隊長チェンバニーことバニーちゃんだった。

「エリィちゃん。おれァお前が一瞬で“再生の光”を唱えて部下を助けてくた光景を一生忘れねえだろう。また礼になっちまうが、もう一度だけ言わせて欲しい。ありがとう。あの場にいてくれてありがとう。あきらめず最後まで治療してくれてありがとう。君のおかげでたくさんの命が救われた。エリィちゃんがおれには天使に見えたぜ。だから一言だけ言わせてほしい」

 バニーちゃんは無精髭を右手でさすり、鋭い目元を細め、躊躇した素振りをほんの少しだけ見せると口を開いて右手を差し出した。


「一生のお願いだァ! おれとデートしてくれぇぇええ!!」


 場の空気が固まった。


 近くにいた兵士が思い切りバニーちゃんにゲンコツを食らわせて場が一気に動き出す。


「隊長てめえどさくさにまぎれて!」
「エリィちゃん俺! 俺のことおぼえてる?!」
「俺とデートしてほしい!」
「馬に乗って夜景の綺麗な場所へ行こう!」
「たこ焼きを食べながら町をまわろうぜ!」
「俺のこの割れたシックスパックを見てくれぇ!」
「オアシスで愛を語らおう!」
「あ、あの…皆さん一体なにを…?」

 俺はうろたえて一歩後ずさった。
 ちょっとエリィ。エリィちゃん。勝手に動くのはやめよう。

「何をって君を誘っているに決まってるじゃないか」
「砂漠の男は猪突猛進!」
「惚れた女には猛アピール」
「それが砂漠のやり方だッ」
「みんな君が好きなんだよ。一生懸命で優しい君がね」
「誰だァおれの頭ぶん殴ったやつァ!!」

 俺の顔面は、おそらくどうしようもなく赤くなっているだろう。

 人形を抱くようにアリアナに後ろから抱きついていると、ジャンジャンとコゼットが東の方角から走ってやってきた。手にはなにやら用紙を持っている。

「エリィちゃーーーーん!」
「エリィちゃ~ん、きゃっ!」

 ずざぁ、といい音を出しでコゼットがずっこけた。
 あれは痛いぞー。

 ジャンジャンに支えられ、ドクロをかぶり直してコゼットは再び走り出した。
 ようやく俺とアリアナのいるたこ焼き屋の前に着くと、息を切らしつつ用紙を渡してきた。

「“癒発光キュアライト”」
「ありがとーエリィちゃーん」
「コゼットはほんとドジね」
「ごめーん」
「これ、見て。勝負の集計と途中結果だ。勝負終了まであと六時間あるけど、これはもう……」

 ジャンジャンから俺は集客数を記した用紙を受け取った。


―――――――――――――――――――
『東の商店街』集客数

 月 7023人→11230人
 火 7689人→12001人
 水 6875人→11899人
 木 7111人→16221人(吟遊詩人ライブ)
 金 7980人→15712人(吟遊詩人ライブ)
 土 9566人→13826人
 日 10560人→2856人(十二時の時点)

 平均 8114人→11963人

 増加率47%
―――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――
『西の商店街』集客数

 月 523人→1409人
 火 501人→1745人
 水 476人→2310人
 木 609人→1650人
 金 599人→1832人
 土 679人→3066人
 日 460人→399人(十二時の時点)

 平均 549人→1773人

 増加率222%
―――――――――――――――――――


 ふっふっふっふっふ。
 はーっはっはっはっは!
 我が西の商店街は圧倒的じゃねえか!
 たこ焼き屋はこの様子だと今日が最高の売り上げで、治療院にも人が集まっている。ポイントカードもしっかり運用されている。 
 勝ったな。これは間違いなく勝ちだ。

「これは勝ったわね」

 俺とアリアナ、ジャンジャン、コゼットはハイタッチをして抱き合った。
 準備期間を入れると一ヶ月と一週間。長かったけどあっという間だった。

 振り返ると、ねじりハチマキにハッピ姿のギラン、ヒロシ、チャムチャムの獣人三バカトリオと獣人三人娘がいつの間にが俺の持っていた用紙をのぞきこんでいる。

「あなたたち店は?」
「ちょっとお客さんには待ってもらっている」

 待たせるのはどうかと思ったが、この結果を確認するぐらいの時間はいいだろうと思い、軽いため息をつくだけにした。

「……まあいいわ。で、結果を見てどう?」
「おう! 最高じゃねえか!」
「まあ本気を出せばこんなもんさ」
「嬉しいよ。商店街の力を合わせた結果だ」

 虎、猫、豹の順番で、笑顔で答える。

「嬉しいときは仲間とハイタッチよ」

 俺は見本を見せようと、アリアナ、ジャンジャン、コゼットとハイタッチをし、ついでにプリティー獣人三人娘ともハイタッチをした。周りの男達と野次馬は、いまだに俺を中心にして円になっている。
 ギランたち三バカトリオはお互いの顔をちらっと見ると、仕方なさそうに手を上げた。

「まあ、なんだ。お前らもやればできるじゃないか」

 ギランが猫のヒロシと豹のチャムチャムの手を叩いた。バシッ、といういい音が鳴る。

「ふん、まあな」

 続いてヒロシが二人の手を強く叩く。

「この一週間は協力する、という約束だったからな」

 バシン、とチャムチャムがギランとヒロシの手を叩いた。

「おい………どうしてそんなに強く叩くんだ」
「いてえぞジミ豹」
「別に普通に叩いただけだ。おまえらが弱いだけだろ」
「ああん? どういうことだ」
「おまえわざと強く叩いただろう」
「おい、そういうギランこそ強かったぞ」
「俺は普通に叩いただけだ」
「ふざけんな痛かったぞ。このバカ虎」
「いちいち理屈っぽいんだよこのバカ虎」

 次第に剣呑な雰囲気になっていく三人。
 必死に止めようと周りをぴょんぴょん跳んでいる娘たち。

「アホ猫、ジミ豹」
「バカ虎、ジミ豹」
「バカ虎、アホ猫」
「ああん?」
「んん?」
「やんのか?」

 やめなさい、と制止しようと思った矢先、ギランの右ストレートがヒロシの顔面にクリーンヒットし、チャムチャムの胴回し蹴りがギランの脇腹にめり込んだ。

 そこからは見苦しい取っ組み合いの喧嘩だ。
 パンチ、キック、頭突き、飛び出す鼻血、猫のひっかき、虎の噛みつき、豹のジャンピングニー。襟を掴んではぶん殴り、地面に這いつくばり、隙あらば強烈な一撃を食らわせる。二人がつかみ合っていると空いている一人が拳を突き入れ、仕返しをされ、砂まみれ、泥まみれ、三人とも鼻血ブーでコゼットと娘達で作ったお手製の法被はぼろぼろ。ねじりハチマキはどこかへ吹っ飛ぶ。

 野次馬がやっちまえーと騒ぎだし、俺をデートに誘った兵士と冒険者らしき男たちも囃し立てる。


 忘れていた怒りが沸々と腹の底から湧き上がってくる…。


 こいつらは何をやってるんだ…?


 お客さん待ってるだろ…?


 近くにいた女性と子どもがびっくりしてるよ…?


「父ちゃんやめれ! あうっ」
「おとーちゃんみっともないニャ! ニャニャッ!?」
「もうやめてくださいお父様! きゃっ」


 獣人三バカトリオは健気に止めようとした娘たちを、見もせずに突き飛ばした。


 三人娘は悔しさと申し訳なさと悲しさで、涙をうるうると瞳に溜める。
 アリアナが侮蔑の目で三バカを見ながら、三人を介抱する。


 おまえたちなぁ…。


 娘を泣かせて、謝らせて、困らせて、突き飛ばして……。


 それでも大人なのか?


 男なのか……?


――――パチパチパチッ


 もうお客さんどんだけ待たせてんのよ…?


 たこ焼き食べたくて並んでんだよみんな…?


―――パチパチパチパチパチッ


「あ…エリィが怒った」
「うわ! エリィちゃん髪の毛が逆立ってるっ!」
「あわわわわ。エリィちゃんが怒ってる?!」
「三バカ……きらい」
「あの魔法…まさか町中で?!」
「そ、そ、そんなに怖い魔法??」

 アリアナ、ジャンジャン、コゼットの声が、怒りで渦巻く頭の片隅でうっすらと聞こえる、


 大の大人が殴り合いの喧嘩…?


 しかも全員鼻血ブー?


 見れば三人はまだ殴り合っている。
 しかも体力がなくなってきたのか、無様にも内股でふらつきながら、殴られ、蹴られ、噛みつき、ひっかく。もうコゼットと娘たちが作ってくれた法被はずたぼろで跡形もない。


「あ…あんたたちね……」


 俺は何とか声を押し殺して、怒りを静めようとする。


「ぶはっ」
「げばぁ」
「ぶぎゃ」


 殴り合う三バカトリオを見ると、怒りがすぐに限界点を超える。


「あんた………たち…………ね………………」


 俺は“加護の光”と同等レベルの精神力をすり減らしてなんとか爆発しそうな怒りを静める。
 だが、無理だった。


 三人がもみくちゃになって地面を転がり始めたら、理性が弾け飛んだ。


「あんたたちいいいいいいいいいいいいいいッ!!!!!!!!!!!」


 電衝撃インパルス!!!!!!!!!!!


――――ギャギャギャギャギャギャバリリィ!!!


 周囲をつんざく電撃の摩擦音が空気を切り裂いて、晴天のオアシス・ジェラに打ち上がった。商店街の真上で電流が放射状に広がって空中に霧散する。

 あまりの爆音に、商店街のすべての時が止まった。

 たこ焼き屋に並ぶ人、ポイントカード交換ボードを睨む男たち、野次馬、兵士と冒険者、買い物客、すべてが一斉に足を止めて声を失った。
 獣人三バカトリオも例外に漏れず、地面を転がって殴ろうと腕を引いたポーズで固まった。


「この獣人三バカトリオおおおおおおおおッッッ!!!!!!」


 俺の叫び声だけがこだまする。


「大の大人がぁッ! お店放り出してぇ! 全員鼻血ブーになるまで殴り合いの喧嘩してるんじゃないわよぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!!」


 電衝撃インパルス!!!!!!!!!!!


――――ギャギャギャギャギャギャバリィ!!!


 けたたましい電流の炸裂音。
 なんとか怒りを抑えて町中に“落雷サンダーボルト”をぶっ放すのは避けた。本当に寸でのところだ。
 獣人三バカトリオはあまりの凄まじい魔力と電撃に腰を抜かした。
 周囲は何が起きたのか理解不能のようだ。


「ギラン、ヒロシ、チャムチャム、そこに座りなさいッ!!!!!!」
「は、はいぃぃ」
「すすすみません」
「座る座るッ」

 ギランはでかい体を縮こまらせ、ヒロシは小さい体をさらに小さくし、チャムチャムはどこにもツッコミどころがない地味な動作でかしこまった。

「これはなにっ! この騒ぎは何なの! なんで娘が悲しそうな顔してるかわかってんの?! どうしてすぐやめないの?! この間、私伝えたわよねぇぇッ!?!? あれは最終警告よ!!!!!」
「ごめんなさい」
「すみません」
「許してください」
「おだまりいぃぃぃぃぃッ!!!!!!!!!!!!」
「ひぃ!」
「はぁふ!」
「ほわぁ!」
「許さないわよ……。泣こうがわめこうが絶対に許しませんからね……。何度言っても治らない大人にはぁ、バツが必要なのよぉーーーーーーーーーーーーー!!!!」


 地面に向かって“電打エレキトリック”を纏わせたエリィちゃんパンチを放った。


 バガァン! と地面が爆散する。
 バスケットボールより一回り大きい穴が三バカトリオの前に出現した。


「は………?」
「ひ………?」
「へ………?」
「さあ……最初は誰がいい? 最初の人はエリィちゃんパンチじゃなくて、と・く・べ・つ・にバチバチだけにしてあげるわ…」

 お互いの顔をちらちらと確認し合う、ギラン、ヒロシ、チャムチャム。
 野次馬が固唾を飲んで成り行きを見守っている。

「おまえ行けよ」
「おまえがいけ」
「いや、おまえがいけよ」
「なぁに? 早く決めてちょうだい。それとも全員エリィちゃんパンチがいいの?」
「いやいやいやいや」
「それは! それだけはっ!」
「勘弁してください!」
「じゃあ早くしてちょうだい! お客さんをこれ以上待たせたくないのよッ!」
「わかったぁ! 俺がいく」


 苦渋の決断、といった様子で鼻血を両穴からブーしているギランが正座したまま手を挙げた。


「いや、ここは俺がいく!」


 すぐさま鼻血ブーしたままの豹のチャムチャムが挙手した。額には脂汗がびっしり浮かんでいる。


「わかったぁ! じゃあ俺がいく!」


 最後に手を挙げたのは二人に挟まれた鼻血ブーの猫のヒロシだった。


 そして彼が手を挙げると、ギラン、チャムチャムは同時に挙げていた右手をヒロシに向けて、こう言った。

「どうぞどうぞ」
「どうぞどうぞ」
「…………………………ええええええッッ!!!!」


 どっかで見たやりとりだが、まあいい。怒りが今にも弾けそうだ。


「ヒロシ。潔いわね」
「ちょと! あのエリィちゃん!? 俺はその――」
電打エレキトリック!!!!!!!!!!!」
「さんババババババッババババババババビンブバラボラギボーブッ!!」


 ヒロシが正座のまま前のめりに倒れた。頭からは湯気があがっている。
 ちょっぴり可哀想になったので“癒発光キュアライト”をかけてあげると、ヒロシはバネ仕掛けのように起き上がった。


「てえめらぁ! 人をダシにしてぇ!」
「うるせえアホ猫」
「だまれアホ猫」
「あ・な・た・た・ち…?」
「はいぃぃぃぃぃぃぃ!」
「なななんでしょうかエリィちゃん!」
「ごめんなさいごめんなさい」
「まだ仲良くできないのぉ? 次は誰? ヒロシはおしおきしたからギランかチャムチャムよねぇ? バチバチの次はエリィちゃんパンチだけどいいのかしらぁ?」
「ひいいいいいぃぃぃぃぃっ」
「それだけはご勘弁を!」

 両穴鼻血ブーしたままの虎人と、両穴鼻血ブーしたままの豹人が、必死に土下座する。その横で両穴鼻血ブーしたままの猫人がざまあみろとにやついていた。それを見て、俺の怒りのボルテージがピクッと反応し、わずかに上昇する。

 アリアナは無表情に、ジャンジャンは顔を引き攣らせて、コゼットは「エリィちゃんこわひぃ」とへたり込み、プリティー獣人三人娘はあっけに取られた顔で、事の行方を見守っている。

「どっちか決めなさい! 早く! 5! 4!」
「あーーーちょっとまってエリィちゃん!」
「虎!! 虎にしてくれ!!」
「てめえ豹!! お前が食らえ!」
「うるせえ!」
「3! 次のおしおきも、と・く・べ・つ・にバチバチにしてあげるわ。だから早く決めなさい」
「ぐう……」
「ふむん……」
「2ぃ!」


 カウントダウンに迫られ、半ばやけっぱちにギランが挙手した。
「俺が受ける! 俺だ!」


 すぐにチャムチャムも挙手した。
「俺だ! 俺が受けよう!」


 なぜかヒロシもつられて右手を挙げた。
「俺が受ける! 仕方ねえ!」


 するとギランとチャムチャムが挙げていた右手をヒロシに向けて、こう言った。


「どうぞどうぞ」
「どうぞどうぞ」
「…………………………ああああああああッッ!!!!」


 もうお笑いトリオじゃねえか!


「ヒロシ。素晴らしい自己犠牲ね」
「ちょと! あのエリィちゃん!? 俺はその! ああ、なぜ俺は勢いで右手を――」
電打エレキトリック!!!!!!!!!!!」
「アゲアゲアゲアゲアゲアゲアゲパパパパパパパバギャリピポォウ!!!!!」

 ヒロシは仰向けになって正座したままぶっ倒れた。

「おあとが」
「よろしいようで」

 そそくさと逃げようとするギランとチャムチャム。

「よろしくなわよぉッッッ!!!!!」
「ひいぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」
「ごめんなさいごめんなさい!」

 父親の威厳、商店街の中心人物で尊敬される姿などかなぐり捨てて、二人はすかさずジャンピング土下座をかました。

 気づけば野次馬からは笑いが起こっていた。
 そりゃそうだ。両穴から鼻血を出したおっさんが、少女に折檻されているのだ。端から見たら、アホすぎる。

「さあ、どっちがいいのかしら~?」

 俺は仁王立ちして二人を見下ろした。

「豹! 豹で!」
「虎! 虎で頼むよ!」
「5・4・3………」
「はやいはやい! エリィちゃん早いよ!」
「うわああああ、こわい!」
「2ぃ………先に挙手したほうだけパンチじゃなくて、と・く・べ・つ・にバチバチにしてあげるわよぉ~」
「うぐぅっ」
「くはぁっ」
「いーーーーーーーーーーーーーち」

 1の数字を長く取ったところでギランが観念したのか右手を挙げた。
「わかったぁ! 俺が受ける!!」

 チャムチャムがそれに追随する。
「いや! 俺が先にうける!!」

 そして今度はなぜか野次馬サイドから「俺が!」「いや私が!」「ぼくが!」など面白がっているのか、右手が挙がった。アリアナ、ジャンジャン、コゼット、獣人三人娘、俺に告白した兵士、冒険者風の男たち、青のりの歯につけたカップル、ポイントカード交換ボードを睨む男たち、買い物帰りの家族連れ、背後を見ればたこ焼き屋に出来ている行列からも手が挙げられていた。ざっと見て総勢百人ほど、全員が面白がっていた。


 ギランとチャムチャムは必死でそれにはまったく気づかず、再度声を張り上げた。


「俺が受けるぅ!!!!!!」
「俺が先だぁぁ!!!!!!」


 そして観客全員が、挙げた右手をギランとチャムチャムに向けてこう言った。


『どうぞどうぞ』


「……………………………………ふええええええっ!?」
「……………………………………はひぃぃぃぃぃっ!?」


 やっと周囲に気づき、大量の右手が自分に向いている光景を見てギランとチャムチャムが絶叫した。


 完全にお笑いの興業になってるじゃねえか!
 だがこの怒りは収まらん!!!


「ギラン、チャムチャム、潔いわね」


 俺は優しく、そう、それこそ繊細なガラス細工を扱う職人のように、ゆっくりとふたりの肩に手を乗せた。


「ちょ! エリィちゃん!? 俺は商店街を誰よりも――」
「はの? エリィちゃん?! まって俺はたこ焼きで一生懸命――」
電打エレキトリック!!!!!!!!!!!!!!」
「スキスキスキスキスキスキバババババババダデボビンボオ!!!!!!」
「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒックリガベジデダグザベボビンヂ!!!!!!」


 強烈な電流を浴びて、ギランとチャムチャムが仰向けにぶっ倒れた。鼻血ブーで白目を向いているおっさん三人が仲良くおねんねしているの図、がここに完成した。


 観客からは大笑いと、拍手喝采が巻き起こる。


 おしおきが終了してすっきりしたので、笑顔で群衆に答えた。




 この『西の商店街・獣人三バカトリオ、白の女神エリィちゃんにおしおきされる』のやりとりを境に、「どうぞどうぞ」というフレーズがオアシス・ジェラで流行した。また、普段優しい女神が怒るとバチバチした神の鉄槌が下るので、絶対に怒らせないように、という不文律がオアシス・ジェラの常識になった。
 俺のせいじゃねえよ、まじで?

 幸い、あれだけやって落雷魔法だとバレなかったらしい。
 みんな白魔法のイメージが強いのか、白魔法の派生系だろう、と思っているのかもな。まあ勘のいい奴なら気づいていると思うが、バレてなんか言われたらそんとき対応すればいいだろ。



 その後、ルイボンと竜炎のアグナスがやってきて俺に礼を言い、ルイボンはなぜか嬉しそうに「ふん! あなたの勝ちでいいわよ!」と敗北を認めた。
エリィ 身長160㎝・体重59㎏(-1kg)


ついに50キロ台!
長かった・・・・・。
+注意+
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