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エリィ・ゴールデン ~ブスでデブでもイケメンエリート~ 作者:四葉夕卜/よだ

第二章 異世界ダイエット

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第12話 落雷とイケメンエリート

このペースで更新できたら…いいなぁ。


ということでエリィ無双の回です。
「エリィ…」

 アリアナが限界なのか苦悶の表情で立て膝をついた。
 頬のこけた顔がよりやつれて見える。

混乱粉コンフュージョン”を受けたリトルリザードは、全員その場で暴れ出し、なぜかボーンリザードへ突撃した。狂ったような雄叫びを上げている。おそらく神経中枢に作用する魔法だろう。大量に散布しないと効果がないが、魔力消費が大きい分、複数を同時に混乱させられるみたいだ。序盤で使用していたら、リトルリザード二十数匹がめちゃくちゃに暴れ回る、という地獄絵図になっていたな。使いどころが難しい魔法だ。

 ガルガイン渾身のたんそくホームランを食らったボーンリザードは仰向けになって、じたばた骨だけの体を起こそうともがいていた。骨だけの生物が引っくり返ってゴキブリのように動いているのは気色が悪い。
ガルガイン、おめえすげえよ。まじで。

 ぎゃあぎゃあと喚いていたリトルリザードのうちの一匹が、アリアナに突進してきた。

「アリアナ!」

 彼女は疲労で動けないのか、きつく目を閉じる。

 もうバレたってかまわねえ!


落雷サンダーボルト!!」


 草原の大地に一筋の閃光が走り、バリバリバリッという音を立てて墜落する。
 直撃したリトルリザードは電流と高熱で焼かれ、木っ端みじんになった。

 やべえええええ。
 威力がやべえッ!!!

「エリィ…?」

 アリアナがおそるおそる目を開け、何が起きたのかわからないと首をかしげる。
 俺はさらに魔力を練る。

落雷サンダーボルト!!!」

 十五メートル先にいるボーンリザードを狙うと、“落雷サンダーボルト”が強烈な光を放って落下した。
 ボーンリザードの右腕に命中し、ビシャアアアンという音と共に白骨がはじけ飛んだ。ついでに突撃していたリトルリザードが巻き込まれて二匹黒こげになった。

「もう一発ッ!!」

 ババババリィッ!
 という凄まじい耳を塞ぎたくなる音を鳴らし、かなりの魔力を込めた“落雷サンダーボルト”がボーンリザードの腹部に直撃して、白い骨がポップコーンみたいに弾けて草原にまき散らされた。ついでに近くにいたリトルリザードがすべて黒こげになった。

 うおおおおっしゃあ!
 すげえ。俺すげえ!
 あと“落雷サンダーボルト”すげえ!
 さすが上位複合魔法。威力が半端じゃねえな。

「サ、サンダァボルト?!?!」

 ポーカーフェイスのアリアナですら“落雷サンダーボルト”を見て驚愕し、狐の耳がピンと立った。開いた口がふさがらないようだ。

「伝説の魔導……!」
「秘密にしておいてね」
「エリィ……すごい」
「そうでしょ」
「ということは白魔法と空魔法も…?」
「ま、まあね…。それより立てる?」

 アリアナは驚いた顔のまま首を横に振った。
 俺は彼女に手を貸して細い体を引っ張り、そのまま“治癒ヒール”をかけようとした。

「エリィうしろ!」

 振り返ったときには遅かった。
 一匹だけ残っていたのかリトルリザードがガルガインの作った土壁の上から飛び降り、鱗に覆われた太い右腕を振り下ろした。“治癒ヒール”をかけようとしていたので他の属性の魔法に魔力を変換できない。

 咄嗟に俺はアリアナをかばって地面に転がる。
 なんとか直撃はかわしたが、強力な振り下ろしによって地面がえぐられ、石が飛び散った。俺は重さでつぶさないよう気をつけアリアナに覆い被さって盾になる。

 続けざまリトルリザードが頭を引っ込め、体当たりしてきた。
 気絶しているハルシューゲ先生をリトルリザードが踏みつけそうになって一瞬ひやっとする。
 俺はすぐさま発動スピード重視の“エアハンマー”で殴りつけた。
 目と鼻の先を突風がかすめ、リトルリザードにぶち当たって吹っ飛ばした。

落雷サンダーボルト!」

 追撃ッ。
 リトルリザードの着地点を狙って俺は指を差した。
 空気を切り裂く閃光がトカゲの魔物をただの消し炭に変えた。
 あぶねえええっ。

 俺は抱きかかえていたアリアナを覗き込んだ。

「大丈夫?」
「あ……あの……」

 なぜかアリアナが顔を赤くして熱っぽい目で俺を見てくる。
 いやいや、わたくしおデブなレディなんでそういうのはちょっと…。

「…あのね………」
「?」
「ありがとう…」

 はにかんだ彼女は、すんげえ可愛かった。
 このまま持って帰りたい。家に飾っておきたい。これでもっと肉付きがよければ完全にハートを打ち抜かれていたところだ。いかんッ。俺ってばおデブでおしゃまな女の子なのに!
 俺はアリアナの狐耳ごと頭を撫でた。
 手が耳を往復するたびに、ぴこん、と狐耳が立つのがたまらない。これは癖になるな。

「くすぐったい…」
「気持ちよくってつい」
「別にいいけど…」

 そろそろ他のメンバーを看ないとな。
 っと、その前に救援が先か。ハルシューゲ先生、ガルガイン、おすまし女、が魔力切れ。スルメと亜麻クソが怪我。合宿の続行は不可能だ。

「アリアナ、合宿の冊子持ってる?」
「ん…」

 意図を察してくれたのか、ポケットから手帳サイズの冊子を出して開いた。
 緊急の際の対処法を探してぱらぱらめくっていく。しかしアリアナの手は止まり、前方へと向けられていた。

「うそ……」
「えっ?」

 振り返ると、ボーンリザードの白骨が独りでに動き出してビデオの逆再生みたいに傷一つない状態に戻った。不気味に顎をカタカタ鳴らし、己の体を確かめるようにこちらへゆっくりと近づいてくる。空洞の瞳には闇が渦巻いていた。


「キシュワーーーーーーーーッ!!!!!」


 怒り狂ったかのような雄叫び。


 くそ! 復活とか反則だろ!


落雷サンダーボルト!!」

 バガァン!
 炸裂音と雷光がきらめいてボーンリザードの後ろ足を粉砕する。
 だが細切れになった白い骨は意志があるかのように、本体へと飛び、再生する。

「“落雷サンダーボルト”! “落雷サンダーボルト”!」


 足がダメなら頭はどうだ!


 バリバリリリィッ、と雷が空気を切り裂いて、両手を開いても抱えきれないぐらい大きいボーンリザードの頭部に、二本の“落雷サンダーボルト”が突き刺さる。

 頭部は四散するものの、パズルのピースが勝手に合わさっていくように再生し、割れた傷跡もきれいになくなった。

「アリアナ! どうなってるのあれ?!」
「不死身…聖なる光で浄化するしかない」
「聖なる光? それって白魔法?」
「光魔法でも……アレは魔力が強すぎる…」
「てことはやっぱり白魔法が必要ってことよね」
「そうなる…」
「私できないわよ!?」
「え? どうして?」
「ああ、それはあとで説明するから何か考えて!」
「わかった…」

 俺はボーンリザードを近づけないために、足を狙って“落雷サンダーボルト”をぶっ放した。
 昼の大草原に雷光が走る。
 右の前足を砕かれたボーンリザードの行進が一時的に止まった。近くまで来られたら万事休すだ。地面に倒れている誰かが襲われてしまう。

 アリアナは逡巡すると口を開いた。

「骨も残さないほどに破壊する…」
「骨だけに、ね」
「そう…」

 よし、わかりやすくて大変結構。
 問題が発生したらシンプルな思考に戻る。ビジネスマンと同じだ。

「アリアナ、これから一番強力なのを撃つわ」
「えっ……アレよりすごい魔法がまだ…?」
「まあね」

 俺は不敵に笑って、息を吸い込み魔力を練る。

 まず足止めをして、それから特訓で作ったオリジナル魔法“極落雷ライトニングボルト”をぶっ放す。
 本来、ボーンリザードは白魔法の浄化系魔法を複数名で行使し、はじめて浄化できるのではないだろうか。そうでなければこんな草原の入り口付近に中途半端に封印されているはずがない。白魔法士は数が圧倒的に少ないだろうし、負傷者を瞬く間に完治させる治癒魔法を重宝していない国はないので、人員の関係でこのボーンリザードは「浄化」ではなく「封印」という選択になったに違いない。

 そんなことを考えていたら、ボーンリザードがでかい口を開けてこちらに照準を合わせ、動きを止めた。動けないことにお怒りのご様子だ。

 なんか、すげえ魔力練ってねえ?

 これ俗に言う必殺技みたいんじゃねえの。
 いや絶対にそう。

 黒い波動がぐんぐんお口の回りにお集まりあそばしていますが!
 これ! ちょっと! やばくね!?

 アリアナが隣で呆然としている。

「“重力砲グラビティキャノン”……」
「ちょっとアリアナ! あなた闇適性でしょ?! 相殺して!」

 俺は彼女の肩をつかんで揺さぶった。
 同等クラスの魔法がぶつかると、魔力が飛んで相殺される。

「無理…」
「なんでッ!」
「あれは黒魔法の中級…」

 上位の中級魔法!?!?
 俺は急いで魔力を練る。

 ボーンリザードは口を閉じると、おもむろに口を開いた。
 漆黒の波動が放出され、筒状の巨大な黒い物体がこちらに迫ってくる。
 速さは大したことないが、“重力砲グラビティキャノン”が通過した地面が草ごとえぐり取られている。あれを食らったら全員おだぶつだぞ!

 俺は素早く“重力砲グラビティキャノン”の動線上に移動した。

「エリィ……!」
「大丈夫ッ」

 アリアナの悲痛な叫びが聞こえる。
 女の子を守れなくてなにが男だ!
 あ、俺デブの少女だっけ。
 んなことはどうだっていいんだ。集中、集中!
 練っていた魔力を切り替えた。


電衝撃インパルス!!!!」


 花火を撃ち出すイメージで雷を展開する。“落雷サンダーボルト”が落下攻撃だとすれば、“電衝撃インパルス”は前方の相手を弾き飛ばす魔法だ。端から見れば俺の体から、前に向かって雷が飛び出すように見えるだろう。

 “電衝撃インパルス”はギャギャギャギャッ、という動物の悲鳴に近い音を立てて“重力砲グラビティキャノン”とぶつかり、当たった瞬間、放射線状に電流をまき散らした。

 凄まじい勢いで“電衝撃インパルス”が“重力砲グラビティキャノン”を飲み込み、筒状のどす黒い物体が霧散する。二つの魔法がぶつかった場所には大きなクレーターができあがった。
 さらに俺は“電衝撃インパルス”を撃つ。

 再度、動物が叫ぶような音を発しながら、電光が真っ正面へ突き進み、ボーンリザードに直撃する。“電衝撃インパルス”はボーンリザードの内部まで貫通し、花火のようにバリバリバリィッ、と電流を弾けさせ、巨体を後方に吹き飛ばした。

 “電衝撃インパルス”が起こした熱により黒こげになったボーンリザードが、ズゥンという音を立てて崩れ落ちた。

「アリアナ! 耳を塞いで!」

 彼女は俺の声で咄嗟に頭の上にある狐耳を両手で押さえた。

 急激に魔力を練り、俺は“落雷サンダーボルト”が幾重にも重なって、太い柱になるイメージを繰り返す。
 跡形も残さないぐらい破壊しなければまた復活してしまう。


 俺は狙いを定め、腕を振り下ろした。


 食らえクソ骨野郎ッ!


極落雷ライトニングボルトッ!!!!!!!!!!!!!!」


 パチッ…


 パチパチッ…


 ババババババババババババババババリバリバリバリバリィッ!!!!!!!


 顔を背けなければ目が潰れてしまいそうな閃光が草原を包み、先ほどより遙かに太い雷がボーンリザードの体を蹂躙する。突如として降り注いだ強大なエネルギーが大草原の地面をえぐり返し、衝撃を吸収しきれなかった大地が粉々になって爆風を巻き起こして、熱風と一緒に土や石を四散させた。アリアナが俺たちを守るように、咄嗟に“ウインドブレイク”を唱えてくれたおかげで、若干であるが二次被害は緩和された。

 だが近くにいた俺は相当数の飛んできた石がぶつかって地面になぎ倒され、したたかに体を打ちつけた。
 一瞬の静寂のあと、遠くから色んな音が聞こえた。

 ギャーギャー
 バサバサバサバサ
 ヒーホーヒーホー
 ブシュワーーー

 かなり遠くのほうにいたであろう大型の鳥が何事かとあわてて飛び立ち、不運にも近くで休憩していた臆病者のヒーホー鳥がびっくりしてヒーホーヒーホーと呼吸困難になり、そして封印があった大岩の割れ目から一筋の水が噴き出した。湯気が出ているから温泉だろう。俺は寝そべったまま、その光景を見ていた。


 温泉出すぎッ!


「エリィ……」

 魔力切れ寸前のアリアナがふらふらとこちらに近づいて、へたり込んだ。

「大丈夫?」

 健気にもこの狐人の少女は俺を気遣ってくれているようだ。
 俺は重い体を頑張って起こし、アリアナに向かってうなずいた。

「さすがに。死んだわよね?」
「最初から死んでる…」
「骨だけだったからね」
「うん……もう動いてないから大丈夫だと思う」

 目を凝らしても骨の残骸すら見当たらない。

 俺は魔力切れ寸前と打撲でぼろぼろの体をなんとか動かし、気絶している亜麻クソの鞄をむしり取って、魔力ポーションの入っている小瓶をすべて拝借した。さすがに“電衝撃インパルス”と“極落雷ライトニングボルト”を最大出力で使っただけあって、魔力がほとんど残っていない。
 五本あったので、俺が三本、アリアナが二本飲んだ。
 オロナ○ンCみたいな味で、疲れた体に染み渡る。うまい。

 しばらくすると、魔力がほんの少し戻ってきた。

 俺はまずアリアナに“治癒ヒール”を二回かけ、続けて自分に“癒発光キュアライト”をかける。完全に傷を治すのではなく、痛みが引いて普通に動ける程度の魔力をかけた。使いすぎると他のメンバーを治癒できなくなってしまう。

 アリアナは治癒魔法が使えないため申し訳なさそうにしているが、闇魔法適性者は光の習得が相当難しいのだ、適材適所でそんなに気にすることはないと思う。それを伝えると、目を輝かして、うなずいていた。

 俺たちはテントを張り、倒れているメンバーを移動させ、治癒魔法を施した。
 もちろんスカーレットはその辺に転がしておいた。
 アリアナは冷たい目線を向けぼそっと「足手まとい…」と言う。

 大けがをしたスルメは、俺が“癒発光キュアライト”をかけると呼吸が安定した。かなり血を流しているようなので安静にするべきだろう。魔力切れを起こして気絶したハゲ先生、ガルガインにも、もちろん“治癒ヒール”をかけておいた。どこを怪我しているかわからないからな。

 魔力切れを起こすと、個人差はあるものの三時間から四時間ほどで目を覚ます。アリアナが言うには「黒」の下級魔法に魔力を譲渡するものがあるらしい。使えたら便利、でも使えない、と言って彼女はがっくり肩を落としていた。すぐできるようになるわ、と俺はまた彼女をなぐさめなければならなかった。



 大草原はようやく静けさに包まれた。



「エリィ、救援を呼ぼう…」

 アリアナは合宿の冊子にある最終ページをこちらに見せてきた。

『緊急の場合、または引率担当者が行動不能な場合、担当者の持っている発情犬煙玉ラブリードッグを使用して救援を要請すること。ただし、生命の危険がある場合に限る。それ以外で使用した場合は即刻退学処分とす。見極めて使うべし。本当に必要だと思ったときのみ使用するように。絶対に、興味本位で使ってはいけない。いいな、必要じゃないなら絶対に使うなよ』

 なんか最後命令口調になってるな…。

発情犬煙玉ラブリードッグ?」
「これ…」

 野球ボールぐらいの煙玉だ。
 アリアナは躊躇せず発情犬煙玉ラブリードッグを地面に転がして火魔法の初歩“ファイア”で燃やした。ピンク色の煙が真っ直ぐ立ちのぼる。

「アリアナ……」
「エリィ……」
「臭いわね」
「鼻が曲がる…」

 くさやと硫黄を大量に混ぜて煮詰めたような、とてつもない香りが周囲に充満する。
 俺たちはたまらず鼻をつまんで距離を取った。

 そして救援を呼べたことにほっとし、ようやく肩の力が下りた。

「念のため確認しておきましょうよ」

 ボーンリザードの残骸を指さした。
 まさかとは思うが、倒したかどうか確認したい。

「うん…」

 俺とアリアナはボーンリザードいたところまで歩いて、残骸を確認した。
 “極落雷ライトニングボルト”の威力は凄まじく、落雷した中心点から半径十メートルほどがごっそりえぐられていた。そこだけぽっかりと草がなくなって地面がむき出しになっている。深さも相当あった。
 骨の残骸らしきものはまったく見つからない。

「あれ、何かしら?」

 大穴の中心点で、赤い石が光っていた。

「わからない…」

 アリアナが首をかしげる。俺は“極落雷ライトニングボルト”でできた大穴の降りやすそうなところを探して中心点に向かった。
 赤い石が地面の上できらめいている。
 拳サイズの丸みを帯びた石だ。よく見ると石の中で、小さい火花のような物が散っている。

「これ……魔力結晶」
「なにそれ?」
「魔力を貯めたり、出したりできる…」
「ふうん…」
「この大きさだとたぶん一億ロンぐらいする…」
「一億ッ!?」
「うん…」
「もらっときましょ」

 俺はささっとポケットの中に一億円……じゃなくて魔力結晶を入れた。
 こんな石ころが一億円とかまじでやべえな。地球でいうところの宝石と同じ扱いだな。

 鼻がひん曲がりそうな臭いを発している発情犬煙玉ラブリードッグの煙がこっちにこないように“ウインド”で風を送りながらみんなが寝ているテントに戻り、煙が消えそうにない発情犬煙玉ラブリードッグを風下へ、アリアナが蹴った。
 発情犬煙玉ラブリードッグがスカーレットの真横でぴたっと止まり、猛烈に煙を浴びてあいつがうなされる。ナイスシュート、と親指を立ててアリアナを褒めた。

 ようやく落ち着いて俺たちは腰を下ろした。
 まだ魔物が来る可能性はある。
 用心のため、眠らないで救援を待つ。
 時刻は昼過ぎといったところだろう。俺とアリアナは鞄から鍋を出し、簡単なシチューを作ってぼんやりと空を見上げた。



―――大草原が風に揺れ、草の擦れる優しげな音だけが聞こえる。



「エリィ…」
「なに?」
「さっきは……助けてくれてありがとう」
「いいのよそんなこと」
「あと……庇ってくれてありがとう」
「だからいいのよ。わたしってデブだから盾にはちょうどいいでしょ?」
「自虐ネタは……ダメ」

 そう言ってアリアナはくすっと笑った。
 表情のない大きな目がすぼまり、ほんのちょっぴり口角が上がっただけなのに、俺は何とも言えないほっこりとした気分になった。
 やだ何コレ。超可愛い。

「あのねエリィ…。私たち狐人は命の恩人に一生尽くすの…」
「へえ、面白い風習ね」

 民族による文化の違いってやつか。

「だから私はエリィに一生尽くす…」
「えっ!?」

 俺に?! 確かに命は助けたけど一生っていうのはちょっと重くないか?

「だから私の主になってエリィ…」
「主って……ファンタジーじゃないんだから! それにほら、ハルシューゲ先生だってガルガインだってスルメだって、みんな頑張ったじゃない。私だけがアリアナの命の恩人じゃないわ」
「ううん、そんなことない。あなたがいなかったら全滅していた…」
「た、たしかにそれはそうだけど…」
「それにあなたの落雷魔法、すごかった。伝説の魔導士とずっと一緒にいれるなら私は本望…」
「落雷魔法できちゃったのはまぐれなのよ。たまたま呪文を唱えたらできたの。ほら、だって私、白魔法も空魔法も使えないでしょ!?」

 何とか弁解、というか撤回してもらおう。
 さすがに一生は彼女に申し訳ないし、主とか無理だ。

「まぐれで落雷魔法は使えない。それに白も空も憶えずにできたのなら、それはまさしく天才。益々いっしょにいたい…」
「ちなみに、狐人の一生尽くすっていうのは具体的にどういうことをするの?」
「雨の日も風の日もいつも一緒。寝るときもご飯を食べるときも一緒」

 めずらしくアリアナが強い口調で言った。

「いやーさすがにそれはちょっと……困っちゃうかなぁ」
「………ダメ…………なの……?」

 瞳に涙を溜めはじめるアリアナ。

 俺はあわてた。
 今日一番あわてた。

「ダメじゃない! 全然ダメじゃない! ダメじゃないんだけどほら! ああっ、泣かないでちょうだい! じゃあこうしましょ! 友達になりましょ!」
「……………ぐすん…………………………ともだち?」
「ええ、そう!」

 我ながら名案だ!

「友達になりましょう! 私、一年生からスカーレットにいじめられてて友達が一人もいないのよ」

 いじめ、という言葉にアリアナはピクッと耳を動かした。

「エリィ……今ならバレない。あそこで眠っている足手まとい………殺る?」

 スチャッ、とアリアナは杖を構えた。

「お願いだから物騒なこと言わないでちょうだい!」
「わかった…」

 素直に杖を下ろし、ほっとする。

「じゃあエリィ。私たち友達ね……」
「ええ、友達よ!」

 俺とアリアナはしっかりと握手をした。ぷよぷよの手と、かりかりの手がしっかりと組み合わさる。なんだかデコボコな二人だな、と俺はつい嬉しくなって笑った。


 エリィ見てるか!
 友達ができたぞーーーっ!
 これからは学校で一緒に勉強したり、放課後に町へ繰り出して買い食いしたりできるぞーっ!


「よろしくね、私の主様」
「………へ?」


 そう言って恥ずかしそうに笑うアリアナに、俺は何も言えなかった。
エリィ 身長160㎝・体重87㎏(±0kg)


※魔法名とランクを変更致しました。
重力波グラビティウェーブ”上位上級→“重力砲グラビティキャノン”上位中級
+注意+
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