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エリィ・ゴールデン ~ブスでデブでもイケメンエリート~ 作者:四葉夕卜/よだ

第二章 異世界ダイエット

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第11話 戦闘とイケメンエリート

いつも読んで頂きありがとうございます!

評価&ブックマークありがとうございます!

ハゲみになります!
 リザードの最上位種が魔力の溜まりやすい場所で五百年ほど放置されると、ごく稀にボーンリザードとして復活するらしい。凶暴凶悪、防御力は折り紙付き、破壊の限りを尽くす魔物。
byアリアナ談、ってなんでこんなところに封印されてんだよ?!

 封印した奴空気読んでもっと草原の奥でやれ!
 いい迷惑だよコレほんと!!

「集え水の精霊よ。穿て青き刃よ。鮫背シャークテイル!」

 亜麻クソが格好を付けてズビシィッ、とポーズを取ると鮫の背に酷似した水の刃が地面を這うように滑った。ふわさぁ、と前髪をはね上げ、ドヤ顔でウインクする。
鮫背シャークテイル”がボーンリザードの右腕に直撃した。

 ボシュン、という水のぶつかる音がし、水滴が飛び散る。身体で五メートル、尻尾まで入れると十メートル以上あるボーンリザードには傷一つ付かず、ダンプカーにホースで水をかけるほどの効果しかないようだった。

「な、な、な、なんだって……僕の鮫背シャークテイルが…」

 亜麻クソが驚愕した顔でボーンリザードを見つめた。
 上級攻撃魔法が効かないってやべえ。
 そしてウインクまでした亜麻クソが最高にダセぇ。


「キシュワーーーーーーーーッ!!!!!」


 強烈なボーンリザードの雄叫び。

 魔力の波動が周囲に伝播し、俺たちは後ずさった。
 ボーンリザードがもう一度叫ぶと、草原に不気味な影が集まり、どこからともなくリトルリザードの群れがこちらに接近した。太い腕で四足歩行をし、赤い舌をちろちろと見せ、爬虫類特有の無機質な眼が光っている。あの腕で殴られたらデブの脂肪を持つ俺ですら吹っ飛ばされるだろう。


 背筋に寒気が走った。


 その数はざっと数えて二十強だ。


 これ絶対やべえやつだよな。
 上級の魔物の中には下級の魔物を従えることのできる奴がいるってクラリスが言ってた気がする。うん、そんな気がする。アハハハ、嘘だと言ってくれクラリス。

「ライトニング!」

 ハルシューゲ先生が杖を頭上へ上げると、光の玉が上空へ上がり、半径十メートルほどを照らした。

「みんな、ライトニングの中へ!」

 我に返った俺たちは素早く光の中へ転がり込んだ。

 間一髪、俺たちのいた場所に、ボーンリザードの尻尾が叩きつけられた。そのままの勢いで横に一回転すると、再度ボーンリザードは尻尾によるなぎ払い攻撃をしかけてくる。

「きゃあ!」

 スカーレットがあまりの迫力に、思わず頭を抱えてうずくまった。
 骨だけの尻尾はハルシューゲ先生の唱えた“ライトニング”の光にぶつかると、壁があるかのように弾かれた。

「ボーン系の魔物は凶悪だが光魔法に弱い! 奴は光の中には入って来れん! 私が抑えているうちにリトルリザードを!」

 ハルシューゲ先生の指示が飛ぶ。

 その間にも、二メートルほどの身体に深緑の鱗を持ったリトルリザードが、“ライトニング”なんぞおかまいなしで三匹同時に飛び掛かってくる。奴らにとって光魔法は脅威ではない。迎え撃つしかねえ!

「ファイヤーボール!」
「おらぁ!!」
睡眠霧スリープ

 スルメ、ガルガイン、アリアナが応戦する。

 “ファイヤーボール”をモロに食らったリトルリザードが上半身を黒こげにして後方へ飛び込んだ勢いそのままにすっ飛んでいく。さすがに一発で倒せないのかスルメが追撃弾の“ファイヤーボール”を二発放った。

 ガルガインのアイアンハンマーが飛び込んできた別のリトルリザードのどてっ腹に直撃し、野球のフルスイングさながら左前方に飛び、ボーンリザードにぶつかる。

 睡眠霧スリープに突っ込んだリトルリザードがつんのめるようにして地面とお友達になる。俺はすかさず最大出力の“ウインドカッター”でトドメを刺した。

 ボーンリザードはイライラした様子で、何度も“ライトニング”に向かって尻尾攻撃をし、噛みつき、横殴りし、弾き飛ばされては攻撃を繰り返す。

「くっ……!」

 ハルシューゲ先生のつるっとした額から汗が吹き出る。
 申し訳程度に生えているサイドの毛からも汗がしたたり落ちる。

「ライトニング!!」

 俺は棒きれを上空に掲げ、光の玉を発生させた。

「先生少し休んでください!」
「う、うむ!」

 俺の周囲十メートルに“ライトニング”の輝きが広がる。

「おまえら、時間を稼いでくれ!」

 スルメが光の効力がギリギリ届く場所で杖を構えて叫んだ。
 呼応してアリアナとガルガインがスルメを庇うように応戦し始めた。亜麻クソは自身の最強攻撃である鮫背シャークテイルが効かない相手に呆然自失している。一匹のリトルリザードがそんな格好の的へ飛び掛かった。

「うわあああ!」
土槍サンドニードル!!」

 地面から突如として突き出した鋭い円錐状の土がリトルリザードを貫いた。ハルシューゲ先生が杖を向けている。
 亜麻クソは泣きそうな顔で尻餅をついた。

「しっかりしたまえドビュッシー君!」

「いくぜ!!」

 スルメが叫んだ。
 アリアナとガルガインがスルメから飛び退いて距離を取った。

火蛇ファイアスネーク!!」

 スルメの杖から二メートルほどの蛇の形をした火が、五匹飛び出した。
 火の蛇は前方へ飛んでいき、遠隔操作のような動きでリトルリザードを追尾して、一匹ずつ、着弾した。

 五匹のリトルリザードが悲鳴を上げてのたうち回り、丸焦げになって絶命する。

「すげえじゃねえか!」
「もう一回…」

 ガルガインとアリアナが下の下、初歩の初歩魔法で飛び掛かるリトルリザードをいなしながら賛辞を送り、スルメを守るように囲む。

 スルメは再度、魔法の準備に入った。

 そして魔力が充分に練られると、ふたりに合図を出した。
 アリアナとガルガインが絶妙なタイミングで後退する。

火蛇ファイアスネーク!!」

 先ほどより気持ち小さめの火の蛇が四匹、生きているかのように獲物を探し、頭から突っ込んでいった。すべて着弾。四匹のリトルリザードが黒こげのトカゲ焼きに早変わりした。

「いけるか?」
「まだいける…?」
「もう撃てねえ……」

 スルメが青い顔で冷や汗をかいてバスタードソードを抜いた。魔力切れ一歩手前だ。

 そうこうしているうちに俺もやばい。
 魔法は連続使用すると、全速力で走ったみたいな疲労が襲ってくる。まだ魔力は余っているが、これ以上“ライトニング”を使用し続けるのは無理だ。

「スカーレット! 交替してッ!」

 “ライトニング”は光魔法の上級。レア適性だけあって、適性者でないと使用が相当に難しい。光適性者が三人いたのは不幸中の幸いだった。

 うずくまっているおすまし女は顔を上げた。
 再度、俺は叫ぶ。

「これ以上は保たない!」
「あ、あなたごときがわたくしに命令しないでちょうだい!」
「そんなこと言ってる場合じゃない! ライトニングが消えたらあいつに食われるのよ?!」

 ボーンリザードは凶悪な顎をがぱっと広げて“ライトニング”を食おうとする。
 むき出しの歯が光の壁に衝撃を加え、使用者の俺にその負荷が伝播する。自分の思うようにならないボーンリザードは、怒りでドシンドシンと地面を踏みならした。

「なな、なんであんたの命令を……」
「おい女! 早くしやがれ!」

 ガルガインが魔力を相当込めたであろう“サンドウォール”で、後方へ回り込んだリトルリザードを光の中に入れないよう壁を作る。高さ三メートル、横幅十メートルの壁が俺たちの後方に現れた。

 そろそろまじでやばい!
 早くしろおすまし女!!

「ライトニングッ!」

 ハルシューゲ先生が俺の隣に来て杖を振った。
 俺は魔力を解放する。体中からどばっと汗が出て、激しく呼吸をした。

 もうちょいで魔法が切れるとこだった。
 あぶねえー。息を整えるんだ。
 落ち着いて深呼吸しろ。

「あ、あ、あんたごとき、ピッグーが……わたくしに…」
「はぁ…はぁ……あなた、できないんでしょ?」


 ビクッとスカーレットが身を震わせた。


「“ライトニング”……まだできないんでしょう?」


 スカーレットはぐっと言葉を飲み込み、屈辱で顔を歪めている。

 下位基礎魔法・「光」
 下級・「ライト」
 中級・「ライトアロー」
 上級・「ライトニング」

 スカーレットの様子からして中級までしか使用できないんだろ。散々偉そうにエリィをいじめていたくせに、適性の上級が使えないって?
 笑わせるんじゃねえよ。

「な……な……なにを言って………」
「できるの…? できないの…? どっち!!?」

 できるなら早くやれ!
 やってみせろ!

「シャアアアアッ!」

 ガルガインが作った“サンドウォール”を飛び越えてリトルリザードが亜麻クソを攻撃してきた。亜麻クソはあわてて“鮫背シャークテイル”の詠唱をするが、敵はそれを察知して素早くサイドステップし、ベロを伸ばした。

「うわあああっ!!!!」

 長く伸びたベロが亜麻クソの足首に絡みつき、彼を宙づりに持ち上げ、そのまま放り投げた。

「しまっ……!」

 ハルシューゲ先生が“ライトニング”詠唱したまま顔面を蒼白にさせる。
 今ここで先生が助けに行けば、光の防御がなくなってしまう。

 俺は素早く体内の魔力を風のイメージで循環させ、最小の“エアハンマー”を空中に飛んだ亜麻クソに放った。
 風の拳が、亜麻クソの身体を飛んでいく方向とは逆に殴り、安全地帯である光の中へ押し戻す。

「ウインド!」

 アリアナがすかさず風を上方へ起こし、クッションにして亜麻クソを回収した。

「ウインドソード!」

 俺は居合抜きをイメージした風の刃を、土壁を飛び越えたリトルリザードにぶつける。
 頭を割られたリトルリザードがのたうち回って動かなくなった。

「やるじゃねえか!」
「すごい…」
「へっ…」

 ガルガイン、アリアナ、スルメが感嘆の声を上げる。
 うまくいってよかった。失敗してたら亜麻クソはボーンリザードの餌食だった。エイミーとクラリス、バリーと特訓したおかげだ。

「ドビュッシー君はマヒ毒だ!」

 先生が大量の汗を流しながら叫んだ。
 亜麻クソは白目を向いて痙攣している。

「スカーレット君! 早く交替を!」
「せ、先生……わたくし……」
「はやくっ!!」
「“ライトニング”はできません! わたくしまだ使えませんのッ!!」

 ちっちぇプライドを折られたスカーレットは自慢の縦ロールを振り乱して泣き叫んだ。

「では治療を!」
「ちりょう…?」
「中級の“治癒ヒール”は使えるね!?」
「……はい」
「では急いで!」

 ハルシューゲ先生を中心に、前方でアリアナ、ガルガイン、スルメがリトルリザードの集団と戦い、俺とスカーレットは後方、亜麻クソは左側にいる。

 スカーレットは這いつくばって亜麻クソのもとへ行こうとしたが、土壁を乗り越えた新手のリトルリザードが彼女の目の前に着地した。

「いやあぁぁぁ!! こないでえぇ!」

 スカーレットは絶叫してめちゃくちゃに杖を振り回し、“ウインドブレイク” “ウインドブレイク” “ウインドブレイク” “ウインドブレイク” “ウインドブレイク” “ウインドブレイク” “ウインドブレイク” “ウインドブレイク”と連呼する。

「――――――ッ!!」

 あのバカ女!
 亜麻クソを巻き込みかねない!

 ぶん殴って止めようと立ち上がったら、スカーレットは魔力切れであっさり意識を手放した。
 ついでに“ウインドブレイク”を連発で食らったリトルリザードも事切れた。


 アホかッ!!


「エリィ君……もう…ッ!」
「ライトニング!!」

 俺が棒きれを上げると、“ライトニング”が浮かび上がった。先生と重なった光で一瞬ではあるがボーンリザードが怯む。
 先生は限界寸前だったようで、ぶはぁっ、と息を吐くとすぐに詠唱をやめ、膝をついた。

「ぐわあッ!」

 魔力切れ寸前のくせにバスタードソードだけで頑張っていたスルメが、リトルリザードの腕の振り下ろし攻撃で吹き飛んだ。彼のつけていた胸当てが、爪の形くっきりに切り裂かれ、中から血が噴き出した。

 俺は“ライトニング”を維持しつつ、スルメの傷を見る。
 内臓にまでは達していないだろう。光の上級魔法“癒発光キュアライト”で治る傷だ。

 先生が肩で息をし、顔面が真っ青のまま“癒発光キュアライト”をスルメの胸にかけた。柔らかい光がスルメの上半身を包み込んでいく。血が、みるみるうちに止まり、顔色が元通りになる。さらに先生が力を振り絞って亜麻クソのところまで歩き“癒発光キュアライト”を使うと奴の痙攣が治まった。すげえ手際の良さ、魔力循環だ。

「エリィ君……すまない……もう交替は……」
「ハゲ先生ッ!!!!」

 ハルシューゲ先生が、ついに魔力切れでぶっ倒れた。
 額に“ライトニング”の光が反射し、俺の絶望感が一気に募る。

 やべえやべえやべえ!
 どうする!

 前方のリトルリザードは残り五匹。
 そこらじゅうに二メートルのとかげの死体が転がっている。
 頼りの先生は倒れ、スルメは打ち所が悪かったのか起き上がらない。
 亜麻クソとスカーレットも倒れたまま。


 ボーンリザード……


 まだ諦めないのか、ボーンリザードが白骨の身体を光の壁にぶち当てる。全長約十メートル、横幅二メートルの巨体の体当たりだ。ミシッという衝撃が俺の上げている右手に伝わる。

 奴の全長は十数メートル。
 亜麻クソがやったように下位の上級魔法では歯が立たない。
 かといって俺は白魔法や空魔法のような上位魔法は使えない。

 普通に戦ったら絶対に勝てないだろ。おそらく数十人の優秀な魔法使いでチームを組んで、ようやく倒せる相手じゃないだろうか。



 これは……アレをぶっ放すしかねえ!



「アリアナ! ガルガイン!」
「おう!」
「なに…」

 二人とも魔力切れ寸前、身体にはあちこちすり傷がある。
 それでも生きることを諦めず、呼びかけに答えてくれる。

「一瞬でいいからボーンリザードを後退させて! とっておきをぶちかますわッ!」

 リトルリザードが学習したのか、個々に飛び掛かるのではなく、残り五匹で二人を取り囲んでいた。
 睨みを利かせながら二人が答える。

「よしッ!」
「やるッ…」
「アリアナ、ちいせえほうを頼む」
「わかった…」

 反撃の気配を察知したのか、リトルリザードが五匹一斉に飛び掛かった。
 アリアナは華奢な体でバックステップし、杖を大きく振った。

混乱粉コンフュージョン

 アリアナの杖から大量の鱗粉が発生し、リトルリザードを覆い尽くす。
 飛び退いたガルガインが「うおおおおおお」と叫びながらアイアンハンマーを 両手で持って遠心力を利用し駒のようにぐるぐる回り始めた。

「サンドウォールッ!!!!」

 土の塊がアイアンハンマーの先に吸い付き、どんどん大きくなる。そしてさらに回転が速くなっていく。ガルガインよりも大きくなったアイアンハンマーは強烈な回転音を生み出す。

「うおっしゃあああ!!!」

 光の範囲限界の場所で最高速度に乗った土塊付きアイアンハンマーは顎を閉じたボーンリザードの右頬に直撃した。


 ――バガァァン!


 強烈な破壊音と共に、ボーンリザードが後方へすっ飛んでいく。


「これでいいかよ……ペッ」


 ツバを吐いてガルガインが魔力切れで倒れた。


「エリィ……」


 アリアナの使う魔法は相当に魔力を消費するようだ。


「やるしかないッ!!!」


 俺はできる。俺ならやれる。
 ビジネス界の怪物と渡り合った俺だ。
 異世界だって関係ねえ!


 俺は光の壁になっている“ライトニング”を解いて、杖に見せかけた邪魔な棒きれを投げ捨てた。
エリィ 身長160㎝・体重87㎏(±0kg)
+注意+
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