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エリィ・ゴールデン ~ブスでデブでもイケメンエリート~ 作者:四葉夕卜/よだ

第二章 異世界ダイエット

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第8話 特訓とイケメンエリート

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今回は特訓回です。
 俺はエイミーと秘密特訓場に来ていた。

 スカーレット達に襲撃された夜、怒り狂うゴールデン家の面々を何とか説得し、一人で戦えるぐらい強くなる、と言って家族に溜飲を下げてもらった。普通の家庭なら絶対にありえない話だ。しかしここは異世界で、武の王国グレイフナー。俺の決断は矜持を大いに得ている、ということになった。

 俺がスカーレットを返り討ちにするまで手は出さない、但し、危険だと判断したら一家総出で討ち入りする、との約束をした。

 母がやり場のない鬱憤を晴らそうと庭に火炎魔法をぶっ放したときは正直肝が冷えた。
 近所の人がどうしたのかと家に来る始末だ。

 俺はどうやってスカーレットに報復するか一晩じっくり考えた。
 かつて日本で敵と見なした奴らに自分がどんな鉄槌を下したのかを参考に、吟味した結果、焦点を三つに絞った。


 まず力で屈服させる。
 武の王国グレイフナーに取って強さはプライドだ。それをへし折る。


 そして恋愛。
 理想の形は、俺がめっちゃ可愛くなってボブを誘惑し、スカーレットに見せつけ、最終的に可燃ゴミを出すかのように捨てる、という筋書きだ。好きな男を取られ、失恋し、しかもその男をボロぞうきんのように利用され捨てられる。プライドと乙女心をズタズタにできるだろう。
他のプランも考えてあるので、ひとまずは綺麗になる努力をしよう。


 さらにはお洒落だ。
 どれくらい上手くいくかは異世界のお洒落センス次第なところはあるが、俺がデザイナーとして売り出した流行のファッションをスカーレットとその周辺には購入できないようにする。という報復はどうだろう。想像するだけで笑いが止まらない。若い女の子がみんなと同じ流行に乗れないのは、さぞかしキツイだろうよ。
 ミラーズには俺のデザインした商品には“エリィモデル”というタグをつける予定だ。服に人気が出て、付加価値が付いてくれば「あらスカーレット様は流行の“コレ”持ってないんですのね」という優越の目で見下されるだろう。人間はいつでも優劣をつけたがるからな。


 強くなってぶちのめせばいいんじゃないか、と日本にいる同僚あたりに話したら言われそうではあるが、それでは魔法使いとしてだけ勝ったことになるので、大した意趣返しにはならない。エリィが女としても魔法使いとしても格上だとスカーレットと取り巻き連中にわからせることが重要だ。

 あいつがエリィ、つまりは俺を見る度に劣等感に苛まれるような、そんな屈辱を味合わせてやるべきだろう。

 なんたってボブとスカーレットは入学からエリィを追い詰め、自殺させる原因の一端にまでなっている。これを野放しになどできない。もしエリィが生きていたら俺を止めるだろう。彼女は優しいレディだ。でも関係ないね。俺はもう許す気になれないところまで怒りのメーターが振り切れている。

 やるなら徹底的にやる。それが俺のスタイルだ。

 ともあれ時間がかかる報復ではある。強くなってダイエットしてお洒落して、お金も稼ぎたいし、やることはいっぱいだ。

 すべてを並行させて進める必要があるな。
 家に帰ったらクラリスに計画の一部を話そう。

 ちなみに、クラリスほどの優秀な秘書は日本でも見たことがない。

 密偵はできる、政治にも詳しい、計算や理に聡い、読心術にも長け、メイドをさせれば心配りは完璧、というスーパーオバハンメイドなのだ。俺の専属メイドになる、という話を父と母が何度かやんわりと断った理由がよくわかった。クラリスはゴールデン家の執事のような存在で、財政や領地の統治などを手伝っていたらしい。先日、娘にメイド長の座を一任したようで、その娘も激ハイスペックであった。

 スカーレットへの報復は、ボブへの復讐と項目がいくつか重なっているので、焦らずにじっくりやっていこう。

 まずは強くならなければ。
 俺が武で負けていたらなんの意味もない。
 エリィ見ててくれよ。このイケメンがお前を変身させてやる。




 そんなこんなで特訓の監督役となったのがエイミーだ。

 父は肺の持病があるのでなるべく安静にしていたほうがいいらしく、宮殿で内勤をしている。母は領地経営や騎士団の手伝いがあって稽古をつけられない。そこで上位魔法「木」を使え、回復魔法も使えるエイミーが監督役に抜擢された。

 俺にとっては都合がいい。

 どのみち、エイミーには落雷サンダーボルトを見せようと思っていたのだ。

「ということで姉様見ててね。あとびっくりして飛びついたりしないでね。どこかのメイドとどこかの料理長は飛びついてきて私のズボンをズリ下ろす、という蛮行に及んでいるわ」
「ごめんなさい」
「ごめんなさい」

 俺の言葉でクラリスとバリーは頭を地面につかんばかりに下げた。

「わかったけど、そんなにすごい魔法なの?」
落雷サンダーボルトよ、姉様」
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ふえ?」

 長い沈黙のあとにエイミーは顔をはてなマークでいっぱいにした。冗談なのか本気なのかわからない、といった表情だ。呆けた顔も可愛らしい。

「ああっ…!」
「おどうだば…!」

 早くもクラリスとバリーは地面に膝をついて俺に祈りを捧げ始めた。
 だからそれをやめなさいって言ってんのに。

「姉様、聞いてる?」
「はっ、ええ、ああ……聞いてるわよエリィ。でもさすがに伝説の複合魔法は…」

 エリィ大好きのエイミーでも信じられないらしい。
 どうやら雷魔法は本当に伝説のようだ。
 気を取り直して、俺は集中し、魔力を手のひらに集めた。

「いきます」
「あ、はい」

 なぜか敬語になる俺とエイミー。

 高めた魔力で雷をイメージし、解き放つ。

落雷サンダーボルト!!!」

 空気を切り裂く雷が地面に突き刺さった。
 ビシャアン!
 というけたたましい音が特訓場にこだまし、落雷サンダーボルトで空いた穴から静けさと一緒に砂埃が舞い上がった。

「え、え、え、エリィ!」

「――ッ!!!!!」

 エイミーは言葉にならない言葉を上げた。

「エリィィィ!!!!!」

 叫びながら猛牛のように突進してきて俺に抱きついた。
 感動したのか嬉し涙を流している。

「エリィ……すごいわエリィ…。あの伝説の……ぐすん……ユキムラ・セキノと同じ………すん……雷の魔法を…」

 俺のワンピースをぐいぐい引っ張って、しかもご丁寧それで涙を拭いて、また引っ張ってくる。

「エリィはすごい魔法使いに……なるって…わたし……いつもみんなに………でも……学校の友達とか……ぐす……先生とか誰も信じてくれなくて…………信じてくれたのはお父様とお母様だけで…………ちゃんと信じてたけどでも心配で……」
「姉様……」

 俺はエイミーの頭をゆっくりと撫でてやった。

 だが今日のエイミーはひと味違った。

「だから……エリィが立派になって……しかも雷魔法まで…………!」
「あの姉様、少し苦しいんだけど?」
「だから……だから……わたしッ!」
「お゛ね゛え゛……ざま」
「わたしッ!!」
「……」
「エリィーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」
「おじょーさまぁーーーーーーーーーーーーーー!」
「おどうだばぁぁああああああああああああああ!」

 なぜかクラリスとバリーにも飛びつかれ、抱きしめられてワンピースの上半身をこれでもかと引っ張られた。エイミーは抱きついて後ろに回した手の力を緩めようとしない。

「エリィは天才だねッ!!!!」
「クラリスは一生ついて参りますぅぅ!」
「おどうだば! おどうだば!!」
「ちょっと! 離してちょうだい!」

 三人が俺にひっついて、ワンピースに全体重をのせるようにぐいぐい引っ張ってくる。
 そうなると服はどうなるのか。もちろん結果は明白であった。


――ビリビリビリィ


「あっ!」
「ああっ!」
「おどうだば…!」

 ミラーズで作ってもらった黒のワンピースは、盛大な音を立て、縦三つに破れた。
 俺はスポーツブラのような下着姿に、見事なまでの三段腹をさらし、上半身裸になった。

 三人は無言のまま俺の下着と突き出た腹を見て固まった。


――チュンチュン


 小鳥達が俺たちの脇で楽しそうにダンスをし、互いのくちばしを突き合って飛び去っていく。


――そこに座りなさい


 俺の冷めた声が特訓場に響く。


――はい


 三人を正座させ、大人の癖に何しているの、とお説教した。

 上半身裸で三段腹の少女が、オバハンメイドと強面料理人、伝説級美女を正座させて叱りつけている様は、端から見れば意味不明な光景だろう。

 三人とも興奮しすぎたことに反省し、ようやく特訓を開始することになった。
 ほんと勘弁してくれ。この手のギャグはいらねえよまじで。
 デブの裸を見て誰が得するんだよ。

「エリィは本当に上位魔法が使えないの?」
「そうなの。そういう事例ってあるの?」
「聞いたことがないなぁ。複合魔法は、必ず上位魔法を組み合わせないと発現しないよ」
「姉様はできる?」
「できないよ。上位魔法は“木”しかできないから」
「じゃあ今の私の状態で雷魔法が使えるのって……」
「はっきり言うと、異常だよね」

 エイミーは割とひどいことをにこやかな笑顔で言った。

「でもエリィは天才だから」

 そしてさらりと問題を回避した。
 いやそこは原因追及しようぜ。

「とりあえず、魔力を練ることからやろうよ。エリィってあまり魔力操作が上手くないでしょう?」
「うん」

 エイミーは杖を出して魔法を唱えようとしたが、ぴたっと動きを止めた。

「そういえば……さっき杖なしで魔法使ったよね?」
「ええっと……そうだけど………」
「エリィ!!」

 がばっと抱きついてエイミーは俺の頭を撫でた。替えのワンピースまで破られたら洒落にならないので、飛びつこうとしているクラリスとバリーをたしなめるように睨んでおく。

「お嬢様は天才でございますからね」

 クラリスはエイミーに言った。

「クラリス、ちょっとあなたの杖貸してくれない?」
「もちろんですお嬢様!」

 試しにクラリスの杖で落雷サンダーボルトを使ってみる。
 杖で指したあたりに、落雷サンダーボルトが落下した。

「杖だとやりにくい」
「ええっ! そうなの?」

 エイミーが驚きの声を上げる。

 杖を持っていると、勝手に魔力が杖へと引っ張られていくのだ。地味に制御しづらかった。杖なしでやったほうがよっぽど効率がいい。

 おそらく杖は魔法を発動させる補助の役割をしているみたいだ。使い慣れると、これなしで魔法を使うことが難しくなるのではないだろうか。オートマに慣れるとマニュアルの運転が下手になる、そんな感じだろう。

 次にエイミーから教えてもらったのが魔力循環の練習だ。

 まず力を抜いて立つ。
 へその辺りに魔力を集中させて体内で循環させるイメージ。
 高速回転させたりゆっくり回転させたりを、何度も繰り返す。
 十分もやると汗が吹き出てきた。

 これダイエットにいいかも!

「私は毎日やってるよ」
「姉様は美人で努力家でえらいなあ」
「エリィ、恥ずかしいこと言わないで。エリィのほうが可愛いんだから」
「ないない。姉様それはない」

 エイミーと話し合ってしばらく学校を休んで特訓することにした。
 スカーレットの顔を見ると怒りで落雷サンダーボルトをぶっ放しそうだからな。エイミーも練習に付き合ってくれるそうだ。美人と練習。いい響きだな。本当は「夜の」が付くともっといいんだが、俺、女だしなぁ。


  ○


 それから一週間、朝から晩飯の時間までみっちりエイミーと練習した。

 魔力循環の練習。
 エイミーと模擬戦。
 さらに元冒険者であったバリーと、魔法を使わない相手との戦いを想定した模擬戦。

 日に日に強くなっていく自分がわかるので楽しい。
 ジムに通って自分の体がでかくなっていくのと同じだな。
 この強くなっていく感覚はやり出したら止まらない。

 魔法について色々とわかったことがある。

 基礎魔法が使えるようになれば、あとは応用で自由が利く、ということだ。

 例えば風の中級基礎魔法「ウインドブレイク」は突風と小さな風の刃を作り出し相手を攻撃する。「ウインドブレイク」を薄く細くすると、「ウインドカッター」になる。イメージすればカッターの形を半月型にしたり、円形で飛ばすこともできる。

 風の上級基礎魔法「ウインドストーム」はつむじ風と中ぐらいの刃を作り出し相手を攻撃する。「ウインドストーム」を薄く細くすると「ウインドソード」になる。「ウインドカッター」よりも強力な切断力で、岩をも両断する。

 不思議なのは、どれだけ「ウインドカッター」に魔力を注いでも「ウインドソード」にはならないことだ。魔力を注げない、という表現が正しいかもしれない。茶碗に入れられる米の量が決まっているのと同じだろう。魔法によって器があり、魔力を注げる量が決まっているようだ。

 新しい基礎魔法を憶えるには魔法の詠唱が必要だ。
 とりあえず片っ端から詠唱してみた。

「光」上級
「風」上級
「土」初級
「水」初級

 「土」「水」を習得できた。
 残念なことに「闇」と「火」ができなかった。もっと修練を積めば誰でも初級ぐらいまではできるようになる、とエイミーは言っていたが、彼女も天才の部類に入るようだからあまりその言葉は信用していない。

 それを言ったら泣きそうになっていたので、可愛い姉をいじめるのはそこそこにしておこう。


  ○


「姉様、学校をこんなに休んで大丈夫なの?」

 俺は魔力循環の練習のあと、汗をクラリスに拭いてもらいながら聞いた。
 特訓は十日目に突入している。さすがにまずいんじゃないかと思った。

「六年生は自由研究だから平気。それに卒業資格はもうあるしね」
「上位魔法ができればいつでも卒業できるんだよね?」
「そうそう」
「どれくらいできる人がいるの?」
「うーん六年生の中だと十分の一ぐらいかな」
「やっぱり姉様はすごいね。あと可愛いし美人だし優しいし」
「だからエリィってばからかわないでよぉ」

 顔を赤くして、ぽかりと俺の腕を叩くエイミーは、それはもうとてつもなく可愛い。

「考えたんだけど、エリィは雷魔法が使えるんだから上位の白魔法と空魔法ができる下地はあると思うんだよね」
「うーん試したけどできなかったよ?」

 昨日、すんげえ小っ恥ずかしい詠唱をしてみたものの、「白」と「空」は習得できなかった。雷魔法を使ったときの魔力の暴走みたいな熱さを感じたが、あと一歩、コツがつかめない。何度か試して魔力切れを起こし、ぶっ倒れそうになった。魔法は失敗すると魔力のロストが激しい。

「私のイメージだと、土魔法を体内で循環させて、木魔法に変換する感じだよ」
「そのときどれくらい魔力を使うの?」
「なんていうんだろう、いっぱい? たくさん? 木が私の中で生えてくる感覚。こう、中を突き抜けていく感じかな」

 今の表現がちょっとエロいと思った俺は健全な男子だと思います。

「白魔法も同じような感覚なのかな」
「習得したくて聞いてみたけど、みんな言うことがバラバラなんだよね」
「感覚に個人差があるってことか…」
「そうなんだよねぇ」
「白魔法ができたら便利だよね」
「私ができていればエリィに教えてあげられたのに」

 エイミーは悔しそうな顔して俯いた。

「ううん姉様。私が憶えて教えてあげるわ」
「そうだね。そうなったら嬉しいな」
「あら、ありがとうクラリス」

 クラリスがぬるめのハーブティーを俺とエイミーに出してくれる。
 そろそろお昼の時間だ。

 クラリスが作った即席の野外テーブルの席に着き、俺はノートに書いた魔法を確認した。


――――――――――――――――――――――――

      炎
白     |     木
  \   火   /
   光     土
      ○
   風     闇
  /   水   \
空     |     黒
      氷

習得した魔法

下位魔法・「光」
下級・「ライト」
中級・「ライトアロー」
   「幻光迷彩ミラージュフェイク
   「治癒ヒール
上級・「ライトニング」
   「癒発光キュアライト

下位魔法・「風」
下級・「ウインド」
中級・「ウインドブレイク」
   「ウインドカッター」
上級・「ウインドストーム」
   「ウインドソード」
   「エアハンマー」

下位魔法・「水」
下級・「ウォーター」

下位魔法・「土」
下級・「サンド」

複合魔法・「雷」
落雷サンダーボルト
――――――――――――――――――――――――


 いやーめっちゃ憶えた。
 俺、凝り性だからな。

 幻光迷彩ミラージュフェイクは光の屈折を利用して自身の残像を見せる魔法だ。これはすごいぞ。なんたってデブが真横に四人ダブって見えるからな。対人戦ではかなり有効だ。

 近づいてきた奴は空気の拳、エアハンマーで遠くへ吹っ飛ばす。
 距離を取ってウインドカッターとウインドソードで切り刻む。
 傷ついたら光魔法で回復する。

 今のところ誰かに襲われたらこんな感じで戦う予定だ。


  ○


 さらに三日、俺は新しい魔法の開発に成功した。

 ヒントはバリーの魔法にあった。バリーの適性魔法は「闇」で、彼が使う魔法の中に“消音バニッシュ”というオリジナル魔法があったのだ。

「何度も脳内でイメージしながら、自分でつけた名前を唱えていたらできるようになりました」
「自分で魔法を作ったの?」
「左様でございます」
「他の人は知ってるの?」
「冒険者同士で自らの秘技をしゃべることはありません」

 気づかないうちにバリーが近くにいるのは、この“消音バニッシュ”のせいだった。
 魔法使って近づくとかほんとやめて。

 どうにかして雷魔法、落雷サンダーボルトが有効活用できないかと思って試行錯誤していたので、バリーのアイデアは素晴らしかった。その結果、確固たるイメージを構築して自ら命名すると、新しい魔法が作れることが判明し、俺は三つの雷魔法が使えるようなった。


 スタンガンみたいな、触れた相手にショックを与える魔法。
電打エレキトリック


 前方に電流を放出して相手をはじき飛ばす魔法。
電衝撃インパルス


 落雷サンダーボルトを一点に集中させて放出する魔法。
極落雷ライトニングボルト


 極落雷ライトニングボルトはあまりに強力で、特訓場からまた温泉が噴き出る、というアクシデントが起きたためエイミーに使用を禁止された。

「姉様。私の目に見えている範囲すべてへ雷を落としまくる雷雨サンダーストームっていうのも思いついたんだけど――」
「エリィ、お願いだからやらないでね」

 釘を刺したエイミーは必死だった。

「なんかごめんなさい…」

 俺はちょっとやり過ぎたと反省する。
 ノートに新しい魔法を追加した。


――――――――――――――――――――――――

      炎
白     |     木
  \   火   /
   光     土
      ○
   風     闇
  /   水   \
空     |     黒
      氷
習得した魔法

下位魔法・「光」
下級・「ライト」
中級・「ライトアロー」
   「幻光迷彩ミラージュフェイク
   「治癒ヒール
上級・「ライトニング」
   「癒発光キュアライト

下位魔法・「風」
下級・「ウインド」
中級・「ウインドブレイク」
   「ウインドカッター」
上級・「ウインドストーム」
   「ウインドソード」
   「エアハンマー」

下位魔法・「水」
下級・「ウォーター」

下位魔法・「土」
下級・「サンド」

複合魔法・「雷」
落雷サンダーボルト
電打エレキトリック
電衝撃インパルス
極落雷ライトニングボルト

――――――――――――――――――――――――


  ○


 夕食はいつも通り家族全員で取っている。
 俺はダイエットをしっかり継続し、甘い物の誘惑を断ち、余計な炭水化物は摂取しないようにしている。

「それでエリィ。特訓はどうなの?」

 母アメリアがついにしびれを切らしたのか尋ねてくる。
 驚かそうと、俺もエイミーも特訓の成果をずっと黙っていたのだ。

「それがお母様……」

 俺はわざと残念そうな顔をした。
 ピクッと母の眉がつり上がる。

「ダメ、だったのね?」
「そうなんです。幻光迷彩ミラージュフェイク治癒ヒール、上級のライトニング、癒発光キュアライト、中級のウインドブレイク、ウインドカッター、上級のウインドストーム、ウインドソード、エアハンマー、それから水魔法の下級と土魔法の下級しか習得できなくて……」
「え? なんですって?」
「今言った魔法しか習得できなかったんです」

 母アメリアは目を見開いて愕然とし、父ハワードは持っていたスプーンを落とし、長女エドウィーナはパンをかじったまま動きを止め、次女エリザベスは音を立てて立ち上がった。

「あなた、四種類魔法が使えるように……?」
「そうですよお母様。エリィはスクウェア魔法使いになりました」

 エイミーがどうだ! といわんばかりに胸を張った。大きい胸がこれでもかと強調される。

「エリィィィィィッ!」
「うおおおおおおおお!」
「エリィーーーーーー!」
「エリィーーーーーーーッ!」

 四人は急に立ち上がって俺に抱きついてきた。
 父はどこにそんな力があるのか、俺を抱きしめる妻と娘二人ごと持ち上げてぐるぐると回った。

「く、くるしいッ!」

 何か事件か、と食堂に飛び込んできた使用人達は、嬉しそうな俺たちを見て「どうしたんですか!?」とせき立てる。

 エイミーが事情を説明し、スクウェア魔法使いになったことを説明すると、一気に俺のところまで集まってきて、ぼろぼろ泣いて「ばんざぁぁい!!!!」と叫ぶ。俺はようやく父親から下ろされた。

「わたくしがどれほどエリィを心配したか…」
「俺は嬉しいぞ! 嬉しいぞ!」

 母と父が口々に言う。


 嬉しいときはすぐに飛びつく。
 これはクラリスやバリーだけではなく、ゴールデン家の家風のようだった。

 俺はワンピースが破られないようにガードしながら笑った。
 ゴールデン家の温かさに、なぜか俺も涙が出てきた。

 日本に戻れず、異世界で女になったことで、さすがの俺も精神的に結構きていたのかもしれない。新しい家族の心地よさに身を任せながら、俺は日本のことを思った。

 向こうに戻りたい。でもこっちの世界も、悪くない。



「お嬢様。明日からの魔物狩り演習合宿、ご活躍に期待しております!」

 使用人の歓声の中から、クラリスのそんな言葉が聞こえたような気がした。
エリィ 身長160㎝・体重87㎏(-7kg)
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
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