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エリィ・ゴールデン ~ブスでデブでもイケメンエリート~ 作者:四葉夕卜/よだ

第一章 エリィとイケメンエリート

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第1話 エリィ

さあ皆様、ブスでデブで中身がイケメンエリートの女の子が、はち切れんばかりの身体と精神で闊歩する、ダイエットスペクタクル冒険活劇ここに開演。
…ということで、友人の勧めで書き始めました。
以前からハートフルなギャグファンタジーが書きたいと思っていたので、念願が叶いました。
お時間があれば、是非とも読んでいってください。
※書籍化します。第1巻は2016年8月18日発売予定です。
 目を開けると、白いレースの天蓋が風になびいてやさしく揺れていた。

 やけに身体が重く感じる。
 ここがどこなのかわからなかった。

 自宅の寝室に天蓋付きベッドなんて置いていないし、知り合いの女の家でこんなに豪華な内装をした部屋はなかった。

 俺はまたやってしまった、と思った。

 いや、ヤってしまったと言い直したほうがいい。

 きっとクラブか飲み屋かバーで引っかけたどこぞの女とアレに及んで、しかも泥酔して記憶がない、という最悪パターンだ。そしてここがどっかのホテルだ。ラブホテル。間違いない。

 俺は重い頭を左右に振った。

 隣に見知らぬ女が、と思ったがそんなことはなく、ベッド脇にあるテーブルに清潔そうな白い洗面器が置かれ、同じく清潔そうなタオルがかけられている。品の良い絨毯が敷かれた、十畳ぐらいの部屋だ。家具はベッドと高級そうなタンス、あとは椅子がいくつか置いてある。どれも高級そうで、そして英国風なエレガントな家具揃えだった。

 病院?

 ちょっと不安になってきて昨日、仕事が終わってからのことを反芻する。

 花金だ!
 と叫んで同僚と六本木に繰り出し、よく行く高級定食の店で飯を食べ、そのあとバーで飲んでからクラブでVIP席を取って、女の子をとっかえひっかえして何度もシャンパンを乾杯した。

 同僚が昇進した祝いもあって、俺とそいつはしこたま酒を飲んだ。
 ネクタイを振り回して踊りまくった。

 そのあと気に入った女の子ふたりを引き連れて外に出た。
 ここまでは憶えている。

 そこから先の記憶が、霧がかかったように思い出せない。
 とてつもなく重要なことで、思い出さなければまずいことになる、と本能が警告をはじめた。

 思い出そうとすればするほど、心臓の鼓動が速くなり、頭の中が焦燥で破裂しそうになる。全身から汗が噴き出していた。

 気持ちの悪い冷や汗が額からだらだらと流れていく。

 おれは、あのあと、何をしたんだっけ?
 どうしてこうなったんだ?

 もう一度思い出そう。

 クラブでVIP席を取ったところまでは記憶がはっきりしている。そして三番目にナンパした女の子の足がきれいでずっと触っていた。色白できめ細かい肌で、あれは気持ちが良かった。

 いやちがうちがう、その先だ。

 俺はその子をつかまえ、同僚はギャルみたいな軽そうな女にもたれかかっていた。
 全員酔っ払っていた。

 そして店を出て、飲み直そうということになり…
 そうだ、タクシーを呼んだんだ。

 そこまで思い出して俺は目を見開いた。

 そうだ…

 あのあと俺は……

―――俺は、暴走してきた黒塗りの高級車に、轢かれたんだ。





 気づいたら寝てしまっていた。
 なにはともあれ生きている。

 そろそろ会社に連絡をいれないとまずいだろう。一日寝ていたとすれば、日曜日になっているはずだ。症状を医者に聞いて最悪休みをもらわないといけない。

 くそ、うまい商談が決まりそうだっていうのに最悪だ。

「エリィ様!」

 ドアが開いたかと思うと、誰かがベッドに飛びついてきた。

「やっと目を覚まされたのですね…。わたくし心配で夜も眠れませんでした……」

 誰だこのオバハンは?

 外人だな。
 しかも苦労してそうな深い皺がいくつも顔に貼りつき、髪はぼさぼさまではいかないが栄養がいっていないのかしなびている。

 外人の苦労したおばさんだな。

 茶髪に茶色の瞳。

 古い海外映画の使用人みたいだ。

 というか格好も使用人だった。

 黒地の膨らみのあるワンピースに白いエプロンを掛けている。作業を色々やり終えてからこの部屋に来たのか、エプロンはところどころ汚れていた。

「なぜあのようなことを……。いえ、あのような場所に行かれたのですか?」

 彼女は涙をぬぐおうともせずしゃくりあげている。

「旦那様や奥様、お姉様方、皆様エリィ様が悪魔に取り憑かれたと……わたくしはそのようなこと一切信じておりません。エリィ様のお立場をわかっているひとなど誰もおりません………」

 あのさ、エリィって誰よ?

 オバハンメイドは、ハッとした表情になって俺の顔をのぞき込んだ。

「もうしわけございません。まだお体が本調子ではないのですね……」

 やべ、声がでねえ声が!
 どうすんだよ、明日の商談、俺がプレゼンしないと絶対に獲れないぞ。

「お体をお拭きしますね」

 彼女はやさしくうなずくと、タオルをしぼって、大事な壊れ物を扱うかのように俺の顔を拭いていった。

 心の中は明日の仕事のことで非常に焦っていたが、首筋や腕を拭いてもらうのは気持ちがよかった。

「いつ見てもエリィ様はお肌がきれいですこと…」

 そう言ってオバハンメイドは俺の腕をそっと持ち上げた。
 つーかエリィって誰だよ。

 だが俺は持ち上げられた自分の腕を見て驚愕した。

――エリィ!?

 心の中で叫び声を上げるぐらいぶったまげた。
 声が出てたら「なんじゃあこりゃあ!」と叫んでいただろう。

 俺の腕は、白く、ぷよっと、太くなっていた。

 あの、黒く、がちっと、ジムで鍛えた筋肉は、いったいどこにいったんだ!

「大丈夫ですよエリィ様。すぐお体はよくなりますから…」

「大丈夫ですよ…」

「大丈夫」

――いやだからエリィって誰よ?
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