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短編

冷たい恋

作者:codama
 恋は一度冷めてしまったら戻れない。
 もし、よりを戻したとしても、あの時の冷めてしまった瞬間を忘れることは出来ない。
 どんなに幸せを感じていても、ふと冷めた時の事を思い出して、自分がそこにいないように感じてしまう。笑顔の写真を見返しながら思い出に耽ることは、必ずしも楽しい事だけとは限らないのだ。
 恋は夢だ、覚めないほうがいい。
 きっと、お互いに夢を見たままの方が幸せなのだろう。それは相手にも、恋愛そのものにも。だからお互いに騙し騙し、夢を壊さないよう、相手が喜ぶように振る舞うのだ。
 一言で言ってしまえば、疲れるのだ。興醒めと言ってもいい。多分、そう言った事に、相手を好きでいると言った感情でカバー出来なくなると、恋は崩壊する。関係は維持されたままだが、それぞれの内心で終わりを告げる。
 多分、そういった関係だからこそ、彼の欲求が私を考慮する事より上回って見えてしまうのだろう。気持ちが冷めていても、触れ合う体温やぬくもりは熱く、不快だった。彼はそれでも満足して果てたが、私は全くと言っていいほど感じなかった。
 今までの快楽とは何だったのだろうか。きっと、まやかしだったのだろう。嬌声を挙げながら彼によがっていた私も。きっと、お互いに相手のことをちゃんと見ていない。都合の良い事とセックスの快楽に溺れていたのだ。いや、今も大して変わりはしない。こんな演技で、偽りの満足感を得てしまう彼との関係なんて。今や、その快楽も失われてしまったが。
 今では彼の甘い声も、どこか媚びたように聞こえる。耳にべったりとへばりつくようで気持ちが悪い。ああ、どうしてこんな声に私は喜んでいたのだろうか。かつて好きだった部分が全て嫌なものへと変わる。愛情の裏返しではなく、単純な嫌悪感として。
 冷静になると、恋は冷める。冷めない恋は感覚が麻痺して、どこか酔ってしまう。楽しいだけが恋ではないと言うよりも、恋というものにとらわれて、相手が見えなくなると面白くなくなるのだ。恋に恋してしまう、恋する私に酔ってしまう。そして、酔いが醒めれば、嫌な部分と共に、どうしようもない現実感が訪れる。
 酔っていなければ、目をつむれないような嫌な部分がおのずと見えてしまう。別れた相手を悪く言うのも多分これが理由だろう。少なくとも、私にはその覚えがあった。片思いの内が華というのは、まさにこういう事なのだろうと思う。
 公の場でやたらイチャイチャするのも、世界が皆祝福しているように錯覚してしまうからだ。彼とならなんだって出来る、許される。そんな幻想を抱いて、自らの幸せを誇示するのだ。
 別にこれは公の場に限った話ではない。他人にひけらかすことで偽りの優越感を得るのだ。
 くだらない。
 今にして思えば、どうしてこうも自己顕示欲が強かったのだろうと思う。友人との会話はまさしく相談という名を借りた自慢大会だった。少なくとも、そこに友人との差を感じ、私は優越感に浸っていた。自分に酔っていたと、今だから分かる。比較することでしか、自分の意義を見いだせなかった愚かさを呪う。
 何だか自分が馬鹿馬鹿しく思えてくる。一つの事をいつまでもネチネチと、と言われても仕方ないのかもしれないが、信用をなくしたという点を踏まえれば、恋心で目をつぶらないと耐えられないことに変わりはなかった。数日前の行為がすべてを物語っていた。
いや、恋心なんてのは建前で都合の良い嘘だ。今、彼との関係を絶たない理由は好きとか愛だとか、そういった感情ではない。世間体や自分の都合で彼を見ている。
 分かっていたことなのか、今自覚したことなのかははっきりしないが、もう愛情といった感情がないことは確かだった。
 どうせなら、冷めずにずっと続けばいいと思った。冷めなければ、こんな事を思う事もなかっただろう。少なくとも、写真に写っていた頃の私は、そんなことを考えもしなかっただろう。毎日が幸せで、彼さえいれば後はもう どうでもいい。辛い現実を直視する事なんてなかったのだろう。
 恋に冷めたのか、恋から覚めたのか。
 どちらにしても、今の私にそう変化はないだろう。それがもし、前者だとしたら、私の恋を彼の手で呼び戻して欲しい。写真のような笑顔で笑える私を呼び戻して欲しい。別に、彼でなくても構わない。後者なら、もうこの先 恋に夢を見る事はないだろう。もう、そんな歳でもないのかも知れないが。
 結局は、天秤にかけてどちらを選択するかなのだ。
 冷めた瞬間よりも、楽しいことが勝れば、それはもう答えが出ている。故に、冷めた瞬間を忘れることが出来ないという事は、つまりそういうことなのだろう。
 恋が夢なら、愛が現実なのだろうか。
 夢を見過ぎなのか、理想が高すぎるのか、完璧主義者なのか。
 恋が愛に変わることが出来れば、私は変わることが出来たのだろうか。
 ここで私が揺らぐのは、世間体を気にしてなのか、それとももう一度彼に賭けているのか。どうせ都合のいい方向に考えはくるくると変わるのだろう。今からそうなのか、これからがそうなのか。
 もう、私の中で答えは出ていた。

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