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この作品には 〔ガールズラブ要素〕 が含まれています。

百合

Lips

作者:codama
 差し込む朝日の眩しさに私が目を覚ますと、すでに彼女は隣で起きていたらしく、ばっちりと目が合った。
「おはよう、麻衣子」
「おはよう、千秋」
 挨拶を交わして、お互いに微笑む。それは昨夜のことを思いだしてのことなのかは分からないが、素肌に触れるシーツの感触が何だかすこしくすぐったかった。
 私がそんな事を思っていると、千秋が、ん、とせがむように唇を突き出した。昨夜にその体を存分に眺めたとはいえ、裸でキスを欲するその姿は、扇情的な物をそそる。
 私がこたえるようにキスをしようとした時、ふと気が付いた。
「あれ? 千秋、唇荒れてる?」
「え?」
 そう言われて千秋が唇に手を当てて確認する。
「やだ、どうして……」
「待ってて、今リップクリーム塗ってあげる」
 そう言って私はベッドから降りて、小物入れからリップクリームを取り出す。裸の状態で彼女の前をうろうろするのも少し恥ずかしいものがあったが、昨夜の事もあってか、そこまで気にはならなかった。
「はい、じゃあ塗ってあげるから目を閉じて」
「分かった。でも、目を閉じてる間はずっと手を握っててね?」
「……昨日みたいに?」
「も、もう!」
「はは、ごめんごめん」
 そう言って、私は左手を千秋の右手に絡める。
 目を閉じ、唇を軽く突き出した千秋の顔が目の前にあって、少しどきりとする。
 今こうして見てみると、いわゆるキス顔をじっくり堪能できるようで、何だかにやにやとしてしまう。いざ、右手にリップクリームを構えた時に、気付くことがあった。
 あ、これ私に塗ってから千秋に塗れば、間接キスか。
 もう何度も直にキスをしたはずなのに、こういった時にはいたずら心という物が働くのか、ちょっとした楽しみを覚えてしまう。まあそもそも、私のリップクリームなので、何もせずとも間接キスなわけではあるが、その時の私は気が付きもしなかった。
 ゆっくりと、そしてねっとりと自分の唇に塗っていく。何だかいけないことをしているみたいで、ちょっぴり心が弾む。千秋の表情が何だかねだっているような顔つきになってきたので、そろそろ千秋の方にも塗る。
「ん」
 ぴく、と唇に触れた瞬間、千秋が小さく反応する。何だかその様子が、小動物の様で愛らしく思えた。そんな様子を見ながら、私は昨晩の事を思いだす。


 昨日、初めて千秋とベッドに入った。
 それはもちろん、比喩とかそういった意味で、だ。私たちは女同士ということもあって、何をどうしていいのやら、お互いによく分からなかった。いや、このご辞世だ。調べようと思えばいくらでも調べることは出来ただろう。でも、そう言ったことはあまりにもリアリティが強すぎて、お互いに出来なかったんだと思う。少なくとも、私はそうだった。ずっと、二人でいれば、キスだけで満足出来ると思っていた。ずっとそうするつもりだったのに、段々とお互いに求めていることに気付いてしまう。もっと深い結びつきを求めている、と。
 ひとまず、裸で向き合う。同性とは言っても、私と彼女の体つきは大分異なっていた。いや、人によってそれぞれ個体差はあるのだろうが、明らかに私たちは対照的な体つきだった。
 さらさらの黒髪、透き通るような頬、白い首筋、細い腕、ほどよい大きさの胸、なだらかな曲線を描く腰、みずみずしいふともも、小ぶりなお尻、それから――。
 自然と、彼女をなめまわすように見てしまう。こうして彼女の裸体をまじまじと見る機会が今までになかったからだろう。自分でも、息が荒くなっているのが分かった。
「麻衣子、ちょっと怖い」
 そう言って、彼女は自身の体を隠すように身をよじる。
「え? ああ、ごめん。ちょっと、興奮してた」
「こ、興奮って。ば、ばか……」
 顔を赤らめながら身じろぎする彼女を見ていると、私の興奮はより一層高まった。私は多分、好きな子にはいじわるしたくなるタイプなんだと思う。彼女が恥じらう姿が無性に可愛く思える。衝動を抑える為にも、私は彼女に優しく抱き着く。
「大丈夫、痛くしないからさ」
「う、うん……」
 素肌でぴったりと密着すると、普段とはまた違った感触が伝わってくる。やわらかな感触もそうだが、何より、彼女の鼓動が伝わってくる。
ドキドキ、ドキドキ。緊張からだろうか、鼓動が少し早いように感じる。
「緊張してるの?」
「麻衣子だって、すっごいドキドキしてるじゃない」
 そりゃ、私だってドキドキする。当たり前だ。好きな人が裸で、好きな人の前で私は裸なのだから。
 しばらくそのまま抱き合っていた。彼女のぬくもりを直に感じながら、時間だけが流れて行く。
 先に動いたのは、意外にも千秋だった。
「そ、その、そろそろ……しよう?」
 私は思わず目を丸くしてしまった。彼女が積極的だったことに驚いた。
「ま、まずはね。その、お互いに指で……」
「あ、ああ、うん……」
 顔が火照っていくのが分かった。これからするであろうことに多少の覚悟はしていたが、いざこうして言われてみると、どうしようもない羞恥心が溢れ出てくる。
「麻衣子は、いつもどっちの手でするの?」
「え? ええっと、ええ?」
 あまりにもストレートな物言いに私は戸惑ってしまう。少し体を離して、彼女を見据える。先ほどよりも一層顔は真っ赤だが、彼女の双眸には私の顔がしっかりと映っている。その真剣なまなざしに少し気おされたが、私は正直に答えた。
「右手、だけど……」
「そうよね、麻衣子右利きだもんね」
 いや、実際その辺ってどうなのだろうか。利き手じゃない方がいいって人もいた気がするけども。
「私はね……左、なの」
「へ、へー……」
 何て返せばいいのか分からなかった。でも、彼女は左利きだったし、基本的には利き手でするのかな。
「だからね、これからお互いに……触ると思うんだけど」
 そう言って、彼女は右手を私の左手に絡める。
「空いてる手は、こうやってずっと握っててほしいの」
 彼女の顔がぐっと近づき、気恥ずかしさが高まる。でも、それ以上に気持ちが高まっていく。
「う、うん。いいよ……ずっとこうして――」
 自然と顔が近づいていき、唇が触れ合う。いつもと同じ、何度も味わった唇の感触だった。初めは軽いキス。ちゅっ、ちゅっ、と短いキスを何度か繰り返す。徐々に息が荒くなっていく、鼓動も一段と強くなる。
 一度火が付くと、もう止まらなかった。お互いを求め合って、舌と舌が絡み合う激しいキス。舌が離れると、糸が引いて二人の唇を繋ぐ。唾液に濡れた艶やかな唇、とろんとした彼女の表情。
「はぁ、はぁ」
 興奮で頭が真っ白になってしまいそうだった。
「ねえ、そろそろ……」
「あ、ああ。うん……」
 握り合う手とは逆の手が、指がお互いの肢体をなぞる。彼女を伝う指の感触も、私の体を伝う感触どちらもぞくぞくした。くすぐったいような、こそばゆいような甘い快感が全身に走る。
 思わず声が出てしまう。お互いに、今まで聞くことのなかった声。快感に悶える想い人の声。もっと聞きたい、独り占めしたくなる。自然に指は下へと降りていく。お互いに想う事は同じなのだろうと改めて実感する。見つめ合いながら、動作を合わせるようにして、ゆっくりと指を撫で降ろしていく。胸から、おなか、そして――。


「――麻衣子?」
「え?」
 千秋の声で我に返った。リップクリームを手にぼーっとしていたようだ。
「いつまで塗ってるのよ」
 苦笑気味に彼女が言う。
「え? ああ、ごめん」
「……もしかして、昨日の事思い出してたの?」
 思わず顔が真っ赤になってしまう。ああ、どうしてこういう時に否定出来ないのだろう。
「もう、えっちね」
 そう言って、彼女がはにかむ。
「今度は私が塗ってあげるから、こっちに渡して」
 言われるがままにリップクリームを渡す。こうして私も塗られるのでは、間接キスを狙った意味などなかったのではないか。いや、間接キスも、する側とされる側ではまた違うのか。
「じゃあ、目を閉じて」
 私が目を閉じると、先ほどと同じように、私の左手と彼女の右手が絡まる。いざこうして、相手にすべてをゆだねるようなことをしていると考えると、少しドキドキしてしまう。そういえば、普段のキスも大概私からだったなあ。
「んむ」
 そんなことを考えていると、何かに唇を塞がれた。驚いて目を見開くと、眼前に千秋の顔があり、彼女にキスされていることが分かった。リップクリームのねっとりとした感触がやたら生々伝わってきて、彼女が唇をはむはむと動かすたびにぬちゅっと言う音がした。
「んんっ」
 右手も彼女の左手に絡めとられ、そのままゆっくりとベッドに押し倒されてしまう。続けて彼女の舌が私の口内に滑り込む。お互いの舌を絡め、より激しいキスへと発展していく。
 しばらく口の中を蹂躙されると、彼女が唇を離した。二人の唾液が糸のように伸びて、やがて途切れる。押し倒された姿勢から見上げる彼女は、また随分と新鮮だった。
「はい、これで麻衣子にも塗れたね」
 そう言って彼女は私に抱き着く。先ほどの行為でほんのりと上気した彼女の体温を感じる。
「ちょっと、今日はえらく強引だったのね」
 私が苦笑気味に言うと、彼女は真っ赤な顔で切なそうに言った。
「だって……リップクリーム塗られてる時にすごいドキドキして、終わったら昨日の事言い出すから、その、我慢出来なくなっちゃって」
 両手で顔を覆う彼女。そんな姿を見て、上体を起こして彼女を抱き寄せ、おなかにキスをする。
「きゃっ」
 小さく悲鳴を挙げる彼女を見て、どこかもっといじめたいという欲求がこみ上げる。
「さっきのお返し、今度は私がしてあげる」
 そう言って、彼女に顔を寄せる。
「ま、待って、今日は講義が――」
 急にばたばたと彼女は暴れ出した。しかし、もう止まれない。
「今更何言ってるのよ、誘ったのはそっちでしょ。今日はね、もうこのままずっと――」
 そう言って、彼女の唇を塞ぐ。もうそこに、彼女の抵抗はなかった。
丁寧で、やさしいキス。お互いの顔がとろけてしまいそうな、甘いキス。愛に満ちた、幸せなキス。このキスをどう表現していいか分からなかったが、繋がりを深めた次の日の朝は、より一層彼女との結びつきを実感できるだろうと思えた。
 そのまま体の上下を入れ替え、私は彼女を優しくベッドへ押し倒した。

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