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カジヤノキヤクビト 作者:No.

工房日誌 2017.3~

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3月16日雨 『迷宮3迷』

「新しい道、見つけたぞー」
「……ここ、どこですか?」

遺跡のような石壁と石畳に囲まれた、小さな地下空間のかたすみで、不安げなシュラの声が響く。
その声にカルラは反応して、当然とばかりに答える。

「ダンジョンだろ。モンスターがわんさか居る一攫千金の大迷宮」
「その、モンスターがわんさか居る場所の、どこかと聞いているのです! また迷っているではありませんかっ!」

泣きそうなくらいに取り乱したシュラは、小さな体を大きく揺らして主張する。なだめるカルラの横で、もう一人の影が動いた。

「シュラ、落ち着いて」
「ニコさん」

飴玉を舐めながら落ち着いてそう言うニコに、シュラはさらに不機嫌そうに眉を歪める。

「それもこれも、ニコさんが地図を燃やしたりするからですよ? 反省してください」
「マシュマロを焼きたかったのだから仕方ない」

そんな感じで、今回に限れば地図も道具も充実した状態で挑んだにも関わらず、迷宮で迷走しているのである。
焚き火をしたのが三十分前で、気がついたのは五分前だった。

「これ以上シュラを怒らせるな、痛い目見るの俺なんだからっ」

すでにボロボロのカルラは、モンスター以外の驚異に疲れた様子でそう言った。

ようやく落ち着きを取り戻したシュラは、腕を組んで困ったように考え込む。

「それで、どうやって脱出しましょう。場所が分からなければ出られませんよね?」

地図があれば、現在地も分かるのだが、それが無いのであれば帰ることは難しい。
そんな状況で、カルラは得意気に笑みを浮かべる。

「こんなこともあろうかと、ダンジョン脱出用の道具を作ってきた」
「本当ですか!」

カルラの手には杭と、赤く光る糸が握られていた。

「ああ、入り口に設置しておくと、自動でマーキングをする装置だ。ニコ、入り口に設置しろ」

静寂が起きた。
誰一人動くこともなく、数秒してから気がつく。

「……無理ですね」
「無理だよ」
「無理だったな」

すでに内部に入って迷って居るのだから、入り口に戻ることはできないし、出来たら目的は果たしている。
何故、初めに設置しなかったのかと、誰もが思った。

「なんだこれ、使えねーじゃねぇか。こんなものっ!」
「道具に罪はありませんよ!? どちらかというと私達の方が悪いです!」

カルラは苛立ち、道具を地面に投げつける。
上下に大きく揺れる肩をつかみ、ニコが平然としてこう言った。

「もういい、カルラ。非常口で出よ?」

カルラも、その提案に頷く。

「そうだな。そろそろ昼飯だし」
「え、そんなものがあるのですか?」

人が整備しているとは言え、そんなものがあるとは思っていなかったシュラが聞き返す。
またも得意気にカルラは言う。

「まあな。よく迷う馬鹿が居るらしいから」
「その方々に私達も含まれていますけどね」

呆れた様子でシュラは言い、キョロキョロと周囲を見回して口を動かす。

「それで、非常口とはどこにあるのですか?」
「地図があれば分かる。地図は?」

不思議そうにニコが尋ねる。そして、シュラは乾いた視線を向ける。

「燃やしましたよ。マシュマロのために」

静寂が起こって数秒、カルラが言った。

「……歩くぞ」
「……はい」

彼らがダンジョンを脱出したのは、この5時間後であった。
迷宮……地図持参、火気厳禁、マシュマロ美味。モンスターがわんさか現れる場所で、宝箱が定期的に設置される施設
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