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カジヤノキヤクビト 作者:No.

工房日誌 2017.3~

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3月5日晴れ 『道化師1名』

「新しいの、入ったぞー」
「ここは、金物屋さんか?」

目の前に飛び込んできた色彩は見事に交わることなく分かれた、白と赤。
二股の尖り帽子と、だぼだぼの服、その二つで構成された、道化師の衣装を着た人物は、とうてい道化らしくない色男だった。

「違ぇよ、うちは鍛冶屋だ。焼くもんだったら何でも売ってやる。ただし、お前はだめだ」
「カルラ、不機嫌」
「当たり前だっ! こんな外見ばっかりのチャラチャラした奴は、俺の素晴らしい商品をやるに値しねぇ!」

邪悪に燃える嫉妬の炎が、カルラの背後に見える。隣に立つニコは裾を引っ張り、飴玉の入った口を動かした。

「嫉妬はダメ。シュラが今月厳しいって言ってる」
「黙ってりゃ気付かれねーよ。さっさと追い払ーーー」
「……カルラさん」

言い掛けたとき、いつの間にか背後に立っていたシュラが声を掛ける。嫉妬の炎は、冷や汗へと変わり、見るからに焦りながら言葉を入れ換えた。

「うわけが無いよな。客は宝!」

しかし、その気前の良い発言に対して、シュラは冷ややかな視線を向けている。何がダメだったのかと考えるよりも先に、シュラは答えを述べた。

「……残念ながら、全て聞いていましたよ」

帳簿に書かれていた、カルラの小遣いが減らされる光景が見えた。
同情からか、ニコが肩を叩く。

「だから、言ってるって、教えてあげたのに」
「へぇ……そういう意味だったの。もっと分かるように言って欲しかったなぁ……」

いつもどこか、一言足りないニコであった。
身内の会話に置いてきぼりの客人に気を使って、落ち込む店主に代わってシュラが対応する。

「お待たせしました。どのような物をお探しですか?」
「子供」
「え?」
「……じゃなかった。子供が喜ぶような物が欲しいんだ。私は道化師だからね。今は化粧はしていないけれど」

逆にそうでなければ、ただの頭のおかしな男だ。
明確な商品を求められたため、カルラは項垂れる頭を持ち上げ、暗い表情で商品を選び始めた。

「これなんかどうだ?」

カルラが持ってきた商品は、道化師がジャグリングに用いるようなの、クラブの形をしていた。
それを見て、道化師は苦笑いを浮かべる。

「さすがに道化師だからね。私は自分のを持っているよ」
「こいつは、お前の商売道具より優秀だ。見てろ?」

そう言って、カルラは店の前まで出ていくと、三つのクラブを空中に投げた。すると、クラブからは赤い閃光が飛び、上空で弾けた。
見るも鮮やかなその光景に、道化師は息を飲む。

「素晴らしい。花火か?」
「いいや、魔力を飛ばしている。使うには相応の魔力が要るが、それさえあれば、いくらでも使える品だ」
「良いね。買わせてもらうよ」

すぐに財布を取り出す道化師は、爽やかな笑みを見せる。
町行く人が止まってまで見る、綺麗な横顔は、道化というよりも役者のような気がする。

同じ事を思ったのか、シュラが道化師に尋ねた。

「何故、道化になろうと思ったのですか?」

道化師は爽やかな笑顔を浮かべて、シュラの目を見て真っ直ぐ答えた。

「君みたいな子供が寄ってくるからだよ、私はこどもが好きでスキデすきでしかたない人だから、コドモの笑顔がないとしんでしまうイキモノダカラ、私は道化師になったんだよ。……きみも、わらってくれないかなぁ?」

ハァハァと息を見出しながら立て続けに言葉を並べる道化師の変わりように、シュラはガタガタと震えている。珍しい。

言っていることも、やっていることも、悪くはないのだが、何でかな、

「やっぱり、お前には売りたくない」
「ええっ!! どうしてっ!?」

そのうち、子供に害を及ぼしそうだから。
道化師(29)
趣味……孤児院でコドモたちと遊ぶ
備考……道化師のモデルは、実在したピエロさん。こっちの方は無害ですが、本物はとても怖い方みたいですよ。
野生のピエロにはご用心。
+注意+
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