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カジヤノキヤクビト 作者:No.

工房日誌 2017.3~

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3月4日曇り 『手品師1名』

「あ、新しい芸、見せます!」
「そうか、他所でやってくれ」

昼下がりに店の前に出ると、一人の少女が立っていた。
周囲に奇怪な道具を置いて、何故かバニーガールの衣装にシルクハットという、マジシャンなのか、助手なのか、よく分からない格好でわなわなと震えている。

そして、必要以上に青ざめて、彼女は叫んだ。

「こ、困ります!」
「うるせぇっ、こっちもかなり困ってんだよ! 何でうちの前に、道を塞ぐみたいな大きな道具並べてんだよ、客が入れねぇじゃあねぇか!」

カルラも叫ぶと、少女は再び萎縮して、人差し指をくっつけなが、もじもじと訳を話始めた。

「それはその、入団試験といいますか……」
「入団試験?」
「はい。ここの人は仏様みたいに優しいから、練習にはもってこいだよだて、教えて貰いました。……騙されたみたいですけど」

仏様だって、仕事の邪魔をされたら怒ると思う。
そこに、ニコが甘い匂いをさせてやって来る。

「マジック、見たい……!」
「ニコ、仕事中だ。シュラ、お前も何か言ってやれ。シュラ?」

振り返ると、子供みたいな体型の弟子が、扉の前に立ったまま、子供みたいに目を輝かせて固まっていた。
カルラの言葉に二秒遅れて、シュラは慌てて反応する。

「え、は、ひゃいっ! そ、そうですね。今日も良い天気ですね!」
「誰もそんなこと言ってねーし、今日は曇りだ。そこまで良い天気じゃあねぇ」

そういえばシュラは、人里離れた森の出身だった。こういった珍しいものには目がないのだろう。
ニコは店の前の道具を指差し、カルラの服の裾を引っ張る。

「カルラ、マジック。カルラマジック」
「それだと、俺がマジックということになるんだが?」
「カルラ、マジック?」
「違ぇよ。……はぁ、うちのガキ共が興味あるらしいから、少しだけ付き合ってやるよ」

そう言ってやると、少女は表情を明るくさせる。

「ほ、本当ですか!? ありがとうございます!」

深々と頭を下げると、マジックの準備に取り掛かる。大きな箱を手前に移動させ、その扉を開ける。

「こ、こちらに、タネも仕掛けもない箱があります」

見たところ、本当にタネも仕掛けも見当たらない。

「魔法の気配もありませんね」
「その通りです。私がこの中に入りましたら、この剣で刺して下さい。私は隣の箱に移動しますから」
「おいおい、大丈夫なのか? なんか、すげぇ不安なんだが」

店の前で血を流されたら、評判に響くのだが。

「だ、大丈夫です! 昨日買ったばかりで、使い方もあまり理解していませんが、たぶん大丈夫です!」
「不安しか無くなったんだが?」
「大丈夫です。では、私が入ったら刺して下さいね」

少女は鉄の剣を3つ、それぞれに手渡して、箱の扉を開けた。
その動作一つ一つがぎこちなく、素人感が否めない。
扉が閉まると、カルラは剣を箱に刺す。

ザクッ。

確かな手応えがあった。本当に、大丈夫なのだろうか。

「次、私が刺します」

シュラ、そしてニコの順番に剣を刺す。血の臭いが漂うが、もう後戻りは出来ない。
死体をどこに棄てようかと考えたとき、隣の箱が開いた。

「じ、じゃじゃ~ん。脱出成功です」

なんとも見事に、衆目を欺いて、箱から箱を移動した少女の姿がそこにはあった。
ここまで完璧に、マジックを成功させるとは、実はかなりの実力者なのかもしれない。
あの不安げな態度は、全て演技だっただろう。

ポタッ。

だから、彼女がしきりに、きつく脇腹を押さえているのも、そこから止めどなく血が流れているのも、演技に違いない。

「ははっ……。成功です。成功……しま……した……。あっ」

ぱたりと倒れ込んで動かない。
最近、どうしてか血が流れる。呪われているのか?

「だ、大丈夫ですか? これもマジックなのですか!?」

慌ててシュラが駆け寄り、地面に横たわる少女の肩を叩く。
その隣で、ニコは満足げに手を叩く。

「ぶらぼー」

何もブラボーではないのだが、明らかな失敗を、失敗と判断できる人間は、カルラだけだった。
ホシカ・スギモト(18)
特技……カードマジック
備考……東の国から奇術の勉強をしに来た少女。マジック道具を衝動買いするが、使い方を理解する頭が無かったりする。
モデルは、某素晴らしいアニメの孤独系残念少女。
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