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カジヤノキヤクビト 作者:No.

工房日誌 2017.1~

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1月4日晴れ『修道士2名』

「新しいの、入ったぞー」

日中の日差しで、雪も溶け始めた午後。店先でいつものように声を鳴らしていると、女性が二人変わった服装をして立っていた。

「レラジェ様、品性のない男が現れましたよ?」
「シトリー様、その品性のない男はこの店の主でしょう。少し失礼かもしれません」

謎の掛け合いを見せる二人組。黒く、色気のない修道服を来ていることから、どっかの教会から来た信者なのだろう。
しかし、あいにく俺は宗教に興味ない。
そう思って訝しげな目で眺めていると、二人はひそひそと、それでもカルラに聞こえるように話を始めた。

「レラジェ様、品性のない男が欲情しきった視線をこちらに向けてきます」
「シトリー様、品性のない男は、純情可憐な修道女に欲情しているのです。モテないから」
「うるっせぇよ、自惚れんな! てか、お前ら人の店の前で何してんだよ!」

品性のない、と表現されて激怒した品性のない男は地団駄を踏んで怒鳴り散らす。それを聞いて、思い出したように片方は言う。

「シトリー様、私達は聖職者として十字架を買いに来たのでした。罪深い店主よ、売ってはくれませんか?」
「迷える子羊に数えんな。眠らせるぞ」

そこに、工房で作業をしていた、トコトコとシュラが歩み寄ってきた。

「いらっしゃいませ。何をお探しですか?」
「おう、シュラ。なんか十字架が欲しいんだってよ。金になるから作ってやりたいが、形が分からん」
「それなら、この本に書いてありましたよ。どうぞ」

手渡された本を開くと、鉄の板を交差させたような、装飾だらけの鉄器が書かれたページを見つける。
余白には、このアクセサリーを身につける宗教の、慈悲深さや儀式についても書かれていた。

「へーお前ら、そういう宗教なのか?」
「いいえ。最近、聖職者業界で流行っているから、欲しくなっただけ」
「罪深いはお前らだろ。神を大切にしてやれ、すごく憐れだ」

聖職者としてはどうなのか。とりあえず、カルラは考えることを止めて、かるく工程を見積もる。そして、頭を掻いて、奥歯に物が挟まったような渋い顔をする。

「これを作るとなると、2日は要るな。待てるか?」

形を作るだけならまだしも、装飾となると話は別だ。
カルラの問いに対し、シトリーは上の空で答える。

「いいえ、もういいです。レラジェ様、そんなものより私はこれが欲しいです」
「シトリー様、実は私もそう思っていました」

指された指先の方向に目を向けると、ちょこんと隣に立つシュラが居た。

「ふぇ?」
「レラジェ様、私は今この少女を信仰したい気分です」
「シトリー様、私もそう思います。店主よ、いくらで売ってくれますか?」

冗談なら良かったのだが、目が本気だ。どうしようかと、腕を組んで考えていると、修道女達はシュラの頬やら、腕やら、髪やらを撫で始める。
すると、パニックになったシュラが叫んだ。

「ひ、非売品なのです! 私の全てはカルラさんに捧げました!」

町中に響くような、よく通るその声で言う。道行く人々が俺を見て、蔑むような眼差しを向けて通りすぎる。
神よ、俺が何をしたっていうんだ。

「失われていても構いません。が、今日のところは帰りましょう、レラジェ様」
「ええ、傷が癒えるまで泣きましょう。シトリー様」

そう言い残し、髪も服もくしゃくしゃにされたシュラを置いて、どこか寂しげな背中で帰っていった。

へたりと疲れたようすでその場に座り込むシュラは、カルラを見て優しく微笑む。

「私はカルラさんの弟子ですから、どこにも行きません」
「……分かったよ」

愛情溢れる師弟らの話は、ロリコン鍛冶屋がついにやった、という話になって隣町まで伝わるのだが、今の彼らは知るよしもない。
シトリー・アーセナル(16)
好きな食べ物……チャーシュー麺
備考……幼女を信仰しましょう

レラジェ・ガリル(17)
好きな食べ物……ビーフシチュー
備考……幼女を崇め奉りましょう
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