挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
カジヤノキヤクビト 作者:No.

工房日誌 2017.2~

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

58/338

2月23日曇り 『騎士1名』

「新しいの、入ったぞー」

カルラが呼び掛けると、道行く人は興味をしめす。
王都にも多少慣れ始めてきて、興味を持つ者は足を止め、親しんだ者は挨拶をする。
たまに、事情を知る者が来て文句にはならないほど小さな声で何かを言って、去っていくこともある。

要するに、注目の的。あるいは人気者になったようだ。

「カルラさん、危ないことはしませんよね?」
「危ないことでも、やらなきゃいけねぇんだよ。師匠の武器で、師匠の友人が死ぬことをなくすには……」

カルラは封筒を取りだし、中身をもう一度取り出す。かなり複雑で乱雑で、所々計算が間違っているようなのだが、設計図であることは間違いない。

そして、カルラにはその全貌を、断片的に思い出す。硬い石の砦を、火の海に塗り替えるほどの炎が、瞼の裏に赤々と広がる。

「これは護りに特化した部隊を全滅に追い込める兵器だ。こんなものを量産すれば、たぶん誰も救われない」
「そうですか……」

どういうわけか、あの時、師匠の作った設計図は魔族に渡っていた。クロの手掛けた物であるのなら、その強さにも納得がいく。
本来なら破棄して然るべきなのだが、とても不条理な理由のせいで、それは出来ないことも、設計図には書かれている。

曰く、設計図はもうひとつある。

正確には同じものではなく片割れ。重ねることにより完成する、言わば仕掛け絵のようなものであったのだ。
そして、今度はどういうわけか、宮廷のどこかにあることも、手紙に記されていた。この設計図を見つけ出し、破棄するまでは、町に帰ることは出来ない。

「あの、2つ無いと完成しないのであれば、それを燃やしてしまえば終わるのでは無いでしょうか」
「それは出来ねぇな。たかだか半分を失ったところで、何年も掛けりゃ復元は難しくねぇ。それはあくまで囮として、使えるときがあれば使うのさ」

複雑とは言え、宮廷の工作部隊が再現出来ないほどではないし、優秀な人材が居れば、3年も掛からずに作れるだろう。
だから、何としても、設計図を見つけ出して破棄する。
師匠からの遺言だから、仕方ない。

そろそろ中に戻ろうとすると、後ろから声を掛けられる。

「カルラ、帰ってたんだってな」

少し老けて白髪が目立つようになったが、その顔には見覚えがある。攻撃部隊の隊長、その名前は、

「えーと、トルコアイス?」
「何で、覚えてねぇんだよ! トルアドだよ!」
「ああ、トルな。覚えてる覚えてる」

背中に大きな斧を背負う、鎧の男は円卓にも顔を合わせた人物だ。この調子からすると、クビにはなっていないのだろう。

カルラの適当な反応に、トルは眉をハの字にして落ち込んでいる

「お願いだから、全部言ってくれないか? 次に会ったときに忘れられてそうだし」
「大丈夫だよ、流石に覚えた。トル……は何の用で来たんだ?」
「忘れたろ。さっき言ったのに、もう忘れたろ」

聞き直すのも、言い直すのも面倒な二人は、本題に入った。

「理由は二つ。一つは、お前を国王のもとに連れていくことだ」
「何のためだ? 王は俺にまた会えるくらいに誇りを捨てたのか?」
「今も昔も、大して変わらねぇよ。何でも、兵器開発にお前の力が必要らしくてな」

予想通り接触してきた。悟らせないように、誤魔化しながら、カルラは話を引き出す。

「キュクロウドって言ったっけ? お前の師匠。そいつの残して行ったものだから、弟子のお前になら分かるんじゃねぇかって話になったんだとよ」
「報酬は?」
「莫大な、とは聞いてるが、詳しくは……。ホネストの野郎、俺にすら秘密にしやがるからな」

ホネストは今も宮廷に居るらしい。厄介なのはその男くらいだから、忍び込んだら、そいつにだけは出会わないようにしよう。

「ま、いいぜ、暇だし」

カルラは肩をすくめ、なんてことないような素振りを見せた。

「それで、もう一つは?」
「あー……」

トルは頭を掻いて、苦々しい表情を浮かべる。何か言いづらいことなのだろうか。
数秒考えて、トルは答えた。

「ニコに銃取ってこいって頼まれた」
「なんだ、パシりか」
「そう言うな、俺だっていい歳して恥ずかしいんだから。そう言うお前だって、子守りしてんじゃねぇか」
「私はカルラさんの弟子です! 子供ではありません!」

緊張で黙っていたシュラが跳び跳ねる。気を使っていたのなら、どうしよかと思っていたのだ。
機嫌が悪くなるから。

「そ、そうか。……カルラ、銃を寄越してくれ」

戸惑いながら手を伸ばすトルの手に、カルラは一枚の紙切れを渡す。

「何だこれ?」
「請求書だ」
「はぁ!?」

驚きながら、その書類の額を見て驚愕する。最新技術を伸ばすのだから、それなりの金額は掛かったのだ。
騎士の給料一年分くらい。

「ニコから金貰ってねぇから、渡すわけにゃいかねぇだろ?」
「宮廷で貰えばいいだろ? 給料日前で、金がねぇんだよ」
「ダメだ。払え」

泣く泣く、トルは財布の紐を緩め、金貨を数枚と、残りの金額を小切手で支払った。

ようやく、懐かしい王宮を、襲撃出来る。

王都……王国直近の街。商業が活発で、国中の街から物資が集まる流行と発展の街。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ