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カジヤノキヤクビト 作者:No.

工房日誌 2017.1~

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1月3日雪『雪だるま一組』

「新しいの、はいっクシュンッ!」
「大丈夫ですか?」
「ズズッ……。ああ」

 鼻をすすりながら、カルラは前方に広がる景色を眩しそうに目を細めて眺める。

「積もりましたね」

 積雪15cm。北国でもないこの町では、これほどまでに雪が積もることも珍しく、カルラ自身も十年ぶりに見た光景だった。
 町の人達はこぞって自宅に引きこもるか、そうでなければ雪掻きで忙しそうに働いている。

「今日は誰も来そうにないな」
「そうですね」

 店内に戻ろうとするカルラだったが、ふと後ろを見る。

「ん、入らないのか?」

 ボーッと店先で立ち尽くすシュラに尋ねる。すると、曖昧な笑みを顔一杯に取り繕って返される。

「……はい。私の故郷では見たことがなかったもので」
「そういえば、聞いたことが無かったな。お前の実家って、どこなんだ?」

 キュッと、悲しそうにシュラは唇を結び、少し悲しそうに答えた。

「遠い、ずっと遠くにある森の村です。地図にも乗っていないので、カルラさんも知らないと思います」
「…………そうか」

 今はまだ、聞いてはいけないのだろう。
 カルラはまた、店の奥の暖かい工房へと向かった。

 シュラは故郷を思いながら、冷たくなった手を擦る。そのとき、頭の上から何かが覆い被さるように乗っかった。

「寒みーだろ。これを着ていろ」
「これは……」

 赤い布地に、羽毛が敷き詰められた柔らかな着物を両手に、シュラは驚いた様子でそれを見つめている。

「冬前に買っておいた安い上着だ。これは手袋」

 赤い毛糸の手袋を手渡すカルラも、青色の色違いを身に付けていた。
 思いがけない気遣いに、シュラも笑みを溢す。

「ありがとうございます」

 二人は雪を慣らすように、地面を踏みしめて歩き、十数歩進んだところでカルラが膝をついて地面を掻いた。

「何をなさっているのですか?」
「お前は知らないだろうから、教えてやる。雪の使い方ってやつをな」

 そう言って、手に掴んだ雪を丸めて、地面に転がす。すると、少しずつ雪玉はその大きさを増していく。

「これで2つの玉を作って、頭と動体にするんだ」
「分かりました!」

 子供のように雪玉を転がす二人の足跡は、まるで道のように雪原を削っていく。時間が経つのも忘れて、店の前まで戻る頃には二人とも鼻を赤くしていた。

「じゃあ、乗せるか」
「私が弟子なので、私が下になります」
「そうか? じゃあ、俺は上……乗るか、これ?」

 鍛冶仕事で鍛えた腕で、雪玉を重ねると、比率3:1の不格好な雪だるまが完成する。
 鉄屑で顔を作り、二人は満足げに眺めていると、一陣の風が吹いた。

「「くしゅん」」

 体を震わせて、鼻を垂らした顔を見合わせる。

「帰るぞ」
「そうですね」

 暖かい釜戸へと足を運ぶ。
 鉄屑雪だるまは、それを嬉しそうに見送った。

雪だるま(1日)
好きな食べ物……人肉
備考……人間の邪なる心から誕生した精霊が、雪に混じり降りてきた姿。いつの日か、世界征服を遂げる夢を抱いている。









情報提供者「宿屋の主人」
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