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カジヤノキヤクビト 作者:No.

工房日誌 2017.2~

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2月1日暗い 『出張中』

「新しいの、見つけたぞー」

種類も分からないような、貴重らしい石ころを片手に、カルラは笑みを浮かべる。
そんな様子を見て、ヘルメットのライトにシュラは目を眩しそうに細めながら、素っ気なく尋ねた。

「……カルラさん、ここはどこですか?」

その問いに、カルラは周囲を一度見渡して、視線を元に戻す。
どこまでも続くほの暗い洞穴内には、ランタンで照らされた二人と、採掘道具の影が延びていた。

「どこって、北にある鉱山だ。経費削減のために自分で掘れって、シュラが言ったんだろ?」
「私が聞いているのは、ここが鉱山のどこなのかということです。完全に迷ってますよね? お腹が空いてきましたよ」

地図も持たずに探索してから五時間が経過した今、二人とも帰り道を見失っていることに気がついたようだ。

「人間みんな、己を見つける迷子のようなもんだ。んな小さいこと気にすんなよ」
「しますよっ! 少しも危機感持ってないのですから!」
「……って言っても、手掛かりもねぇからなぁ」

そう言って、しばらく無音が続いた。何か気がついたらしく、カルラはピッケルを足元に置いて、歩きだす。
シュラもランタンだけを手に取り、慌ててその後を追う。

「どうされましたか?」
「向こうの方で水の音がした。もしかしたら、川に繋がっているかもな」
「本当ですか!? それを辿れば、出口も見つかるかもしれませんね!」

音を頼りに、確かめるような足取りでしばらく進んでいくと、予想通り、そこには川が流れていた。
しかし、そこに光はない。

「行き止まりですね」
「ああ、空洞があるだけだな。苔が生えてるから、気を付けろ」

灯りで照らすと、反射した鉱石の結晶が輝きを持つ。奥まった場所にあるためか、誰も手を付けていないようだ。

「穴場だな。ここも掘っておくか」

そう言って来た道を戻ろうとした時、川から這い上がるような水音が響いた。
誰もいないはずの川であるため、驚いて振り替えると、そこには人の形をした生物が立っていた。

「あれは……?」
「マーマンだな。早い水流に住む魔獣で、武器を使うことで有名だな。塩焼きが美味いらしい」
「食べませんよ!?」
「腹が減ったって言ったじゃねぇか」

確かにそれは事実であるため、言い返せずにシュラは口ごもり、話を反らす。

「い、今はそんなことはいいではないですか。魔獣なんて危ないのでは?」
「大丈夫だよ。群れでなけりゃ、かなり弱い」

そう言った瞬間、川の水が荒れだして、無数の水掻きが地面にでついた。
一匹だったはずの魚介類が、二十まで増えて、丸い目玉を光らせている。

「群れになりましたよ?」
「かなりヤバイ。逃げるぞ!」

手をつかむと、急なことに対処できずシュラは転んでしまう。
カルラが駆け寄ると、マーマン達はすでにそこまで迫っていた。
攻撃の合図をするかのように一匹が鳴くと、マーマンの群れが攻撃を始める。
やむ得ず、カルラは素手で立ち向かう。

ゴゴゴゴッーーー。

何が動く音がする。とても大きなものが、こちらに向かって動いている。
先程まで攻撃的だった魔獣が怯えて川の中に戻っていく。

助かった。
そう思ったのも束の間、暗くて気づけなかった天井に穴から、水が落ちてくる。

「カルラさんっ!」
「クソッ!」

空間は水で満たされ、二人の体は流されていく。
辛うじて掴んだ手を離さないようにして、それでも川の流れに巻き込まれて、二人は流されていった。
行き着いた先は、鉱山の入り口とは反対の緑生い茂る谷だった。
撫でるような風が体温を奪う。

何とか意識を失わずにすんだカルラは、シュラを抱えて水から上がった。

「シュラ、大丈夫か?」
「え、ええ。死ぬかとお持ちましたけど……」

とりあえず、当初の予定通り出口は見つけた。
ぐったりとしたシュラが、深く息を吐く。

「もう帰りましょう。そして、二度と来ません」

そう言ってから数秒後、カルラはあることに気がつく。

「やべっ! 荷物置いてきた!」
「もしかして、戻るつもりなのですか!?」
「当たり前だろ。あそこには鉱石も道具も置いてきたんだから!」

洞窟を出たのは、それからさらに十時間後のことだった。
マーマン……水性魔獣の定番。半魚人の雄と思われていたが、別個体であることが判明している。ソテーにすると美味しい。
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