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カジヤノキヤクビト 作者:No.

工房日誌 2017.1~

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1月29日晴れ 『西の森にて』

「新しいやつを採ってきたぞ」
「あんがとさん」

深い森の中、人気の無いはずのその場所で、弓や剣を携えたエルフたちの姿があった。
目立たない小さな炎の前では、休憩の二人が他愛ない会話を始める。

「そういや、あの鍛冶屋はどうしたって? そろそろ逃げたか?」
「いいや、まだ建物の中に籠っているんだとよ。もしかしたら、穴でも掘って外に出たのかも知れないがな」
「はっ、そりゃないだろ」

焚き火で煮えた鍋に、石で叩いた野草を入れる。味はしないが、匂いだけなら美味そうに香る。
その時、そこの茂みを何かが強く揺らした。

「おぉ、美味そうな臭いがすんなぁ。オジチャンも混ぜてくれよ」

顔の赤い、修行僧のように見えて、それでいて修行僧らしからぬ格好をした男がそこには居た。
ついた錫杖が高い音を鳴らす。
風の中に、微量に酒の臭い漂っている。

「だれだ、お前?」
「んなこたぁどうでもいいだろうよ。オレが何もんかってのは、聞くだけ無駄ってことだしなぁ」

鍋の中身しか目に映らないらしいその男に、エルフの戦士は睨みをきかせた。

「そうは行かない、鍛冶屋の仲間やも知れぬからな」
「カルラのかぁ? アイツ、まーた何かやったのか。相変わらず飽きさせねぇな」
「やはりそうか。ならば、立ち去り願おう。ここは通行止めだ」

へらへらとふざけた調子で笑う男に刃が向けられる。冷たく緊迫した空気が両者の頬に突き刺さる。

「オレは行きたいところに行くのさ。邪魔すんなら、手加減はしねぇぞ」
「そうか、残念だ」

言葉の終わりに、剣先が飛ぶ。腕に目掛けて行われた攻撃は、空を突き刺して止まる。
驚愕に見開かれて目だけで周囲を見回すが、煙のように消えた男の存在を捉えることはできない。

「『ト郭三十六計瑛陰の理に反し、新たに戒律を設ける』」

声が聞こえ、エルフ達はその方向に顔を並べた。先ほどまで居た場所から左に百メートル移動していた。
どうやって、そのようなことが出来たのか、もう一人のエルフな矢を穿つ。

呪文の途中にも関わらず、男が手を翳すと、矢は見えない壁に弾かれた。

「詠唱と無詠唱を同時に……!?」
「どこかで見たと思えば、天道のライ……!」

男は、嫌なことでも聞いたとばかりに顔をしかめ、錫杖を鳴らして詠唱を再開する。

「『天網の抜け道を生きる者達に、あまねく千手の施しあれ。曰く……』」

伸ばした手からは荘厳な光が漏れる。

「『無限』」

光は二人のみならず、周囲を警戒していたエルフ達を包んだ。
超短編『酩酊僧侶が居たわけ』

「しまった、道聞きたかったんだがな。ここは一体どこなんだ? おーい、起きろエルフ。……この剣、売れっかな」
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