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カジヤノキヤクビト 作者:No.

工房日誌 2017.10~

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10月18日晴れ 『情報整理』

「新しい情報、入ったぞー……って、居ねぇのか?」
「二人とも、トイレに行ったよ」

 王宮付近にある作業部屋に、カルラは資料を持って訪れていた。そこに住み込んでいる、だらしのない風貌の男は、十二騎士団工作部隊隊長マライク・スマルビックであった。

 紫色に染めた髪を撫でながら、マライクはのんびりとした口調で言う。

「カルラも大変だねぇ。変な盗賊の被害にあっちゃうなんて、おいらには堪えられないかな~」

 うっすらと笑みが見えるその態度に、カルラは不快そうに顔をしかめた。

「マライク、てめぇ少しも同情してねぇだろ?」
「ははっ、分かっちゃう?」

 楽しげに笑うマライクは、少し真面目そうに表情を落とす。

「それで、何か分かったのかな?」
「……何も」

 カルラは手に持った資料をテーブルの上に置き、吐き捨てるように答える。

「盗まれた物にも、壊された物にも、共通点ひとつ有りゃしねぇんだよな。意図的に、目立つものを目立つ方法で壊したり、盗んでるってのに意味が分からねぇ」

 所有者も物体も統一されておらず、住民の物だったり、国有の物だったりと、次の犯行場所を特定するのも難しい。
 マライクは再び髪を撫でながら、椅子に座ったまま、カルラの置いた資料を摘まむ。

「まあ、そういうことも在るだろうよ。しかし、目撃証言があるってのは面倒だろうね。裁判になれば、有罪は確定だ」
「だから、必死になって犯人を探してんだろうが」

 まだ図書館で目撃されたから、住民達から通報されることはないが、次の犯行現場で同じような格好をして出てこられたら、今度こそ大変なことになる。

「おいらなら、本命の女の子を射止めるのに、練習くらいはするだろうね」

 マライクは適当に言う。

「これまでの犯行が練習だと?」
「全てが、とは言わないけど、全てが本気とも思えない。実際、何回か失敗しているらしいからね」
「そうなのか?」

 カルラが尋ねると、マライクは知らなかったのかというように眉を持ち上げた。

「最初の犯行は、王都西門の破壊だったそうだよ。もちろん、来るときに見えたろうけど、未遂に終わった。我が国の衛兵は優秀だね」

 西門の破壊というと、かなり危険な行為である。それゆえに、防衛を強化している場所であった。
 カルラは少し考え込む。
 王都の警備はかなり強化されているが、それは街の出入りにだけだった。つまり、王宮は手薄。

「ホネストが言っていたな。成り代わってる奴が居る」
「可能性はあるだろうね。なんせ国王に成り済ましていたくらいなんだから」

 マライクは軽く、冗談のように返してから、次に真面目な声色で訊く。

「……今までの犯行が、ただの誘導だと?」
「ああ。だが、続ける理由が分からねぇ。捕まる危険を冒してまで、何度も行うものか?」

 ただの愉快犯にしては大規模過ぎるし、だからといって、綿密に計画された犯行とは思えない。

「まだ、作戦が成功していないとか?」
「それは無い。誘導ってのは、相手が慣れない内にやるもんだからな」
「流石、元部隊長だね。尊敬するよ」

 それは貶しているのか、ただの雑談か。カルラは何の予兆も見せずに尋ねた。

「ところで、お前に貸した金があったよな?」
「え、そんなのあったかな?」

 マライクは少し驚いたような表情を見せたが、次の瞬間に微笑んだ。

「冗談だよ。おいらは本物だ。確か、1,000Gだったよね?」
「10,000Gだ。どさくさに紛れて、桁を減らしてんじゃねぇよっ!」

 やれやれと肩を竦めるマライクは財布を探るが、見た通り空っぽだった。最初から期待などしていなかったが、変装ではないことを判別できた。

 カルラは信用に足るかを計った後、改めてマライクに尋ねる。

「一応聞いておくが、何か変わったことはあるか? 特に王宮で」

 カルラは腕を組み、犯行現場から離れた王宮の状況について疑問を投げ掛けた。マライクは顎に手を当て、思い出すような仕草で口を動かした。

「ニコちゃんは、カボチャパイに執心しているね。イグノラネスちゃんは、最近占いを沢山しているね。ドラシルちゃんは、ドラゴン集めをしている。クレオさんは――――」
「いや、もういい」

 女の情報しか無いのか。昔からナンパ師であるから、それ以外に興味はないのだろう。
 カルラは溜息を吐くと、マライクは言った。

「国王は、君の犯行だと考えて、捜索隊を編成しているよ」
「……それを先に言えっ」

 猶予は少ない。
マライク・スマルビック(31)
特技……誘惑。
備考……
騎士団の工作部隊に、隊長として所属する男。女家族に育てられたからか、女性の扱いが上手く、かなりモテるのだが、王宮の変人達には通じないらしい。カルラのことが少し羨ましい。
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