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カジヤノキヤクビト 作者:No.

工房日誌 2017.9~

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9月29日晴れ 『盾騎士1名』

「新しいの、入ったぞー」
「先輩っ、せんぱいっ、センパイっ! そろそろ結婚してくださいっ!」

 騒がしい求婚と共に現れたのは、重い鎧に、背中に大きな盾を担いだ騎士の姿だった。一見すると青年にも見える彼女は、確かに女性らしく、明るい笑顔でカルラに迫っている。

 カルラは騎士団防衛部隊隊長、メルモル・ルートリッヒを一瞥すると、興味なさそうに視線を空へと移した。

「ああ、すまねぇ。俺は今、雲の数を数えるんで忙しいから、また今度にしてくれ」
「分かりました! では、勝手に婚姻届を提出しておきます!」
「へいへい…………って、ちょっと待てぃっ!」

 とても重そうな装備にも関わらず、速やかに店内に上がり込もうとするメルの腕を掴む。指先はすでに戸棚まで届こうとしていた。

「てめぇ、なに勝手に人んち探ってんだよ?」
「え、ぼくと先輩の仲じゃないですか?」
「お前と話したのはこれで二回目だ。新聞の勧誘の方がもっと顔を見せるぞ、うっとうしい」

 ふたつも新聞は要らないし、無礼な後輩も要らない。
 カルラは深い溜息を吐いてから、メルの探ろうとしていた戸棚を見つめる。

「あと、なんで俺の印鑑の場所を知ってんだよ?」
「………………あ、そんなことより先輩」
「おい、誤魔化すな。不安になるじゃねぇか!」

 この鍛冶屋はいくつの個人にねらわれているのだろうか。渋い顔を浮かべるカルラを余所に、メルは興味深そうに店内を見回してから尋ねた。

「今日は、白い女の子は居ないんですか?」
「ん? ああ。今はちょっと買い物だ。気になるんなら、少し待ってりゃ良いんじゃねぇか?」

 そう言った瞬間、メルが明るい笑顔をカルラに向ける。

「それじゃあ、気兼ねなくイチャつけますね!」
「俺に触れてみろ? その指を切り落として返してやる」
「もぅ~、先輩ったら照れ屋なんですからぁ」
「照れてねぇよっ!?」

 話を聞かない後輩に、鎚を向けて牽制していると、背後に気配を感じる。振り返ると、鍛冶屋の妖刀クリョクが顔を覗かせていた。

「おう、クリョク」
「あっ……」

 カルラが声を掛けると、気まずそうに顔を背けられてしまう。どうしたのかと思っていると、クリョクは頬を染めて恥ずかしそうに呟いた。

「あ、主が見知らぬ、変な女性となにやら卑猥なことをしていらっしゃる」
「してねぇよ?」

 メルはしきりに隙を窺っているが、カルラはなんとか防いでいる。

「こいつはただの知り合いだ。気にすんな」
「そ、そうでありまするか。ただの変な知り合いでありましたか……」

 変な、は訂正しない。まあ、変だけど。
 クリョクは、カルラとメルの間を落ち着かない様子で見ながら、戸惑いの表情を浮かべている。

「主……。しかし、婚姻前の男女が肌を触れ合うのは如何なものかと」
「肌を触れ合う……?」

 ふと手元を見ると、いつの間にか白い手が、カルラの手に優しく触れていた。気配を消していたメルが低い位置から満足げな笑っているから、カルラもそれに応えるように握りしめた。

「アッ、先輩、そんなに強く握っちゃ……――――」
「クリョク、ノコギリ持ってこい」
「あ、本気の眼ですね」

 土下座では許されない行為だったようです。
メルモル・ルートリッヒ(18)
得意戦闘……拠点防衛。
備考……
若くして防衛部隊という重要な組織運営を任せられた少女。個人の技量もさることながら、防衛設備の技術躍進を成功させた。普段はあまり感情を見せない。
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