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カジヤノキヤクビト 作者:No.

工房日誌 2017.9~

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9月22日晴れ 『重装騎士1名』

「新しいの、入ったぞー」

 早朝、カルラは誰もいない大通りに向かって呼び掛けた。そんなつもりだったのだが、しかし、店の前にはすでに、背中に巨大な武器を携えて、鎧を着こんだ少女が立っていて、待ち望んだ瞬間のように明るい笑顔で出迎えている。

「こんにちは! 遊びに来てあげたよー!」
「そうか、帰れっ!」

 カルラはぴしゃりと扉を閉め、しっかりと施錠する。
 カルラには、その出迎えた顔に見覚えがあった。幼い身体に、長い黒髪が伸びていて、何処か獣のような印象を持つ少女は、たしか騎士団に居たとき見たような気がしたのである。

 あまり関わりたくない。そう思った矢先、扉が軋んだ。

「ねぇっ!」
「うぉほぉっ!?」

 バゴォンと、扉を貫く大斧がカルラの頭目掛けて飛んでくる。間一髪のところで避けると、少女はゆったりと入り口を通り、床に刺さった斧を拾い上げた。

「テメェ、なに他人ん家の扉、壊しんてんだよっ!?」

 カルラが困惑気味に叫ぶと、少女は不思議そうに首を傾げる。

「え? だってお邪魔する時は扉をノックするって、騎士団の研修で習ったんだもん」
「誰が、破壊する勢いで叩けと言った? あと、騎士団にそんな研修はねぇっ!」

 しかも出来ていない。かなり頑丈に作ったはずの扉が、一撃で破壊されてしまうとは、外見以上に強いのだろう。
 カルラは床に転がった扉の破片を広いながら、少女に向かって語りかける。

「ってかお前、やっぱり騎士団の人間か……。そんなガキみたいなのに」
「うんっ! 攻撃部隊副……じゃなくて部隊長、メルダ・アンドレラだよー! それに、子供でも強いんだよ?」

 言われてみれば、背負った大斧は前の攻撃部隊隊長が使っていた武器だ。いつか迷宮で手に入れたと話していたから、それなりの名品なのかもしれない。

 カルラがメルダの存在に警戒していると、住居部分の扉が開いた。そこには、寝癖の目立つシュラの姿があり、少し大きめの寝間着を着崩して、肌を多目に露出させながらこちらを見ている。

「あの、先ほど、大きな音が聞こえたのですが……って、どうされたのですかっ!?」
「ちょっと隕石が、扉をノックしてきたんだ。弁償はさせる」

 隕石としか例えようのない惨状に、シュラは驚愕している。そんなシュラの様子を、メルダは興味深そうに観察していた。

「うーん?」
「……えと、なんでしょうか?」

 犯人と思われる少女の姿に、シュラは警戒の色を見せる。しかし、メルダは余裕なのか、意識していないのか、平然とした顔色でカルラに尋ねた。

「子供が労働するなんて、労働基準法的に大丈夫なの?」
「こ、子供ではありせませんっ! 大人です! 身長だって、もう少ししたら五メートルくらいになりますから!」
「シュラちゃん、それ化け物」

 そして、急に法律を出すあたりに騎士団教育の偏りを感じる。もっと常識教えて欲しかった。
 カルラは歩み寄ると、手近にあったタオルをシュラの肩に掛ける。

「少し落ち着いておけ」
「はひぃ……」

 そこでようやく、自分の姿に気がついたようで、顔を赤くしながらタオルを握りしめた。
 カルラはメルダの方に視線を戻し、怪訝な面持ちで訊く。

「それで、テメェは何の用で来たんだ?」
「少し前、トル元隊長が迷惑を掛けたみたいだから、挨拶に来たんだー!」

 前攻撃部隊隊長トルアド・バックスは、国家反逆罪で現在収監中だ。そして、彼を捕まえる切欠を作ったのは、他ならぬカルラ達であり、その被害を受けたのはカルラと、その師である。

「ごめんっ!」

 だから、その謝罪の意味も分かるのだが、もうすでに良いのだ。随分と時間が経ったし、傷も癒えかけているのだから、わざわざ謝罪されるようなことでもない。
 しかし、それとこれとは別である。

「いや、そんなことより、たった今壊した扉を弁償しやがれっ!」

 涼しさが増した外の空気は寒く、扉から入り込んだ風が体温を奪う。外に出る準備をしていなかったシュラは、小さく震えていた。

 そんなカルラの反応に、やれやれとメルダは財布を取り出す。

「いいよー。……あ、足りないや、このバトルアックス売れる?」
「それ商売道具!?」

 重いその武器は、軽く扱われているらしい。
メルダ・アンドレラ(14)
種族……亜神
備考……
通称≪星落とし≫。年齢のわりに力強く、丈夫で賢いため、攻撃部隊副部隊長に任命されていた。その正体は、神々の一部で、隕石として飛来した生命体であり、世界の運命を変える役割を持っているとされている。酸っぱいものが好き。
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