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カジヤノキヤクビト 作者:No.

工房日誌 2017.9~

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9月6日曇り 『強者1名』

「新しいの、入ったぞー」

 夕暮れ時、カルラが疲れはてた様子でそう言うと、店の前に立っていた一人の男がマントを翻す。

「オレはラメス・キャメロット。誰もオレを倒すことは出来ない」

 自信に満ちた低い声色が辺りに響いた。髭面にいくつもの切り傷が見え、腰にはいくつかの年季が入った剣が備えられている男は、聞いてもないのに話を続ける。

「この前も市場で、世界一の密偵に戦いを挑んだのだが、怖くなったのか逃げられてしまったよ」
「お前に見つかって、密偵も驚いただろうな。密偵なのに」

 そんな容易に見つかって、それで世界一と呼んでも良いのだろうか。まあ、名乗る分にはどうでもいいけれど。

「とりあえず、背中には気を付けておけよ、たぶん狙われてるから」
「ふん、返り討ちにしてくれる」

 そう言ったラメスの背後には、すでに隠れた十数名の視線が集まっているのだが、気付いた様子は見られない。
 それなのに、ラメスは剣に手をかけて尋ねた。

「それで、お前はオレを倒せるのか?」

 剣に手をかけた瞬間、十数名の密偵も腕利きなのか、素早く静かに武器を構え始めている。確かに逃げたくなるのも頷ける光景ではあった。
 クリョクもその視線に気が付いているようで、全員に目を合わせながらカルラに言う。

「主、あるじ、喧嘩はいけないのでありまするよ?」
「知ってるよ。俺は簡単に争い事を起こすような、単純な人間じゃねぇから大丈夫だ」

 カルラは頭を掻いて、落ち着いた声色でクリョクに告げた。無駄な争いは好まないのである。
 しかし、ラメスの方はそうではないようで、殺気の籠った目でカルラを睨み、そして一言だけ口にした。

「腰抜けめ」

 カルラはふっと笑い、即座に腰につけた鎚を手に取る。

「おい、なんだとこらっ! その喧嘩買ってやるよ! あァ!?」
「主、自分の言葉には責任を持って欲しいでありまするっ!」

 カルラを必死に引き留めながら、クリョクはそう言った。
 ラメスの計らいにより、周囲の人間達を待避させ、その場を簡易的な決闘場として、真ん中で二人は顔を合わせる。

「さて、喧嘩は決闘方式だ。誰の助けも借りてはならない」
「これは木っ端微塵になるやつだな。駄目か」
「……って聞いているのか!? あと、木っ端微塵になる奴ってなにっ!?」

 適当に持ってきた箱を漁りながら呟きたカルラの言葉に、ラメスは不穏な気配を感じている。
 やがて、一つの丁度よさそうな武器を手に取ると、カルラは立ち上がり、すでに剣を手に持っているラメスに告げた。

「よし、決まった。さっさと構えろ」

 それを聞き、ラメスは口元に笑みを作る。

「いいぞ。……ところで、そのバターナイフに危険はないよな?」
「まあ、比較的安全なやつだ。安心しろ」
「そ、そうか」
「肌を溶かして引き剥がすだけの武器だから」
「いや、おぞましいわっ!!」

 そんな商品の沢山ある店の前で、カルラ達は決闘を始めようとしている。風が凪ぎ、クリョクが楽しそうに見つめる中、ラメスは剣をこちらに向けた。

「まあいい。オレ――――……あぁあぁぁあれぇぇえぇえ~」

 風が吹くと同時に、どこの密偵なのか、怪しい人々に抱えられながらラメスは連れ去られてしまった。拷問でも受けるのだろうかと考えながら、カルラは振り返り、不満げなクリョクに言う。

「クリョク、戻るぞ」
「はいっ、でありまする!」

 二人の姿は店に消えたが、しばらく密偵の影は消えなかった。
ラメス・キャメロット(58)
特技……決闘試合
備考……戦い続けることを人生の目標として掲げた人間族の男。事前調査などを用いて、常に相手よりも優位に立とうとするため、いつの間にか諜報員も見抜けるようになっている。
彼は十二騎士団に採用されました。
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