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カジヤノキヤクビト 作者:No.

工房日誌 2017.9~

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9月5日晴れ 『蜥蜴人5名』

「新しいの、入ったぞー」
「おい、鍛冶屋。貴様は我ら、リザードマンから金を取ろうと言うのか?」

 よく晴れた午後のこと。人々も日差しを求めてか、街道を歩き始めた時間に、鍛冶屋の前では奇妙な来訪があった。
 灰褐色の肌は、全身鱗で覆われていて、黄金色の瞳は明らかに人間のものとは異なる爬虫類の目をしていた。そして、畏怖を纏った鋭い爪でこちらを指差している。

 そんな脅迫めいた文言を聞いて、隣に立っている和装の妖刀クリョクが、カルラの袖を引く。

「主、あるじっ!」
「どうした、クリョク?」

 さすがに怖いのかと思ったが、相も変わらず、昆虫採集のときと同じ興奮を見せている。

「あれ、飼ってもいいでありまするかっ!?」
「いやっ、駄目に決まってんだろぉっ!! 人間の娘よ!」

 先頭に立つリザードマンの男は動揺を隠しきれない。外見だけ人間ではあるが、クリョクは妖刀であるため、通常の感性を求めてはいけない。

 何故か落ち着き払っている鍛冶屋を見て、左は端に居る緑色のトカゲは笑いだす。

「お前らぁ、リザードマンを知らねぇのか? 俺らぁは高潔なるドラゴンの末裔だぞぉ?」
「ははっ、人間に言っても分からんよ。どうせ、人間だからなぁ」

 右端のトカゲは黒い鱗を歪め、笑みを浮かべている。
 クリョクは馬鹿にされたことで頬を膨らませて、カルラの裾を強く握りしめた。

「主ぃ、この方々はムカつくでありまする。弾き飛ばしても宜しいでありまするか?」
「弾き……!?」

 赤い色のトカゲは、幼い口から聞こえた言葉に驚く。
 憤慨するクリョクの頭を撫でながら宥め、カルラは身を屈めて落ち着かせようと言い聞かせる。

「落ち着け。こいつらに怪我をさせたらどうなると思う……?」

 五人の異人を見上げると、自信ありげに笑っていた。

「ドラゴンっていうから、たぶん強かったりするんだろ? あと、鱗とか固そうだし、体中に特別な器官があったりするから……」

 カルラは最近の財布事情を考慮して、妥協案を述べた。

「生け捕りにしたら、素材が取り放題になる。うちに地下牢って在ったっけ?」
「無いですよ……。なに、怖い相談してるのですか?」

 いつの間にか後ろに立っていた、白い髪の幼女は言う。弟子のシュラは、訝しそうにカルラを見てから、五人の客人に気がついた。

「この方々は、もしかして蜥蜴人族さんでしょうか?」
「え、こいつらは蜥蜴なのか? ドラゴンじゃなくて」

 その発言に、明らかな緊張がトカゲ達に走った。
 それを知らないシュラは、とても楽しそうに、過去に読んだのであろう文献を思い返して語りだす。

「はい。犬人族さんや猫人族さん達と同じく、蜥蜴の能力を受け継ぐ種族ですよ」

 五人のトカゲが頭を抱えたところで、ようやくシュラも彼らの心情を悟ったようで、手遅れな後付けを加えた。

「…………あ、えと……、一説によれば、ドラゴンとの交配によって生まれたとか、そうでないとか、伝えられていたりもしますね。根拠はありませんが……」
「気を使うな、惨めになるだろっ!?」

 彼らの視点からなら、子供に気を遣われた気分なのだろう。戸惑う真ん中のトカゲに、赤いトカゲは言う。

「やっぱり無理なんだよ、兄ちゃん。俺らには羽がないしぃ、火も吐けないしぃ」
「ふざけるなっ! 羽が無くとも、火が吐けなくとも、そういうドラゴンは沢山いるだろっ!!」
「蜥蜴にも居るよぉ?」

 別にドラゴンである理由はない。
 もうすでに、威厳もなければ、畏怖を示す材料もなくなったとき、灰色のトカゲは咳払いを一つ。

「うぅ、コホン。さて鍛冶屋、我らに無料で武器を譲りたまえ」
「このタイミングで商談しようとするな。もっと頭を使え」
「何故、カルラさんが助言をしてるのですか……?」

 そんな異種交流。
蜥蜴人族
……極めて高い回復力を有する、爬虫類の種族。中には亀なども居るが、基本的には蜥蜴に近い形で生まれる。戦闘能力は高いが、珍味として扱われることもあり、近年まで人間族に狩られていた。
ドラゴンとの血縁を信じる者は、少なからず人間に恐怖している。
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