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カジヤノキヤクビト 作者:No.

工房日誌 2017.8~

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8月30日晴れ 『鍛冶屋にて』

「新しい素材、倉庫に入れておけー」

 カルラはそう言って指示を出すと、妖刀クリョクは外見に似合わない腕力で、買い込んだ物資を倉庫まで運んでいく。
 埃を被り始めていた鍛冶屋の店先で、シュラは感慨深そうに呟いた。

「ようやく、帰って参りましたね。随分と、久しぶりに感じます……」

 カルラも同じように、肩を竦めて苦く笑う。

「そりゃまあ、何度か死にかけたり、死にかけたり、死にかけたりしたからな。生きている時間が長く感じる」
「本当に、散々でしたね」

 あんなこと、二度と遭いたくないものである。
 カルラが大きな欠伸を浮かべていると、仕事を終えたクリョクが元気な笑顔を見せて、こちらに走ってくる。

「主、あるじ! 素材を運び終わったでありまする! 誉めて欲しいでありまするっ! ナデナデもするでありまするっ!」
「なんだ、この妖刀。我が強いな」

 最近、やたら甘えてくるから困る。それでも、黒髪のおかっぱ頭を撫でていると、シュラがぎこちなく視線を反らし、言い淀みながらも口を開いた。

「と、ところで、報酬とは別に、王国から荷物が届いていますよ? 中身はなんでしょうか……」

 シュラの視線にあったのは、帰って来た直後に届けられた巨大な木箱で、頑丈に補強されていることが外身から分かる。

「そうだなぁ。たぶん、俺達が倒したクラーケンの一部じゃねぇか? 素材に出来る部位だと良いんだが……」

 水の音が聞こえる木箱の蓋を、カルラが持ち上げると、八つの目がこちらを見ていた。

『ピシャー』

 バタンと蓋は即座に閉められて、釘を刺して封印する。
 横でそれを見ていたシュラは、なんとも言えない表情を浮かべていた。

「あのクラーケン、子持ちだったようですね」
「ふざけんなっ! あんな大災害、うちに送るんじゃねぇよ、クソ国王っ!!」

 しかも生である。
 扱いに困って送られたのか、あるいは何かの腹いせか、よく分からないが、クリョクがやたら目を輝かせていた。

「あ、主、拙者が飼ってもよろしいでこざりまするか?」
「よろしく無……いや、もっと大きく育てて返品してやろうか? 湖辺りに」

 うちに送って来たことを後悔させてやろうと、提案してみるが、優しいシュラは冷たい眼差しでカルラを見て言った。

「どんな残虐な嫌がらせですか? それに、そこまで大きくするのに、うちが干上がってしまいますから」

 しかし、それならどうするか、そう考えたときカルラはふと、自分のお腹が空いていることに気がついた。

「じゃあ、たこ焼きにでもするか?」
「はいでありまするっ!」
「いえ、返しましょう! 絶対、美味しくありませんからっ!」

 シュラの強い否定もあり、クラーケンの子供は一命をとりとめた。
カルラ・ピースメーカー(21)
称号……S級冒険者
備考……クラーケンを倒したことで、名前が売れてしまっていることに気がついていない鍛冶屋の主人。しばらく無駄遣いしないように心掛けるつもりだ、とは言っている。

シュラ・トンプソン(17)
称号……永久幼女
備考……クラーケンを倒したついでに、王国のファンクラブが100名を越えたことに気がついていない、鍛冶屋の弟子。最近、心配なことは、鍛冶屋の資金と、何処からか視線を感じること。

妖刀・紅緑(0)
称号……和服幼女
備考……クラーケンを倒しに行ったのだが、結局のところ妖刀であるため、報酬は貰えていないことに気がついていない。周辺で怪しい影が見えたら弾き飛ばすように、命令を受けている。
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